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末章:魔王を倒して、それから…それから?

魔王まであと少し?

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◆◇◆勇者(梨々花)視点◆◇◆

 魔王城の内部を馬車の中で座っているだけで、あとはみんながなんとかしてくれる、という状態のまま、進んでいく。
 一人でただ座っているだけだと、いろいろ考えてしまう。道中で戦闘も起きているみたいだけれど、ローランドさんの呪文を唱える声が聞こえたり、ドスっと音がする位で、余り実感が沸かない。一応、魔物だ!とか、こいつなら問題ない。とか、そんな話声は聞こえるけど…逆に私だけ仲間外れの様な感じがしてしまう。
 分かってるけど。みんなの能力を底上げしたり、そういう歌しかできないし。攻撃したり、そういうものじゃないから…

「ちょうどいい部屋ですし、今日はここまでにしましょう」
「ああ、そうだな。私が火を入れておく」
「ええ。聖女様、開けますよ…どうされましたか?怖かったですか?」
「…うん、ちょっと」

 どうやら今日はこれ以上進まないらしい。馬車のドアを開けられて、ローランドさんが入ってきた。私の顔を見るなり、そっと頭を撫でられて、ほっと息をつく。

「魔物も少しは出ましたけれど、大したものではありませんし、大丈夫ですよ。さ、いらっしゃい」
 手を取られて馬車の外にでると、そこは、部屋だった。ソファがあって、小さなテーブルもある。暖炉もあって、今アーカスさんが火を熾してる。
「え…なにここ?」
「この城の中の一室、ですね。どうやらこの城はみなこんな感じです。流石に調度品の品質や品ぞろえはばらつきがありますが」
 どうやら、普通の民家レベルから、王室レベルまで、いろいろあるらしい。食堂だったり、キッチンだったりと、部屋によってばらばらという事だけれど。この部屋のソファは、お城の部屋と同じ位、かなぁ?2人掛けの同じソファが3つある。小さなテーブルは、ソファと揃えられたものではなさそうで、なんというか…質に違和感がある。このテーブル、切りっぱなしの一枚の板に、足がついたものだから。木目が綺麗だけど…こう、つるつるしてないというか。ヤスリは掛けられてるのか、棘が刺さりそうとかではないんだけれど。
「一階はぼろぼろの部屋もあった」
「…」
「二階は…変なモノがあった。ソファなのに、とげとげがついていた。あれでは座れない」
「そ、れは…確かに、変ね」
 ノルンがいろんな部屋の内装を教えてくれるけど、そんなソファの意味が分からない。
「部屋の状態はまた後にしましょう。今後どうするかですが…」
「今三階に上がった所ですが…実際どれくらい進んだんでしょう」
「そう、ですね。外観と内部から察するに、そろそろ…最深部といいますか、最上階といいますか…そんな所かと。こう、馬車で上がれるように、建物の外側をスロープにしていますから…意外と、狭いのかもしれません」
 ソファに皆で座るけれど、私とローランドさんが一緒に座って、アーカスさんとノルンさんは一人で座ってる。
 なんでローランドさん、私の隣に座ったんだろうと思ったけど、テーブルにローランドさんが地図を広げて説明しながら見せてくれる。なるほど、見やすい。これはマッピングしたもの、らしいけれど、すごい。ちゃんと書けてる。
「もしまだ上があったとしても…1階位でしょう。流石に、異次元的に広がっているなんてこともないはずです」
「じゃあ…もうすぐ、なの?」
「おそらくは」
「…大丈夫、かな」
「もちろんです。まずはここで休みましょう。ここからはこまめに休みながら行きましょう。物資にもまだ十分余裕はありますし」
「そうですね。今は無理をするような状況でもないですし」
「梨々花様。ベッドはありませんから、馬車でお休みいただければ」
「そうね。いつもごめんね」
 そう、野営の時は、私だけ馬車で寝てる。みんなはテントなのに。女性を地面で寝かせる訳にはいかないと言われるけど、別にちゃんと…マット、ではないみたいだから…布かな?それを敷いてるし、大丈夫だと思うんだけどな。
「まずは食事の用意ですね」
 食事の準備…暖炉、だけど…大丈夫なのかな?
 心配したけど、アーカスさんは全く問題なく食事を作ってくれた。外じゃないから、落ち着いて食事もできたように思う。不安しかないけど、ここまで問題なくこれたし、大丈夫、なのかな…


◆◇◆神視点◆◇◆

 順調順調♪まあ、ここまで来ちゃったらあとは見てるだけ~いや、まあ、いつも見てるだけだけれども。
 勇者も変なこと言わなくなったし、良きかな良きかな。直前で逃げ出さないかって所だけど、まああの黒髪モノクル…うん、問題ないはず。
 後は魔王を浄化した瞬間に、勇者と接続して、輪廻に帰るかこの世界を楽しむかを聞かないと、なんだけど…この世界に残ったら、この黒髪モノクルに捕まる未来しか見えない…もうこいつ、鬼畜眼鏡でいいかな。
 一応、魔王を倒した後の勇者は…ある意味使い道がない存在なんだよね。魔王を倒すための因子が聖剣に吸収されて、酷いと魔法が使えなくなったりとか。いや、元々の身体能力とかあれば別だけど。剣が得意だから兵士になるとか、自警団に入るとか。料理が得意だから、とかね。
 でも、ここで問題になるのが、教養とマナー。一応、そこら辺もパーティーメンバーというサポートが付くけれど。それでもやっぱり上手くいかない事例が多くてねぇ。女の子ならまだ家庭に入れば後はご近所とか、お店とか、そういう所に言い含めれば何とかなるし…勇者だったと言えば、悪い様にはされない…100%じゃないけども。
 なぜか郷に入れば郷に従えということわざがあるというのに、それができない勇者が多い事多い事…はあ…今までの思い出してうんざりしてきた。
 鬼畜眼鏡の血筋と、役職的に…侍女とか侍従とかで固めればなんとでもなりそうなのが怖い。飼い殺し怖い。幸せになってほしいのになあ…
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