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「懐かしさの断捨離:七十二歳の老人が押し入れの奥から取り出した思い出と、長良川の写真に映る笑顔の記憶」
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# 物の記憶
日差しが射し込む土曜の朝、私は決意も新たに押し入れの前に立っていた。隣には大きなゴミ袋が三つ。「今日こそ、思い切って捨てるんだ」と自分に言い聞かせる。妻・美香が他界して十五年。七十二歳になった今でも、彼女がいれば、きっと「そんなの全部捨てなさいよ」と笑っていただろう。
押し入れの扉を開けると、埃の匂いが鼻をつく。奥には段ボール箱が積み重なり、その隙間には様々な物が無造作に詰め込まれていた。一番手前の箱を引き出す。「PC部品(古)」と美香の字で書かれたマジックの文字が、少し色あせていた。
箱の中には予想通り、過去十数年分のPC部品が眠っていた。初めて自作したパソコンのマザーボード、ビデオカードに拡張RAMと、その時代時代の最先端だったものが、今ではただの電子廃棄物になっている。
「これ、捨てられないなあ…」と呟きながら、最初のCore i3プロセッサを手に取る。当時、美香は「そんな高いの買って何するの?」と言いながらも、私の趣味を理解してくれていた。結局、このCPUで編集した家族旅行の動画を見て、彼女も納得してくれたのだ。
思い出に浸る暇はない。次々と箱から取り出したのは、2GBや4GBのメモリ、VGA to HDMIなど各種変換アダプタ、ガラケーの充電ケーブル、PCの電源ケーブル。かつては大切に保管していたこれらのものも、今や使い道はない。
「捨てるか…」
そう決めたはずが、一つ一つに思い出が詰まっていて、なかなか袋に入れる手が進まない。息子が最初にプログラミングを覚えた時に使ったマザーボード、娘が学校の宿題をやるために買ったグラフィックカード、美香が初めて自分で組み立てたPCの部品たち。
物置へ移動すると、状況はさらに複雑になった。そこには子どもたちの成長の証が眠っていた。懐かしさで胸がいっぱいになる。
隅に置かれた赤いプラスチックの押し車。孫の陽太が一歳の誕生日に買った"カタカタ"だ。床を押すとカタカタと心地よい音を立て、陽太は何時間も飽きずに家中を歩き回っていた。横には大量のプラレール。息子が小さい頃に集めていたもので、後に孫へと受け継がれていった。
「これらは捨てられないな」
永久保存と書かれた段ボールに慎重に詰めていく。家内が大事にしていたCanonのデジタルカメラも同じ箱に。このカメラで撮った家族の写真が、今でもリビングの壁に飾られている。
昼過ぎになると、断捨離の作業は予想以上に遅々として進まなかった。ようやくパソコン周辺機器の山を片付け、古いスキーウェアや子供用のボディボードなども仕分けした。捨てる物、残す物、迷う物と三つに分けていったが、迷う物の山が一番高くなっていた。
そんな中、奥の方から埃を被った茶色の革製バッグが出てきた。見覚えのあるバッグ。義母がデイサービスに通っていた時に持っていたものだった。義母は美香が他界する三年前に亡くなっている。
バッグを開けると、中から手帳が出てきた。美香特有の丸みを帯びた文字が並んでいる。
「今日もお母さんは元気だった。デイサービスの職員さんによると、歌の時間が一番楽しそうにしているとのこと。来週は私も一緒に参加してみようと思う。」
日付は十七年前。美香が仕事の合間を縫って義母の様子を見に行っていた頃のメモだった。ページをめくると、義母の体調や好きだった食べ物、薬の管理についてなど、細かなことが記録されていた。美香の優しさと几帳面さが伝わってくる内容だった。
バッグの内ポケットには財布が入っていた。開けてみると、三万円ほどの現金が入っている。「もしもの時に」と書かれたメモも添えられていた。美香が義母の、そして自分自身のもしもの時を考えて用意していたのだろう。先を見据えた彼女らしい心遣いだ。
さらにバッグの底から一枚の写真が出てきた。三十年以上前の初夏、家族全員で行った長良川のライン下りの記念写真だった。息子と娘はまだ小学生で、カメラに向かってピースサインをしている。その隣には私と美香。二人とも若々しく、満面の笑みを浮かべていた。美香は義母にこの写真を見せていたのだろう。家族の幸せな瞬間を。
写真を見つめていると、懐かしさと寂しさが同時に押し寄せてきた。あの頃に戻りたい。でも、もう戻れない。美香のいない日常が、十五年経った今でも時々現実とは思えなくなる。
「お父さん、断捨離はどう?」
玄関のドアが開き、長女の声が聞こえた。彼女は市内に住んでいて、時々様子を見に来てくれる。もう四十代半ばになったが、笑った顔は母親そっくりだ。
「うん、なかなか進まないよ。見てくれ、おばあちゃんのバッグが出てきたんだ」
娘は写真を手に取り、しばらく黙って見つめていた。
