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雪月夜狐

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第21章:精霊たちの新たなる調和

第109話 騎士団からの招待状

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王都アルバロッサに戻ってきた優馬たち。影の王の封印を強化するための「契約の儀式」を無事に終えた彼らは、しばしの安堵を感じつつも、次の脅威が訪れるのをどこかで予感していた。しかし、そんな彼らを待ち構えていたのは、想像以上に早く届いた新たな依頼だった。

ギルドで一息つく間もなく、一人の若い騎士が息を切らしながら駆け込んできた。鎧は土や草で汚れており、急ぎ馬で駆けてきたことが一目でわかる。

「精霊の守り手の一行よ!」
騎士は優馬たちを見つけると、深々と頭を下げて一礼し、荒い息のまま切迫した声で続けた。

「王国騎士団の長が、ぜひともあなた方にお力添えを願いたいとのことで…」

その言葉に、優馬は少し驚きながらも騎士の真剣な表情を見つめ返す。騎士団長がわざわざ精霊の守り手に助けを求めるとなれば、ただ事ではないと察した。

「詳しい事情を教えてくれますか?」
優馬がそう言うと、騎士は少し落ち着きを取り戻し、改めて事情を説明し始めた。

「実は、王国の北部にある“古代精霊の聖域”で異変が発生しているのです。精霊たちが長年守り続けてきたその聖域に、突然、影の気配が漂い始めました。騎士団もすでに派遣されているのですが、どうやら精霊の加護が弱まっているようで…」

その言葉にリースが険しい表情を浮かべる。

「精霊の加護が弱まっているですって…? 聖域は本来、精霊たちが守り抜くべき神聖な場所のはず。そんな異変が起きるなんて…影の王の力が影響しているのかもしれませんね」

リースの言葉に、レインも神妙な顔つきで続けた。

「契約の儀式を終えたばかりなのに、影の気配がさらに広がっているなんて…。もしかすると、影の王の力が完全には抑えきれていないのかもしれないわ」

騎士はその話に小さく頷き、説明を続けた。

「古代精霊の聖域は、王都から北へ数日行った先の山岳地帯にあります。精霊たちの結界で守られた場所で、普段なら人間は入れないはずの場所なのですが…今、その結界が急激に弱まっているとの報告がありました」

リリアが考え込むように呟く。

「影の王の力がまだ完全には封じられていない…もしそうなら、私たちが再び精霊たちを守らなくちゃいけないわね」

アークは大きく拳を握りしめ、やる気に満ちた表情で言った。

「よっしゃ、精霊たちの聖域を守るためなら、俺たちが出て行くしかねぇな! よし、行くぜ!」

優馬も仲間たちの決意を確かめるように一人一人の顔を見渡し、しっかりと頷いた。

「わかった。俺たち精霊の守り手がこの異変を調べてみよう。騎士団長に伝えてください。すぐに北部の聖域へ向かいますと」

騎士は感謝の意を示し、頭を下げてから素早くギルドを後にした。その姿が見えなくなると、優馬たちはすぐさま旅の準備を始めた。荷物を整え、今度こそ影の王の脅威を完全に封じる覚悟を胸に。

数日後、聖域の入り口にて

王都を出発して数日後、優馬たちは北部の山岳地帯にある「古代精霊の聖域」の入り口にたどり着いた。周囲は壮大な山々と深い森に囲まれ、空気にはどこか神秘的な緊張感が漂っている。普段なら、この場所は静かで穏やかな精霊たちの聖地として守られているはずだ。しかし、今は異様な不安が立ちこめていた。

リースが聖域の奥を見つめ、口元を引き締めて言った。

「この空気…精霊たちが怯えている。まるで影の王の気配がここにも漂っているかのように…」

優馬も緊張した面持ちで周囲を見渡し、剣を握りしめた。

「この場所が影の王の力に侵食されているのなら、精霊たちも危険に晒されているかもしれない。なんとしても影の力をここから排除しよう」

少し奥へ進むと、聖域の中心には大きな湖が広がっているのが見えた。湖面は通常なら澄んだ青い色をしているはずだが、今は薄暗い影が漂っており、どこか病んだような色合いに変わっている。湖の周りにはわずかに精霊たちの光が見えるが、その輝きも弱く、小さく震えている。

