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雪月夜狐

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第5章:新たな冒険の扉

第37話 渓谷の闇と新たな発見

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シャロウ渓谷に入り、優馬たちは黒い霧に包まれた山道を慎重に進んでいた。霧は昼間でも薄暗く、冷たい湿気が肌に纏わりつく。コハクは先頭を歩き、敏感に鼻を鳴らしながら異常な気配を探っている。

「コハク、何か感じるか?」

優馬が声をかけると、コハクは立ち止まり、低く唸り声を上げた。その視線の先には、霧の中からゆっくりと現れる異形の姿――巨大な黒い影が見える。体長はコハクと同じくらいだが、どこか歪んだ形をしており、体表からは黒い霧が立ち上っていた。

「くそ、また霧に染まった魔物か……!」

優馬は素早く錬金術セットを取り出し、「精霊の炎瓶」を調合する。これは、精霊の力を込めた火のポーションで、黒い霧を焼き払う効果を持つ。瓶の中で青白い炎がチリチリと燃え、優馬はそれを手に構える。

「リリア、援護を頼む!」

「はい、優馬さん!」

リリアは精霊石を握りしめ、風の精霊に語りかける。彼女の周囲に淡い光が集まり、風が強く渦を巻いた。彼女の声が優しく響き、風の精霊たちが応じるように力を送り込む。

「精霊の風よ……その動きを縛って!」

リリアが発動した「エアロバインド」によって、魔物はまるで見えない鎖に絡め取られるように動きを止めた。風の渦が魔物を取り囲み、その体を締め付ける。

「よし、今だ!」

優馬は「精霊の炎瓶」を魔物に向かって投げつけた。瓶が空中で砕け散り、青白い炎が広がる。炎は黒い霧に包まれた魔物を一瞬で飲み込み、霧が焼き払われる音が響く。魔物は苦しげな声を上げ、体を捩らせながらその姿を霧と共に消していった。

「ふぅ……何とか倒せたな」

優馬は額の汗を拭いながら息を整える。リリアも深く息を吐き、精霊石の光が少し穏やかになったのを感じる。

「優馬さん、この霧に染まった魔物は、本来の姿を歪められているんです……。精霊たちが、その異変をすごく悲しんでいて……」

リリアの声には、精霊たちの声を代弁するような哀しみが込められていた。優馬はその言葉に一瞬眉をひそめる。

「なるほど……そうか。だから精霊たちも不安がっていたんだな。こいつらを何とかしてやるのが、俺たちの役目ってわけか」

コハクも、霧の消えた周囲を確認するように歩き回り、優馬の足元に戻ってきた。その様子を見て、優馬は彼の頭を優しく撫でる。

「ありがとな、コハク。お前が警戒してくれたおかげで助かったよ」

「ワン!」

コハクは嬉しそうに尻尾を振り、リリアも微笑みながら彼の背中を撫でた。二人と一匹は、少しだけ張り詰めていた気持ちを和らげるように、その場に腰を下ろす。
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