しゃあ!器用貧乏だけど禁断の二段打ちで生き残る

どるき

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2回戦第5試合

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 昼休み明けから入る、戦技大会の予選最終日。
 静子たち2年1組の場合、唯一の全勝者である静子が勝利した時点でトップが確定するということで、彼女とメイの試合は最後に回された。
 1番手の華権と友親の試合では同性相手ということで涅槃処を封じられた華権が足元をすくわれる敗北を喫し、なまじ高順位だった現順位と比較すると学期末の学年順位を大きく落とすことが予想される結果となった。
 2番手の瑠音と有田の試合は当たり前のごとく瑠音の圧勝。
 強いて言うならば試合とはいえ瑠音の身体に触れることが出来た有田の妙に嬉しそうな顔が一部の生徒の目に映ったことくらい。
 そして3番目の静子とメイの試合。
 剣製魔法に使用するバチを構えるメイに対して静子は右手をギプスで固めた姿で現れた。
 このギプスは昼食後に瑠音の手で施されたもの。
 魔法力による攻撃を遮断する法術が編み込まれていた。

「三角巾で吊るして置きますから、決して振り回さないで」

 その際に瑠音に言われた注意が静子の頭をよぎる。
 吊るされた右腕は脇腹に付けた形でガッチリと固定されており、これがお腹の前だったら攻撃をモロに受けて試合どころではない。
 だがこの位置に固定されると身のこなしに難が出てくるなと静子はすぐに察した。

「あたしも極力当たらないように注意するけれど右手には気をつけてね」
「うん。でも手加減させる形になっちゃってゴメンね」
「その点は気にしなくても大丈夫だから。むしろ遠慮して手を抜かないで欲しいくらいだよ」
「え?」
「まあ……あとは試合で語るだけってね」

 試合前に「右手は狙わない」と宣言するメイの考えは怪我人相手の手加減なのか。
 気にするなと言われてもハンデと受け取る静子の小考が纏まらない状態で試合開始の刻が訪れた。
 開幕はやはりと言うべきか。
 大会中でも定番とも言える光の剣を二刀携えての速攻をメイが仕掛ける。
 静子も右手が万全であれば徒手で迎え撃つところであるが今回は片手落ち。
 なので左手を突き出した彼女は盾を構えつつ熱線魔法による射撃で牽制を入れた。

(静子の魔術は体術と違って非力だからね。ここはゴリ押しだよ)

 だが牽制の威力が蚊ほどなことをメイは承知している。
 両手をクロスさせて急所を庇いつつ間合いをつけたメイは両手の剣を横薙ぎにして静子を裂いた。

(この切り方だとメイちゃんは首筋を左右同時に狙ってくる筈)

 間一髪であろうか。
 盾を二つに増やした静子はメイの攻撃ポイントを読み切って光の剣を相殺する。
 すかかずバチ2本を両手で抱えながら片方から剣を伸ばして豊満な胸を狙うのだが、これは同じ盾でも魔法力を吸収するアプヴェーア・エガシでガード。
 吸い取った魔法力を装填した熱線魔法で反撃をするわけだが、メイは横っ飛びでそれをかわした。

(今の反撃はアオさんとみっちり練習したヤツだからね。お見通しだよ)

 お互いに手の内を知り尽くしているからこそ決定打に欠ける応酬。
 だがこれまで傷つきながら薄氷を踏むように勝ち上がってきていた静子の戦歴と比べるとこれは異質にさえ思えた。
 お定まりと言ってしまうのは簡単な話だが、今まで静子は何処かしらで「相手の得意技」を受けてピンチに陥っている。
 特に予選2回戦では顕著だったそれが今は無い。
 変に逆境に追い込まれていないからこそ、このままジリジリとメイが押し倒すのではないかという雰囲気が一同に流れ始めた。

(魔法力の残りは3と1……静子は記憶力が良いからたぶん右手のバチは今出ているぶんでラストなのも数えていると思う。だけどそれが狙い目だよ)

 立ち周りは片手の静子より両手のメイが勝る。
 バチに充填された魔法力の上限など想定していない周囲の推測とは裏腹にメイも追い込まれていた。
 だがメイはそれが静子に筒抜けであるという前提で動いている。
 その残数を餌にすべく。

「ラスト!」

 飛び上がりバチを束ねて光の剣を巨大な一振りに合成したメイの振り降ろし。
 言葉通り最後の一振りであると印象付ける最大火力の攻撃は2枚の盾を裂く。
 その隙に距離を取る静子の放つ熱線魔法もまた、ある程度吸収した魔法力を含んで高威力。
 メイは光を失ったバチを灯し直して受け止めるのだが、それを弾き落としてしまった。
 残る一方には魔法力のストックなし。
 観戦者の多くは見落としている事実を強調するかの如くメイが放った火球は弱々しい。
 そもそも彼女が道具を併用する戦闘スタイルを選んだのは「魔法力のチャージ時間の遅さ」をカバーするため。
 静子より強力な魔法が使えるとはいえ実戦レベルではないため事前準備なし猶予時間なしの即打ちでは落ちこぼれ扱いをされていた静子にも劣る。
 今の火球はメイの弱点を忘却していたクラスメイトにソレを気づかせるのに充分だった。

(バチに充填しているメイちゃんの魔法力はもう空っぽ。となれば……接近戦で時間を与えちゃダメだ)
(と、考えてくるのはお見通しだよ)

 駆け寄る静子の動きは定石通りか。
 だが窮地に追い込まれているようで内心笑うメイには秘策あり。
 左手を突き出して弱い熱線魔法の連射牽制する静子をスカスカなバチを使って急所をそらす。
 あとは近づいてからの格闘戦に賭けているのかという状況。
 あと一歩の間合いに入ったところで──メイの拳が輝いた。

「秘剣!」

 拳の先に灯るのは光の剣。
 弾き飛ばされたバチに残った魔法力を掌に確保して握りしめていたメイは最後の一太刀を作り出していた。
 突然伸びる刃が埋める変則的な間合い。
 急所を魔法力が貫いて相手の意識を刈り取る強撃。
 振りかぶった右手のバチを警戒していたところから腰だめから押し付けるように突いた左手が伸びるのだから不意打ちとしての効果は高い。
 静子の左手があがったのはその証拠であろう。

「やりやがった」

 誰かが思わず叫ぶ。
 彼の視点からは静子が左手でバチを裁こうとして空いた鳩尾をメイの左手から伸びた剣が捉えたように見えたのだろう。
 だが真相を見た者は固唾を呑む。
 彼女はここまでやれるのかと。

「!!?」

 致命の一撃のハズが空転する感覚に戸惑うメイが漏らす声。
 バチを打ち払われつつもそれは牽制。
 本命の左手が当たればと思っていたメイの身体はバランスを崩していた。
 さっと円を描いて肘を左手で掬い上げた静子は光の剣を腕ごとそらしつつ、まるで合気道の達人が投げ飛ばすかのようにメイの身体は地面を離れてしまう。
 何時、何処で覚えたのかと、誰もが思う見事な投げでメイは背中を地面につけて、これで試合は決着となる。

「それまで──」

 柴沼の声が予選の終わりを告げた。
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