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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
誘拐作戦
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「皇帝ヴィルヘルム・フォン・マルステラを誘拐する」
いつになく真剣に眼差しで、それでいてアスカらしい悪い笑みを浮かべて、彼女は帝国への叛逆を宣言する。
レジスタンスメンバーの表情は変わらない。おそらく、彼らも一度は皇帝の誘拐を想像したのだろう。数の劣る自分たちが、黒幕と思しき皇帝から情報を得るには、乱暴だが一番手っ取り早い方法だ。もっとも、実際に誘拐するための障害はとてつもなく大きいが。
「……みんな、あんまり驚かねえな。予想通りってか? まあ、いいや。詳細は後にして、まず作戦概要を説明するぞ。誘拐のターゲットは3人。第一目標、皇帝ヴィルヘルム・フォン・マルステラ。第二目標、宰相ギルベルト・クラテンシュタイン。そして第三目標、第一皇女ソフィア・フォン・マルステラ。全員を同時に攫うのが理想だが、優先目標は今言った通りだ」
(え、姫様も誘拐するの?)
疑問の声が聞こえたのか、俺を見たアスカの話が止まる。
あ、やべ、話の腰折っちゃったかな。
「そうだな、悪霊。皇女もターゲットだ。皇帝と宰相はヴェルニカについて聞き出すため。第一皇女は次の保険のために誘拐する。第一目標の誘拐が失敗したら完全にこっちが賊軍になっちまうからな。皇女を擁立して立場を少しでも上げとかないと、たとえ武力で制圧できたとしてもそれで終わりだ。何も知らない民衆に石を投げられたくないだろ? 幸い皇女はクリスの友人で、しかもヴェルニカの件に不満がありそうだ。こちらに引き込まない手はない」
なるほど。情報を得るためだけが目的じゃないんだな。
俺はちらりとクリスくんを見る。特に動揺してる様子は見られない。彼も同意の上か、あるいはクリスくん本人が提案した作戦なのだろう。何も知らない姫様は、……まあ、どんまいである。
「皇帝と宰相のどちらかが真相を知っていると思うが、もしも知らなかったときは皇女と同じように味方につけるぞ。それができればこちらの勝利はほぼ確定だ。立場でも武力でも第零軍団を上回るからな。だから、万一にでも殺すんじゃねえぞ。皇女の擁立も難しくなる。納得したか、悪霊」
(分かった。わざわざ説明ありがとな)
「よし。悪霊以外にも疑問があるやつは今のうちに声出ししろよ。変なところで誤解があったりすると作戦成功に支障をきたすし、ブロードの効率も悪くなるからな」
アスカに別段イライラした様子は見られない。
怒られると思っていたので、少し安心した。
「アスカちゃん。お言葉に甘えて、少し聞いてもいいかしら」
「なんだ、アルーーいや、オメガ」
先頭で話を聞いていたアルファさんーーもとい、オメガさんが挙手する。アルと名前が被るので改名したらしい。凶悪な外見にピッタリの偽名だと思う。
「皇女の誘拐はクリスくんの情報あってのことと思うのだけど、信用できるのかしら? それと、同じ理由なら誘拐するのは第一皇子でもいいんじゃないかしら」
オメガさんはちらりとクリスくんを見て、そう尋ねる。
第一皇子は姫様のお兄さんだな。執務室で皇帝と一緒に仕事をしていたのを見たことがある。彼のひととなりは知らないけど、クリスくんのことが信用ならないのであれば、姫様でも皇子でも誘拐するのはどちらでも良いのでは、ということか。
「皇女についてはクリスの情報を鵜呑みにしたわけじゃない。ちゃんとこっちでも裏を取ってるから心配するな。まず間違いなく、皇女はヴェルニカの件に心を痛めている。皇子よりは味方に引き込みやすいはずだ。で、第一皇子の誘拐を見送ったのは、皇帝と宰相と皇子の3人を同時に誘拐すると、行政への影響がでかすぎると判断したからだ。2人でも十分大きいが、それでも政務経験の長い皇子が残るなら命令系統が混乱することはないだろ。まあ、あちらさんの予定はぐっちゃぐちゃになるだろうけど、世が糺される代償と思えば安いもんさ」
なあ、とアスカは意地悪い笑みでこちらに同意を求める。
「そういうこと。了解よ、アスカちゃん」
一方、質問したオメガさんは、特に追求することなくあっさりと引き下がった。個人的にはクリスくんの情報の裏とりをどうやったのかが気になるけど、後でこっそりと聞けばいいか。見知らぬ皇子より、見知った姫様のほうが俺としても安心だし。
「よし、他に質問はないか? 誘拐の目的は分かったか? ーーじゃあ、次に詳細を説明するぞ。作戦決行だがーー」
メンバーの顔にさっと視線を走らせ、質問がないことを確認すると、アスカは作戦の細部についての説明を始めるようとするのだが、突然の闖入者に中断されてしまう。アスカの部屋の扉が、ノックもなしに突然開かれたのだ。
そこには息を切らせているシータちゃんが居た。かなり急いでここまで来たらしい。
突然開かれたドアにメンバーは一瞬身構えるが、彼女の姿を認めるとすぐに警戒を解き、そのうちのひとりが彼女に近づく。
「どうした、シータ」
「あ、お父さん……。アスカさんは、アスカさんは居る?」
「シータ。何があった?」
シータちゃんのただならぬ様子に、アスカはメンバーの合間を縫って彼女に近づく。
「あ、アスカさん。皇帝が、皇帝陛下がーー」
アスカの姿を認めたシータちゃんは、一度大きく深呼吸して、意を決したように口を開く。
「皇帝陛下が、死亡したというニュースが、流れています……!」
沈黙、三秒。
ようやくシータちゃんの言葉が理解できたのか、珍しく驚愕に表情を歪めたアスカは、部屋どころか教会にまで響かん勢いで、
「はぁ!!?」
と叫んだ。
いつになく真剣に眼差しで、それでいてアスカらしい悪い笑みを浮かべて、彼女は帝国への叛逆を宣言する。
レジスタンスメンバーの表情は変わらない。おそらく、彼らも一度は皇帝の誘拐を想像したのだろう。数の劣る自分たちが、黒幕と思しき皇帝から情報を得るには、乱暴だが一番手っ取り早い方法だ。もっとも、実際に誘拐するための障害はとてつもなく大きいが。
「……みんな、あんまり驚かねえな。予想通りってか? まあ、いいや。詳細は後にして、まず作戦概要を説明するぞ。誘拐のターゲットは3人。第一目標、皇帝ヴィルヘルム・フォン・マルステラ。第二目標、宰相ギルベルト・クラテンシュタイン。そして第三目標、第一皇女ソフィア・フォン・マルステラ。全員を同時に攫うのが理想だが、優先目標は今言った通りだ」
(え、姫様も誘拐するの?)
