木曽義仲の覇業・私巴は只の側女です。

水源

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治承3年(1179年)

義仲の挙兵

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 令旨を受け取った私たちは行家が甲斐源氏の武田氏のもとへゆくというのを見送りました。

「拙僧はここに残りともに戦い働きを行おうと思うゆえよろしく頼み申す」

 もう一人の覚明は信濃に残り私達と遠に戦う決意を固めたようです。

「こちこそよろしくお願いいたします」

 そして父が義仲様に聞きました。

「まずはどうなされる?」

 義仲様が真剣な表情で答えました。

「まずは我らの旗揚げの儀式を八幡神社にて執り行いましょう」

 周りの皆は無論依存なしとうなずきました。

 私たちは原八幡宮へ移動して旗挙げの儀式を行いました。

「八幡大菩薩よ、我らに平氏を打ち破る武運を授けよ」

 私たちは皆でお祈りを捧げました。

 そして皆で太刀を抜きそれを天に掲げ

「えい・えい・おー!」

 と、ときの声を上げたのです。

 このとき義仲様の男児の高寿丸も元服を行い源清水冠者義高と名乗りました。 

「これより我らの本拠を東信は上田市御嶽堂の金鳳山上にある依田城へ移す。
 よして城に入場後、我らとともに戦う意志のある豪族を集め改めて令旨を覚明殿に読み上げていただき皆の結束を図ろうと思う」

 私たちはうなずきました。

「では各々の領地より兵を率いて依田城へ向かうように」

 そこへ兼平兄上が口を挟みました。

「では私はその中途にて国衙(こくが)の接収を行いましょう」

 国衙と言うのは今で言う県庁のようなもので中央や他の地方よりの情報が入ってきたり、武器庫や軍馬の厩、税の穀物や絹などの貴重品が収められた倉庫などがあります。

 令旨に従うということは今上である安徳天皇に逆らうということでもあるのです。

「うむ、任せた、では一時解散する」

 皆が各々の屋敷に戻って言った後で私は草の頭を呼びました。

「現状の周辺の状況を報告してください」

「はっ、現状ですが……」

平家の知行国が多いことから特に機内に近い場所の源氏は苦戦している場所が多いようですね。

「では尾張の国にこのような噂を流してきてください。
 令旨を受けたと思っている清盛が終わりに攻めて来るらしいということと、伊豆の頼遠が挙兵しようとしているが協力者が少なく、困っているらしいということをです」

「承知いたしました、では」

 そう言って彼は屋敷から去っていきました。

 そして私は小百合を呼びました。

「小百合、この屋敷と土地の管理とをあなたに任せます。
 あとをよろしく頼みますよ」

 小百合は頭を下げ

「かしこまりました、巴様がお戻りになるまでしっかり守ってみせましょう」

「ええ、お願いね」

 私は屋敷をあとにして義経一行の屋敷に向かいました。

「義経殿、弁慶殿、鎌田兄弟の皆さん、準備はよろしいですか?」

 私がそう聞くと義経が一同を代表してうなずきました。

「うむ、いつでも出れる。
 紅葉あとをたのむぞ」

「はい、兄上、ご武運をお祈りしております」

 私達は手習天神で鍛え抜いた松本の精兵300を率いて依田城ヘ向かいました。

 依田城ではまず兄兼平が無事に国衙を占拠し、大きな混乱もなかったとの報告を受けました。

「さすがは兄上」

 これで我が松本の軍以外の豪族の兵糧や武器も行き渡ることでしょう。

 依田城には城主依田次郎実信。

 佐久の根井小弥太幸親、楯六郎親忠、矢島四郎行忠、小室太郎田忠兼、望月次郎、同三郎ら。

 小県の依田二郎、志賀七郎、丸子小中太、根津次郎貞行兄弟、海野彌平四郎幸廣ら。

 諏訪の諏訪次郎同三郎、千野太郎光弘、手塚別当、同太郎金刺光盛ら。

 高井の井上九郎光基、高梨次郎高信村山七郎義直ら。

 安曇の仁科太郎守弘、同次郎盛宗ら。

 筑摩の岡田親義父子、佐々毛二郎安義、犬甘二郎敦義などが集いました。

 そして、その一同の前に覚明が立つと告げました。

「さて皆よく集ってくれた。
 これより最勝王の令旨を読み上げるゆえ、お聞きめされよ」

「東海・東山・北陸三道諸国の源氏、ならびに群兵らに下す。
 清盛法師とその一族ら、反逆の輩の追討に早く応じること。
 上記について、前の伊豆守・正五位下の源朝臣・中綱が宣する。
 最勝王の勅を奉じ、称する……」

 令旨が読み上げ終わった頃には場は静まり返っていました。

「俺はこれに従い信濃より兵を挙げ、清盛を討つ!」

「おお、我も軍に加えてくだされ」

「我もじゃ!」

 この場に居た一同は皆、義仲様の元で戦うことを決意したようです。

 これがおおよそ1000人の木曽義仲軍の生まれた瞬間でした。

 そして私は義仲様に告げたのです。

「兵は神速を尊ぶと申します。
 まずは信濃の平家方の豪族を討ちましょう。
 特に宇治平等院の戦いに平家方に参加した笠原平吾頼直や吉田安藤馬允・笠原平三・千葉三郎を討つことは頼政殿や仲家殿の仇討ちともなりましょう」

 義仲様はうむとうなずきました。

「うむ、我が兄の弔い合戦だな。
 至急兵をすすめるとしよう」

 私はうなずき言葉を続けます。

「はい、それと共に信濃国伊那郡へ出兵して平家方の菅冠者を討ちましょう。
 ほおっておけば、武田が国境を超えて攻めてくるかもしれません。
 兵を500ずつに分け、我ら木曽一党で笠原を佐久党と諏訪党で菅冠者を討つのがよろしいかと」

 私の言葉に義仲様は我が兄今井兼平に問いました。

「うむ、兼平はどう思うか」

「は、私も巴の意見に賛成でございます。
 他国のものがうこかぬうちにまずは信濃の地盤を固めてしまいましょうぞ」

「ふむ、ではそのようにいたそう
 おのおの方出陣の準備を」

「おおー!」

 こうして私達の初めての戦いが始まることになりました。
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