転生ニートは迷宮王

三黒

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第8章

239 繋後

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***前半アイラ視点、後半ロロトス視点です。***



「……行かせない」
「っ、どいてよ!」
「貴女は私が止める。――風撃閃ウィラーセル」 

 シエルはここで止めておかないと。先に協力してエリッツを倒す予定だったけど、下手に二対二をすると連携の差で負ける。
 
「邪魔だよっ――聖浄リファイス!」 
 
 躱せる。本来ならこの距離の魔術を躱せるはずがないし、それは階級が低くても変わらないはず。やっぱり何か――

「やあああ!」
「っ、」
 
 斬撃は槍で弾く。短剣でいなしきるのは難しいし、この広さで一対一なら槍の方がいい。   
     
「ロロトス、聞いて」
「何ぞ!」
「勇者以外は多分死者。だから存在ごと殺して」
「相分かった!」 
 
 これでいい。シエルのとどめもロロトスに頼みたいところだけど、殺さずになんて悠長なことをやっていたら死ぬのは私。
 
「――炎撃突ファランタ
 
 距離を詰めてこちらから仕掛ける。蘇りの人形だとしても、守りに徹していてはいずれ限界がくる。 

「舐めないでよ――」
 
 シエルの魔力が跳ね上がり、周りの素因エレメントが騒ぐ。
 
「――今のボクは、前よりも強い!」 
 
 白く光る槍を作り出した――それはリフィスト様の。術だけでなく、その魔力までもが。
 
「く――っ!」 
 
 突きを弾こうにも、先ほどまでとは段違いの威力に逆に吹き飛ばされる。

「――隠蔽バルド」  
 
 幸い追撃はしてこなかったので、着地と同時に姿を隠す。ただリフィスト様の力を継いでいるなら、こんなもの気休めにもならない。
 
「視えてるよっ!」 
「――白煙モックル!」
 
 何かがおかしいとは思ってた。
 そもそも創造クリエイトを使うのはもう一人の勇者だったはず。その力が移っていて、もう一人は死んでいる。それはつまり。
 
「ここだ!」
「――風壁ウィレンダ!」 
  
 壁を貫通してきた槍をすんでのところで躱す。何も策が思い浮かばない。
 とにかく、もし仮説が正しいなら存在ごと殺すのは得策じゃない。その術さえも奪われる可能性があるから。
 これをロロトスに伝えないと。
 
 ……声が、出ない。
 
「あ、気付いた? 少し前に封言シラード掛けておいたんだ!」
 
 今度はシエルの方から距離を詰められる。回避、しきれない。
 
「ボクは一生懸命投げてるのに、躱すキミが悪いんだよ?」
 
 突き出された槍を弾く……弾こうとした。甲高い音と共に、私の得物は真ん中から折れた。
 
「じゃあね!」  
 
 シエルが槍を構える――駄目だ。私はここまでみたい。
 後は頑張ってね、彩人マスター
 
 
 
* * * 
 
 
 
「――聖浄リファイス!」 
「効かぬなぁ!」
 
 拍子抜けだ。聖騎士の様な格好をしてはいるが、繰り出す斬撃は羽の様に軽く、撃ち出す魔術にはゲダのくしゃみほどの威力も無い。
 案内の娘は此奴等を死者と呼んだが、蘇らせて使うほどか? 勇者とやらの趣味だとして、戦闘に参加させる意味があるか?
 
「そろそろ終いにするか、人族の娘!」 
  
 我が友らの方も手伝ってやらねばなるまい。近く終わるやもしれぬが、友の魔力がその劣勢を語る。
 
「我に単独挑んだ愚かなまでの勇気、その一点だけは褒めてやろう!」
リファ――」
「――聖雷イクセアリ!」 
 
 娘の術を握り潰す、その腕を何者かに貫かれた。
 
「ぬ――闇鎖ダレイド!」 
 
 大きく跳んで鎖を躱すは、天使。
 勇者は己一人で十分だと踏んだか。やはり友らの劣勢は確実。
 
「――刻魂鎖獄ディガスレイド!」 
 
 聖騎士紛いの存在を地の深くに繋ぐ。地からの強大な引力に抗えるはずもなく、紛い物は沈み、消えた。
 
「先ずは一人!」 
「エリ姉!」 
 
 地面に槍を突き刺す天使。無意味だ。あの紛い物の存在は、最早我々の手の届かぬ領域にある。
 
「――闇槍ダスペア!」 
「この――っ」 
「――我が獣よノィ・ネンゼル!」 
 
 此方の槍が破壊されるのは想定済み。むしろ相手に得物を振らせる為にわざわざ槍を用意した。
 
「――闇爪ダグシス」 
 
 び出した獣を纏い、操り、その巨大な爪で天使の身体を地に縫い付ける。
 
ディス――」 
「――闇牙ダグラント」 
 
 解呪ディスペルの隙を与えずに、続けてその喉に太い牙を突き立てる。

「カ、ハッ……」 
  
 鮮血、致命傷。天使とはいえ所詮は死者か。
 
「――創造クリエイト解呪ディスペル」 
「――貴様は!」 
 
 勇者が此方に現れ、友の魔力は感じられない。
 
「弔合戦か!」
「いいや、シエルは死なないよ――創造クリエイト治癒ヒール」 
  
 素因エレメントが騒ぐ。柔らかな陽射しの如き光が集まり、天使の傷が塞がった。
 
たた……ありがと、マコト!」 
「どういたしまして。シエルは少し休んでて、こいつは僕がやるよ」 
「グァハハ! 貴様が、この我を! やってみよ――具現化リディア!」 
 
