辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第174話「エルドラ鉱の適性試験」

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王立魔道研究所の協力を得ることが決まり、エルヴィンたちはすぐに準備を整えて研究所へと向かった。学院の実験室では対応しきれなかった魔力圧の問題を解決するため、エルドラ鉱という特級の魔力導体を用いた改良型装置の開発を進めることになったのだ。

エルヴィンたちが研究所に到着すると、ヴェルトナー伯がすでに待っていた。

「お待ちしていました、エルヴィン殿。」
ヴェルトナーは落ち着いた声で迎えると、研究員たちに指示を出し、エルヴィンたちを特別研究室へと案内した。

研究室の中央には、青白い輝きを放つ鉱石のかけらが数個、魔道具のケースに収められていた。まるで淡い光を発する水晶のようなその鉱石は、通常の魔力導体とは異なる波長を放っていた。

「これがエルドラ鉱か……。」
エルヴィンは慎重にケースを開け、鉱石の表面を指でなぞる。微かに温かく、心地よい魔力の流れが指先に伝わってくる。

「エルドラ鉱は、王国でも限られた鉱山でしか採取できない特級導体だ。」
ヴェルトナーが解説を続ける。

「特に魔力の流れをスムーズにし、干渉を抑える特性を持っている。この性質を利用すれば、魔道炉の高い魔力圧にも対応できる可能性が高い。」

「なるほど……。従来の魔力導体と違って、魔力の流れを阻害する負荷が少ないから、高出力の環境でも安定した動作が期待できるわけですね。」
カトリーヌが冷静に分析しながらメモを取る。

「でも、こんな貴重な素材を使って大丈夫なのか?」
レオンが眉をひそめる。

「確かに希少な素材ではあるが、君たちの研究が王国の未来に貢献する可能性がある以上、惜しむ理由はない。」
ヴェルトナーは穏やかな笑みを浮かべると、研究員たちに向かって指示を出した。

「まずは、このエルドラ鉱を使った魔力伝導試験を行い、どの程度の適性があるかを確認しよう。」

エルヴィンたちは、持ち込んだ魔力分岐装置の一部をエルドラ鉱製の導体に交換し、試験用の魔道炉に接続する準備を進めた。

「よし、セット完了。これでエルドラ鉱の魔力伝導性を測定できるはず。」
エルヴィンは装置を慎重に設置し、スイッチを入れる。

――ゴォォォッ……!

魔道炉の内部で魔力が活性化し、エルヴィンたちの装置へと流れ込んでいく。従来の導体を使用した時とは異なり、魔力の流れが驚くほど滑らかだった。

「すごい……魔力の抵抗がほとんどない!」
リヴィアが測定器を見ながら驚いた声を上げる。

「分岐した魔力の流れも均一ですわね。まるで魔力そのものが装置と一体化したかのように……。」
カトリーヌも目を見開く。

エルヴィンは魔力伝導率の測定値を確認しながら、確信を持った。

「やっぱり、エルドラ鉱は最高の魔力導体だ……! これなら、魔道炉の過負荷にも耐えられるはず。」

試験を続けること約2時間、エルドラ鉱を用いた装置は、全く不安定な挙動を見せることなく、魔力供給を続けていた。

「これはすごいな……今までの装置とは比べ物にならねぇ!」
レオンが感嘆の声を上げる。

「エルヴィン様、これで次の耐久試験に進めますね。」
リヴィアが嬉しそうに微笑む。

「そうだね。でも、次はさらに負荷をかけて、本当に実用化できるかどうかを確かめなくちゃ。」
エルヴィンは次の試験計画を考えながら、仲間たちを見渡した。

ヴェルトナー伯も満足げに頷く。

「君たちの研究が、確実に成果を上げていることが証明されたな。次の試験では、実戦レベルの負荷をかけ、王国軍の魔道兵器にも応用できるかどうかを試してみるのがよいだろう。」

エルヴィンたちは、新たな試験に向けてさらに準備を進めることになった。

エルヴィンはヴェルトナーの言葉に、少しだけ表情を曇らせた。
魔道兵器への応用――その言葉が、彼の胸の中で重くのしかかる。

もちろん、技術の進歩が戦争を左右することは理解している。しかし、エルヴィン自身は自分の研究が戦争の道具に使われることを快く思っていなかった。
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