ヒーラーガール!

西出あや

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3.なにも知らない

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「えぇっ⁉ なんで⁇」
 翌朝、マンションのエントランスを出ると、すぐ目の前に佐治くんがいた。
 昨日、『俺が守る』なんて言ってたけど、まさかわざわざ迎えに来たの?
「そんなに心配しなくても、学校に行くまでくらい、大丈夫だよ」
「一昨日、車にひかれそうになったばかりのヤツが、なにをのんきなことを言っている。なにかあってからでは遅いんだよ」
 うっ……。それを言われると、なにも言い返せないんですけど。
 わたしが歩き出すと、佐治くんはわたしの少しうしろについて歩きはじめた。
 ……そっか。横にピッタリくっついて、ってわけではないんだね。
 も、もちろん、こうやって離れてくれてた方がありがたいんだけどね⁉
 だって、佐治くんと並んで登校するなんて、あまりにも目立ちすぎるから。
 クラスの女子が、佐治くんを見るなり「イケメン転校生が来た!」って騒いでいた通り、どこを歩いていても、みんなの視線を惹きつけちゃうんだよね、佐治くんって。
 ボディガードっていうより、芸能人だって言われた方が、説得力があると思う。
「若葉、おはよー」
 ヒヨちゃんとのいつもの待ち合わせ場所の交差点が近づいてくると、わたしに気づいたヒヨちゃんが軽く手を振っているのが見え、わたしも振り返す。
「おはよー、ヒヨちゃん」
「ねえ。あれって、佐治くんだよね?」
 ヒヨちゃんと合流すると、チラチラとうしろを気にするヒヨちゃん。
「え? あ、ほんとだ。全然気づかなかったよー」
 我ながら、なんて白々しいリアクション。
「そうなの? いやあたし、てっきり佐治くんと一緒に来たのかと思ったよ」
「まさか! そんなわけないよー」
 あはははと笑ってごまかしたけど……誤解されてないよね?
 いや、誤解じゃなくて、大正解なんだけどさ。
 でもね、佐治くんみたいに目立つ子と一緒にいると、いろいろ問題というか……。
 転校早々、他クラスの女子にまで『イケメン転校生』ってウワサが広まってるくらいなんだよ?
 もし一緒に登校してるところを見られたりしたら、なにを言われることか!
 特に、うちのクラスの女子の中心にいる沢村さわむら凛香りんかちゃんあたりにでも知られたら大変。
 昨日も、ものすごく積極的に佐治くんにアプローチしているところを見たばかりだし。
 まあ、当の佐治くんはガン無視って感じだったけど。
 いや、そんな感じだったからこそ、余計にわたしと一緒にいるところを見られるわけにはいかないんだよ。
 最悪、クラスの女子ほぼ全員を敵に回すことにもなりかねない。
 怖い想像をして、わたしは思わずぶるっと身震いした。
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