転生ニートは迷宮王

三黒

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第6.5章

175 突入

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「さて、こうなっちゃった以上は別行動だ。一応最初に確認したいんだけど、まず俺らの目的は融和、そうだよな?」
「うん!」
「……ああ」  
「よし、それじゃ突入経路を考えよう」
 
 これが一番の問題だ。融和を目的とするなら正門から堂々と入っていけばいいような気もするけど、今は先遣隊が派手な爆発騒ぎを起こしてる。混乱のただ中に突っ込んでいっても時間を無駄にするだけだ。
 それに、来ていきなり魔王に会うっていうのも多分無理だ。手続きとかが必要だろうし、融和の使者の前例もなさそうだし。場合によっては、僕らを捕まえて首を落とした方が話が早いと考えるかもしれない。
 でも、その部分を考えすぎてもエリッツさんが先に到着することになる。そうなると終わりだ、僕らに弁解の余地はない。
 ……そもそもエリッツさん一人で魔王を倒すのは無理なんじゃないのかな。死ににいく雰囲気ではなかったけど、魔王に通用するほどの力を持ってるとは思えない。
 
「うーん、やっぱり難しそうだな。裏から回るしかないか」
「エリ姉を追いかけるのは?」 
「それじゃ別行動の意味がないだろ。……いや、この倉庫から城裏手までのルートは使えるか」

 そういえば、小屋までの道で移動経路の説明をしていた気がする。元々エリッツさんに着いていくつもりだったから、よく聞いてなかったけど。

「誠はどう思う?」
「他にいい案も思い付かないし、城までは同じでもいいんじゃないかな」
「だよな。考えてる時間も惜しいし、俺らも移動を始めよう。目指すは三階の王の間とかいう場所。戦闘は極力避けて、どうしてもってときは無力化を狙う」
 
 いかに正門が騒がしいとはいえ、城内の警備が緩くなってるってことはないだろうし、ひょっとしたら逆の可能性もある。
 でも龍牙の言う通りなるべく戦わない方がいい。怪我程度ならまだしも、殺したりなんかしたら大変なことになる。
 
「準備はいいか? 俺が先頭を行く。はぐれるなよ――創造クリエイト加速アクサール!」 

 龍牙の後を追って僕も走り出す。緊張してきた。
 

* 
 
 
「侵入者だ! 逃がすな!」
「連絡通路を封鎖しろ――」 
「――創造クリエイト土壁グラムロ!」
「――うあっ!」 
 
 追ってきていた魔族は、下からせり出した壁に弾き飛ばされて沈黙した。今度は前から来る――見えるだけでも三人、解析アナライズで正確な人数を計ってる暇はない。何人いようと正面から突破するしかない。
 正直、想像の100倍は警備が厳重だった。僕らが突入した時点では内部で騒ぎは起こってなかったから、エリッツさんはこれを見越してどこか見つからないルートを選んだのかもしれない。
 戦闘の回避なんてできるはずもなかった。走っても走っても新手が来る。幸い僕らの方が足は速いんだけど、これだけ走り続けてると流石に息が上がってくる。元々運動は得意じゃないんだ。
 とてもじゃないけど、短剣術でサポートなんてできない。この暗さなら目くらましは効果的だろうけど、それでも省略には限度がある。陣を刻んでる間に捕まりかねない。
 
「シエル、あれを!」
「おっけーっ! ――魔術防壁マジックバリア!」 
 
 僕とシエルの周りに透明な結界が展開された。つまり、僕らを巻き込むような大技を決めるってことだ。
  
「――創造クリエイト昏睡スナイド!」
 
 ――喧騒が止んだ。
 最初に動いたのは、龍牙の目の前にいた二刀の魔族だった。逆手に構えた刃を振り下ろすその姿勢のまま、音もなく崩れ落ちる。
 その後ろから走ってきていた魔族も、同様に術発動時の姿勢のままバタバタと倒れていった。即死する毒ガスがあったらきっとこういう風なんだろう。想像して、少し寒気がする。
  
「っふー……上手くいったか」
「ナイスだよリョーガ! この調子なら解呪防壁ディスペラーシルトを使う必要はなさそうだね?」 
「だな。だが俺の方も結構魔力が限界だ。魔力切れも近い」 
 
 あの龍牙が魔力切れなんて信じられない。今までいくら魔術を使っても平気な顔をしてたのに。
 でも考えてみれば、ここまでの戦闘は普通の魔物退治とはわけが違った。まず数が多いし、相手は人だし、そして殺すわけにはいかない。
 いつもと魔術の使い方が全然違う。当然魔力効率も落ちるし、龍牙が魔力切れを起こすのにも納得だ。
 
 ……納得してる場合じゃない。僕らはまだ二階に着いたばかりだし、王の間に近付けば近付くほど警備の数も増えるはずだ。
 勿論シエルも妨害系の魔術は使えるけど、高火力で敵を吹き飛ばす方が得意……というかそれがメインだ。龍牙と同じ役割は任せられない。
 ルインに出てくる気配はない。まああいつが役に立った場面なんて数えるほどしかないし、元から期待もしてないけど。
  
「また来るぞ、だがこれを越えれば三階だ!」
「ボクからいくよ――氷界シャルジア!」 
 
 シエルの手から伸びた冷気が、警備兵たちの足だけを的確に凍らせ、床に縫い止めていく。流石シエル、中級天使ヴェーラミストってなだけある。見事だ。
 ただやはり魔力消費は激しいらしく、一発使っただけで既に少し辛そうだ。
 
「マコト! 危ない!」 
「え――」 
 
 シエルが僕に向けて叫ぶ。短剣を抜こうとしたその瞬間、誰かに突き飛ばされる感覚があった。
 
聖雷イクセアリ――っ!」 
 
 振り返ると、そこにいたのはルイン。脇腹に槍が掠ったらしく、押さえる指の間から血が滲み出ていた。 
 
「ルインちゃ――」 
「私のことはいい――勇者を支援しろ! 貴様もだ無能、足を引っ張るな!」
 
 龍牙の方にも増援が来ていた。どこから出てきたのか分からないけど、少ない魔力で対応できる数じゃない。ここは任せて龍牙の方に向かおう。
 
「――創造クリエイト具現化リディア! シエル!」
 
 龍牙がシエルに投げて渡したのは――見間違いじゃなければ、木刀。
 
「ありがとリョーガ! よーっし、やっちゃうよ!」
 
 襲い来る警備兵をバッタバッタとなぎ倒す背中は頼もしい。この隙に僕も……
 
祓魔の陣エクソス!」  
 
 急いで陣を刻んで、龍牙とシエルのいないタイミングで爆発を起こす。爆発と言ってもこの粗さ、かなり小規模なものだ。魔族は体が丈夫らしいし、軽く吹き飛ぶくらいで死ぬことはないはず。
 
「俺とシエルで道を開く! 誠は先に行け!」
「え、ああ!」
創造クリエイト加速アクサール!」
  
 体が軽くなる。反射的に返事したけど、僕一人で三階に? 無茶だ、警備兵から逃げ切れる自信はない。
 もし王の間まで辿り着けても、僕は龍牙ほどの話術もコミュ力もない。失敗できないのに。
 
「そう不安そうな顔すんなよ、すぐに追いつく! 頼んだぜ!」
「……了解」 
 
 仕方ない。ここにいても危ないことには変わりないし、今はただ走るだけだ。
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