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第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
科学のムラ2
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「うひゃー、海だー! これ、全部水なの!? あと、砂がこんなにいっぱい!」
初めて海を見たヒメちゃんははしゃいでいる。
(なんか、俺の世界の海とは違うな……)
地平線まで広がる海の色は暗く、水底もほとんど見えない。この世界の空はほとんど曇り空だから、自然それを反映した色に染まってしまうのだろう。
「ほう、どんなふうに違うんじゃ」
(もっと色が青かったし、透明で綺麗だった。こっちの世界の海はこんなもんか?)
「そうじゃのう。いつもこんな感じじゃ」
俺の傍にいるディエスがそう答える。
解剖どころか、俺の身体には触れられないことを知ったディエスは非常に残念そうにしていた。そんなに俺のことを解剖したかったのか。身体が無くてよかった。いや、そもそも普通の身体だったら解剖しようと思わないか。
「いや、そんなことはないぞ。異世界の住人というだけで興味津々じゃ」
本当に、身体が無くて良かった。
ディエスの案内に従って、俺達は海に到着した。その間にディエスから大量の質問責めを受けた。俺のこと、俺の世界のこと、俺がこの世界に来てからのこと。面倒くさいから途中から適当に答えてた気がする。
「ふむ……。お主のような存在は聞いたこともないの」
やはりディエスも俺みたいな奴は知らない。当然と言えば当然か。今の俺の状態は、神様の不思議パワーによるものだ。ただ、対外的には、俺はなんでこの世界にいるのか、どうしてこの身体になってしまったのか分からないという体をとっている。この設定を通さないと死神さんにミジンコへ強制転生させられてしまうからな。それは嫌だ。
「それでは行ってくる」
ゴーグルを装着し、袋状の網を携えた水着のマッドはそう言うと、そのまま海に突進していった。貝を獲ってくるらしい。女性陣は砂浜で、取り寄せしたバーベキューセットのセッティングをしている。彼女らは普段着で、水着ではない。なぜ海の正装をしないのか。
「だって、海水に浸かるの嫌なんだもん」
(でもほら、ヒメちゃんに泳ぎを教えたりとか……)
「? 何言ってるの、悪霊さん。泳げるわけないじゃん」
「ああ、セミルは金槌なのか。仕方ない、ノーコちゃん、ヒメちゃんに泳ぎを教えてやってくれるか? 身につけておいたほうがいいだろう」
「だから、泳げないって、私もヒメもノーコちゃんも。魚じゃあるまいし、みんな沈むんだから」
ん? この意思疎通の不具合は覚えがあるな。どこか前提が食い違っているようだ。
確認すると、この世界のニンゲンすべて泳げないことが分かった。海に入ると浮かずに沈むらしい。比重が海水よりはるかに大きいのだろうか。息を吸いこんでから海に入ってもあっけなく沈むようだ。
「なるほどの。お主の元いた世界の人間は、木の葉のように身体が軽いんじゃな。それで水に浮くということか」
(まあ、そんな感じ)
厳密には違うんだけど、説明めんどうだしそれでいいや。不死故に呼吸は不要とのこと。ということは、マッドは現在海底の底を歩きながら貝を漁っているということか。楽でいいな。そう思ってたらマッドが戻ってきた。
「大漁だぞー!」
網の中には見たことある物からよく分からないない物まで、様々な貝がひしめいていた。
それを編みの上で焼き、取寄せしたよくわからない調味料をかけてみんなで食べ始める。
「んー! 美味しいねこれ!」
「やっぱ採れたてだね!」
「博士、ありがとうございます」
(これは取寄せできないのか?)
「生物は無理だな」
「わしも相伴に預かるとするかの」
みんなでわいわいと、海の幸を頂く。もちろん俺は見てるだけしかできないが、もはや慣れたな。幾多の食事風景を何も食べずに過ごしていたことで俺は不動の精神を手に入れた。だが、視界に入るとちょっと気になるので、海を見続けることにしよう。ちょっと色が濁っているとはいえ、海は海だ。心が安らぐ。
(海かー。この海の向こうには何があるんだろうな……)
「海しかないよ」
貝を啜りながらセミルが言う。
(海しかって、ずっと?)
「ずっと。ぐるっと回って、この大陸の反対に行き着くだけ」
(この世界は海ばっかりなのか?)
「そうだな悪霊氏。地図上ではほとんど海だ。実際に船で海を横断し、大陸の反対側まで到達した者もいる。数年かかったらしいがな」
「あ、それアーカイブで読んだことある」
(歩きでは無理なのか?)
