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序章の物語
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「パスパス!!
新帝、お前どこ見てんだ!!
あそこいけそうだろ!」
「「ディーフェスッディーフェスッッ」」
「おい新帝、もういいから誰かにパスしろ!!
無理に攻めようとするな!」
中学最後の県大会決勝、七十対六十九
第四クオーター、残り時間は約2分。
コートで僕は、汗を垂らしていた。
意味の無い、汗を。
色んな批判の声が聞こえる。
今日も不憫だなあ。
僕の名前は白己 新帝。
中学三年生、バスケ部の副主将だ。
(パス…つったって…)
どこにも「導」が見えないぞ…
僕は、完璧なパスコースの事を「導」と呼んでいる。いつもなら見えるはずの導が、今日は見えない。
それでも、観客やベンチメンバー達はお構い無しに批判を続ける。コートに立ってもいないのに。
もう諦めようか、そう思った。
その時だった。
まるでチーターのような
高速ダッシュ、マークを華麗にかわし、誰よりも速く「導」を作りだした男
「俺 に よ こ せ 、 ク ソ 雑 魚 。」
普段だったら腹が立ち、殴り合いが始まるだろう。けれど、今は違う。同じチームの、同じ仲間だ。
通じ合える唯一の相手
喧嘩するほど、ってのはこういうことか。
「ッ…僕からパスもらうんだから、
ちゃんとダンクで決めろよ…」
数年ぶりに見た、その完璧すぎる綺麗な「導」は、そいつにしか出来ないトクベツな導だってことが分かった。
「は、ほざいとけ。」
そのくらい余裕だ、と顔をして、
彼は3人を一気抜きし、ゴールへと向かう。
15歳の平均身長は168.4とされている。
僕の身長は159、小柄だ。
が、彼は生まれながらにして、何もかもを手にするような裕福な野郎だ。
天は彼に二物、いや十物ほど与えただろう。
175センチ、今大会得点王候補の「神童」。
神楽 鳴だ。
「…はっ、本当に決めやがった…」
逆転ダンクを決めた彼は、大きな歓声を浴びた。僕と違って…
「ナイッッスー!!キャプテンないす!
マジでっ、すごいっす!」
「鳴先輩、何でこんな公立中にいるんですか…?ミニバスの大会でも活躍してたんですよね。スカウトとか来なかったんですか?ほら、中高一貫強豪の帝王海とか!」
チームメイトが彼の周りに集まる。
僕も同じように彼に駆け寄った。
「あぁ…帝王海。
確か来てたはずだけど。」
「すっご…」
そんなに驚くことか?という顔をしている。
そんなすました顔、僕もしてみたいななんて思う。
「とりあえず、あと十点はいける。
連携とかどうでもいいから、
入ればいい。それだけ。」
喜びのピースかと思いきや、クールにこの後の作戦を話し始めた。右手は二十の二を表していたようだ。
「入ればいい」か。
僕は、この決勝で四点しかとれていない。
それに比べて、彼は決勝だけで五十点を決めている。ダンク、スリーポイント…色々あるが、彼のテクニックは日本一と言ってもいいだろう。
何たって、アンダー二十日本代表選抜に選ばれたのだから…
試合がリスタートする。
僕は残り少ない体力を計画的に使おうと、ゆっくり相手コートに入っていく。
今のところ導はない…けど、
リングのロードなら見える…!!
正面からの完璧なスリーポイントが決まった。
初のスリーポイントだ。久しぶりに浴びた歓声は、とても気持ちが良かった。
「よし!」
ガッツポーズを決めると、神楽は言った。
「クソ雑魚にしてはよくやったな。
初スリー祝いに、クソ雑魚から雑魚にしてやる。喜べ」
誰がそんな事で喜ぶか、というぐらい嫌味なことを言ってきたと思えば、僕の頭をわしゃわしゃ、と軽く撫でた。子供扱いされているみたいで少し嫌な気持ちになった。
「一応副主将だし。」
神楽はそう強がる僕を嘲笑うかのように、リスタートした瞬間に豪快なダンクを決めた。
「俺、主将だけど?」
「…ハイハイ、神童様。」
「あ?その名で呼ぶな雑魚。」
結果は七十対七十六で勝利し、僕たちは全国大会への切符を手に入れたのだった。
これはまだ始まってすらいない序章の物語。
天才と、雑魚の物語。
新帝、お前どこ見てんだ!!