 とは言ったが、根拠無き自信という訳でも無い様子。近接戦闘、短期決戦で治癒ヒールする間も与えずに片を付ける。
 
「ほれ!」
「――創造クリエイト吹風ウィレスカ」  

 上手く距離を取られた。只の踏み込みでは間に合わんな。
 だが咄嗟に剣を振ることはしなかった。構えも素人、やはり近接戦闘は不慣れか。
  
「やるね」 
「グァハハハ! 元覇軍軍団長ネヴァント・エティウス、小僧ごときに後れは取らぬ!」
「どうかな――創造クリエイト風衝ルウィズ」 
「ハッ!」 
 
 剣で術を打ち消す。見た目と雰囲気からは想像もできない威力ではあったが、わざわざ解呪ディスペルを使うほどでも無い。

「――加速アクサール!」 
  
 効果を一瞬に限定して、ゼレィトスの最高速度を超える。
 
「――終わりだ、小僧!」
「マコト!」  
「――闇鎖ダレイド!」
 
 計八本の鎖。その内四本を天使の妨害、四本を勇者の拘束に使う。
 我が剣が勇者の胸を貫通する――勝ったという確信があった――が、同時に違和感があった。
 此奴は、本物か? 人間というよりは、無限に湧いてくる中身の無い人形の様な。まだ死者共の方が生物味がある。
 
「――闇壁デアーダ!」 
「ああ、流石に気付いたか」 
 
 殺気を隠すのが下手すぎだ、素人め。
 だがいつの間に偽物と入れ替わった? まさか最初から……とは言うまいな?
 
「じゃあ、続きといこう――創造クリエイト具現化リディア!」 
 
 先程と同じような剣を作り出す勇者。己の偽物の死に様は見ていた筈――しかし何か策を練るような時間はなかったのも確か。
 
「――加速アクサール」 
「――創造クリエイト加速アクサール!」 
 
 成程。だが我の速度には遠く及ばん。
 
「――ぬ!?」 
 
 何と、またも偽物か。ここまで近付いて初めて分かるとは。

「これも駄目だったか」   
 
 同じように現れる勇者。既に術の中に? いいや、それならもっと世界そのものに違和感が出る。この小僧がこれほど完璧に作り出せるはずもなし。
 ならば、
 
幻影ファントムか!」 
「正解」 
「――闇鎖ダレイド!」 
 
 舐められたもので、勇者は――幻影ファントムは、避けることもせずに鎖に貫かれ、消えた。
 
幻影ファントム程度なら連展複式クインテで五体までいけるんだ。無詠唱で、一度にね」   
 
 あそばれている。
 
「少し前に殺したリッチのお陰だ、感謝しないと」 
 
 癪だが、そう認めざるを得ない。
 子供のような振る舞いながら、その力は確かに我を上回る。
 
「考え事? じゃあ僕からいくよ」 
 
 先の騎士に施した封印術を試すか。得意では無いが、何も残せないよりかは良い。
  
創造クリエイト――」
「――我に従えサレゲン・ノァ!」

 先ずは意識の集中していない左腕から奪う。
 
創造クリエイト解呪ディスペル――」
 
 無駄だ。
 
「――創造クリエイト解呪ファスト!」 
 
 無論それも効かん。大昔に対策済みだ。発動の瞬間だけ僅かに隙があるが、それに気付かれたことは無い。
 
「シエル! 僕の腕を斬り落とせ!」
 
 判断が早いな。だが計画通り左腕は既に我の物。
 そして、天使を止めない理由も無い。
 
「――闇鎖ダレイド!」
 
 本数が少なかったとはいえ、これを躱すか。ならば此方は諦める。
    
「我と共に死ぬのだ――刻魂鎖獄ディガスレイド!」
「シエル!」
「うん――ええいっ!」 
「ぐ、ああ!」 
 
 今の術式は我に対する予約術式。我の死までは発動せんが、彼奴の肉体は我の物となり始めている。
 
「――治癒ヒール!」 
 
 傷を塞げようと、出血を止められようと、
 
「侵食は止まらぬ!」
 
 我に結びつけた故、我が蘇るまでの間ではあるが。それでも勇者を封じられれば、後は如何どうとでもなろう。
 
「どうかな――止界テルメス
「何――っ」

 時空間を凍結したか。この時代にその術を使う者が。

「繋がれたいなら一人で勝手にやっときなよ――創造クリエイト闇鎖ダレイド」 
 
 本数こそ少ないが、その頑丈さはまるで、我の。
 
「――創造クリエイト大聖浄エル・リファイス連展複式トリプル」 
 
 眩い光が視界を覆い尽くす。よもやこれ程迄に力の差があろうとは。
 だが左腕は封じた。これを上手く活かせよ、我が友の恩人よ。
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