「懐かしいね…長良川のライン下り。私、小学校三年生だったよね。お母さんも、おばあちゃんも元気だった頃」
「ああ」
部屋が少し暗くなったのに気づき、窓の外を見ると夕方の薄暗い空が広がっていた。一日中断捨離をしていたつもりが、結局捨てたものはほんの少しだけだった。
「明日も続きをやるつもりなの?」と娘。
「うん、明日は本気で捨てるよ」
しかし、その言葉に自分自身があまり説得力を感じられなかった。この家には、まだ美香の存在が色濃く残っている。それは古いPC部品や、子どもたちのおもちゃ、義母のバッグといった形をとって。
翌日の日曜も、作業は思うように進まなかった。物を捨てるということは、思い出の一部を手放すことでもある。それでも少しずつ、使わないものを袋に詰めていった。永久保存の箱は角に積み上げられ、捨てる袋はドアの横に並べられた。
日が暮れてきた頃、ようやく押し入れと物置の大半が片付いた。疲れた体を引きずってリビングに戻ると、テーブルの上に昨日見つけた写真が置いてあった。箱根旅行の家族写真。
それを見ながら、ふと思った。物は捨てても、思い出は残る。時に懐かしく、時に切なく、でもそれは確かに私の中で生き続けている。美香も、義母も、子どもたちの成長も、すべて私の記憶の中にある。
捨てられなかった「カタカタ」とプラレール、Canonのカメラ。そして義母のバッグと写真。それらは単なる「モノ」ではなく、私たち家族の歴史の証だった。すべてを捨てることはできなかったけれど、大切なものを残すことができた。それで良かったのかもしれない。
壁に掛かった時計は午後七時を指していた。外は完全に暗くなり、窓ガラスに自分の疲れた顔が映っている。七十二歳の顔には、この十年間の喜びも悲しみも刻まれていた。
リビングの明かりを消し、寝室に向かう。枕元には美香との結婚写真が置いてある。「断捨離、少しは頑張ったよ」と心の中でつぶやく。
明日からはまた日常が始まる。でも、この二日間で向き合った過去のおかげで、少し前に進む勇気が湧いてきた気がした。美香がここにいたら、きっとそう言ってくれただろう。
「捨てるのも残すのも、あなたの気持ち次第よ。でも時々は過去を整理しなさい」と。
疲れた体を横たえ、目を閉じる。明日は月曜日。新しい一週間の始まり。そして明日からもまだまだ断捨離は続く。納屋にはまだ手つかずの物が山積みだし、ガレージのツールボックスも整理が必要だ。だがそれは明日の自分の仕事だ。窓の外から聞こえる風の音を聞きながら、七十二歳の老人は静かに眠りについた。部屋の隅に、これから片付けるべき物の山がぼんやりと影を落としていた。
日差しが射し込む土曜の朝、私は決意も新たに押し入れの前に立っていた。隣には大きなゴミ袋が三つ。「今日こそ、思い切って捨てるんだ」と自分に言い聞かせる。妻・美香が他界して十五年。七十二歳になった今でも、彼女がいれば、きっと「そんなの全部捨てなさいよ」と笑っていただろう。
押し入れの扉を開けると、埃の匂いが鼻をつく。奥には段ボール箱が積み重なり、その隙間には様々な物が無造作に詰め込まれていた。一番手前の箱を引き出す。「PC部品(古)」と美香の字で書かれたマジックの文字が、少し色あせていた。
箱の中には予想通り、過去十数年分のPC部品が眠っていた。初めて自作したパソコンのマザーボード、ビデオカードに拡張RAMと、その時代時代の最先端だったものが、今ではただの電子廃棄物になっている。
「これ、捨てられないなあ…」と呟きながら、最初のCore i3プロセッサを手に取る。当時、美香は「そんな高いの買って何するの?」と言いながらも、私の趣味を理解してくれていた。結局、このCPUで編集した家族旅行の動画を見て、彼女も納得してくれたのだ。
思い出に浸る暇はない。次々と箱から取り出したのは、2GBや4GBのメモリ、VGA to HDMIなど各種変換アダプタ、ガラケーの充電ケーブル、PCの電源ケーブル。かつては大切に保管していたこれらのものも、今や使い道はない。
「捨てるか…」
そう決めたはずが、一つ一つに思い出が詰まっていて、なかなか袋に入れる手が進まない。息子が最初にプログラミングを覚えた時に使ったマザーボード、娘が学校の宿題をやるために買ったグラフィックカード、美香が初めて自分で組み立てたPCの部品たち。
物置へ移動すると、状況はさらに複雑になった。そこには子どもたちの成長の証が眠っていた。懐かしさで胸がいっぱいになる。
隅に置かれた赤いプラスチックの押し車。孫の陽太が一歳の誕生日に買った"カタカタ"だ。床を押すとカタカタと心地よい音を立て、陽太は何時間も飽きずに家中を歩き回っていた。横には大量のプラレール。息子が小さい頃に集めていたもので、後に孫へと受け継がれていった。
「これらは捨てられないな」
永久保存と書かれた段ボールに慎重に詰めていく。家内が大事にしていたCanonのデジタルカメラも同じ箱に。このカメラで撮った家族の写真が、今でもリビングの壁に飾られている。
