そんなコンなで毎日修行中!

西出あや

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10.キツネがいっぱい!?

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 お母さんに本当のことを聞けないまま数日が経っちゃった。
 お母さんのことを疑いたくはないけど、康哉があんなウソをつく理由もないんだもん。
 だって、この勾玉さえなければ狐火だって変化の術だって、康哉に負けないくらい上手にできるかもしれないってことでしょ?
 ひょっとしてお母さんは、わたしに長になってほしくないからこんなものでわたしのことを縛りつけてるんじゃないか……なんてふとした瞬間に考えちゃうんだよね。
 ううん! 今はそんなことを考えてる場合じゃない。
 それよりも……いったいこれ、どうなっちゃってるの~⁉
『化けギツネのウワサの真相に迫る!』の記事を仕上げるために、もう一度学校中を調べて回りたいっていう紗香と一緒に、放課後の校内を歩き回っていたんだけど。
 まるで、あっちこっちからキツネが湧き出てくるみたい。
 空き教室の扉の隙間からこっちの様子をのぞき見してるキツネをつかまえようとしたら、その向こうの廊下の角に、ゆらりと揺れるキツネしっぽが見えるし。
 とりあえず、教室の扉をしっかりと閉めて逃げ出さないようにしてから、廊下の向こうに消えたしっぽを追おうとしたら、今度はこっちに駆け出してくるキツネがいるし。
 これって、みんなこの学校の生徒なの⁉
 白壁先生が、『これで終わりともかぎらない』とは言ってたけど、さすがにこんなことになるなんて、思ってもみなかったよ。
 人間の記憶を失った状態で、どこかに迷い出てしまったりしたら大変。
 ちゃんと保護してあげないと。
 でも、いったいどうしたら……。
「すごい、すごい! これこそ大スクープじゃない⁉」
 紗香がカメラを構え、カシャカシャと何度もシャッターを切る。
「さ、紗香。ここは危ないから、早く家に帰った方がいいって。もし紗香までキツネにされたら……」
「キツネに、される……?」
 紗香がカメラのファインダーから目を離し、首をかしげる。
 し、しまった!
「いや、その……い、いったいこの子たちって、どこから入ってきたんだろうねえ」
 必死にごまかそうとするわたしの鼻先に、紗香がビシッと人差し指を突きつける。
「それだ! たしかに、どこからこんなに入ってきたんだろうね。それに、こんなにたくさんいるってことは、学校の近くに、大きなキツネの巣でもあるってこと? いや、そもそもキツネって、集団生活なんてするんだっけ? そのへんのナゾが解明できれば、それもスクープに……」
 しまった。紗香の好奇心を、余計にたきつけてしまったみたい。
 でも、とりあえずわたしの『キツネにされる』っていう失言は忘れてくれたみたいだから、誘導成功?
「春日さん」
 声をかけられ振り向くと、白壁先生がわたしたちの方に向かって歩いてきていた。
「使われていない飼育小屋のカギを借りてきたわ。迷子にでもなったら大変だから、そこに一旦集めておきましょう」
 白壁先生が、わたしに向かってカギをかかげて見せる。
「そうですね」
 よかった。これで、とりあえずはひと安心だよ。
 昔はその飼育小屋で、ウサギやニワトリの飼育をしていたらしいんだけど、動物アレルギーとかいろんな理由で、今はからっぽなの。
 でも、小屋の中には、当たり前だけど、フカフカのお布団も、あったかいお風呂もない。
 土の地面と柵に囲まれた小さなスペースに、みんなを閉じ込めておかなくちゃいけないなんて……申し訳なくて胸がズキズキする。
 早く犯人を見つけて、みんなを元に戻してあげなくちゃ。
 改めて決意を固め、わたしはぎゅっとこぶしを握りしめた。
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