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承安3年(1173年)
大江広元の参入と西国への出立
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承安3年(1173年)私は17歳になりました。
義仲様と武田信義様の娘である安寿姫との間に息子である高寿丸が生まれました。
平清盛は1162年から改修工事を行っていた、摂津国・福原の外港である大輪田泊(現在の神戸港)
の拡張工事である、日本初の人工島「経ケ島(きょうがしま)」を完成させました。
これにより旧来九州の大宰府が独占していた宋との貿易を摂津という京の都に近い場所でも行うことが可能になったのです。
また宋船は若狭国や越前国にも沢山来航してきていました。
本来朝廷は博多へ戻るように指示をしていたのですが、結局はウヤムヤになり若狭や越後も日宋貿易や高麗貿易の隠れた拠点となっておりました。
若狭屋が大陸のいろいろなものを信濃へ持ち込めたのもこのためです。
瀬戸内海を通るよりも若狭あたりへ着く方が宋船にとって瀬戸内の海賊への通行料を払う事もなく航海の時間も短縮でき便利でしたし。
日本の若狭の輸入業者にとっても若狭から琵琶湖までは陸路を琵琶湖から京の都へは水路を使えば良いため輸送も楽だったのです。
ある日のことです。
小百合が部屋にいた私のもとにやってきて来訪者があることを告げました。
「堀川鬼一法眼殿が人を伴ってやって参りました、いかがいたしますか?」
「お会いしましょう、寝殿へお通しして下さい」
「承知いたしました」
私は身なりを整えると、寝殿へ向かいました。
寝殿で待っていたのは堀川鬼一法眼殿と文官束帯姿の男性でした。
私の姿を認めると堀川鬼一法眼殿が文官束帯姿の男性を紹介します。
「巴殿、大江広元殿をお連れいたしましたぞ」
「ご紹介に預かりました大江広元でございます」
「はじめまして大江殿。
あなた様も我が父の縁戚の方でいらっしゃるとおききいたします」
「ええ、その縁もありまして此方へ参った時代です、最近は平安京の都では火事が多く我が屋敷も、燃えてしまったゆえ」
そう言って彼はため息を付きました。
義仲様に聞いていたものの京の都の治安状態は本当にひどいもののようですね。
「事情はわかりました、大江殿、あなたには松本の問注所と侍所の長となっていただきたいのですがいかがでしょうか?
無論相応の報酬と食料は出させていただきます」
彼は一瞬考えたようですがすぐに頷いてくれました。
「なるほど、ありがきことです。
かしこまりました、お受けいたします」
「ありがとうございます」
私は彼に頭を下げました。
さて、これで信濃国内の情報網、内政や治安維持、軍備、朝廷工作などの基礎的な準備はできたとおもいます。
ならば今のうちに自分の目で京や福原、讃岐に足を運び様子を見ておきたいところです。
隊商を装って情報収集のために戸隠大輔様のお弟子様をお借りして、護衛に歩兵から10人ほど連れて行けば、まあ大丈夫でしょう。
つなぎ作りための献上品として絹の反物や衣装などを馬の背にくくったリ猫車に積んだりして、準備を進めます。
天神の長は義仲様に、兵の鍛錬の取りまとめは戸隠大輔様に、各兵科ごとの取りまとめは今まで通り義経一行にやってもらえば大丈夫でしょう。
松本の政務は大江殿に、農作業や開拓などの指導は宋人の男女に任せておいても大丈夫でしょうしね。
東山道を西に進み天気などが良ければ10日ほどで京へは到着できるはずですね。
信濃国(長野県)を出立して美濃国(岐阜県)を進み、もうすぐで近江国(滋賀県)に差し掛かろうかという所まで来たときのことです。
森の中を通る私たちについてきた姿を消している貴狐天皇が私に囁いてきました。
『ふむ、森の中を大勢の人間が動いておるの、どうやら囲まれとるようじゃぞ』
私も一行を止めて気配を探ろうとしたときに、前方の木々間から人が出てきました。
『どうやら野盗の類じゃな』
「そのようですね」
ざっと左右の森から私達の行く手をふさぐようにみすぼらしい姿の男たちが20名ほど出てきました。
