異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する

眠眠

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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜

パターンB +α

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 ふと視線を向けると、クリスは床に倒れる直前だった。

 ぷつんと糸が切れたように、クリスの身体は崩れ落ちる。

 ぱっぱ。 ぱっぱっぱ。 
 
 雨粒のように、血液が飛び散った。
 
 血。 血が。
 
 クリスの頭から、血が 溢れて止まらない。

「クリス……?」

 自分の口から、信じられないほどか細い声が出た。

 力が。 力が入らない。
 
 転がるように、クリスの傍に駆け寄る。
 
 赤い水が床に広がる。

 そっと、彼の身体に触る。

 まだ暖かい、まだ生きている。

 まだ、彼は助けられる。

「ク……」

 見開いたままの彼の眼は、

 光を失ったクリスの眼は、

 もはや私を映していなかった。

 人形のように 人形のように。

 命を失った、唯物のように。

 一、二、三。 

 三秒沈黙。

 動かない。不動。 動かない。

 まだ、クリスは助けられる。

 まだ、クリスを助けられる?
 
 きっと、多分。 だから、  まだーー

 視界が歪む。

 涙が滲む。

 涙が溢れて止まらない。

 光がぼやけてクリスの姿が見えなくなる。

 悪霊さんのように、彼の姿が見えなくなる。

 幽霊、死んだ人、死ぬ。死死死。

 悪霊さん、悪霊さん。

 窓の外。

「悪霊さん、クリスが……」

 瞬間、額に衝撃が来た。

 わけもわからず振り回される。

 ドッと、何かが落ちた。

 そんな音がした、気がする。


 瞳の奥に、窓が映っていた。

 ガラスが 欠けた窓だ。

 奥の奥。
 
 奥の奥の 奥の奥の 奥奥奥奥奥奥。

 三人 が 居た。

 あいつら が。

 奴らが……ッ!!

 視界の奥の、 奴らに バキリ  と。

 噛み締めた衝撃で歯が割れた。唇も裂けた。

 瞬く間に修復される。

 私の身体だったら、すぐに回復する。なのに・・・ーー

 クリスは 不動。

 クリスは 唯物。

 クリスはクリスはクリスはクリスはクリスはクリスクリスクリスクリスクリスクリスクリスクリス。 

 妙に 意識がハッキリしていた。

 遠くの奴らで 頭が一杯になる。

 ギリギリ ギリギリと。

 悲鳴を上げる。

 身体が割れる。

 私の中のどす黒い何かが叫ぶ。

 殺せ 殺せと。

 奴らを殺せと、のたうち回る

 守ると約束した。

 守ると誓った。

 何をおいても、この身に代えても

 この身に変えても

 この身に換えても

 だから・・・ だから。

 だから 私が

「全員 ぶっ殺してやる……ッ!」

 弾けたように 私は立ち上がった。


-------------------------------

 城壁を越えた向こう側。ヴェルニカの町並みを見下ろせる小高い丘の上に三人の男が居た。
 一人は身を伏せ、ライフルのスコープを覗き込んでいる。
 一人はその隣で、双眼鏡で遠くを見ている。
 もうひとりも武器を持ち、辺りを警戒していた。

「撃て」

 双眼鏡を持った男の指示で、ライフルが撃たれる。

「ヘッドヒット。」

 無感情な声が周囲に響いた。

「……さすがだな。この距離から当てるとは」
「ああ」
「……だが、遠すぎる。女は当然として、男の方も死んでないかもしれん」

 身を伏せた男はスコープ越しに窓を監視しつつ、注意深くそう言った。

「どちらにせよ、回収には向かう。そのときに留めをさせばいいさ」
「……そうだな」

 身を伏せた男は双眼鏡の男の言葉に同調し、立ち上がる。

「ふー、やれやれ。子供のオママゴトに付き合うのも大変だ」
「そう言うな。これが俺たちの仕事だ。ーーまあ、帝国軍第零軍団おれたちの手をここまで焼かせたんだ。子供にしては随分と粘ったほうだと思うがね」

 男は苦笑して、ライフルを片付け始める。

「……待て」

 その手は、双眼鏡を覗いていた男の指示で止まった。

「どうした?」

 しかし、双眼鏡の男は答えない。食い入るように双眼鏡の先を凝視している。

「待て待て待て待て! いくらでも回復する化物だとは聞いていたが……!」
「おい、どうした! 何があった!?」
こんな・・・、こんな化物だなんて、聞いてないぞ!! 全員この場から離れーー」

 二人の男が見ている前で、双眼鏡の男の頭部は果物のように弾けた。

 何がーーと、思う間もなく、残る二人の頭部も同様に弾ける。

 頭、胴、肩、腕、脚、腰、喉。

 次々に男たちの身体は四散し、またたく間に彼らは肉片へと姿を変えた。

  
 男たちだけでない。
 その数瞬で、ヴェルニカ周辺のモンスターが根こそぎ肉塊へと変えられた。
 帝国史上未だかつてない出来事にも関わらず、この事件についてを知るものは、ごく僅かな人物と、人ならざる者たちだけであった。
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