46 / 162
第1部 第5章 最高の仲間たち -製造準備-
第46話 不正事業者として登録を抹消いたします
試作装置第一号は大成功だったが、反省点がないわけでもない。
あのあとも装置はコップの生産を続けたが、途中から新素材が充分に固まらなくなってしまったのだ。
装置を停止させ、すぐ原因を調べた。
「たぶん、原因は熱だ。ほら、金型がすごく熱くなってる」
「融けた新素材の熱が、金型に溜まってしまったのですね」
ソフィアの言うとおりだ。金型が冷たいうちは短時間で固まるが、新素材の熱を何度も受けて加熱された金型の中では、固まりきれなかったのだろう。
「う~ん、冷却待ちの時間、もっと伸ばしておく?」
「それでは、この生産の速さを殺すことになってしまう。あまりにもったいない」
ノエルの提案にはアリシアがすぐ難色を示す。おれも同意見だ。
「それなら金型も、一定の温度を保てるように冷やしてしまいましょう」
おれは思わずソフィアを見遣った。ソフィアはそんなおれを見て、首を傾げる。
「難しいでしょうか?」
「いや……おれも同じこと考えてたから」
「それは……なんだか嬉しいです」
微笑むソフィアの瞳に吸い込まれそうになる。それだけで幸せな気持ちになる。
「うん、嬉しいな……。あ、でも……さっきはごめん」
「なにが、ですか?」
「いやほら、急に抱きついちゃったりして、さ。君にはその、他に好きな人がいるのに、迷惑だっただろ?」
「そんなことはありません。喜びを分かち合えて嬉しかったです」
「そうそう、喜びは分かち合いましょ~♪ ってことで、はい、次アタシの番」
横から割って入ったノエルが、にっこりと笑って両手を広げる。
「ではその次は私かな?」
アリシアも微笑んで、ノエルの隣で同じようにポーズを取る。
「えっと、抱きつけってこと?」
「分かち合うんでしょ~? はやくはやくぅ~♪」
「そういう茶化し方は勘弁してよ……」
◇
数日後。おれたちはガルベージ家の家人にも、装置をお披露目することになった。
主人であるアリシアが何を作っているのか不明で、心配している様子だったからだ。
この先、彼らに生産を手伝ってもらうこともあるだろうから、ここで見せておくのはちょうどいい。
試作品のコップが一分弱で次々に作り出されていく様に、家人たちは驚き、ざわめき、あるいは畏怖の表情を見せていた。
「新素材を射出して金型で成形するから、おれたちはこの技術を射出成形と名付けた。装置は射出成形装置とでも呼べばいいかな。資料にまとめたから、今後のために目を通しておいて欲しい」
そうしてお披露目会は解散となる。
家人を代表して、ばあやが資料を受け取ってくれた。
しかしばあやは、どこか憂鬱な様子だった。資料を開いて中を一度は確認するが、すぐに閉じて脇に抱えてしまう。
「ばあや? どうかしたのか?」
アリシアがすぐ声をかけるが、ばあやは目をつむって小さく首を振る。
「なんでもございませんよ」
「そんなことはないだろう? どれだけ一緒に暮らしてきたと思っている。なにか不安なことがあるのなら話してくれ」
ばあやは迷うような沈黙のあと、俯きがちに答える。
「……では、のちほど屋敷で」
しかし屋敷に帰ってみると、珍しく来客があって、アリシアはばあやと話をすることができなかった。
来客は数人の従者を連れた、初老の男性貴族だ。
シルクハットをかぶり、片眼鏡をつけている。よく手入れされたカイゼル髭。黒いスーツに、赤いネクタイ。白い手袋をして、ステッキを携えている。
「これはこれはアリシア殿。お忙しいご様子ですな」
「ヒルストン卿。ご連絡をいただければお迎えにあがりましたのに。すぐ家人に準備をさせます。紅茶でも……」
「いや結構。こんな埃臭い屋敷では息が詰まって、どんな上手い茶でも不味くなりますからな。今日は挨拶だけで、早々に退散させていただきますよ」
「そうですか。それで挨拶とは?」
「この度、新技術推進協会の監査官に就任いたしましてな。確かアリシア殿も、なにやら怪しげな者共を集め、参加しておりましたでしょう? よしなに、お願いいたします」
「ご丁寧にありがとうございます。しかし訂正させていただきたい。私の仲間は決して怪しくはない。みな優秀で素晴らしい者たちです」
