辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第207話「農地のエネルギー効率を高めろ!」

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王都アルヴェイン東部農地――。
魔力供給の安定化に成功し、スプリンクラーが均等に稼働するようになったエルヴィンたちだったが、次の課題が見えてきた。

「ふぅ……一応、動作は安定したけど……。」
エルヴィンは試験結果をノートに書き込みながら、少し考え込む。
「やっぱり、魔力の消費がちょっと多すぎるな。」

「確かに、今のままだと長時間稼働させるのは難しいですわね。」
カトリーヌが供給装置の魔力消費量を確認しながら言う。
「このままでは、魔道炉から供給できる魔力量にも限界がありますわ。」

「そもそも、なんでそんなに魔力を食っちまうんだ?」
レオンがスプリンクラーの一つを眺めながら首を傾げる。

「うん……たぶん、無駄に魔力を流しすぎてるんだ。」
エルヴィンは畑の端に設置された供給管を指さす。
「今のシステムは、一度に大量の魔力を送り出してるから、そのぶん消費が激しくなってるんだよ。」

「なるほど……つまり、一気に流すのではなく、もっと効率的に配分すればいいということですか?」
リヴィアが静かに尋ねる。

「その通り!」
エルヴィンは頷き、地面に図を描き始めた。
「今のシステムだと、スプリンクラーが魔力を受け取るとき、必要以上の魔力を吸収してしまうことがあるんだ。だから、余計なエネルギーが消費されてしまってるんだよ。」

「水を流しっぱなしにしてる蛇口みたいなもんか?」
レオンが腕を組みながら言う。

「そう、それだよ!」
エルヴィンは指を鳴らして言った。
「だから、必要な分だけ魔力を流す制御機構を作れば、無駄な消費を抑えられるはずなんだ。」

「でも、それってどうやって実現するのかしら?」
カトリーヌが考え込む。
「魔道具の動作を魔力で管理するのは難しくありませんけれど、リアルタイムで供給量を調整するとなると、かなり複雑な仕組みが必要になりそうですわ。」

「うん。でも、魔力供給システムを作ったときに導入した魔力バルブがあるよね。」
エルヴィンは紙に魔力バルブの仕組みを簡単に描きながら続ける。
「この魔力バルブ、もともとは王都の商業区や住宅街で、各魔道具が必要な分だけ魔力を受け取るために作ったものだよね。」

「ええ、そうですわね。あれがなかったら、供給の均一化が難しかったでしょうし。」
カトリーヌが頷く。

「それを、そのままスプリンクラーに応用できないかと思ってさ。」
エルヴィンはスプリンクラーの模型を指し示しながら説明を始めた。

「つまり、スプリンクラーの内部に魔力バルブを組み込むことで、畑の状態を感知し、必要な魔力量だけを自動で受け取るようにするんだ。」

「なるほど! それなら、必要な分だけ魔力を流すことができるわけですね。」
リヴィアが納得したように頷く。

「そう! もともと作った魔力バルブを応用することで、無駄なエネルギー消費を減らせるはずなんだ。」
エルヴィンは拳を握りしめる。

「でも、農業用のスプリンクラーに組み込むとなると、いくつか問題が出てくるわね。」
カトリーヌが指を立てながら指摘する。
「王都の魔道具は、基本的に一定の出力で魔力を受け取る仕組みですが、農地では天候や土壌の状態によって、必要な魔力量が大きく変化するのではなくて?」

「うん、そこが一番の課題なんだ。」
エルヴィンは顎に手を当てながら続ける。
「だから、スプリンクラーに魔力センサーをつける必要があるんだ。」

「魔力センサー?」
レオンが首を傾げる。

「うん、簡単に言うと、スプリンクラー自身が『今はこれくらいの魔力が欲しい』っていうのを自分で判断できるようにするんだよ。」
エルヴィンは新しい設計図を描きながら説明する。
「例えば、土壌の水分量や温度を測定して、それに応じて魔力供給量を変えるようにすれば、余計な消費を抑えられるはずなんだ。」

「へぇ、それなら確かに無駄がなくなるな。」
レオンが感心したように頷く。

「でも、その魔力センサーをどうやって作るんですの?」
カトリーヌが慎重に尋ねる。

「王立魔道研究所で使われてる『魔力応答式測定装置』を改良すれば、センサーの代わりになると思う。」
エルヴィンが懐から小さな魔道具を取り出す。

「これは……?」
カトリーヌが興味深げに覗き込む。

「王立魔道研究所で土壌の魔力濃度を測るために使われてる測定装置の試作品だよ。」
エルヴィンが説明する。
「これを応用すれば、スプリンクラーが自動で魔力量を調整できるはずさ。」

「なるほど、それなら応用できそうですわね。」
カトリーヌは納得したように微笑む。

「でも、改良は必要そうですね。」
リヴィアが冷静に分析する。
「研究所で使われている測定装置は精密すぎて、農業用途にはコストがかかりすぎます。」

「だな。もっとシンプルな作りにしねぇと、農家の人たちも使えねぇだろ。」
レオンも頷く。

「そうだね。じゃあ、この魔力センサーを農業用に改良するところから始めよう!」
エルヴィンは拳を握りしめた。

「よーし、それなら俺は設置場所を調べてくるぜ!」
レオンが勢いよく立ち上がる。

「私は試作品の設計を考えますわ。」
カトリーヌがノートを広げる。

「私はデータ整理と、部品の調達を進めますね。」
リヴィアが静かに微笑む。

「じゃあ、僕はセンサーの魔道回路を設計するよ!」
エルヴィンはすぐに作業に取り掛かった。

こうして、エルヴィンたちは農業用の魔力センサーを開発し、さらなるエネルギー効率の向上に向けて動き出した。

農地の魔力供給システムは、次の段階へと進化していく――。
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