「おおっと、そこで止まりな、お前らここを通りたければ金目の物と食料、それと女を全部置いていきな、そうすれば男ども命だけは助けてやるぜ。」
「ふひひひ、女はなかなかの上玉じゃねえか」
うーむ何で野盗というのは皆同じようなセリフを吐くのでしょうね。
「やれやれ、お断りしますといったらどうなるのですか?」
「ああ?動けなくなるまで痛めつけてその後は代わる代わるってやつだ」
いやらしい下卑た笑いが野盗から上がりました
「きひひひひ」「ひゃははは」
頭らしい男が手を挙げると左右と後ろにも10名ずつほど男が出てきて完全に囲まれたようです。
「ざっと50人といったところですか」
「ふははは、そのとおり、抵抗するだけ無駄だぜ」
『ふむ、他には一つぐらいしか気配はないようじゃのう』
貴狐天皇が右手の森に中を指し示し言いました。
私は小百合に声をかけます。
「小百合、得物を」
「はい、巴様」
私は小百合から方天画戟を受けとり歩兵隊に指示を出します。
「歩兵隊は手槍をかまえよ、三名ずつお互いに協力して野盗を打ち倒せ!」
「はい、了解であります!」
「ち、めんどくせえ、野郎ども、男は殺せ!女は殺さない程度に痛めつけてやれ」
そして野盗の男達が、雄叫を上げながら斬りかかってきた。
「後ろと左右は任せましたよ」
「はい、巴様!」
「うぉらぁ!」
前面の野盗は20名、5人の野盗が一斉にきりかかってこようとしました。
「ふん、たかが野盗ごときが5人で私を倒そうなど甘いです!」
「がぁ!」「ぐえぇ!」「あぎぃ!」「おぼぉ!」「ぎへぇ!」
私が方天画戟を横薙ぎに振ると私に切りかかってきた5人の胴体は上下に別れておりました。
「さて、残りは15名ですか。
誰から死にたいですか?」
一度に5名が惨殺された野盗達は私の殺気に気圧されたようにあとさずりました。
「どうしました?
私を痛めつけるのではなかったのですか?
覚えておきなさい他人から何かを奪おうとするのならば奪われる覚悟も必要だということを」
男たち中から少し良い装備に身を固めた男が出てきた
「ひゃはははは、なら俺に任せろやぁ!いくぜぇ」
そう言って男が手を上げると私めがけて森の中より矢が飛んできた……のですが。
”パシィ”
私は矢を手で掴み取ると……
「お返ししますよ!」
飛んできた方の人の気配を探り当たりをつけへ矢を投げ返ました。
「ぐわぁ!」
森から胴に矢を受けた男が街道へ倒れ込んできます。
「な、なんだと?!」
野盗は驚いているがこの程度のことで死ぬくらいでは戸隠大輔さまに怒られてしまいます。
「戸隠流の前ではそのようなヒョロヒョロ矢など止まった棒きれも同然です。
何を驚くことがあるのですか?」
私は縮地術で地を蹴ると男どもの集団に突っ込んで方天画戟を当たるを幸いと野盗を薙いで蹴散らしていきます。
「へ?ぎああ!」
「あっ!あがあ!」
「き、鬼女だ、化物だ!がぁぁ!」
「失礼なだれが化物ですか、こんな可憐な乙女に向かって」
「乙女ってのは…あぎゃあ!」
「た、助けて、ごがぁ!」
私が10名も打ち倒すと男どもは逃げ出しました。
「ば、馬鹿野郎!逃げるな、逃げるんじゃねぇ」
しかし、街道をまっすぐ私から離れようとする男めがけ私は方天画戟を投擲します。
「あごぁぁぁ!」
「ぎべぁああ!」
方天画戟の穂先が2名の野盗を串刺しにします。
そして私は貴狐天皇へ言葉をかけます。
「あー、貴狐天皇、森の方はおまかせしていいですか」
『うむ、任せるが良い』
くくっと貴狐天皇は残忍な笑みを浮かべ答えます。
「く、くそ、なんなんだ、何なんだよお前は!」
「あー、他人を襲うなら十分に相手を調べてからにした方がいいですよ?
私は木曽中三兼遠が三女、巴です」
私はニコッと微笑んで野盗頭にいいました。
野盗頭は私の答えを聞いて顔面を蒼白にしました。
「お、お前が皆殺しの巴御前だと……そんな馬鹿な、何でこんなところに」
私は手をゴキゴキ、更に首をコキコキと鳴らしながら野盗頭の正面に立ち聞きました。
「んー、どういうことですか?
私が皆殺しの巴御前などと呼ばれてるというのは」
私の顔を見て、尻餅をつきガクガク震えだす野盗頭。
「ひ、ひぃぃ許してくれぇ」
「どういうことですかと聞いているのですが?