「ほう、それが本当なら良いのですがね。近頃は、協会から与えられる補助金や特権を目当てに、新技術開発の意志もなく登録する怪しげな事業者が増えているのです」
「それは確かに由々しき事態です」
「そこで通達いたしますよ、アリシア殿。今日より三ヶ月以内に、確かな成果物を提出できない場合は、不正事業者として登録を抹消いたします」
「三ヶ月!? 期限は二年は設けられていたはずでは?」
「ええ、変更させました。不正事業者どもを排除するためです」
「あまりに急です。しかも短すぎる」
「そうですかね? 私は鍛冶をさほど知りませんが、まあ、新技術など真剣にやれば半年で形になるものでしょう?」
「知らないのになぜそう言い切れるのですか」
「とにかく三ヶ月です。きちんと我が国の輸出品として使える成果物でなければ、認められませんからね。では失礼」
「ヒルストン卿!」
背中を向けたヒルストンは、立ち止まり振り返る。
「ときにアリシア殿、魔物の被害でお困りではありませんかな?」
「……? いえ、領内は平穏無事ですが」
「それは結構。もしお困りになられましたら、いつでも我が家をお頼りください。もっとも、そのようなことがあれば、最低限の領地を治める力量もないと、またお咎めを受けるかもしれませんがな」
はははははっ、と笑いながらヒルストンは去っていく。
アリシアの抗議を完全に無視したまま……。
あのあとも装置はコップの生産を続けたが、途中から新素材が充分に固まらなくなってしまったのだ。
装置を停止させ、すぐ原因を調べた。
「たぶん、原因は熱だ。ほら、金型がすごく熱くなってる」
「融けた新素材の熱が、金型に溜まってしまったのですね」
ソフィアの言うとおりだ。金型が冷たいうちは短時間で固まるが、新素材の熱を何度も受けて加熱された金型の中では、固まりきれなかったのだろう。
「う~ん、冷却待ちの時間、もっと伸ばしておく?」
「それでは、この生産の速さを殺すことになってしまう。あまりにもったいない」
ノエルの提案にはアリシアがすぐ難色を示す。おれも同意見だ。
「それなら金型も、一定の温度を保てるように冷やしてしまいましょう」
おれは思わずソフィアを見遣った。ソフィアはそんなおれを見て、首を傾げる。
「難しいでしょうか?」
「いや……おれも同じこと考えてたから」
「それは……なんだか嬉しいです」
微笑むソフィアの瞳に吸い込まれそうになる。それだけで幸せな気持ちになる。
「うん、嬉しいな……。あ、でも……さっきはごめん」
「なにが、ですか?」
「いやほら、急に抱きついちゃったりして、さ。君にはその、他に好きな人がいるのに、迷惑だっただろ?」
「そんなことはありません。喜びを分かち合えて嬉しかったです」
「そうそう、喜びは分かち合いましょ~♪ ってことで、はい、次アタシの番」
横から割って入ったノエルが、にっこりと笑って両手を広げる。
「ではその次は私かな?」
アリシアも微笑んで、ノエルの隣で同じようにポーズを取る。
「えっと、抱きつけってこと?」
「分かち合うんでしょ~? はやくはやくぅ~♪」
「そういう茶化し方は勘弁してよ……」
◇
数日後。おれたちはガルベージ家の家人にも、装置をお披露目することになった。
主人であるアリシアが何を作っているのか不明で、心配している様子だったからだ。
この先、彼らに生産を手伝ってもらうこともあるだろうから、ここで見せておくのはちょうどいい。
試作品のコップが一分弱で次々に作り出されていく様に、家人たちは驚き、ざわめき、あるいは畏怖の表情を見せていた。
「新素材を射出して金型で成形するから、おれたちはこの技術を射出成形と名付けた。装置は射出成形装置とでも呼べばいいかな。資料にまとめたから、今後のために目を通しておいて欲しい」
そうしてお披露目会は解散となる。
家人を代表して、ばあやが資料を受け取ってくれた。
しかしばあやは、どこか憂鬱な様子だった。資料を開いて中を一度は確認するが、すぐに閉じて脇に抱えてしまう。
「ばあや? どうかしたのか?」
アリシアがすぐ声をかけるが、ばあやは目をつむって小さく首を振る。
「なんでもございませんよ」
「そんなことはないだろう? どれだけ一緒に暮らしてきたと思っている。なにか不安なことがあるのなら話してくれ」
ばあやは迷うような沈黙のあと、俯きがちに答える。
「……では、のちほど屋敷で」