「起伏も多く、海流が激しいらしくてな。船のほうがはるかに楽だそうだ」
(なるほど。海底には何もないのか? 古代文明の遺跡とか)
「今の所、発見されてないの。海は濁っていて視界が悪いんじゃ。一応、儂の知り合いの何人かが調査しているがの。よくわからない錆びた物体や文字の刻まれた石片ぐらいで、まとまな遺跡や施設なんかは見つかっておらん。なんじゃ、悪霊。お主、海に興味があるのか?」
(いや、海にはあまり興味はないな……)
どちらかといえば、この世界について興味がある。この世界の住人は泳げないほど重く不死であるが、その形は俺の元いた世界の人間によく似てる。建物も全く似ていないものもあれば、非常によく似た物もある。これはつまり、俺の世界とこの世界は関わりがないとは言い切れないということ。
また、インフラや端末には非常に高度なテクノロジーが使われてるけど、そのテクノロジーは今や失われている。ヒトの住む大陸はここだけで、海には他に大陸もなく、世界の人口はかなり少ない。まるで、このヒトが住む世界だけ、閉じて切り離されているような印象を受ける。
「まあ、お主の言いたいことは分からんでもない。この世界の成り立ちに誰かの意思や意図が関わっているのは間違いなかろう。自然にこの状態になるとは思えん」
貝を頬張りながディエスが言う。
「とはいえ、この世界には謎が満ちている。それを解き明かそうと思うとそれだけでワクワクする。儂にはそれで十分じゃ。どうじゃ悪霊、このムラで暮らさんか? お主の世界の知見とその志さえあれば、無限の時を生きたとて退屈はせんぞ? 世界旅行が終わったあとでも構わんからの。もしかしたら、お主のルーツを探れるかもしれん」
(んー、そうだな……)
俺はちらりとセミルとヒメちゃんを見る。
(今はこの暮らしが楽しいからな。遠慮しておく)
「なんじゃ、振られてもうたわい。まあ、たまには遊びに来るといい」
「気が向いたらな」
世界旅行が終わったあとのことを考える。このペースだとミッションである友達20人達成はできているか微妙なところ。達成できたら次の世界に行くし、できなくてもまた友達探しをしなくてはならないので、ディウスの誘いは断るしかない。ユリカとの約束もあるし。
貝を食べ終わった後、俺達は妖精さんの出現ポイントに向かった。バーベキューセットはフィッターが片付けてくれるので心配要らない。
さっき行ったポイントとは別の3箇所を周るが、結局妖精さんの声は聞けずじまいだった。これらのポイントは聞けるときと聞けないときがあるらしく、今回は不運だった模様。残念である。また新しい発見があるかとも思ったが、なかなかうまくいかないようだ。そういえばマッドはずっとノーコちゃんの手を握ってた。彼女を心配してのことだろう。こっちはずっとディエスの相手をしていたのに、イチャイチャしやがって。マッドだけ滑落してついでに爆発した後グランに蹴り飛ばされればいいのに。
ムラに戻る途中でライゼ達と合流した。今日の地下施設の調査は終了のようだ。
「どうもディエス爺。妖精さんとは会えましたか?」
「だめじゃったの。まあ、そういうときもある。ところで、お主らは何をやっとったんじゃ?」
「ああ、崖の妖精出現ポイントで、地下施設を発見しましてね。その調査ですよ」
「は? 地下施設?」
「ええ、彼女が午前中に発見しましてね。いやあ、すごかったですよ」
「な、なななっ、何で儂を誘ってくれなかったのじゃ!」
「だってディエス爺、寝てたじゃないですか。それに、悪霊さんと会いたかったんでしょ」
「そうはそうじゃが、そっちにも行きたかったぞ! 前人未到の地下施設なんじゃろ!? あー、儂が真っ先に踏み入りたかった! 誰も知らないその匂いと手触りを感じたかった! 悪霊さんなんてその辺で何日か待たせておけばいいんじゃ! どうせ逃げないし!」
(おい)
そんなこんなで、科学のムラ1日目は慌ただしく終了した。
初めて海を見たヒメちゃんははしゃいでいる。
(なんか、俺の世界の海とは違うな……)
地平線まで広がる海の色は暗く、水底もほとんど見えない。この世界の空はほとんど曇り空だから、自然それを反映した色に染まってしまうのだろう。
「ほう、どんなふうに違うんじゃ」
(もっと色が青かったし、透明で綺麗だった。こっちの世界の海はこんなもんか?)
