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一章
27.敵か味方か2
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そう言って笑ったセシリアを見て、アルベルトは眉を寄せた。
セシリアの言葉にはいそうですか、などと簡単に頷けるはずもなく、しかしだからと言って違うなどと勝手に決めつけることもしない。
アルベルトはその言葉の真意を見極めようとその先を続けるように促した。
「まあ、二人に疑われたままでも良かったんだけれどね?けれどレオンハルト様から手を貸してあげてって言われちゃったからさ」
ひょっとして、とアルベルトは一つの予想を立てる。
「……レオンハルトって第二王子のことか?」
それ以外に何があるのと言いたげな表情でセシリアが頷く。
「私はレオンハルト様の〝影〟だから」
そしてアルベルトの予想通りの答えが返って来た。
そんなこと一言も言ってなかったと少しだけレオンハルトへ不満を抱きながら、そういうことかと頷いた。
しかし、まだ信用は出来ない。
もしかしたら嘘を言っている可能性だってまあ、僅かではあるがあるかもしれないのだ。
「レオンハルト殿下の配下だという証拠は?」
「本当に疑い深いのねぇ、貴方って」
しみじみとセシリアが呟く。
用心深いことは騎士として当たり前なのかしらね?と特に関係のない感想を漏らしながら懐から一枚の書状を取り出した。
そして、それをアルベルトへと放り投げる。
「レオンハルト様の直筆よ」
貴方なら分かるでしょう?と問われ、アルベルトは静かに頷いた。
そして受け取った書状を丁寧に開く。
ミルフィとアルへ
僕の〝影〟は有能だろう?公爵に近付けるよう、きちんと君たちが警戒するような素晴らしい演技をしてくれていたはずだから、二人共……いや、少なくともアルはきっとセシリアの話だけを聞いても疑うだろうなぁ、と思ってこの手紙をセシリアに託したんだ。僕の直筆であることくらい、二人なら簡単に分かるだろうしね。
さて、手短に纏めておくよ。ミルフィには直接動くなと言われたからこうしてセシリアに色々探ってもらいがてら、こっそりと情報を嗅ぎまわっていたんだけれど新たに有益な情報を手に入れたからこの際セシリアの手に入れていた情報も一緒に二人に提供しておこうかと思って。多分この証拠だけでも充分に公爵を捕らえられるだろうとは思うけれど、どうせならその後ろにいる奴らも釣っておきたいだろう?
とりあえずは渡しておくからそれをどう活用するかはそっちでやってくれ。
では、健闘を祈っているよ。
レオンハルト
手紙を一通り読み終えると、アルベルトは溜め息をつく。
「……たしかに、レオンの字だ」
レオンハルトを愛称で呼んだアルベルトは、手紙の最後の方で脱力しかけた。
(つまり、証拠は渡すからあとはよろしくということか……)
要は、後処理含むこれからのことを全て此方へ丸投げしたということだ。
自分の管理下にある家のことだろうと呆れてしまう。
「まあ、そういうことだから、私は今は貴方達の敵になることはないのよ?」
その言葉の裏に込められた意味を理解したアルベルトは、苦虫を噛み潰したような表情になった。
「今は、か」
その呟きを拾ったセシリアは、しかしなんの反応も示すことなく壁に固定されている本棚へとむかって行った。そしてその中から一冊の本を取り出すと、どこからともなく鍵を取り出して、そして本に取り付けられていた南京錠へと指した。
鍵を回すとカチリ、と小気味良い音がなり、そして本が開く。
本の中は空洞だった。そしてその中にいくつかの紙が入っていた。
「これがレオンハルト様から預かっていた証拠の書類」
その紙を手にしたセシリアがアルベルトへと近付いてきて、そしてその近くにあった机の上に置く。
「そしてこっちが私からの情報」
次にエプロンの裏に潜ませていた書類を机の上に置いた。
それを手にしたアルベルトは簡潔に礼を述べるとそれらにさっと目を通してすぐさま自らの懐へと仕舞い込んだ。
「私からは以上よ。何か質問はある?」
「殿下には話してあるのか?」
「ミリアちゃんに?いいえ、話してないわよ?」
その言葉を聞いてアルベルトはじゃあなんで俺だけ今話されたんだと疑問に思う。
「まあ、ミリアちゃんは確信が付いているわけではないけれど、私にどこか違和感を感じているみたい」
