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一章
22.優しい温もり
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暫く泣き続けて私も漸く涙も出なくなってきた頃、ノアは泣き疲れてしまったのか、私の腕の中で静かに寝息を立てつつあった。
「……起こさないように運んであげて」
私はそっとノアから腕を外すと、近くに控えていたメイドに寝室に運ぶように、とノアを渡した。
まだ五歳だもんね。あれだけ泣いたら泣き疲れて寝ちゃうよね。
「リリー」
ふと、今まで静かに私たちの様子を見守っていたミルが私を呼んだ。
その声に私が振り向くと、ミルの手が伸びてくる。
そして、そっと私の頬を拭った。
そんなミルの行動に、私は不思議に思って首をかしげてみせる。
「何かついてた?」
「……はぁ、自分で気付いてないの?」
「え?」
「ミル、リリーはそういうやつだ」
「ちょっと、お兄様それどういう意味ですか?」
ミルが呆れた様子で、お兄様は肩を竦めてみせて。そして二人して苦笑した。
そんな二人の様子に、私は益々訳が分からなくなる。
そういうやつってどういうことよお兄様。
一人だけ話についていけずについむくれてみせると、お兄様が更に笑を深めて私に告げた。
「リリー、泣いてるんだよ?それもノアと同じくらいには」
「え?泣いてる……?」
自分の頬に手を当ててみて、そして私はお兄様の言う通り泣いていたことにようやく気が付く。
「なんで自分のことなのに分かってないんだよ」
やれやれと言った様子でミルが言葉を零す。そうしながら、固まっていた私の頬に手巾を当てた。
暫く全ての思考が停止していた私はようやく我に返ると、自然と笑いがこみ上げてきた。何故だろうか。
自分でもその理由は分からなかった。けれど、何故だか笑いがこみ上げてきてしまったのである。
「ふ、ふふふ……」
「リリー?」
ミルもお兄様も、そんな私を訝しげに見つめてくる。
でも私もなんで笑ってしまっているのかが本当に分からなくて、首を横に振ってなんでもないのと答えた。
「ごめん、何でもないの……ふふっ……」
「……はぁ……取り敢えずこんなものでいいか」
それでも笑ってる私にミルは溜め息をつきつつ、そのまま私の頬に伝っていた涙を拭き取ってくれる。
「ごめんね、ミル。ミルの手巾汚れちゃったね」
「別にこれくらい気にしなくていいよ」
「ノア、これで全部吐き出してくれていればいいんだけどな」
「そうだね。……そうしたら、ちょっとは気を張らなくなるかな?」
「多分……きっと」
お兄様もミルも曖昧だなぁ。
まあでも、私達にノアの気持ちが分かるわけ無いからその反応がきっと正しいのだろうけれども。
「目、真っ赤。リリーもリリーで泣きすぎだから」
「えへへ……」
「また明日、ノアに会いに来ても大丈夫?俺ももう少し打ち解けて欲しいし」
あと心配だから、と言われると私が断る理由はなかった。
私はミルの言葉に二つ返事で承諾する。
「といっても、明日ノアが会うって言わない限りは無理なんだけれどね……」
もしかしたらこのあと私も会えないかもしれないなぁ。
色々とぶっちゃけた話をしちゃってたし、ノアだって知られたくないなって思っていることまで話しちゃったような気がするし……
へにゃりと私が情けない顔をしていると、ミルに頭を撫でられた。
……子供扱いされてる。
同い年、いや、精神年齢で言うと私の方が年上なんだけれど……。
でも、まあいいや。ミルの手はとても温かくて、心地良いから。
だから、今日は大人しく撫でられていよう。
「……本当に、ミルがお兄ちゃんみたいに思えてくるよ」
「俺には手のかかる妹にしか見えないよ」
そう言ってミルもふっと微笑んだ。
すると、すかさずお兄様が存在を主張するかのように声を上げる。
「リリー、君の兄はここにいるけれど?」
「勿論、お兄様もお兄様だと思ってるよ?」
そんなこと知ってるわよ。お兄様は、攻略対象者である以前に私の血の繋がった唯一のお兄様なんだから。
そんな思いを裏に込めて私が告げると、セシルお兄様は肩を竦めて笑ってみせた。
「じゃあ、今日のところは俺も帰るよ。また明日来るから」
「うん。じゃあまた明日ね」
少しの間そのまま頭を撫でられていた私は、ミルの言葉と下ろされた手に少しだけ名残惜しさを感じながらも頷いた。
「……起こさないように運んであげて」
私はそっとノアから腕を外すと、近くに控えていたメイドに寝室に運ぶように、とノアを渡した。
まだ五歳だもんね。あれだけ泣いたら泣き疲れて寝ちゃうよね。
「リリー」
ふと、今まで静かに私たちの様子を見守っていたミルが私を呼んだ。
その声に私が振り向くと、ミルの手が伸びてくる。
そして、そっと私の頬を拭った。
そんなミルの行動に、私は不思議に思って首をかしげてみせる。
「何かついてた?」
「……はぁ、自分で気付いてないの?」
「え?」
「ミル、リリーはそういうやつだ」
「ちょっと、お兄様それどういう意味ですか?」
ミルが呆れた様子で、お兄様は肩を竦めてみせて。そして二人して苦笑した。
そんな二人の様子に、私は益々訳が分からなくなる。
そういうやつってどういうことよお兄様。
一人だけ話についていけずについむくれてみせると、お兄様が更に笑を深めて私に告げた。
「リリー、泣いてるんだよ?それもノアと同じくらいには」
「え?泣いてる……?」
自分の頬に手を当ててみて、そして私はお兄様の言う通り泣いていたことにようやく気が付く。
「なんで自分のことなのに分かってないんだよ」
やれやれと言った様子でミルが言葉を零す。そうしながら、固まっていた私の頬に手巾を当てた。
暫く全ての思考が停止していた私はようやく我に返ると、自然と笑いがこみ上げてきた。何故だろうか。
自分でもその理由は分からなかった。けれど、何故だか笑いがこみ上げてきてしまったのである。
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でも私もなんで笑ってしまっているのかが本当に分からなくて、首を横に振ってなんでもないのと答えた。
「ごめん、何でもないの……ふふっ……」
「……はぁ……取り敢えずこんなものでいいか」
それでも笑ってる私にミルは溜め息をつきつつ、そのまま私の頬に伝っていた涙を拭き取ってくれる。
「ごめんね、ミル。ミルの手巾汚れちゃったね」
「別にこれくらい気にしなくていいよ」
「ノア、これで全部吐き出してくれていればいいんだけどな」
「そうだね。……そうしたら、ちょっとは気を張らなくなるかな?」
「多分……きっと」
お兄様もミルも曖昧だなぁ。
まあでも、私達にノアの気持ちが分かるわけ無いからその反応がきっと正しいのだろうけれども。
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「えへへ……」
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「といっても、明日ノアが会うって言わない限りは無理なんだけれどね……」
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……子供扱いされてる。
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でも、まあいいや。ミルの手はとても温かくて、心地良いから。
だから、今日は大人しく撫でられていよう。
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