昼過ぎになると、断捨離の作業は予想以上に遅々として進まなかった。ようやくパソコン周辺機器の山を片付け、古いスキーウェアや子供用のボディボードなども仕分けした。捨てる物、残す物、迷う物と三つに分けていったが、迷う物の山が一番高くなっていた。
そんな中、奥の方から埃を被った茶色の革製バッグが出てきた。見覚えのあるバッグ。義母がデイサービスに通っていた時に持っていたものだった。義母は美香が他界する三年前に亡くなっている。
バッグを開けると、中から手帳が出てきた。美香特有の丸みを帯びた文字が並んでいる。
「今日もお母さんは元気だった。デイサービスの職員さんによると、歌の時間が一番楽しそうにしているとのこと。来週は私も一緒に参加してみようと思う。」
日付は十七年前。美香が仕事の合間を縫って義母の様子を見に行っていた頃のメモだった。ページをめくると、義母の体調や好きだった食べ物、薬の管理についてなど、細かなことが記録されていた。美香の優しさと几帳面さが伝わってくる内容だった。
バッグの内ポケットには財布が入っていた。開けてみると、三万円ほどの現金が入っている。「もしもの時に」と書かれたメモも添えられていた。美香が義母の、そして自分自身のもしもの時を考えて用意していたのだろう。先を見据えた彼女らしい心遣いだ。
さらにバッグの底から一枚の写真が出てきた。三十年以上前の初夏、家族全員で行った長良川のライン下りの記念写真だった。息子と娘はまだ小学生で、カメラに向かってピースサインをしている。その隣には私と美香。二人とも若々しく、満面の笑みを浮かべていた。美香は義母にこの写真を見せていたのだろう。家族の幸せな瞬間を。
写真を見つめていると、懐かしさと寂しさが同時に押し寄せてきた。あの頃に戻りたい。でも、もう戻れない。美香のいない日常が、十五年経った今でも時々現実とは思えなくなる。
「お父さん、断捨離はどう?」
玄関のドアが開き、長女の声が聞こえた。彼女は市内に住んでいて、時々様子を見に来てくれる。もう四十代半ばになったが、笑った顔は母親そっくりだ。
「うん、なかなか進まないよ。見てくれ、おばあちゃんのバッグが出てきたんだ」
娘は写真を手に取り、しばらく黙って見つめていた。
「懐かしいね…長良川のライン下り。私、小学校三年生だったよね。お母さんも、おばあちゃんも元気だった頃」
「ああ」
部屋が少し暗くなったのに気づき、窓の外を見ると夕方の薄暗い空が広がっていた。一日中断捨離をしていたつもりが、結局捨てたものはほんの少しだけだった。
「明日も続きをやるつもりなの?」と娘。
「うん、明日は本気で捨てるよ」
しかし、その言葉に自分自身があまり説得力を感じられなかった。この家には、まだ美香の存在が色濃く残っている。それは古いPC部品や、子どもたちのおもちゃ、義母のバッグといった形をとって。
翌日の日曜も、作業は思うように進まなかった。物を捨てるということは、思い出の一部を手放すことでもある。それでも少しずつ、使わないものを袋に詰めていった。永久保存の箱は角に積み上げられ、捨てる袋はドアの横に並べられた。
日が暮れてきた頃、ようやく押し入れと物置の大半が片付いた。疲れた体を引きずってリビングに戻ると、テーブルの上に昨日見つけた写真が置いてあった。箱根旅行の家族写真。
それを見ながら、ふと思った。物は捨てても、思い出は残る。時に懐かしく、時に切なく、でもそれは確かに私の中で生き続けている。美香も、義母も、子どもたちの成長も、すべて私の記憶の中にある。
捨てられなかった「カタカタ」とプラレール、Canonのカメラ。そして義母のバッグと写真。それらは単なる「モノ」ではなく、私たち家族の歴史の証だった。すべてを捨てることはできなかったけれど、大切なものを残すことができた。それで良かったのかもしれない。
壁に掛かった時計は午後七時を指していた。外は完全に暗くなり、窓ガラスに自分の疲れた顔が映っている。七十二歳の顔には、この十年間の喜びも悲しみも刻まれていた。
リビングの明かりを消し、寝室に向かう。枕元には美香との結婚写真が置いてある。「断捨離、少しは頑張ったよ」と心の中でつぶやく。
明日からはまた日常が始まる。でも、この二日間で向き合った過去のおかげで、少し前に進む勇気が湧いてきた気がした。美香がここにいたら、きっとそう言ってくれただろう。
「捨てるのも残すのも、あなたの気持ち次第よ。でも時々は過去を整理しなさい」と。
疲れた体を横たえ、目を閉じる。明日は月曜日。新しい一週間の始まり。そして明日からもまだまだ断捨離は続く。納屋にはまだ手つかずの物が山積みだし、ガレージのツールボックスも整理が必要だ。だがそれは明日の自分の仕事だ。窓の外から聞こえる風の音を聞きながら、七十二歳の老人は静かに眠りについた。部屋の隅に、これから片付けるべき物の山がぼんやりと影を落としていた。
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