疑問の声が聞こえたのか、俺を見たアスカの話が止まる。
あ、やべ、話の腰折っちゃったかな。
「そうだな、悪霊。皇女もターゲットだ。皇帝と宰相はヴェルニカについて聞き出すため。第一皇女は次の保険のために誘拐する。第一目標の誘拐が失敗したら完全にこっちが賊軍になっちまうからな。皇女を擁立して立場を少しでも上げとかないと、たとえ武力で制圧できたとしてもそれで終わりだ。何も知らない民衆に石を投げられたくないだろ? 幸い皇女はクリスの友人で、しかもヴェルニカの件に不満がありそうだ。こちらに引き込まない手はない」
なるほど。情報を得るためだけが目的じゃないんだな。
俺はちらりとクリスくんを見る。特に動揺してる様子は見られない。彼も同意の上か、あるいはクリスくん本人が提案した作戦なのだろう。何も知らない姫様は、……まあ、どんまいである。
「皇帝と宰相のどちらかが真相を知っていると思うが、もしも知らなかったときは皇女と同じように味方につけるぞ。それができればこちらの勝利はほぼ確定だ。立場でも武力でも第零軍団を上回るからな。だから、万一にでも殺すんじゃねえぞ。皇女の擁立も難しくなる。納得したか、悪霊」
(分かった。わざわざ説明ありがとな)
「よし。悪霊以外にも疑問があるやつは今のうちに声出ししろよ。変なところで誤解があったりすると作戦成功に支障をきたすし、ブロードの効率も悪くなるからな」
アスカに別段イライラした様子は見られない。
怒られると思っていたので、少し安心した。
「アスカちゃん。お言葉に甘えて、少し聞いてもいいかしら」
「なんだ、アルーーいや、オメガ」
先頭で話を聞いていたアルファさんーーもとい、オメガさんが挙手する。アルと名前が被るので改名したらしい。凶悪な外見にピッタリの偽名だと思う。
「皇女の誘拐はクリスくんの情報あってのことと思うのだけど、信用できるのかしら? それと、同じ理由なら誘拐するのは第一皇子でもいいんじゃないかしら」
オメガさんはちらりとクリスくんを見て、そう尋ねる。
第一皇子は姫様のお兄さんだな。執務室で皇帝と一緒に仕事をしていたのを見たことがある。彼のひととなりは知らないけど、クリスくんのことが信用ならないのであれば、姫様でも皇子でも誘拐するのはどちらでも良いのでは、ということか。
「皇女についてはクリスの情報を鵜呑みにしたわけじゃない。ちゃんとこっちでも裏を取ってるから心配するな。まず間違いなく、皇女はヴェルニカの件に心を痛めている。皇子よりは味方に引き込みやすいはずだ。で、第一皇子の誘拐を見送ったのは、皇帝と宰相と皇子の3人を同時に誘拐すると、行政への影響がでかすぎると判断したからだ。2人でも十分大きいが、それでも政務経験の長い皇子が残るなら命令系統が混乱することはないだろ。まあ、あちらさんの予定はぐっちゃぐちゃになるだろうけど、世が糺される代償と思えば安いもんさ」
なあ、とアスカは意地悪い笑みでこちらに同意を求める。
「そういうこと。了解よ、アスカちゃん」
一方、質問したオメガさんは、特に追求することなくあっさりと引き下がった。個人的にはクリスくんの情報の裏とりをどうやったのかが気になるけど、後でこっそりと聞けばいいか。見知らぬ皇子より、見知った姫様のほうが俺としても安心だし。
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メンバーの顔にさっと視線を走らせ、質問がないことを確認すると、アスカは作戦の細部についての説明を始めるようとするのだが、突然の闖入者に中断されてしまう。アスカの部屋の扉が、ノックもなしに突然開かれたのだ。
そこには息を切らせているシータちゃんが居た。かなり急いでここまで来たらしい。
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「どうした、シータ」
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「シータ。何があった?」
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「あ、アスカさん。皇帝が、皇帝陛下がーー」
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「皇帝陛下が、死亡したというニュースが、流れています……!」
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