質問にはちゃんと答えていただきませんと」
「嘉応2年に大盗賊熊坂長範が100名の部下を率いて信濃に踏み入ったときにそいつらは巴御前の手勢によって皆殺しになっったとか、その後も信濃に入り込んだ野盗は皆炎に焼かれて殺されたとか聞いたんだ、た、頼む、もうこんなことは二度としないから助けてくれ」
その時森からガサガサと草木を分けて足首と首筋を噛み砕かれた野盗の死体を咥えた狼が何頭か出てきました。
「ひ、ひぃぃ……あんたは犬神使いか!」
狗神じゃなくて荼枳尼天ですが……私は少し考え野盗を串刺しにした方天画戟を引き抜きぶんとふって血油を払い飛ばしました。
「では、あなた方のアジトに案内していただきましょうか。
今まで奪った物品や女子供がいるでしょう」
野盗の頭はコクコクとうなずき
「あ、はいぃ、案内させていただきます」
と森に中にあるアジトまで道案内をさせました。
歩兵5人を引き連れて同行します。
「こ、ここです」
「ふむ、ここですか」
野盗共は森の中の樵や狩人が使う小屋をのっとっていたらしい。
小屋の中にはさらわれてきたらしい何名かの女子供と本来は税として収められられるはずだったらしい生糸、麻布、炭、紫、紅、茜と言った染色料、胡麻油、蜂蜜、紙、鹿角、鳥の羽、砥石、塩、漆などが雑然と置かれていました。
「ふむ、まあこれは献上品として使えそうですね」
「こ、これで助けてくれるんだよな?」
私は首を傾げました。
「おや、私が助けると一言でもいいましたでしょうか?」
「そ、そんな、ひでえぜ、約束が違う!」
ふむと私は考え
「では、こういたしましょう」
私は野盗頭の膝を下段蹴りで蹴り砕きました。
「うぎゃああ!」
床に倒れ野盗頭はうずくまります。
そして私はさらわれて来た女子供に石を手渡します。
「私はこれ以上何もしません、あなたが助かるかどうかは、この人達次第です」
私は野盗頭にニコリと微笑んで言いました。
女子供が石を握りしめてジリジリ野盗頭ににじり寄ります。
「や、やめろぉ!」
”ごがっ””ごぎ!”
室内に硬いものが柔らかいものに打ち付けられる音が響き、絶叫が上がりました。
やがて絶叫がやんで、野盗頭は動かなくなりました。
「やれやれ、因果応報ですよ、これにこりたら来世は真面目に働きなさいな」
私は小屋から物品を運び出させ旅路に戻りました。
さらわれてきた女子供のうち戻るべきところがあるものはそちらへ戻らせ、戻るところがないものは私に使える下人としました。
義仲様と武田信義様の娘である安寿姫との間に息子である高寿丸が生まれました。
平清盛は1162年から改修工事を行っていた、摂津国・福原の外港である大輪田泊(現在の神戸港)
の拡張工事である、日本初の人工島「経ケ島(きょうがしま)」を完成させました。
これにより旧来九州の大宰府が独占していた宋との貿易を摂津という京の都に近い場所でも行うことが可能になったのです。
また宋船は若狭国や越前国にも沢山来航してきていました。
本来朝廷は博多へ戻るように指示をしていたのですが、結局はウヤムヤになり若狭や越後も日宋貿易や高麗貿易の隠れた拠点となっておりました。
若狭屋が大陸のいろいろなものを信濃へ持ち込めたのもこのためです。
瀬戸内海を通るよりも若狭あたりへ着く方が宋船にとって瀬戸内の海賊への通行料を払う事もなく航海の時間も短縮でき便利でしたし。
日本の若狭の輸入業者にとっても若狭から琵琶湖までは陸路を琵琶湖から京の都へは水路を使えば良いため輸送も楽だったのです。
ある日のことです。
小百合が部屋にいた私のもとにやってきて来訪者があることを告げました。
「堀川鬼一法眼殿が人を伴ってやって参りました、いかがいたしますか?」
「お会いしましょう、寝殿へお通しして下さい」
「承知いたしました」
私は身なりを整えると、寝殿へ向かいました。
寝殿で待っていたのは堀川鬼一法眼殿と文官束帯姿の男性でした。
私の姿を認めると堀川鬼一法眼殿が文官束帯姿の男性を紹介します。
「巴殿、大江広元殿をお連れいたしましたぞ」
「ご紹介に預かりました大江広元でございます」
「はじめまして大江殿。
あなた様も我が父の縁戚の方でいらっしゃるとおききいたします」
「ええ、その縁もありまして此方へ参った時代です、最近は平安京の都では火事が多く我が屋敷も、燃えてしまったゆえ」
そう言って彼はため息を付きました。
義仲様に聞いていたものの京の都の治安状態は本当にひどいもののようですね。
「事情はわかりました、大江殿、あなたには松本の問注所と侍所の長となっていただきたいのですがいかがでしょうか?
