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第3章
86 聖騎士ルファス
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「――到着にゃ」
「こりゃすげえ行列だな」
巨大な門の前は、冒険者やら商人やらで賑わっていた。まだギリギリ夕方だが、街に入る頃には夜になってそうだな。
「何してるにゃ? ついてくるにゃ」
「へ?」
「聖騎士は一々待たなくてもいいんだにゃ。ジグル!」
ユネは行列の横を走って門兵に声をかける。
「おっユネ殿は今日も可愛いなあ! 後ろの男は知り合いかい……まさか、彼氏? ハルティア殿は!?」
「アヤトもハルティアも彼氏じゃないにゃー」
「ってことは俺にもチャンスが?」
「それはないにゃ」
ガックシきてる門兵に、やれやれと呆れて見せるユネ。門付近の冒険者の様子からしても、いつものことなのかね。
「ま、それはともかくとしてだ。ユネの知り合いなら通ってよし。だが絶対幸せにしろよ? もしユネを泣かせたら、アンタが何者だろうと殺しに行くぜ」
「全く何言ってんだかにゃー。ほら、行くにゃ」
なんか凄まれた。どういうことだよ突っ込みきれねえ。
まぁ、ユネがみんなのアイドル的存在なのは確かなのかもしれない。皆にめっちゃ手振られてるし。猫耳萌え文化はこの世界にもあったんだな。
「おお……」
街の中に入っても人の量は変わらなかった、てかむしろ増えた。迷宮街の方もそれなりに人がいたが、こっちは桁違いだ。
ユネを見て道を譲ってくれる人も多いし、聖騎士ってのは結構偉いのかもしれん。
「あ、宿の心配ならしなくていいにゃ。今日のところは教会にでも泊まればいいと思うにゃー」
「ああ、ありがたい」
確かにこんだけ人いれば宿取るのも大変そうだな。ここを拠点に活動する冒険者なら、いっそアパートとか買ってそう。そのシステムがあるかは知らんが。
「こっちにゃ……え?」
「ん、どうしたユネ」
「血の匂いがするにゃ。教会の方にゃ」
ユネが突然駆け出す。ちょ待って速い。足速い。追いつけない。
どっち曲がった? ここ左行ったのは間違いないんだが……
「お、いたいた」
テキトーに進むと地面にへたり込んだユネが見えた。見上げる先には教会。血の匂いなんてしないけどなぁ。猫耳ついてるくらいだしその辺敏感なのかね。
「――ダメにゃ。リフィスト様、リフィスト様は無事なのかにゃ」
「誰だそれ?」
「……や、そこにいるのはユネか。隣の男は?」
「ルファス! 無事だったにゃ? この血の匂いはなんにゃ? 一体何があったにゃ!?」
教会から出てきた男――ルファスは、神父のような服を着ていた。
「まあ、とりあえず中に入れ。君もだ。立ち話するような内容でもない」
促されるままに教会に入ると、中は荒れ放題だった。割れたステンドグラスの破片、真っ二つになった木製の机、崩れた石像、ひしゃげた金属の棒。
床も所々ひび割れて歩きにくい。何があったんだ。
「この椅子はまだ使えるか……これも大丈夫だな。ほら、座れ。茶の一つでも出せれば良かったんだが、生憎神父共のは壊されて使い物にならん」
背もたれが半分くらいなくなった椅子に腰を下ろす。下手なとこ触ったら怪我しそう。
「さて、何から話そうか――」
*
「――神父は気持ち悪いのも多かったし別にいいにゃ。でも、リフィスト様はどこに行ったにゃ?」
「それがわからない。緊急任務以外の聖騎士を総動員して探したが、足跡一つ見つからなかった。既にこの街にはいないかもな」
「うにゃ……でもなんで逃げ出したんだろうにゃ? リフィスト様なら、そんな盗賊ごときちょちょいのちょいだと思うのにゃ」
「さぁ、それは本人のみぞ知るところだ。リフィスト様の部屋には教皇様しか近付けなかったし、俺ですら姿を見たのは一度だけ」
盗賊が来たとか神父が皆殺しとかなにやら物騒だぞ。リフィスト様ってのもそれで逃げ出しちゃったらしいし、結構緊急事態なんじゃね?
「おっと、リフィスト様の件を話すのはまずかったな。君は話さないでくれるな?」
「あ、はい、勿論」
「そうか。ま、念の為死んでおけ」
「待つにゃー! 何してるにゃ!」
「――うおあ!?」
いつの間に剣を抜いた? つーか剣持ってた?