自力でミリアちゃんの場合は私の正体に気付きそうな感じなのよね、とセシリアは続けて言う。
「それに旦那様って変なところで勘がいいから、ミリアちゃんが旦那様と話している隙に話しておいた方が暴露る確率が減るのよ」
そう言うわけだから話すなら今しかないと思って、と言うセシリアにアルベルトはそういうことかと納得した。
「なら、後で俺から殿下には話しておくことにする」
「そうして頂戴。それじゃあ、戻りましょうか」
いつものセシリアの様な笑みを浮かべて、アルベルトと来た道を戻っていく。
「そろそろミリアちゃんも部屋に戻っている頃だし、丁度良い時間になって良かったわ」
ほんの少しだけ安堵を滲ませた声音でセシリアが呟く。
廊下に出て、二人はミルフィの部屋へと進んで行った。
「ミリアちゃん、旦那様から手紙預かって来たー?」
部屋の中にいるであろうミルフィに話しかけながら扉を叩くが、中からは返事がなかった。
「ミリアちゃん?」
不思議そうにセシリアがもう一度中へと呼びかけるが、結果は同じ。
「おかしいわね……手紙を渡すだけだって旦那様言ってたから、もう戻って来ていてもおかしくない時間帯なのだけれど……」
「ミリアがどこかに寄るとは考えられないしな……」
どこにエドワードと裏で繋がっている人がいるか分からない場所で、迂闊な行動は最も避けている筈である。
それなのに部屋にいないとなるならば、ミルフィは一体どこにいるのだろうか。
「まだ執務室にいるとか?」
「だって手紙を受け取るだけよ?そんなのに十分以上かかる訳ないじゃない」
アルベルトの言葉を否定したセシリアだが、その後少し考える素振りを見せ、まさかと声を漏らした。
「え、嘘……流石にいくらなんでも早過ぎない?……いえ、でもミリアちゃんが平民だったらそんなこと気にしないかもしれないわね、……あの変態の場合は。……ああ、不味いわねこれは」
独り言を続けるセシリアに痺れを切らしたアルベルトが、何が不味いんだと訝しげにセシリアに尋ねた。
若干青ざめながらセシリアがアルベルトを見上げ、衝撃的な言葉を発した。
「ミリアちゃん、襲われてるかも……」
その言葉の意味をいまいち良く理解出来ずに、アルベルトは首を捻った。
セシリアの言葉にはいそうですか、などと簡単に頷けるはずもなく、しかしだからと言って違うなどと勝手に決めつけることもしない。
アルベルトはその言葉の真意を見極めようとその先を続けるように促した。
「まあ、二人に疑われたままでも良かったんだけれどね?けれどレオンハルト様から手を貸してあげてって言われちゃったからさ」
ひょっとして、とアルベルトは一つの予想を立てる。
「……レオンハルトって第二王子のことか?」
それ以外に何があるのと言いたげな表情でセシリアが頷く。
「私はレオンハルト様の〝影〟だから」
そしてアルベルトの予想通りの答えが返って来た。
そんなこと一言も言ってなかったと少しだけレオンハルトへ不満を抱きながら、そういうことかと頷いた。
しかし、まだ信用は出来ない。
もしかしたら嘘を言っている可能性だってまあ、僅かではあるがあるかもしれないのだ。
「レオンハルト殿下の配下だという証拠は?」
「本当に疑い深いのねぇ、貴方って」
しみじみとセシリアが呟く。
用心深いことは騎士として当たり前なのかしらね?と特に関係のない感想を漏らしながら懐から一枚の書状を取り出した。
そして、それをアルベルトへと放り投げる。
「レオンハルト様の直筆よ」
貴方なら分かるでしょう?と問われ、アルベルトは静かに頷いた。
そして受け取った書状を丁寧に開く。
ミルフィとアルへ
僕の〝影〟は有能だろう?公爵に近付けるよう、きちんと君たちが警戒するような素晴らしい演技をしてくれていたはずだから、二人共……いや、少なくともアルはきっとセシリアの話だけを聞いても疑うだろうなぁ、と思ってこの手紙をセシリアに託したんだ。僕の直筆であることくらい、二人なら簡単に分かるだろうしね。
さて、手短に纏めておくよ。ミルフィには直接動くなと言われたからこうしてセシリアに色々探ってもらいがてら、こっそりと情報を嗅ぎまわっていたんだけれど新たに有益な情報を手に入れたからこの際セシリアの手に入れていた情報も一緒に二人に提供しておこうかと思って。多分この証拠だけでも充分に公爵を捕らえられるだろうとは思うけれど、どうせならその後ろにいる奴らも釣っておきたいだろう?