「そうじゃのう。いつもこんな感じじゃ」
俺の傍にいるディエスがそう答える。
解剖どころか、俺の身体には触れられないことを知ったディエスは非常に残念そうにしていた。そんなに俺のことを解剖したかったのか。身体が無くてよかった。いや、そもそも普通の身体だったら解剖しようと思わないか。
「いや、そんなことはないぞ。異世界の住人というだけで興味津々じゃ」
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ディエスの案内に従って、俺達は海に到着した。その間にディエスから大量の質問責めを受けた。俺のこと、俺の世界のこと、俺がこの世界に来てからのこと。面倒くさいから途中から適当に答えてた気がする。
「ふむ……。お主のような存在は聞いたこともないの」
やはりディエスも俺みたいな奴は知らない。当然と言えば当然か。今の俺の状態は、神様の不思議パワーによるものだ。ただ、対外的には、俺はなんでこの世界にいるのか、どうしてこの身体になってしまったのか分からないという体をとっている。この設定を通さないと死神さんにミジンコへ強制転生させられてしまうからな。それは嫌だ。
「それでは行ってくる」
ゴーグルを装着し、袋状の網を携えた水着のマッドはそう言うと、そのまま海に突進していった。貝を獲ってくるらしい。女性陣は砂浜で、取り寄せしたバーベキューセットのセッティングをしている。彼女らは普段着で、水着ではない。なぜ海の正装をしないのか。
「だって、海水に浸かるの嫌なんだもん」
(でもほら、ヒメちゃんに泳ぎを教えたりとか……)
「? 何言ってるの、悪霊さん。泳げるわけないじゃん」
「ああ、セミルは金槌なのか。仕方ない、ノーコちゃん、ヒメちゃんに泳ぎを教えてやってくれるか? 身につけておいたほうがいいだろう」
「だから、泳げないって、私もヒメもノーコちゃんも。魚じゃあるまいし、みんな沈むんだから」
ん? この意思疎通の不具合は覚えがあるな。どこか前提が食い違っているようだ。
確認すると、この世界のニンゲンすべて泳げないことが分かった。海に入ると浮かずに沈むらしい。比重が海水よりはるかに大きいのだろうか。息を吸いこんでから海に入ってもあっけなく沈むようだ。
「なるほどの。お主の元いた世界の人間は、木の葉のように身体が軽いんじゃな。それで水に浮くということか」
(まあ、そんな感じ)
厳密には違うんだけど、説明めんどうだしそれでいいや。不死故に呼吸は不要とのこと。ということは、マッドは現在海底の底を歩きながら貝を漁っているということか。楽でいいな。そう思ってたらマッドが戻ってきた。
「大漁だぞー!」
網の中には見たことある物からよく分からないない物まで、様々な貝がひしめいていた。
それを編みの上で焼き、取寄せしたよくわからない調味料をかけてみんなで食べ始める。
「んー! 美味しいねこれ!」
「やっぱ採れたてだね!」
「博士、ありがとうございます」
(これは取寄せできないのか?)
「生物は無理だな」
「わしも相伴に預かるとするかの」
みんなでわいわいと、海の幸を頂く。もちろん俺は見てるだけしかできないが、もはや慣れたな。幾多の食事風景を何も食べずに過ごしていたことで俺は不動の精神を手に入れた。だが、視界に入るとちょっと気になるので、海を見続けることにしよう。ちょっと色が濁っているとはいえ、海は海だ。心が安らぐ。
(海かー。この海の向こうには何があるんだろうな……)
「海しかないよ」
貝を啜りながらセミルが言う。
(海しかって、ずっと?)
「ずっと。ぐるっと回って、この大陸の反対に行き着くだけ」
(この世界は海ばっかりなのか?)
「そうだな悪霊氏。地図上ではほとんど海だ。実際に船で海を横断し、大陸の反対側まで到達した者もいる。数年かかったらしいがな」
「あ、それアーカイブで読んだことある」
(歩きでは無理なのか?)
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(なるほど。海底には何もないのか? 古代文明の遺跡とか)
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(いや、海にはあまり興味はないな……)
どちらかといえば、この世界について興味がある。この世界の住人は泳げないほど重く不死であるが、その形は俺の元いた世界の人間によく似てる。建物も全く似ていないものもあれば、非常によく似た物もある。これはつまり、俺の世界とこの世界は関わりがないとは言い切れないということ。
また、インフラや端末には非常に高度なテクノロジーが使われてるけど、そのテクノロジーは今や失われている。ヒトの住む大陸はここだけで、海には他に大陸もなく、世界の人口はかなり少ない。まるで、このヒトが住む世界だけ、閉じて切り離されているような印象を受ける。
「まあ、お主の言いたいことは分からんでもない。この世界の成り立ちに誰かの意思や意図が関わっているのは間違いなかろう。自然にこの状態になるとは思えん」
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「気が向いたらな」
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さっき行ったポイントとは別の3箇所を周るが、結局妖精さんの声は聞けずじまいだった。これらのポイントは聞けるときと聞けないときがあるらしく、今回は不運だった模様。残念である。また新しい発見があるかとも思ったが、なかなかうまくいかないようだ。そういえばマッドはずっとノーコちゃんの手を握ってた。彼女を心配してのことだろう。こっちはずっとディエスの相手をしていたのに、イチャイチャしやがって。マッドだけ滑落してついでに爆発した後グランに蹴り飛ばされればいいのに。
ムラに戻る途中でライゼ達と合流した。今日の地下施設の調査は終了のようだ。
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「だめじゃったの。まあ、そういうときもある。ところで、お主らは何をやっとったんじゃ?」
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「は? 地下施設?」
「ええ、彼女が午前中に発見しましてね。いやあ、すごかったですよ」
「な、なななっ、何で儂を誘ってくれなかったのじゃ!」
「だってディエス爺、寝てたじゃないですか。それに、悪霊さんと会いたかったんでしょ」
「そうはそうじゃが、そっちにも行きたかったぞ! 前人未到の地下施設なんじゃろ!? あー、儂が真っ先に踏み入りたかった! 誰も知らないその匂いと手触りを感じたかった! 悪霊さんなんてその辺で何日か待たせておけばいいんじゃ! どうせ逃げないし!」
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