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魔物襲来! 壊された城壁(5)
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そして、次の日から早速堀を作り始める。
まずはモロゾフが魔法を唱える。すると簡単に一立米ほどの穴が出来上がる。それをそこそこの幅、深さの堀になるように繰り返し魔法を使ってもらう。しかし、魔法を使っているとはいえ、進みはあまり早くない上に魔力がなくなったら休憩を挟まないといけないので、あまり進行速度は早くない。
まぁこれ以上早くする方法もないので出来上がるのをゆっくりと待つ。
それから十日ほど経った。
堀作りは問題なく進んでいった。そして、半分ほど進んだのだがついに問題が発生する。
「おい、あの土ボコリは!?」
作業をしてくれていたドワーフ族の人が大声を上げる。
研吾はその土ボコリのした方をよく見る。すると、以前見た真っ黒な狼が集団で襲ってくるのが見える。
「ま、魔物だー!!」
その言葉を皮切りにドワーフ族の人たちが町中に逃げていく。
「お、俺たちも……」
驚きのあまり逃げ遅れた研吾たち。慌てて動き出そうとするがすでに目の前に迫った魔物たちからは逃げられそうになかった。
「ケンゴさんは私の後ろに」
ミルファーが前に出てグッと堅く口を噛み締める。
一筋の汗がミルファーの顔から流れ落ちる。
「大丈夫?」
不安げに研吾が聞く。しかし、ミルファーからは研吾の望んだ返事は返ってこなかった。
「とにかく私が時間を稼ぎますからその隙に逃げてください」
「だ、ダメだよ!? ミルファーも一緒に逃げないと!」
「そうは言ってもこの状況ですから……」
確かにすでに逃げることすらできない状況。どうすることもできない。そんな状況では確かにミルファーの言う通りにするしかないかもしれない。
「それでも……誰かを犠牲になんて……」
「いいから早く!」
ミルファーに急かされて嫌々ながらも逃げる準備をする。そんな時にちょうど視線を送った城門付近から急いで駆けつけてくれる人の姿が見える。
「せんせー、無事ですかー?」
それは兵士のアンドリューだった。彼を先頭に幾人もの人が来てくれていた。
そして研吾たちの前に立つと魔物たちの相手をしてくれる。
「ケンゴさん……、助かりましたね」
ミルファーがホッと笑顔を見せてくる。研吾もそれにつられて笑みを浮かべた。
そして、安心のあまりかミルファーに抱きつく研吾。
顔を真っ赤にしてアタフタとするミルファー。しかし、そのことに気付いていない研吾はそのまましばらく抱きついたままだった。
そして、しばらくしたら魔物達は撃退されていった。
それほど数がいなかったのか以前襲われたときほど時間がかからず、また、負傷している人もほとんどいなかった。
「先生、負傷されたところはありませんか?」
アンドリューが心配そうに聞いてくる。
「いえ、襲われる前でしたから大丈夫です。ありがとうございます」
「それならよかったです。お世話になった先生に傷でも負わせてしまったら悔やんでも悔やみきれませんから」
それだけ言って敬礼をするとアンドリューは再び王城へと戻っていった。
それを確認したドワーフの方々は再び戻ってきて作業を開始する。
それからは問題なく、二十日も経過するときには堀が掘り終わっていた。
「モロゾフさん、ありがとうございました。おかげで何とかなりました」
「気にするな。これで少しでも恩が返せただろう」
それだけ言うとモロゾフは手をあげて去って行った。
さて、これで大半の作業は終わった。あとは魔力耐性をあげていくだけだ。
これが一番の難点だったが、モロゾフが大量に持ってきてくれた魔吸石をある使い方をしたらそのまま使うほどの効果は得られないがそこそこの効果が出ることがわかった。
以前使ったのは粘着草を絞ったものに魔吸石のかけらを砕いたものだったが、これでは粘りけが強すