転生ニートは迷宮王

三黒

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第5章

136 イヴェル

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 やっぱりというかなんというか、召喚士抜きでも攻略隊はそこそこ強かった。
 対マンティコアで二人死んだが、それでも三人残ってるからな。レイみたいに大罪パワーでゴリ押したわけでもないし、ボスの相手も慣れてる感じだ。
 道中の罠やら挟撃やらへの対応も悪くない……というより、完璧だった。こう言っちゃなんだが、探索が本業の奴らよりも攻略が上手い。攻略隊ってだけあって、かなりしっかり迷宮について調べてきたんだろうな。
 
 リフェアたちの影も、後衛の魔術師が全て倒している。遠隔操作とは言えあのレベルを一人で捌き切るのは凄い。ぶっちゃけ困る。もうちょい苦戦してくれ。
 聖騎士でもないのにガッツリ聖浄リファイス使えるのどうなってんだ。チートか? それともあいつも元聖騎士なのか?
 あまりにも進みが早いようならサボりのリフィストに聖雷イクセアリとか撃ってもらうが、それは最後の手段にしたいな。つーか地下51階からは普通に死ぬし、流石に速度は落ちるだろ。
 
 召喚士の方はあれから眠りっぱなしだ。気絶してから少しして騎兵も消えたが、アルデムによれば術が一時的に解けただけだとか。召喚術に詳しくないからよく分からんが、一応あいつを運んだ部屋の周りには結界を張ってもらった。再召喚されてここで暴れられるとか最悪だしな。
 にしてもいつまで寝てんだか。使い魔とのパスが強制的に切れたのが原因って話だが、それでも普通はここまでにはならないらしい。身の丈に合わない使い魔を使役してたのか……だが仮にも宮廷筆頭召喚士アルクコンスだぞ。謎は深まる一方ってやつだ。
 
(マスター、件の召喚士が目を覚ましました)
(おおマジか! 様子はどうだ? 拘束具が壊れそうなら土鎖グライドとか使っていいぞ)
(それが、その……暴れるということはないのですが……)
 
 どことなく歯切れが悪い。レルアも予想外の何かが起こったな。
 
(あー……了解。今からそっちに向かう)
(あ、ありがとうございます。私はリフィスト殿を呼んで参ります)
 
 リフィスト? あいつが必要なほどヤバいのか。
 魔力暴走スタンピード――ってわけでもなさそうだしな。特別強力な魔力を感じることもない。
 まあ暴れてはないらしいし安全ではあるんだろう。俺が行くつっても止められなかったし。
 
 召喚士はこの階層の奥の更に奥、新しく作った牢屋チックな部屋に閉じ込めてある。出入りの部分は関係者専用ゲートと同じ認証システムだから、勝手に出てこられる心配もない。どこぞの聖騎士みたいに声だけ通すのは可能かもしれないが。
 ちなみに拘束具ってのはジョークグッズの手錠だ。それ自体には魔力制限の機能とかもない。一応金属製だし鍵もあるが、多分本気になったら秒で壊れる。
 
「やあ、おはよう! 元気か?」
「誰だ……いえ、どなたですか? リフィスト様はどこです?」
「リフィスト? あいつならまあ……その辺にいるんじゃねーか?」
「り、リフィスト様を呼び捨てに……!? 貴方は一体……?」
 
 そういや一般リフィスト教信者にとっては信仰対象だったな。まあ今は俺の仲間で一応使い魔だ。……身の丈に合わない使い魔にもほどがあるだろ。
 魔力を供給するタイプの契約だったら俺三秒で死にそうだな。あいつ燃費悪そうだし。
 
「リフィストの雇い主ってとこだな。あいつは俺の使い魔だ」
「使い魔……ってことは貴方が全天使を束ねるという……!?」
「ま、そういうことになるな」 
 
 調子乗って肯定したが、別に全天使を束ねてるわけじゃない。神ではないぞ。まあいいか。
 
「と、とんだご無礼をお許しください!」
「ははは構わん構わん」
 
 ここまできたらそういう設定でやりきるぞ。下手に敵対するよかマシだろ。
 
「マスター」
「ああ! リフィスト様!」
 
 扉を開けて入ってきたのは、何やら困り顔のレルア。
 
「ですから、私はリフィスト殿ではないと」
「なるほど、他の天使様だったのですね! これは失礼いたしました! リフィスト様はこちらに……?」
「はい。私の後ろに……リフィスト殿?」
「全く騒々しい。我を崇めるのはいいが、もう少し静粛にせよ」 
 
