転生ニートは迷宮王

三黒

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第5章

138 召喚術式

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 あれから数日。アイラの召喚術式は完成に近づいてるらしい。
 昔のアイラの方も交えて、なにやら俺には理解できない難解な話をしている。朝から晩まで一日中。
 イヴェルが上手く言ったらしく、パーティの奴らには帰ってもらえた。万が一向こうで処刑されるとかになったら後味悪いな――イヴェルは否定してたが。そんなことにはならないでほしい。
 
「昨日の件だけど、一晩考えてみた。理論上は可能なはずだ」
「……それでも、時空間の座標を一致させないと無理なはず。それに関しては?」
「僕は複数の魔術結晶を術式に組み込めればと思ったんだけど……」
 
 そうそうアイラ。話を聞いてて思ったが、どうやらアイラは俺の時代の人間じゃないらしい。
 恐らくは未来――それも下手すりゃ数十年レベルで先の。
 組織とやらの影響なのか、謎の科学知識が多すぎる。あの歳の子が知ってるはずがないようなやつ。
 ''十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない''なんて言葉があったが、逆もまた然りなのかもしれない。アイラはこっちの魔術を見ても基本的に納得してたし。詠唱はプログラムを実行するパスに似てるとかなんとか……。 
 
「悪くはないが、それでは時間がかかりすぎる。そうは思わないか?」
「……うん。長々と実験してる余裕はない。もっと簡単に、直接時空に干渉する方法があればいいんだけど」
 
 時空干渉? もしかして俺の出番か?
 
「ふむ。マスターの時空魔術であれば、その問題も解決できるやもしれませんな」
「時空魔術!? 魔術結晶一つでシレンシアの一等地に家が買えるっていう、あの!?」
「い、いやその、そんな期待しないでくれよ。数種類しか使えないニワカ時空魔術師だからな」 
「……転移ラムルト以外にも種類が?」
「ん? 一応あるにはあるが」
 
 これは……もしかしなくても……チートスキルだったパターンだな。分かるぞ。
 思えば、転移ラムルトの魔術結晶も聖宝とか呼ばれてたしな。そもそも時空魔術自体がとんでもなくレアらしいし。今ほど自分が時空魔術使えて良かったと思ったことはない。
 
「本当に!? それは凄い、その力をシレンシアに提供すれば魔術の歴史が変わる!」
「まあ有名になる気はないんだが、つまりこれでアイラを救えるんだな?」
「残念だ……けど、確かに今はそんな話をしている場合でもないか。とにかく、時空魔術があれば成功確率が格段に上がるのは確かだ。アイラさんの言う座標一致はできそう?」
「座標一致……ね」 
 
 なーんも分からん。座標ってなんだ。あのグラフ書いてどうたらってやつで知識が止まってる。
 
「……マスター、元の私を特定の場所に呼ぶことは可能?」
「いや、念話も届かなそうだしな……どうだろう」
「我々は使い魔として契約しているはず。再召喚を試してみては?」 

 再召喚か。召喚の仕組みは本来のものと違ってるっぽいし、成功するか微妙なとこだ。
 まあやったことないしやってみるか。折角召喚のエキスパートもいるわけだし。
 
「そうだな。可能性があるなら試してみたい――イヴェル、方法教えてもらえるか?」
「うん。僕ので良ければ。と言っても一般的なものだし、複雑な仕組みでもないよ」 
 
 俺のが一般的じゃないからあまり安心はできない。
 まあ言葉に嘘はなかったようで、仕組み自体は単純だった。諸々のセッティングと簡易的な陣の設置はイヴェルがやってくれたし、俺は仕上げの詠唱をするだけだ。
 
「――来いリコスト
 
 ……
 …………反応なし。失敗か。
 
「駄目か……。普通はこれで上手くいくんだけどね」
「失敗してものは仕方がない。先に融合の術式の方を完成させるのはどうか?」
「ふむ。マスターの時空魔術でどこまで可能なのかも不明ですからな」  
「……とりあえず、どちらか一方だけでも一致させる必要がある。マスターも手伝って」
 
 努力はするが魔術素人が加わっていい会話じゃないぞそれ。時空間を一致……そんな魔術あったかね。
 ――ある。あった。魔術じゃないし時空でもない、どちらかっていうと迷宮側の機能に近い部分だが、使い魔呼び出しとかいう最強のシステムが。

「なあ――」
『侵入者です。数は一。音量自動調節を実行します。範囲を侵入者周囲に設定しました』
 
 侵入者? マンティがやられたのか。……ソロ?
 しかしなんだってこのタイミングで。実力と所属によっちゃまた対策しないとだぞ。ただの探索者ならいいんだが。
 
「どうした?」
「ああ、新たに探索者が来たみたいでな。少し外す」 

 えーと、モニタモニタと。最近知ったが、強く念じるだけで勝手に出てきてくれるらしい。わざわざウィンドウオープンとか叫ばなくても良かったわけだ。
 
『侵入者周囲の映像を映し出します』
 
 薄桃色の巻き髪の、どこか上品な雰囲気の少女。服は白を基調とした貴族服……少なくとも迷宮に着てくる服じゃないな。舐めプか? でもソロでマンティ三兄弟ってるしな。
 嫌な予感というか既視感がある。見た感じ傷一つないし余裕そうだし。そんな戦えそうなタイプじゃないし。リフェアと全く同じだ。
 緊急会議を開くべきか。だがまだ大罪って確定したわけじゃないしな。そんなホイホイ来られても困る。
 
 ……一旦は様子見だ。武器は細剣らしいが、実際に接敵するまで分からない。
 およそ剣を振れるとは思えないほどの華奢な腕だが、ソロ攻略ってことは魔術一筋じゃないんだろうしな。細剣ならギリギリ振れるのか……それとも魔術で軽くしてるのか。
 とか考えてると、早速ラヴィアンスとご対面だ。二体が同時に襲いかかるが、少女はまだ動かない。
 だがアンスに気付いてはいるようで、腰の細剣の柄に手をかける。
 一体が残り数メートルまで近付いたところで、左腕を前に突き出す。瞬間、二体のアンスは同時に凍りつき、少女は二発の突きでアンスを氷ごと破壊……殺した。
 
 どっちだ。契約者か、そうでないか。
 頭の中の審判も、難しい顔で腕を組んで唸っている。英才教育を受けた貴族ならありえなくもないのか?
  だが詠唱もしていない。詠唱せずにあの威力は普通なのか? 大罪の能力強化を受けてはじめて出せるレベルなら黒だろうが……。
 一人で考えてても仕方がない。会議だ会議。くだらないことで招集かけてるわけじゃないし許してくれ。

(――ってことで集まってくれ!)
 
 元々数人リビングにいたので、割と集まるのは早かった。ついでだしイヴェルにも意見聞くか。最近のシレンシアを知ってんのはこいつくらいだろうしな。
 
「さて、まずこれを見てくれるか」
 
 先ほどの様子は動画に残っている。システムが自動録画してくれるからな。有能。
 
「これは……!」 
「お、どうした?」
 
 意外なことに、一番最初に反応したのはイヴェルだった。この子のこと知ってるのか? 有名な貴族冒険者だったり?
 
「彼女は――セシリアは、僕の友人だ」
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