しかし屋敷に帰ってみると、珍しく来客があって、アリシアはばあやと話をすることができなかった。
来客は数人の従者を連れた、初老の男性貴族だ。
シルクハットをかぶり、片眼鏡をつけている。よく手入れされたカイゼル髭。黒いスーツに、赤いネクタイ。白い手袋をして、ステッキを携えている。
「これはこれはアリシア殿。お忙しいご様子ですな」
「ヒルストン卿。ご連絡をいただければお迎えにあがりましたのに。すぐ家人に準備をさせます。紅茶でも……」
「いや結構。こんな埃臭い屋敷では息が詰まって、どんな上手い茶でも不味くなりますからな。今日は挨拶だけで、早々に退散させていただきますよ」
「そうですか。それで挨拶とは?」
「この度、新技術推進協会の監査官に就任いたしましてな。確かアリシア殿も、なにやら怪しげな者共を集め、参加しておりましたでしょう? よしなに、お願いいたします」
「ご丁寧にありがとうございます。しかし訂正させていただきたい。私の仲間は決して怪しくはない。みな優秀で素晴らしい者たちです」
「ほう、それが本当なら良いのですがね。近頃は、協会から与えられる補助金や特権を目当てに、新技術開発の意志もなく登録する怪しげな事業者が増えているのです」
「それは確かに由々しき事態です」
「そこで通達いたしますよ、アリシア殿。今日より三ヶ月以内に、確かな成果物を提出できない場合は、不正事業者として登録を抹消いたします」
「三ヶ月!? 期限は二年は設けられていたはずでは?」
「ええ、変更させました。不正事業者どもを排除するためです」
「あまりに急です。しかも短すぎる」
「そうですかね? 私は鍛冶をさほど知りませんが、まあ、新技術など真剣にやれば半年で形になるものでしょう?」
「知らないのになぜそう言い切れるのですか」
「とにかく三ヶ月です。きちんと我が国の輸出品として使える成果物でなければ、認められませんからね。では失礼」
「ヒルストン卿!」
背中を向けたヒルストンは、立ち止まり振り返る。
「ときにアリシア殿、魔物の被害でお困りではありませんかな?」
「……? いえ、領内は平穏無事ですが」
「それは結構。もしお困りになられましたら、いつでも我が家をお頼りください。もっとも、そのようなことがあれば、最低限の領地を治める力量もないと、またお咎めを受けるかもしれませんがな」
はははははっ、と笑いながらヒルストンは去っていく。
アリシアの抗議を完全に無視したまま……。
あなたにおすすめの小説
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな
・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー!
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。
だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。
なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!
《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。
そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!
ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!
一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!
彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。
アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。
アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。
カクヨムにも掲載
なろう
日間2位
月間6位
なろうブクマ6500
カクヨム3000
★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!