 やっほーリフィスト。お前がサボりにサボってるのは知ってるぜ。
 
「はん。真打とは遅れて登場するものよ」
 
 真打ねえ。まあさっきも言った通り、奥の手的最大戦力ではあるんだが。
 
「リフィスト様! リフィスト様なのですね!」
「いかにも」
「文献での情報よりもずっと可愛らしいお姿だ……ぜ、是非握手を! 写真も一枚!」
「……ほう? 聞いたか童。ぬしの予想は、あながちハズレというわけでもなさそうであるの」
 
 聞いた聞いたぞリフィスト。今写真とか言っただろこいつ。クロだ。確保ォ!
 
「あー、単刀直入に聞きたいんだが、イヴェルくん。ずばり君の生まれはこの世界ではないね」
「? いえ、この世界ですし、シレンシアの生まれですが……」
 
 おいハズレじゃねえか畜生め! リフィスト! おい!
 
(ええい知らんわ! この世界に写真など存在せぬ! ぬしの予想通りと考える方が自然であろうが!)
(ああそうだな! 悪かった!) 
 
 見た目だけ異世界人になった同郷の民だと思うじゃん。外国人ならまあ有り得そうな感じだし。自信満々に言っただけに恥ずかしいぞ。
 
「僕は下級貴族――ソルテフィルク家の三男です。生まれも育ちもシレンシアで……別の世界? そうだ、写真とは? 僕はなぜそれを知っている……?」
 
 いいや、やっぱり間違いでもないのか。生まれも育ちもシレンシアって言葉に嘘はなさそうだが、恐らく何かある。本人も完全には把握してない何かが。
 
「こんなことが何度もあるんです。ちょうどロロトスを再召喚したあたりから……そう言えばロロトスは? ――来いリコスト!」
「ああ、君の使い魔は呼び出せないようにしてある。最深部は居住区も兼ねてるからな。あんなデカいのが暴れ回ったらひとたまりもない」
「最深部? なんのことです? ここは天界じゃ……?」

 おいおい、こんな殺風景な部屋のどこに天界要素があるんだよ。それともリフィスト教ではそう教えてるのか?
 
(そんなわけなかろ。冗談を言ってるようにも見えんがの)

「迷宮の最深部ってことだ。で俺はここの主。おーけー?」
「迷宮……の……主」 
 
 なんだこの空気。俺なんかまずいこと言ったか? いいだろ神が迷宮王でも……だめなのか?
 
「エルイムを滅ぼしたのは……父上と母上を殺したのはお前か! 許さない!」
 
 言うが早いか手錠をぶっ壊して腰の細剣を抜く――が、レルアが軽く手を丸めると、細剣は持ち手から消滅した。
 
「マスターにそのような穢れた殺意を向けようとは――」
「ああ、天使様もこいつに操られてるんですね。でも僕がこいつを殺せば!」 
「――望み通り、天に送って差し上げましょう」 
「まま、待て待て、待てって落ち着け! まだこいつには聞かなきゃならないことがある。だろ?」
 
 ここでうっかり殺すとアイラも死ぬことになりかねない。そんなのは嫌だからな。
 
「! ……失礼しました――土鎖グライド
「っ! ぐ……」
 
 レルアの手から伸びた土の鎖が、イヴェルをかなりキツめに縛り上げる。
 
「とりあえず俺は部屋に戻る。今召喚のことを聞いても、何も喋っちゃくれないだろうしな」 
「私にお任せくだされば、すぐにでも割らせてみせますが」
「いや、大丈夫だ。秘策がある。二人も一旦自由にしといてくれ」 
 
 秘策ってのは嘘で、実は何も考えてない。
 だがレルアには極力こういう汚れ仕事みたいなのをさせたくないんだ。まあこんな我儘でアイラを殺すわけにもいかないし、いざとなれば頼らざるを得ないわけだが……。
 とにかく、やれる限りはやってみよう。
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