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9.言ってもいいの?
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「どっちもなんて、マジでありえないんだけど」
「斗真くんにフラれたからって、翔くんに乗り換えるとかさあ。自分のこと、モテるって勘ちがいしてんじゃないの?」
……翔くんと一緒に登校したこと、あっという間にウワサになっちゃってるし。
みんな勝手なことばっか言ってるけど、全然恋愛的な話なんかじゃないのに!
そもそもヒヨちゃんも一緒だったし。
でも、なにひとつ言えることがないから、黙っているしかない。
魂の抜け殻状態で自分の席に座っていると、前の席に腰をおろしたヒヨちゃんが、頬杖をついてわたしの顔をのぞき込んでくる。
「ほらぁ。若葉がはっきりしないから、こういうことになっちゃうんだよ?」
「だって……本当にそんなんじゃないんだもん」
「あー、わかった。佐治くんに、『俺を選べ』って言ってもらえなくてショックなんだ」
「なっ……⁉」
あまりにびっくりしすぎて言葉が出てこない。
なんでわかったの⁉
「あらぁ、図星ですか?」
ヒヨちゃんが、にやりとする。
「だったらさ、若葉が選べばいいだけの話じゃない?」
「わたしが?」
佐治くんは、なにも言わずに、わたしを置いて行っちゃったんだよ?
わたしが選んだりしたら、きっと迷惑だよ。
それに、わたしが選ばなければ、佐治くんはボディガードの仕事なんかしなくてもよくなるってことで。そしたら、危ない目にだって遭わなくてすむ。
そしたら、普通の中学生として、学校生活だって普通に楽しめるようになるんだよ?
部活に入ったり……彼女と放課後デートしたり。
でも、わたしたちの唯一の接点がなくなってしまったら、わたしのそばにいる理由だってなくなっちゃうってことで。
そしたら、もう一緒にはいられないんだ。
それは……すごく寂しい。
だったら、ヒヨちゃんの言う通り佐治くんを選べば……。
ううん。それこそ、わたしのワガママ以外のなにものでもない。
一緒にいたいからとか、そんな理由で、佐治くんを選ぶわけにはいかないよ。
「痛っ」
一人で悶々と考えていたら、ヒヨちゃんにぺちっと軽くデコピンされた。
「ほらあ、そこが若葉の一番悪いとこ。ちゃんと自分の思ってることは言葉にしなくちゃ、相手に伝わらないよ?」
一番悪いとこ?
みんなに迷惑をかけないようにって。
いい子でいるためにって。
自分の気持ちは、できるだけ言葉にしないようにしてきたのに。
わたし、自分の思ってることを、我慢しないで言ってもいいの?
言った方がいいの?
「でも、わたしがそんなこと言ったら、佐治くんに迷惑――」
「ほらほら、またそういうこと言うんだからあ」
ヒヨちゃんが、胸の前で両腕を組んで両方のほっぺたを膨らます。
「若葉は、あたしが『大好き』って言ったら迷惑?」
「迷惑なわけないよ! すっごくうれしい」
「じゃあ、若葉は誰に『大好き』って伝えたい?」
「ヒヨちゃん!」
わたしのことを考えて、こうやって説教だってしてくれるヒヨちゃん以上に大好きな人なんて、いるわけないよ。
「それはちょっと普通にテレるんだけど。じゃあさ、他に言いたい人は?」
お父さん。お母さん。それに……。
なんでこんなときに佐治くんの顔が思い浮かんじゃうんだろ。
でも……ヒヨちゃんのことが『大好き』っていうのと同じくらい、佐治くんにも『大好き』を伝えたい。
恋愛的なものとはちがうかもだけど、それでも『大好き』って気持ちにはちがいないから。
「ごめんね、ヒヨちゃん。わたし、ちょっと行ってくる」
じっとしていられなくなって、わたしは教室を出ていく佐治くんの背中を追った。
「斗真くんにフラれたからって、翔くんに乗り換えるとかさあ。自分のこと、モテるって勘ちがいしてんじゃないの?」
……翔くんと一緒に登校したこと、あっという間にウワサになっちゃってるし。
みんな勝手なことばっか言ってるけど、全然恋愛的な話なんかじゃないのに!
そもそもヒヨちゃんも一緒だったし。
でも、なにひとつ言えることがないから、黙っているしかない。
魂の抜け殻状態で自分の席に座っていると、前の席に腰をおろしたヒヨちゃんが、頬杖をついてわたしの顔をのぞき込んでくる。
「ほらぁ。若葉がはっきりしないから、こういうことになっちゃうんだよ?」
「だって……本当にそんなんじゃないんだもん」
「あー、わかった。佐治くんに、『俺を選べ』って言ってもらえなくてショックなんだ」
「なっ……⁉」
あまりにびっくりしすぎて言葉が出てこない。
なんでわかったの⁉
「あらぁ、図星ですか?」
ヒヨちゃんが、にやりとする。
「だったらさ、若葉が選べばいいだけの話じゃない?」
「わたしが?」
佐治くんは、なにも言わずに、わたしを置いて行っちゃったんだよ?
わたしが選んだりしたら、きっと迷惑だよ。
それに、わたしが選ばなければ、佐治くんはボディガードの仕事なんかしなくてもよくなるってことで。そしたら、危ない目にだって遭わなくてすむ。
そしたら、普通の中学生として、学校生活だって普通に楽しめるようになるんだよ?
部活に入ったり……彼女と放課後デートしたり。
でも、わたしたちの唯一の接点がなくなってしまったら、わたしのそばにいる理由だってなくなっちゃうってことで。
そしたら、もう一緒にはいられないんだ。
それは……すごく寂しい。
だったら、ヒヨちゃんの言う通り佐治くんを選べば……。
ううん。それこそ、わたしのワガママ以外のなにものでもない。
一緒にいたいからとか、そんな理由で、佐治くんを選ぶわけにはいかないよ。
「痛っ」
一人で悶々と考えていたら、ヒヨちゃんにぺちっと軽くデコピンされた。
「ほらあ、そこが若葉の一番悪いとこ。ちゃんと自分の思ってることは言葉にしなくちゃ、相手に伝わらないよ?」
一番悪いとこ?
みんなに迷惑をかけないようにって。
いい子でいるためにって。
自分の気持ちは、できるだけ言葉にしないようにしてきたのに。
わたし、自分の思ってることを、我慢しないで言ってもいいの?
言った方がいいの?
「でも、わたしがそんなこと言ったら、佐治くんに迷惑――」
「ほらほら、またそういうこと言うんだからあ」
ヒヨちゃんが、胸の前で両腕を組んで両方のほっぺたを膨らます。
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「迷惑なわけないよ! すっごくうれしい」
「じゃあ、若葉は誰に『大好き』って伝えたい?」
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わたしのことを考えて、こうやって説教だってしてくれるヒヨちゃん以上に大好きな人なんて、いるわけないよ。
「それはちょっと普通にテレるんだけど。じゃあさ、他に言いたい人は?」
お父さん。お母さん。それに……。
なんでこんなときに佐治くんの顔が思い浮かんじゃうんだろ。
でも……ヒヨちゃんのことが『大好き』っていうのと同じくらい、佐治くんにも『大好き』を伝えたい。
恋愛的なものとはちがうかもだけど、それでも『大好き』って気持ちにはちがいないから。
「ごめんね、ヒヨちゃん。わたし、ちょっと行ってくる」
じっとしていられなくなって、わたしは教室を出ていく佐治くんの背中を追った。
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