濡れた月

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【第一章】濡れては触れぬ

濡れた紙をどう使えるかと言うと、かなり限られる。

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最初に君たちに問おう。
君たちは濡れた紙をどう使える?
紙は濡れていなくてもとても柔らかく、ちょっとした事で切れたりもする。分厚い模造紙も少し指先に力を入れればすぐに破る事が出来る。書道などで使う半紙なんて、一番柔らかいのではないだろうか。
僕は濡れた紙を使うことは出来ない。
この問いは発想力の問題であり、僕もいくつか思いついたが、それを実現する事はほぼ不可能に近い。
想像だけで「実現できる」と思い込むのは人間の性、仕方の無いことではあるが、社会でその考えは通用しない事くらいは理解していて欲しい。

と、そんな呟きを脳内で何度も再生している僕はというと、北海道に住む極普通の高校一年生だ。
北国、雪国と呼ばれる北海道の冬は、その通りとても寒い。しかし、春や夏は、季節が来るのが少し遅いだけで気温や天気は都内の方にまさっている。…といっても、勝っているところで何も得はしないし、寧ろ僕にとっては大迷惑だ。
雨が好きなのに。
…なんて、中二病っぽい発言をしてみる。
雨が好き、というのはよくある話だろう。しかし「雨が好きだから、この傘やるよ」的な事をラブコメ内で言うと必ず読者達から文句やら何やらを言われる。ここでの読者達というのはこれを読んでいる君たちの事だ。
僕はよく分からないが、まぁ僕の脳内再生呟きを見て聴いてくれている事には感謝しよう。…いや、かなり恥ずかしいので感謝もしたくなくなってきた。


という事で、自転車登校の僕は一番早く学校に着いた。只今の時刻、五時十分。…いや、早過ぎないか?と思ったそこの君たち。その通り、僕はいつも四時起きで登校している。
何故かと言うと…もうお気づきではないだろうか。
そう、朝の学校が好きだからだ。
また中二病っぽい発言をしてしまった。いや、わざとではないんだ。ただ、普通に朝の静かな教室や廊下が好きで来ている。
先生達に1度注意されたことがあるが、「自分は家での学習や授業だけでは足りないので、朝早く学校に来て勉学に励みたいのです。」と感情を込めて述べるとその後何も言われなかった。
権力のおかげ、とでも言うべきだろうか。

そう、僕の父親はあの「恋崎グループ」の代表取締役社長なのだ。周りには既に知られている。が、ソレ目的で近寄って来るヤツらなどいるはずがない。何故なら僕は常に「近付くな」オーラを振り撒いているからだ。
オーラ、などと言うとやはり中二病っぽくなるがそんなことは無い。
…まぁ、とにかく、極普通の高校生活を送って半年以上。今はもう11月、早いものだ。
そうだ、僕の名前を教えていなかった。
最後に教えよう、僕は恋崎 カレルこいさき かれる
発想力の天才だ。
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