君の声が好き!

西出あや

文字の大きさ
5 / 48
2.お近づきになりたい

しおりを挟む
「ねえ、菜々ちゃん。あたし決めた。生徒会に入るよ」

 入学式が終わって教室に戻ると、さっそく菜々ちゃんの席まで行って、宣言した。
 菜々ちゃんとは、小四ではじめて同じクラスになってからずっと仲よしで、中学でもめでたく同じクラスになれたんだ。
 校舎の壁に貼りだされたクラス分け表を見たときは、うれしくて思わず抱きあっちゃったよ。

「え? どうしたの急に?」

 菜々ちゃんが小首をかしげると、肩で切りそろえた髪がサラリと揺れる。
 そして、その小柄でかわいらしい雰囲気にピッタリな、少し高めのほんわかした声に胸を打ち抜かれる。
 ああっ、あたしもこんなかわいい声に生まれたかった!

 あたしの声はちょっと低めで、よく響くわけでも、かわいらしいわけでもない、平凡すぎる声。
 ついでに言うと、見た目だって特にチャームポイントなんかがあるわけでもなく、一重まぶたに、高くもない鼻、肩より少し長い髪は、動きやすさ重視でうしろでひとつに束ねただけ。
 ああ、なんて平凡なんだ。

 ……おっと、話がそれた。

「ねえ、菜々ちゃんも、生徒会長の声、聞いたでしょ? 時谷様にソックリじゃなかった!?」

 ぐっと顔を近づけると、声をひそめて菜々ちゃんにだけ聞こえるように言う。

「う~ん。そう言われてみれば、似てたかも?」

 菜々ちゃんは、本当は文字ばっかりの小説を読むのが好きなんだけど、あたしがオススメしたアニメは毎回チェックしてくれてるの。
 ムリしてあたしの趣味に合わせてくれてるんじゃないかって心配になったこともあったけど、
「ううん。遥香ちゃんがオススメしてくれるアニメは、どれも全部おもしろいから、またいいのがあったら教えてね」
 って言ってくれたんだ。

 クラスの他の女子は、男性アイドルグループの誰々がカッコいいーなんて話に夢中。
 だから、一応みんなに合わせようと思って、勉強してみたこともあるんだよ?
 だけど、マンガとアニメをこよなく愛するあたしには、アイドルの顔なんかみんな同じに見えちゃうし、グループもたくさんありすぎて全然覚えられなかった。
 正直あたしにとっては、歴史上の人物を覚えるよりも難問だったよ。

 だけど、声はちがう。
 覚えようと思わなくても、勝手に脳内にどんどんインプットされていくんだ。
 原作を知っているアニメだと、勝手な脳内妄想とのズレにガッカリすることがないわけじゃない。
 だけど、声優っていうのは、まさに絵に命を吹き込むお仕事。
 声が入ることで、絵がなんだか意志を持って動いているように見えてくるんだ。
 それって、すごいことだと思わない?
 それに、同じ声優さんでも、役柄によって使い分けられる声に、ゾクゾクしたりキュンキュンしたり。

 つまり、今までのところをわかりやすく要約すると、イケボは正義だっていうこと。
 つまり、あの生徒会長とお近づきになることが、あたしのハッピー中学生ライフには欠かせないっていうことなの!

「本当にすごいよね、遥香ちゃんは。好きな人のために、選挙にまでチャレンジできるなんて」
「すっ、好きな人じゃないからね!? あたしが好きなのは、あくまでも声だけなんだから」

 実はあたし、まだ恋をしたことがないんだよね。
 声は好きって思えても、人間の男の子を好きになるっていう気持ちは、いまいちよくわからないんだ。

 小学生のときは、休み時間は教室でおしゃべり……よりも、男子と一緒に運動場で鬼ごっこやドッジボールをしてすごしていた。
 ずっとそんなんだったから、あたしのことを女子だと思っていた男子なんか、ひとりもいなかったんじゃないかなぁ?

 でも、そうやって男子と外で遊んでばかりいると、クラスのボスみたいな女子集団にイヤミを言われることも正直あった。
 あたしはべつに、男子に好かれたくてやってたわけじゃなく、単純に外で走りまわって、楽しく遊びたかっただけなのに。

 そんなあたしの気持ちを唯一理解してくれていた菜々ちゃんは、あたしとは真逆で、いつも教室で本を読んですごすようなおとなしい女の子。
 だけど、いつも笑顔であたしのことを運動場に送り出してくれていたんだ。

 みんなはそれさえも気にくわないみたいで、
「菜々ちゃんを置き去りにしてまで男子と遊びにいくなんてひどくない?」
 なんて言われたりもした。

 でも菜々ちゃんは、
「わたしは本を読みたいから教室に残ってるだけ。みんなも男子と遊びたければ、外に行けばいいのにね」
 って言って笑ってくれたんだ。

 そんなふうに自分をしっかり持ってる菜々ちゃんはすごくカッコよくて、あたしもそんなふうに強くなりたいってずっと憧れてる。

「選挙、がんばってね。わたし、応援してるよ」

 にこっと笑ってくれた菜々ちゃんの手をがしっとつかむと、
「うん、あたし、がんばる。絶対に生徒会の一員になってみせるよ」
 あたしはそう宣言した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 現代日本と不釣り合いなとある山奥には、神社を中心とする妖討伐の一族が暮らす村があった。その一族を率いる櫛田八早月(くしだ やよい)は、わずか八歳で跡目を継いだ神職の巫(かんなぎ)である。その八早月はこの春いよいよ中学生となり少し離れた町の中学校へ通うことになった。  妖退治と変わった風習に囲まれ育った八早月は、初めて体験する普通の生活を想像し胸を高鳴らせていた。きっと今まで見たこともないものや未体験なこと、知らないことにも沢山触れるに違いないと。  この物語は、ちょっと変わった幼少期を経て中学生になった少女の、非日常的な日常を中心とした体験を綴ったものです。一体どんな日々が待ち受けているのでしょう。 ※外伝 ・限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです  https://www.alphapolis.co.jp/novel/398438394/874873298 ※当作品は完全なフィクションです。  登場する人物、地名、、法人名、行事名、その他すべての固有名詞は創作物ですので、もし同名な人や物が有り迷惑である場合はご連絡ください。  事前に実在のものと被らないか調べてはおりますが完全とは言い切れません。  当然各地の伝統文化や催事などを貶める意図もございませんが、万一似通ったものがあり問題だとお感じになられた場合はご容赦ください。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】

旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】 魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。 ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。 「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」 不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。 甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

この町ってなんなんだ!

朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。

処理中です...