あそこいけそうだろ!」
「「ディーフェスッディーフェスッッ」」
「おい新帝、もういいから誰かにパスしろ!!
無理に攻めようとするな!」
中学最後の県大会決勝、七十対六十九
第四クオーター、残り時間は約2分。
コートで僕は、汗を垂らしていた。
意味の無い、汗を。
色んな批判の声が聞こえる。
今日も不憫だなあ。
僕の名前は白己 新帝。
中学三年生、バスケ部の副主将だ。
(パス…つったって…)
どこにも「導」が見えないぞ…
僕は、完璧なパスコースの事を「導」と呼んでいる。いつもなら見えるはずの導が、今日は見えない。
それでも、観客やベンチメンバー達はお構い無しに批判を続ける。コートに立ってもいないのに。
もう諦めようか、そう思った。
その時だった。
まるでチーターのような
高速ダッシュ、マークを華麗にかわし、誰よりも速く「導」を作りだした男
「俺 に よ こ せ 、 ク ソ 雑 魚 。」
普段だったら腹が立ち、殴り合いが始まるだろう。けれど、今は違う。同じチームの、同じ仲間だ。
通じ合える唯一の相手
喧嘩するほど、ってのはこういうことか。
「ッ…僕からパスもらうんだから、
ちゃんとダンクで決めろよ…」
数年ぶりに見た、その完璧すぎる綺麗な「導」は、そいつにしか出来ないトクベツな導だってことが分かった。
「は、ほざいとけ。」
そのくらい余裕だ、と顔をして、
彼は3人を一気抜きし、ゴールへと向かう。
15歳の平均身長は168.4とされている。
僕の身長は159、小柄だ。
が、彼は生まれながらにして、何もかもを手にするような裕福な野郎だ。
天は彼に二物、いや十物ほど与えただろう。
175センチ、今大会得点王候補の「神童」。
神楽 鳴だ。
「…はっ、本当に決めやがった…」
逆転ダンクを決めた彼は、大きな歓声を浴びた。僕と違って…
「ナイッッスー!!キャプテンないす!
マジでっ、すごいっす!」
「鳴先輩、何でこんな公立中にいるんですか…?ミニバスの大会でも活躍してたんですよね。スカウトとか来なかったんですか?ほら、中高一貫強豪の帝王海とか!」
チームメイトが彼の周りに集まる。
僕も同じように彼に駆け寄った。
「あぁ…帝王海。
確か来てたはずだけど。」
「すっご…」
そんなに驚くことか?という顔をしている。
そんなすました顔、僕もしてみたいななんて思う。
「とりあえず、あと十点はいける。
連携とかどうでもいいから、
入ればいい。それだけ。」
喜びのピースかと思いきや、クールにこの後の作戦を話し始めた。右手は二十の二を表していたようだ。
「入ればいい」か。
僕は、この決勝で四点しかとれていない。
それに比べて、彼は決勝だけで五十点を決めている。ダンク、スリーポイント…色々あるが、彼のテクニックは日本一と言ってもいいだろう。
何たって、アンダー二十日本代表選抜に選ばれたのだから…
試合がリスタートする。
僕は残り少ない体力を計画的に使おうと、ゆっくり相手コートに入っていく。
今のところ導はない…けど、
リングのロードなら見える…!!
正面からの完璧なスリーポイントが決まった。
初のスリーポイントだ。久しぶりに浴びた歓声は、とても気持ちが良かった。
「よし!」
ガッツポーズを決めると、神楽は言った。
「クソ雑魚にしてはよくやったな。
初スリー祝いに、クソ雑魚から雑魚にしてやる。喜べ」
誰がそんな事で喜ぶか、というぐらい嫌味なことを言ってきたと思えば、僕の頭をわしゃわしゃ、と軽く撫でた。子供扱いされているみたいで少し嫌な気持ちになった。
「一応副主将だし。」
神楽はそう強がる僕を嘲笑うかのように、リスタートした瞬間に豪快なダンクを決めた。
「俺、主将だけど?」
「…ハイハイ、神童様。」
「あ?その名で呼ぶな雑魚。」
結果は七十対七十六で勝利し、僕たちは全国大会への切符を手に入れたのだった。
これはまだ始まってすらいない序章の物語。
天才と、雑魚の物語。
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