辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第156話「改良への試行錯誤」

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発表会を終えたエルヴィンたちは、早速新たな課題に取り組み始めた。放熱素材の選定や魔力の流れを調整するバッファ機能の追加は、これまで以上に緻密な設計と実験が必要だった。

実験室では、リヴィアが放熱素材の候補として挙げた「輝炎石」と「冷光鉱」の特性を調査していた。机の上には二つの鉱石が置かれ、それぞれが魔力を受けた際の反応を記録するための小型の測定装置が並んでいる。

「エルヴィン様、こちらをご覧ください。」
リヴィアが測定装置の結果を見せながら話す。
「輝炎石は熱伝導性に優れていますが、魔力の流れを若干乱す傾向があります。一方で、冷光鉱は魔力には安定していますが、放熱効果が輝炎石ほど高くありません。」

エルヴィンはデータをじっと見つめ、腕を組んで考え込んだ。
「どちらにもメリットとデメリットがあるね……。この装置の目的を考えると、やっぱり魔力の安定性を優先すべきだと思う。冷光鉱を基準に設計を進めてみようか。」

リヴィアは頷き、鉱石を丁寧に収納した。

一方、レオンは制御弁の改良に取り掛かっていた。作業台にはいくつもの部品が広げられ、彼は工具を使いながら一つ一つの部品を組み立て直していた。

「この部分の動きが渋いのは、たぶんここが原因だな……よし、調整して……これでどうだ!」
レオンが組み立てた弁をテストすると、部品同士のスムーズな動きに彼は満足げに笑みを浮かべた。

「よし!これで一歩前進だな!……あとは実際に装置に組み込んでみないとな。」
そう言いながら、完成した制御弁をエルヴィンに手渡した。

「ありがとう、レオン。すぐに試してみるよ。」
エルヴィンが受け取ると、そのまま装置の基盤に取り付けた。

カトリーヌはデータの分析を担当しながら、装置全体の設計について新たなアイデアを提案していた。

「エルヴィン様、冷光鉱を基準にする場合、この部分の魔力の流れを調整する追加回路が必要になりますわ。」
カトリーヌが指差したのは、分岐システムの一部にあたる箇所だった。
「ここに小型の魔法陣を組み込めば、魔力の流れがより安定するはずです。」

「なるほど、それはいい案だね。ただ、小型化するには設計をもう少し工夫しないといけないかもしれない。」
エルヴィンが提案を聞いて頷きながら、ノートにその案を書き込んだ。

「では、詳細な設計図を描いてみますわ。」
カトリーヌはスケッチブックを開き、丁寧に魔法陣の設計を描き始めた。

午後になり、放熱素材を冷光鉱に変更し、制御弁と新しい魔法陣を組み込んだ改良版装置が完成した。

「よし、みんな準備はいい?」
エルヴィンが装置を実験用の台にセットしながら問いかけると、全員が頷いた。

「ちゃんと動くといいんだけどな。」
レオンが軽く肩を回しながら言う。

「これだけ準備したのですから、きっと大丈夫ですわ。」
カトリーヌが自信ありげに答える。

「……もし問題があったら、また改良すればいいだけです。」
リヴィアも静かに微笑んだ。

エルヴィンがスイッチを入れると、装置が徐々に動き始めた。冷光鉱を通じて魔力が流れ、分岐システムが作動する。三つの出力ランプがそれぞれ点灯し、安定した光を放っている。

「よし、安定してる……!今のところ、問題はなさそうだ。」
エルヴィンがほっとした表情を浮かべた。

しかし、次の瞬間――装置の一部から小さな音がして、光が一瞬揺らいだ。

「ん?どうした?」
レオンが慌てて声を上げる。

「たぶん、魔力の同期にわずかなズレがあるみたいだ。このままだと、長時間の動作には耐えられないかもしれない。」
エルヴィンが装置を確認しながら言った。

「では、再調整が必要ですわね。魔力の流れをさらに均等にする仕組みを考えなくては。」
カトリーヌが即座に対応を提案する。

「リヴィア、この部分の結晶配置をもう少し調整できる?」
エルヴィンがリヴィアに声をかけると、彼女は頷いてすぐに動き出した。

今回のテストは完全な成功には至らなかったが、装置の改良に向けた具体的な課題が見えてきた。それぞれが役割を果たしながら、エルヴィンたちはさらに研究を深めていく。

「この課題を乗り越えれば、装置は完成形に近づくはずだよ。みんな、もう少し頑張ろう!」
エルヴィンが力強く言うと、全員が頷いた。

「よし、次こそは完璧に動かしてやるぜ!」
レオンが拳を握りしめて意気込む。

「ええ。これを完成させて、学院内でも最高の成果を残しましょう。」
カトリーヌが微笑みながら言う。

「私も……もっと結晶を調整できるように努力します。」
リヴィアが静かに意志を示した。

こうして、エルヴィンたちの研究はさらに深まっていく――。新たな試行錯誤の日々が、彼らを待っているのだった。
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