喉元に突きつけられるまで気付けなかった。ヤバすぎる。イカれてやがる。
逃げ出したいのに腰が抜けて立てねえ。
「止めるなよ、ユネ。この話を漏らされて困るのはリフィスト教、そして我々だ」
「ダメだにゃ! どうしてもって言うならぼくが相手になるにゃ」
「やれやれ、君は相変わらずだな。こんな場所で冒険者が一人消えようと、誰も気付かない。問題にもならない」
「大問題だにゃ! アヤトは勇者にゃ!」
一瞬の間の後、ルファスが笑い出す。
「ふふ、はははは! 面白い冗談だな、ユネ。この腑抜けが勇者? 有り得ない。俺の剣すら見えていないようだったし、精々Cランクがいいところだろう。一体何を騙されている?」
「冗談なんかじゃないにゃ。アヤト、一発お見舞いしてやれにゃ!」
いやいやいやいや。何を仰いますか。
「ほれ見ろ何もできないだろう。ユネは騙せても俺はそうはいかない。勇者を騙る人間を何人見てきたと思っている!」
「うわやめろ――遅延!」
なんとか横に転がって剣を避ける。遅延なかったら俺の頭に刺さってたぞあれ。殺す気か。殺す気だわ。
「珍しい術を使うな。それが勇者の証明だと?」
「他にもあるにゃ! それに、ぼくらがやられるような記憶介入にも耐えてみせたにゃ。ハルティアも納得したにゃ!」
「ほう……なるほど色々と偏っているな。実に勇者らしい。王に謁見させるだけの価値はあるか」
キン、と剣を収め手を差し出してくる。
「悪かったな。偽勇者が多くて俺も少し……そう怯えるなよ」
怯えるなっつー方が無理な話だ。いやほんと無理。今さっきまで俺のこと殺しにきてたやつだぜ? 助けてユネ。
「あはは、ルファスも悪いやつじゃないんだにゃ。許してやってにゃ」
「そうだな。詫びと言ってはなんだが、明日一番に謁見できるよう取り計らっておこう」
「助かるにゃ! あ、そういえばここの寝室ってまだあるにゃ?」
「あるにはあるが……寝具はほぼ破壊されているぞ? 掃除もできていないから血の跡も残っている」
どうやら当てが外れたようだな。だがこんな恐ろしいやつと一緒の部屋なんかにいられるか! 俺は自分の部屋に戻るぞ! ……ねえわ!
「ふむ、その様子だと教会に泊まる予定だったな? 孤児院の方に空き部屋があったはずだ。今夜はそこに泊まるといい。案内しよう」
「何から何までありがとにゃー! ほらアヤトも早く来るにゃ!」
「あー、うん」
この瓦礫まみれのとこじゃ流石に寝れないし、なんか神父の霊とか出そうで嫌だしな。
いざってときには多分またユネが止めてくれるだろ。警戒しておくに越したことはないが。
「こりゃすげえ行列だな」
巨大な門の前は、冒険者やら商人やらで賑わっていた。まだギリギリ夕方だが、街に入る頃には夜になってそうだな。
「何してるにゃ? ついてくるにゃ」
「へ?」
「聖騎士は一々待たなくてもいいんだにゃ。ジグル!」
ユネは行列の横を走って門兵に声をかける。
「おっユネ殿は今日も可愛いなあ! 後ろの男は知り合いかい……まさか、彼氏? ハルティア殿は!?」
「アヤトもハルティアも彼氏じゃないにゃー」
「ってことは俺にもチャンスが?」
「それはないにゃ」
ガックシきてる門兵に、やれやれと呆れて見せるユネ。門付近の冒険者の様子からしても、いつものことなのかね。
「ま、それはともかくとしてだ。ユネの知り合いなら通ってよし。だが絶対幸せにしろよ? もしユネを泣かせたら、アンタが何者だろうと殺しに行くぜ」
「全く何言ってんだかにゃー。ほら、行くにゃ」
なんか凄まれた。どういうことだよ突っ込みきれねえ。
まぁ、ユネがみんなのアイドル的存在なのは確かなのかもしれない。皆にめっちゃ手振られてるし。猫耳萌え文化はこの世界にもあったんだな。
「おお……」
街の中に入っても人の量は変わらなかった、てかむしろ増えた。迷宮街の方もそれなりに人がいたが、こっちは桁違いだ。
ユネを見て道を譲ってくれる人も多いし、聖騎士ってのは結構偉いのかもしれん。
「あ、宿の心配ならしなくていいにゃ。今日のところは教会にでも泊まればいいと思うにゃー」
「ああ、ありがたい」
確かにこんだけ人いれば宿取るのも大変そうだな。ここを拠点に活動する冒険者なら、いっそアパートとか買ってそう。そのシステムがあるかは知らんが。
「こっちにゃ……え?」
「ん、どうしたユネ」
「血の匂いがするにゃ。教会の方にゃ」
ユネが突然駆け出す。ちょ待って速い。足速い。追いつけない。
どっち曲がった? ここ左行ったのは間違いないんだが……
「お、いたいた」
