41 / 51
10.キツネがいっぱい!?
1
しおりを挟む
お母さんに本当のことを聞けないまま数日が経っちゃった。
お母さんのことを疑いたくはないけど、康哉があんなウソをつく理由もないんだもん。
だって、この勾玉さえなければ狐火だって変化の術だって、康哉に負けないくらい上手にできるかもしれないってことでしょ?
ひょっとしてお母さんは、わたしに長になってほしくないからこんなものでわたしのことを縛りつけてるんじゃないか……なんてふとした瞬間に考えちゃうんだよね。
ううん! 今はそんなことを考えてる場合じゃない。
それよりも……いったいこれ、どうなっちゃってるの~⁉
『化けギツネのウワサの真相に迫る!』の記事を仕上げるために、もう一度学校中を調べて回りたいっていう紗香と一緒に、放課後の校内を歩き回っていたんだけど。
まるで、あっちこっちからキツネが湧き出てくるみたい。
空き教室の扉の隙間からこっちの様子をのぞき見してるキツネをつかまえようとしたら、その向こうの廊下の角に、ゆらりと揺れるキツネしっぽが見えるし。
とりあえず、教室の扉をしっかりと閉めて逃げ出さないようにしてから、廊下の向こうに消えたしっぽを追おうとしたら、今度はこっちに駆け出してくるキツネがいるし。
これって、みんなこの学校の生徒なの⁉
白壁先生が、『これで終わりともかぎらない』とは言ってたけど、さすがにこんなことになるなんて、思ってもみなかったよ。
人間の記憶を失った状態で、どこかに迷い出てしまったりしたら大変。
ちゃんと保護してあげないと。
でも、いったいどうしたら……。
「すごい、すごい! これこそ大スクープじゃない⁉」
紗香がカメラを構え、カシャカシャと何度もシャッターを切る。
「さ、紗香。ここは危ないから、早く家に帰った方がいいって。もし紗香までキツネにされたら……」
「キツネに、される……?」
紗香がカメラのファインダーから目を離し、首をかしげる。
し、しまった!
「いや、その……い、いったいこの子たちって、どこから入ってきたんだろうねえ」
必死にごまかそうとするわたしの鼻先に、紗香がビシッと人差し指を突きつける。
「それだ! たしかに、どこからこんなに入ってきたんだろうね。それに、こんなにたくさんいるってことは、学校の近くに、大きなキツネの巣でもあるってこと? いや、そもそもキツネって、集団生活なんてするんだっけ? そのへんのナゾが解明できれば、それもスクープに……」
しまった。紗香の好奇心を、余計にたきつけてしまったみたい。
でも、とりあえずわたしの『キツネにされる』っていう失言は忘れてくれたみたいだから、誘導成功?
「春日さん」
声をかけられ振り向くと、白壁先生がわたしたちの方に向かって歩いてきていた。
「使われていない飼育小屋のカギを借りてきたわ。迷子にでもなったら大変だから、そこに一旦集めておきましょう」
白壁先生が、わたしに向かってカギをかかげて見せる。
「そうですね」
よかった。これで、とりあえずはひと安心だよ。
昔はその飼育小屋で、ウサギやニワトリの飼育をしていたらしいんだけど、動物アレルギーとかいろんな理由で、今はからっぽなの。
でも、小屋の中には、当たり前だけど、フカフカのお布団も、あったかいお風呂もない。
土の地面と柵に囲まれた小さなスペースに、みんなを閉じ込めておかなくちゃいけないなんて……申し訳なくて胸がズキズキする。
早く犯人を見つけて、みんなを元に戻してあげなくちゃ。
改めて決意を固め、わたしはぎゅっとこぶしを握りしめた。
お母さんのことを疑いたくはないけど、康哉があんなウソをつく理由もないんだもん。
だって、この勾玉さえなければ狐火だって変化の術だって、康哉に負けないくらい上手にできるかもしれないってことでしょ?
ひょっとしてお母さんは、わたしに長になってほしくないからこんなものでわたしのことを縛りつけてるんじゃないか……なんてふとした瞬間に考えちゃうんだよね。
ううん! 今はそんなことを考えてる場合じゃない。
それよりも……いったいこれ、どうなっちゃってるの~⁉
『化けギツネのウワサの真相に迫る!』の記事を仕上げるために、もう一度学校中を調べて回りたいっていう紗香と一緒に、放課後の校内を歩き回っていたんだけど。
まるで、あっちこっちからキツネが湧き出てくるみたい。
空き教室の扉の隙間からこっちの様子をのぞき見してるキツネをつかまえようとしたら、その向こうの廊下の角に、ゆらりと揺れるキツネしっぽが見えるし。
とりあえず、教室の扉をしっかりと閉めて逃げ出さないようにしてから、廊下の向こうに消えたしっぽを追おうとしたら、今度はこっちに駆け出してくるキツネがいるし。
これって、みんなこの学校の生徒なの⁉
白壁先生が、『これで終わりともかぎらない』とは言ってたけど、さすがにこんなことになるなんて、思ってもみなかったよ。
人間の記憶を失った状態で、どこかに迷い出てしまったりしたら大変。
ちゃんと保護してあげないと。
でも、いったいどうしたら……。
「すごい、すごい! これこそ大スクープじゃない⁉」
紗香がカメラを構え、カシャカシャと何度もシャッターを切る。
「さ、紗香。ここは危ないから、早く家に帰った方がいいって。もし紗香までキツネにされたら……」
「キツネに、される……?」
紗香がカメラのファインダーから目を離し、首をかしげる。
し、しまった!
