しゃあ!器用貧乏だけど禁断の二段打ちで生き残る

どるき

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墓参り

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 戦績だけで語るのならば前年度順位外の落ちこぼれ、宮本静子の全勝によって幕を閉じた予選会。
 他7クラスに関しても予備日も含めて翌週中には勝者が決まるだろう。
 本戦の開始は6月の第1日曜日から。
 リーグ戦であったこれまでとは異なり、毎週日曜日に1回戦ずつ、外部の観客を呼び込んだトーナメント戦で開催される。
 法術による治療を行えば静子の右腕を治すのには充分な休息期間と言えよう。
 そもそも彼女の腕は土日間に治る予定ではあるのだが。

「それで……罰ゲームで何をやらせるかは決めたのか?」

 帰宅後の夕食時。
 アオは試合の顛末を知ったうえで静子に問いかけた。
 約束通りなら明日は勝者が敗者を自由にできる。
 度が過ぎた命令をするのは憚られるとはいえ彼女は何を選ぶのか。
 お行儀よく何も命令しないとなると今度は付き合いが悪いと受け取られる状況なのだが。

「ううう……自分から言い出したから甘んじて受け入れるけどお手柔らかにね」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。メイちゃんみたいに変なところを触ったりはしないから」
「変って……」

 ここで言う変な所とは一昨日胸を触られたことに他ならない。

「だから良かったら明日は一日付き合ってよ。ちょっと行きたいところがあるんだ」
「ふぅん。静子が外出ってスポットのバイト以外だと珍しいね。特に最近はアオさんと魔法の特訓ばかりだったし」
「本戦に出ることになった以上はしばらく出かけられないしちょっとね」
「まあいいか。それで、何処に行くのさ? 場所に合わせてオシャレしたいし」
「とりあえず制服が無難かな。お墓参りだし」
「?」

 静子の里帰りという発言に小首を傾げるメイ。
 深堀りは失礼と思って積極的に触れてこなかったとはいえ、彼女は静子が孤児院出身で家族がいないことを知っている。
 行方知れずの姉がいるとは言うが、では墓とは誰のものであろうと。
 姉の存在を踏まえれば、孤児院に入る前に生きていた両親であろうか。

「そういうことなら車を出そうか? バスや電車より融通が利くだろうし」
「結構遠いですし流石に寮母さんの手は煩わせられませんよ。明日は出かける予定なんですよね? カレンダーに印がついていましたし」
「オイオイ見くびるなよ。アタシの予定くらい、いくらでも融通が効くから気にするなって」
「まあまあアオさん。ここは静子の言う通りにさせてあげてよ。そうじゃないとあたしの罰ゲームにならないし」
「……お前らがそう言うのなら」

 ちなみに他の寮生も何かしら用事があるのか付き添いはなし。
 静子とメイは二人きり。
 朝早くからバスに乗って目的地を目指した。
 8時前のバスを終点まで乗り、そこで乗り換え待ちの時間つぶしを兼ねた買い物を済ませた二人が目的地に到着したのは10半時過ぎ。
 約3時間かけて到着した場所は人気のない集合墓地だった。
 メイは思う──

(ずいぶん遠くまで来ちゃったな)

 と。
 静子は今でこそ戦技大会で活躍した実力者とはいえ元々は落ちこぼれ。
 学力は優秀でも魔法はからきしである。
 そんな彼女がわざわざ魔法を重視する八郷学園に入学したのだから、てっきりもっと近場に住んでいたのだとメイも思い込んでいた。
 この距離ではたしかに寮生にならなければ通学できないとはいえ、彼女はどうして自分の適性とはズレている学校に入学したのだろう。
 通りがけのバスの車内からも公立高校を見かけたことも疑問に拍車をかけていた。

「重いものばかり任せちゃってごめんね」

 備え付けられていたバケツに汲んだ水を運ぶメイを労る静子の手には線香が一束。
 黒御影石の墓石には何も書かれていないが静子が足を止めた先にあるソレが目的の墓なのだろう。
 むしろ名前などがないからこそ墓地の中ではわかりやすいのかもしれない。

「お父さん……お母さん……」

 水をかけて墓石を清め、そのまま火炎魔法で火をつけた線香を供えた静子は手を合わせる。
 つぶやく声を聞く限り両親に想いを寄せているようだ。
 同じ寮生暮らしとはいえ実家に帰ればメイには両親が待っている。
 そのため顔もよく覚えていない故人に手を合わせている彼女の心境をトレースすることなど出来ないが、そんなメイでも静子に合わせて故人を弔おうと考える良識は持ち合わせていた。
 ぶつぶつと静子が報告をしている間、脇で手を合わせて黙祷をするメイ。
 流石に1分も経過すると集中が乱れだすのだが、乱れて散漫になっていたからこそ彼女は気がついた。
 砂利を踏みしめる靴の音。
 誰かがやってくる気配に。
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