テキトーに進むと地面にへたり込んだユネが見えた。見上げる先には教会。血の匂いなんてしないけどなぁ。猫耳ついてるくらいだしその辺敏感なのかね。
「――ダメにゃ。リフィスト様、リフィスト様は無事なのかにゃ」
「誰だそれ?」
「……や、そこにいるのはユネか。隣の男は?」
「ルファス! 無事だったにゃ? この血の匂いはなんにゃ? 一体何があったにゃ!?」
教会から出てきた男――ルファスは、神父のような服を着ていた。
「まあ、とりあえず中に入れ。君もだ。立ち話するような内容でもない」
促されるままに教会に入ると、中は荒れ放題だった。割れたステンドグラスの破片、真っ二つになった木製の机、崩れた石像、ひしゃげた金属の棒。
床も所々ひび割れて歩きにくい。何があったんだ。
「この椅子はまだ使えるか……これも大丈夫だな。ほら、座れ。茶の一つでも出せれば良かったんだが、生憎神父共のは壊されて使い物にならん」
背もたれが半分くらいなくなった椅子に腰を下ろす。下手なとこ触ったら怪我しそう。
「さて、何から話そうか――」
*
「――神父は気持ち悪いのも多かったし別にいいにゃ。でも、リフィスト様はどこに行ったにゃ?」
「それがわからない。緊急任務以外の聖騎士を総動員して探したが、足跡一つ見つからなかった。既にこの街にはいないかもな」
「うにゃ……でもなんで逃げ出したんだろうにゃ? リフィスト様なら、そんな盗賊ごときちょちょいのちょいだと思うのにゃ」
「さぁ、それは本人のみぞ知るところだ。リフィスト様の部屋には教皇様しか近付けなかったし、俺ですら姿を見たのは一度だけ」
盗賊が来たとか神父が皆殺しとかなにやら物騒だぞ。リフィスト様ってのもそれで逃げ出しちゃったらしいし、結構緊急事態なんじゃね?
「おっと、リフィスト様の件を話すのはまずかったな。君は話さないでくれるな?」
「あ、はい、勿論」
「そうか。ま、念の為死んでおけ」
「待つにゃー! 何してるにゃ!」
「――うおあ!?」
いつの間に剣を抜いた? つーか剣持ってた?
喉元に突きつけられるまで気付けなかった。ヤバすぎる。イカれてやがる。
逃げ出したいのに腰が抜けて立てねえ。
「止めるなよ、ユネ。この話を漏らされて困るのはリフィスト教、そして我々だ」
「ダメだにゃ! どうしてもって言うならぼくが相手になるにゃ」
「やれやれ、君は相変わらずだな。こんな場所で冒険者が一人消えようと、誰も気付かない。問題にもならない」
「大問題だにゃ! アヤトは勇者にゃ!」
一瞬の間の後、ルファスが笑い出す。
「ふふ、はははは! 面白い冗談だな、ユネ。この腑抜けが勇者? 有り得ない。俺の剣すら見えていないようだったし、精々Cランクがいいところだろう。一体何を騙されている?」
「冗談なんかじゃないにゃ。アヤト、一発お見舞いしてやれにゃ!」
いやいやいやいや。何を仰いますか。
「ほれ見ろ何もできないだろう。ユネは騙せても俺はそうはいかない。勇者を騙る人間を何人見てきたと思っている!」
「うわやめろ――遅延!」
なんとか横に転がって剣を避ける。遅延なかったら俺の頭に刺さってたぞあれ。殺す気か。殺す気だわ。
「珍しい術を使うな。それが勇者の証明だと?」
「他にもあるにゃ! それに、ぼくらがやられるような記憶介入にも耐えてみせたにゃ。ハルティアも納得したにゃ!」
「ほう……なるほど色々と偏っているな。実に勇者らしい。王に謁見させるだけの価値はあるか」
キン、と剣を収め手を差し出してくる。
「悪かったな。偽勇者が多くて俺も少し……そう怯えるなよ」
怯えるなっつー方が無理な話だ。いやほんと無理。今さっきまで俺のこと殺しにきてたやつだぜ? 助けてユネ。
「あはは、ルファスも悪いやつじゃないんだにゃ。許してやってにゃ」
「そうだな。詫びと言ってはなんだが、明日一番に謁見できるよう取り計らっておこう」
「助かるにゃ! あ、そういえばここの寝室ってまだあるにゃ?」
「あるにはあるが……寝具はほぼ破壊されているぞ? 掃除もできていないから血の跡も残っている」
どうやら当てが外れたようだな。だがこんな恐ろしいやつと一緒の部屋なんかにいられるか! 俺は自分の部屋に戻るぞ! ……ねえわ!
「ふむ、その様子だと教会に泊まる予定だったな? 孤児院の方に空き部屋があったはずだ。今夜はそこに泊まるといい。案内しよう」
「何から何までありがとにゃー! ほらアヤトも早く来るにゃ!」
「あー、うん」
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