無論相応の報酬と食料は出させていただきます」
彼は一瞬考えたようですがすぐに頷いてくれました。
「なるほど、ありがきことです。
かしこまりました、お受けいたします」
「ありがとうございます」
私は彼に頭を下げました。
さて、これで信濃国内の情報網、内政や治安維持、軍備、朝廷工作などの基礎的な準備はできたとおもいます。
ならば今のうちに自分の目で京や福原、讃岐に足を運び様子を見ておきたいところです。
隊商を装って情報収集のために戸隠大輔様のお弟子様をお借りして、護衛に歩兵から10人ほど連れて行けば、まあ大丈夫でしょう。
つなぎ作りための献上品として絹の反物や衣装などを馬の背にくくったリ猫車に積んだりして、準備を進めます。
天神の長は義仲様に、兵の鍛錬の取りまとめは戸隠大輔様に、各兵科ごとの取りまとめは今まで通り義経一行にやってもらえば大丈夫でしょう。
松本の政務は大江殿に、農作業や開拓などの指導は宋人の男女に任せておいても大丈夫でしょうしね。
東山道を西に進み天気などが良ければ10日ほどで京へは到着できるはずですね。
信濃国(長野県)を出立して美濃国(岐阜県)を進み、もうすぐで近江国(滋賀県)に差し掛かろうかという所まで来たときのことです。
森の中を通る私たちについてきた姿を消している貴狐天皇が私に囁いてきました。
『ふむ、森の中を大勢の人間が動いておるの、どうやら囲まれとるようじゃぞ』
私も一行を止めて気配を探ろうとしたときに、前方の木々間から人が出てきました。
『どうやら野盗の類じゃな』
「そのようですね」
ざっと左右の森から私達の行く手をふさぐようにみすぼらしい姿の男たちが20名ほど出てきました。
「おおっと、そこで止まりな、お前らここを通りたければ金目の物と食料、それと女を全部置いていきな、そうすれば男ども命だけは助けてやるぜ。」
「ふひひひ、女はなかなかの上玉じゃねえか」
うーむ何で野盗というのは皆同じようなセリフを吐くのでしょうね。
「やれやれ、お断りしますといったらどうなるのですか?」
「ああ?動けなくなるまで痛めつけてその後は代わる代わるってやつだ」
いやらしい下卑た笑いが野盗から上がりました
「きひひひひ」「ひゃははは」
頭らしい男が手を挙げると左右と後ろにも10名ずつほど男が出てきて完全に囲まれたようです。
「ざっと50人といったところですか」
「ふははは、そのとおり、抵抗するだけ無駄だぜ」
『ふむ、他には一つぐらいしか気配はないようじゃのう』
貴狐天皇が右手の森に中を指し示し言いました。
私は小百合に声をかけます。
「小百合、得物を」
「はい、巴様」
私は小百合から方天画戟を受けとり歩兵隊に指示を出します。
「歩兵隊は手槍をかまえよ、三名ずつお互いに協力して野盗を打ち倒せ!」
「はい、了解であります!」
「ち、めんどくせえ、野郎ども、男は殺せ!女は殺さない程度に痛めつけてやれ」
そして野盗の男達が、雄叫を上げながら斬りかかってきた。
「後ろと左右は任せましたよ」
「はい、巴様!」
「うぉらぁ!」
前面の野盗は20名、5人の野盗が一斉にきりかかってこようとしました。
「ふん、たかが野盗ごときが5人で私を倒そうなど甘いです!」
「がぁ!」「ぐえぇ!」「あぎぃ!」「おぼぉ!」「ぎへぇ!」
私が方天画戟を横薙ぎに振ると私に切りかかってきた5人の胴体は上下に別れておりました。
「さて、残りは15名ですか。
誰から死にたいですか?」
一度に5名が惨殺された野盗達は私の殺気に気圧されたようにあとさずりました。
「どうしました?
私を痛めつけるのではなかったのですか?