とりあえずは渡しておくからそれをどう活用するかはそっちでやってくれ。
では、健闘を祈っているよ。
レオンハルト
手紙を一通り読み終えると、アルベルトは溜め息をつく。
「……たしかに、レオンの字だ」
レオンハルトを愛称で呼んだアルベルトは、手紙の最後の方で脱力しかけた。
(つまり、証拠は渡すからあとはよろしくということか……)
要は、後処理含むこれからのことを全て此方へ丸投げしたということだ。
自分の管理下にある家のことだろうと呆れてしまう。
「まあ、そういうことだから、私は今は貴方達の敵になることはないのよ?」
その言葉の裏に込められた意味を理解したアルベルトは、苦虫を噛み潰したような表情になった。
「今は、か」
その呟きを拾ったセシリアは、しかしなんの反応も示すことなく壁に固定されている本棚へとむかって行った。そしてその中から一冊の本を取り出すと、どこからともなく鍵を取り出して、そして本に取り付けられていた南京錠へと指した。
鍵を回すとカチリ、と小気味良い音がなり、そして本が開く。
本の中は空洞だった。そしてその中にいくつかの紙が入っていた。
「これがレオンハルト様から預かっていた証拠の書類」
その紙を手にしたセシリアがアルベルトへと近付いてきて、そしてその近くにあった机の上に置く。
「そしてこっちが私からの情報」
次にエプロンの裏に潜ませていた書類を机の上に置いた。
それを手にしたアルベルトは簡潔に礼を述べるとそれらにさっと目を通してすぐさま自らの懐へと仕舞い込んだ。
「私からは以上よ。何か質問はある?」
「殿下には話してあるのか?」
「ミリアちゃんに?いいえ、話してないわよ?」
その言葉を聞いてアルベルトはじゃあなんで俺だけ今話されたんだと疑問に思う。
「まあ、ミリアちゃんは確信が付いているわけではないけれど、私にどこか違和感を感じているみたい」
自力でミリアちゃんの場合は私の正体に気付きそうな感じなのよね、とセシリアは続けて言う。
「それに旦那様って変なところで勘がいいから、ミリアちゃんが旦那様と話している隙に話しておいた方が暴露る確率が減るのよ」
そう言うわけだから話すなら今しかないと思って、と言うセシリアにアルベルトはそういうことかと納得した。
「なら、後で俺から殿下には話しておくことにする」
「そうして頂戴。それじゃあ、戻りましょうか」
いつものセシリアの様な笑みを浮かべて、アルベルトと来た道を戻っていく。
「そろそろミリアちゃんも部屋に戻っている頃だし、丁度良い時間になって良かったわ」
ほんの少しだけ安堵を滲ませた声音でセシリアが呟く。
廊下に出て、二人はミルフィの部屋へと進んで行った。
「ミリアちゃん、旦那様から手紙預かって来たー?」
部屋の中にいるであろうミルフィに話しかけながら扉を叩くが、中からは返事がなかった。
「ミリアちゃん?」
不思議そうにセシリアがもう一度中へと呼びかけるが、結果は同じ。
「おかしいわね……手紙を渡すだけだって旦那様言ってたから、もう戻って来ていてもおかしくない時間帯なのだけれど……」
「ミリアがどこかに寄るとは考えられないしな……」
どこにエドワードと裏で繋がっている人がいるか分からない場所で、迂闊な行動は最も避けている筈である。
それなのに部屋にいないとなるならば、ミルフィは一体どこにいるのだろうか。
「まだ執務室にいるとか?」
「だって手紙を受け取るだけよ?そんなのに十分以上かかる訳ないじゃない」
アルベルトの言葉を否定したセシリアだが、その後少し考える素振りを見せ、まさかと声を漏らした。
「え、嘘……流石にいくらなんでも早過ぎない?……いえ、でもミリアちゃんが平民だったらそんなこと気にしないかもしれないわね、……あの変態の場合は。……ああ、不味いわねこれは」
独り言を続けるセシリアに痺れを切らしたアルベルトが、何が不味いんだと訝しげにセシリアに尋ねた。
若干青ざめながらセシリアがアルベルトを見上げ、衝撃的な言葉を発した。
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