リリアが湖を見つめ、悲しげに呟いた。

「この湖は、聖域の精霊たちの力の源なのに…こんなにも汚染されているなんて…」

すると突然、湖の奥から不気味な声が響き渡った。

「光の守り手たちよ…この場所も、やがて影に飲まれる運命だ。精霊たちを守るつもりか?」

その声と共に、湖の水が渦を巻き始め、暗い影が水面に浮かび上がった。影は徐々に形を持ち、まるで精霊のような姿になっていく。だが、その目には冷たい光が宿り、闇に満ちた力を放っていた。

アークが剣を構え、気合を入れて前に出る。

「よっしゃ、来やがったな! 俺たちがこの聖域を守ってやる!」

優馬も剣を構え、カイに向かって指示を飛ばす。

「カイ、影の精霊の動きを封じながらリースを守ってくれ! リース、湖を浄化できるように準備を!」

カイは鋭い目で影の精霊を見据え、瞬時に動き始めた。

「了解だ。リース、君が浄化の魔法を準備する時間を稼ぐ」

リースは頷き、湖に向かって両手をかざし、精霊の加護を借りながら浄化の魔法を唱え始めた。

「光よ、この聖なる水を清め、影を祓ってください…」

しかし、影の精霊はリースの行動に気づいたのか、彼女に向けて無数の触手のような闇の攻撃を伸ばしてきた。触手は暗黒の力を帯び、周囲の空気がひんやりと冷たくなるほどだ。

「リース、危ない!」
レインが影の結晶を掲げ、触手の攻撃を防ぐべく前に立ちはだかった。結晶から放たれる紫の光が闇の力を遮り、リースを守る。

「ありがとう、レインさん…もう少しだけ時間を…」

レインは息をつき、影の力を吸収する結晶を握りしめて、影の精霊に立ち向かう覚悟を新たにした。

「私も影の力を持つ者として、この闇には負けない。精霊たちの聖域を守るために戦うわ!」

リリアもまた精霊石を掲げ、光の力を湖に送り込むように祈りを捧げた。

「精霊たちよ、私たちに力を貸して! 影の力に囚われたこの湖を、どうか浄化して!」

精霊石から放たれた光が湖面を照らし、黒い霧がわずかに後退した。しかし影の精霊は執拗に彼らを襲い、無数の触手で湖をさらに汚染しようとする。

アークが大剣を振りかざし、怒りの声で叫んだ。

「この邪悪な影を俺たちで叩き潰してやる! 精霊たちが怯えることなんてさせねぇ!」

アークの攻撃に続き、優馬も剣に精霊の加護を込め、力強く影の精霊に斬りかかった。二人の攻撃が影の精霊に次々と命中し、その体が徐々に形を失っていく。

「このまま押し切るぞ! みんな、力を合わせて!」
優馬が叫び、仲間たちはさらに力を振り絞った。

リースが浄化の魔法を完成させ、湖に向けて力強く呪文を放った。その瞬間、湖全体が光に包まれ、影の精霊が苦しげな声を上げながら闇の霧と共に消えていった。

ようやく湖は再び清らかな青を取り戻し、周囲の精霊たちも次々と輝きを取り戻して現れ始めた。小さな光の精霊が優馬たちの周りに集まり、感謝の意を示すかのようにふわりと舞い上がる。

優馬はほっとした顔で湖を見つめ、仲間たちに微笑んだ。

「やったな、みんな…これで聖域は守られた」

リースが息を整えながら安堵の笑みを浮かべる。

「精霊たちの力が戻った…これでこの聖域も再び安らぎを取り戻すでしょう」

だが、その時、湖の中央に一つの光の精霊が浮かび上がり、静かな声で語りかけてきた。

「光の守り手たちよ、あなた方のおかげで我々は再び安息を得ました。しかし、影の王の力はなおも拡大を続けています。真の封印の場で力を結集しなければなりません…」

優馬が精霊の言葉に驚き、尋ねる。

「真の封印の場…それはどこにあるのですか?」

光の精霊は湖の底を指し示し、穏やかに告げた。

「“精霊の始まりの地”…それが影の王を封じるための最後の場所。光と影が初めて交わり、精霊たちが誕生した場所です」

仲間たちはそれぞれの覚悟を胸に、新たな決意を固めた。影の王との戦いはまだ続く。だが、精霊の守り手たちは最後まであきらめるつもりはなかった。
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