「いや、その……い、いったいこの子たちって、どこから入ってきたんだろうねえ」
必死にごまかそうとするわたしの鼻先に、紗香がビシッと人差し指を突きつける。
「それだ! たしかに、どこからこんなに入ってきたんだろうね。それに、こんなにたくさんいるってことは、学校の近くに、大きなキツネの巣でもあるってこと? いや、そもそもキツネって、集団生活なんてするんだっけ? そのへんのナゾが解明できれば、それもスクープに……」
しまった。紗香の好奇心を、余計にたきつけてしまったみたい。
でも、とりあえずわたしの『キツネにされる』っていう失言は忘れてくれたみたいだから、誘導成功?
「春日さん」
声をかけられ振り向くと、白壁先生がわたしたちの方に向かって歩いてきていた。
「使われていない飼育小屋のカギを借りてきたわ。迷子にでもなったら大変だから、そこに一旦集めておきましょう」
白壁先生が、わたしに向かってカギをかかげて見せる。
「そうですね」
よかった。これで、とりあえずはひと安心だよ。
昔はその飼育小屋で、ウサギやニワトリの飼育をしていたらしいんだけど、動物アレルギーとかいろんな理由で、今はからっぽなの。
でも、小屋の中には、当たり前だけど、フカフカのお布団も、あったかいお風呂もない。
土の地面と柵に囲まれた小さなスペースに、みんなを閉じ込めておかなくちゃいけないなんて……申し訳なくて胸がズキズキする。
早く犯人を見つけて、みんなを元に戻してあげなくちゃ。
改めて決意を固め、わたしはぎゅっとこぶしを握りしめた。
0
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
放課後ゆめみちきっぷ
梅野小吹
児童書・童話
わたし、小日向(こひなた)ゆには、元気で明るくて髪の毛がふわふわなことが自慢の中学一年生!
ある日の放課後、宿題をし忘れて居残りをしていたわたしは、廊下で変わったコウモリを見つけたんだ。気になってあとを追いかけてみたら、たどり着いた視聴覚室で、なぜか同じクラスの玖波(くば)くんが眠っていたの。
心配になって玖波くんの手を取ってみると……なんと、彼の夢の中に引きずり込まれちゃった!
夢の中で出会ったのは、空に虹をかけながら走るヒツジの列車と、人の幸せを食べてしまう悪いコウモリ・「フコウモリ」。そして、そんなフコウモリと戦う玖波くんだった。
玖波くんは悪夢を食べる妖怪・バクの血を引いているらしくて、ヒツジの車掌が運転する〝夢見列車〟に乗ることで、他人の夢の中を渡り歩きながら、人知れずみんなの幸せを守っているんだって。
そんな玖波くんのヒミツを知ってしまったわたしは、なんと、夢の中でフコウモリ退治のお手伝いをすることになってしまって――?
これは、みんなを悪夢から守るわたしたちの、ヒミツの夢旅の物語!
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
君との恋はシークレット
碧月あめり
児童書・童話
山田美音は、マンガとイラストを描くのが好きな中学二年生。学校では黒縁メガネをかけて地味に過ごしているが、その裏で人気ファッションモデル・星崎ミオンとして芸能活動をしている。
母の勧めでモデルをしている美音だが、本当は目立つことが好きではない。プライベートでは平穏に過ごしたい思っている美音は、学校ではモデルであることを隠していた。
ある日の放課後、美音は生徒会長も務めるクラスのクールイケメン・黒沢天馬とぶつかってメガネをはずした顔を見られてしまう。さらには、教室で好きなマンガの推しキャラに仕事の愚痴を言っているところを動画に撮られてしまう。
そのうえ、「星崎ミオンの本性をバラされたくなかったら、オレの雑用係やれ」と黒沢に脅されてしまい…。
未来スコープ ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―
米田悠由
児童書・童話
「やばっ!これ、やっぱ未来見れるんだ!」
平凡な女子高生・白石藍が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“触れたものの行く末を映す”装置だった。
好奇心旺盛な藍は、未来スコープを通して、学園に潜む都市伝説や不可解な出来事の真相に迫っていく。
旧校舎の謎、転校生・蓮の正体、そして学園の奥深くに潜む秘密。
見えた未来が、藍たちの運命を大きく揺るがしていく。
未来スコープが映し出すのは、甘く切ないだけではない未来。
誰かを信じる気持ち、誰かを疑う勇気、そして真実を暴く覚悟。
藍は「信じるとはどういうことか」を問われていく。
この物語は、好奇心と正義感、友情と疑念の狭間で揺れながら、自分の軸を見つけていく少女の記録です。
感情の揺らぎと、未来への探究心が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第3作。
読後、きっと「誰かを信じるとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる