君の声が好き!

西出あや

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15.手のかかる後輩、でもいい

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「逢坂先輩。あたし……逢坂先輩のことが好きです」
「わかってる。声が好きなんだろ?」
「……好きです。先輩の声、はじめて会ったあのときから大好きでした。でもあたし……先輩の声以外も好きになっちゃったみたいです」

 あたしがそう言うと、先輩がハッと息を飲む。

「ごめんなさい。こんなこと言ったって、先輩のことを困らせるだけだってわかってます。だって先輩は、戸田先輩とお付き合いするんですよね? だから、せめて最後にあたしの本当の気持ちだけは知っておいてほしくて」

 困らせるだけでもいい。
「まったく手のかかる後輩だな」って思われるだけでもいい。
 先輩の記憶の中に、ほんの少しでもあたしの居場所を作りたかったの。

 わがままな後輩でごめんなさい。

 でも、先輩が言ったんですよ?
 まっすぐなところが、あたしのいいところだって。

「なにを言ってるのかよくわからんのだが。戸田と付き合うなんて、誰が言った?」
「だって、戸田先輩が……その……逢坂先輩に……告白したって聞いて」

 わざわざあたしにこんなこと言わせないでくださいよ――って文句のひとつでも言ってやろうかと思っていたら、なぜか先輩が小さくため息をついた。

「俺は、きちんと断ったよ」
「きちんとことわ……へ!? ど、どういうことですか??」
「他に好きなヤツがいるのに、OKするわけがないだろ」
「先輩……戸田先輩の他に、好きな人がいるんですね……」

 声がまた一段と沈む。
 ああ、それは想定外だった。
 同じクラスの人?
 それとも、近所の幼なじみとか?

「なにを落ち込んでいるのか、まったく理解不能だな。佐倉はいつもいつも本当に」

 先輩が、今度は深~いため息をつく。

「だからこそ、放っておけない。いつもいつも気になって仕方ない。いつの間にか……佐倉のことばかり考えるようになっていた。ちゃんと責任取ってくれるんだろうな?」
「責任……? って、なんの話ですか?」
「本当に、おまえの何事にも一生懸命なところはいいんだが、これ以上ヒヤヒヤさせるな。俺を毎回巻き込むんじゃない。……いや、巻き込むのは俺だけにしてくれ。それこそ俺の心臓が持たんからな」

 一気にそう言い切ると、はぁーと深く息をはいてから先輩がもう一度口を開く。

「つまりだなあ……俺と付き合ってくれと言っているんだ」
「…………え?」

 だって先輩、他に好きな人が……って、ひょっとして、それって……あたしのこと?

「えぇっ!?」
「やっとわかったか」

 思わず大声をあげるあたしを見て、先輩がふっと笑う。

「でも戸田先輩……」
「女のカンは怖いな。あいつにはバレバレだったみたいだよ」

 逢坂先輩が苦笑いする。

「『どうせ佐倉さんのことが好きなんでしょ? だったら早くくっつきなさいよね。じゃなきゃ、わたしが逢坂くんのこと奪っちゃうから』とはっぱをかけられたよ」

 戸田先輩……ひょっとして、あたしにもはっぱをかけるために、あんな言い方を?

「で? 答えはどうなんだ?」

 逢坂先輩が、あたしの顔をのぞき込んでくる。
 そんなの決まってるよ。

「……よろしく、おねがいします」

 そう言いながら、おそるおそる先輩の方へと手を伸ばす。

「なんだ?」

 先輩の手をつんとつつくと、先輩があたしの手をぎゅっと握ってくれた。

「逢坂先輩の手、大きいですね」
「…………」
「逢坂先輩?」

 いきなり黙り込んでしまった先輩の顔を見あげると、物言いたげな目であたしのことをじっと見おろしていた。

「おうさ…………祐樹……先輩?」
「なんだ、遥香?」

 ちょっとだけ口元をほころばせながら、先輩が返事をしてくれる。

「祐樹先輩、大好きです」



(終)
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