覚えておきなさい他人から何かを奪おうとするのならば奪われる覚悟も必要だということを」
男たち中から少し良い装備に身を固めた男が出てきた
「ひゃはははは、なら俺に任せろやぁ!いくぜぇ」
そう言って男が手を上げると私めがけて森の中より矢が飛んできた……のですが。
”パシィ”
私は矢を手で掴み取ると……
「お返ししますよ!」
飛んできた方の人の気配を探り当たりをつけへ矢を投げ返ました。
「ぐわぁ!」
森から胴に矢を受けた男が街道へ倒れ込んできます。
「な、なんだと?!」
野盗は驚いているがこの程度のことで死ぬくらいでは戸隠大輔さまに怒られてしまいます。
「戸隠流の前ではそのようなヒョロヒョロ矢など止まった棒きれも同然です。
何を驚くことがあるのですか?」
私は縮地術で地を蹴ると男どもの集団に突っ込んで方天画戟を当たるを幸いと野盗を薙いで蹴散らしていきます。
「へ?ぎああ!」
「あっ!あがあ!」
「き、鬼女だ、化物だ!がぁぁ!」
「失礼なだれが化物ですか、こんな可憐な乙女に向かって」
「乙女ってのは…あぎゃあ!」
「た、助けて、ごがぁ!」
私が10名も打ち倒すと男どもは逃げ出しました。
「ば、馬鹿野郎!逃げるな、逃げるんじゃねぇ」
しかし、街道をまっすぐ私から離れようとする男めがけ私は方天画戟を投擲します。
「あごぁぁぁ!」
「ぎべぁああ!」
方天画戟の穂先が2名の野盗を串刺しにします。
そして私は貴狐天皇へ言葉をかけます。
「あー、貴狐天皇、森の方はおまかせしていいですか」
『うむ、任せるが良い』
くくっと貴狐天皇は残忍な笑みを浮かべ答えます。
「く、くそ、なんなんだ、何なんだよお前は!」
「あー、他人を襲うなら十分に相手を調べてからにした方がいいですよ?
私は木曽中三兼遠が三女、巴です」
私はニコッと微笑んで野盗頭にいいました。
野盗頭は私の答えを聞いて顔面を蒼白にしました。
「お、お前が皆殺しの巴御前だと……そんな馬鹿な、何でこんなところに」
私は手をゴキゴキ、更に首をコキコキと鳴らしながら野盗頭の正面に立ち聞きました。
「んー、どういうことですか?
私が皆殺しの巴御前などと呼ばれてるというのは」
私の顔を見て、尻餅をつきガクガク震えだす野盗頭。
「ひ、ひぃぃ許してくれぇ」
「どういうことですかと聞いているのですが?
質問にはちゃんと答えていただきませんと」
「嘉応2年に大盗賊熊坂長範が100名の部下を率いて信濃に踏み入ったときにそいつらは巴御前の手勢によって皆殺しになっったとか、その後も信濃に入り込んだ野盗は皆炎に焼かれて殺されたとか聞いたんだ、た、頼む、もうこんなことは二度としないから助けてくれ」
その時森からガサガサと草木を分けて足首と首筋を噛み砕かれた野盗の死体を咥えた狼が何頭か出てきました。
「ひ、ひぃぃ……あんたは犬神使いか!」
狗神じゃなくて荼枳尼天ですが……私は少し考え野盗を串刺しにした方天画戟を引き抜きぶんとふって血油を払い飛ばしました。
「では、あなた方のアジトに案内していただきましょうか。
今まで奪った物品や女子供がいるでしょう」
野盗の頭はコクコクとうなずき
「あ、はいぃ、案内させていただきます」
と森に中にあるアジトまで道案内をさせました。
歩兵5人を引き連れて同行します。
「こ、ここです」
「ふむ、ここですか」
野盗共は森の中の樵や狩人が使う小屋をのっとっていたらしい。
小屋の中にはさらわれてきたらしい何名かの女子供と本来は税として収められられるはずだったらしい生糸、麻布、炭、紫、紅、茜と言った染色料、胡麻油、蜂蜜、紙、鹿角、鳥の羽、砥石、塩、漆などが雑然と置かれていました。
「ふむ、まあこれは献上品として使えそうですね」
「こ、これで助けてくれるんだよな?」
私は首を傾げました。
「おや、私が助けると一言でもいいましたでしょうか?」
「そ、そんな、ひでえぜ、約束が違う!」
ふむと私は考え
「では、こういたしましょう」
私は野盗頭の膝を下段蹴りで蹴り砕きました。
「うぎゃああ!」
床に倒れ野盗頭はうずくまります。
そして私はさらわれて来た女子供に石を手渡します。
「私はこれ以上何もしません、あなたが助かるかどうかは、この人達次第です」
私は野盗頭にニコリと微笑んで言いました。
女子供が石を握りしめてジリジリ野盗頭ににじり寄ります。
「や、やめろぉ!」
”ごがっ””ごぎ!”
室内に硬いものが柔らかいものに打ち付けられる音が響き、絶叫が上がりました。
やがて絶叫がやんで、野盗頭は動かなくなりました。
「やれやれ、因果応報ですよ、これにこりたら来世は真面目に働きなさいな」
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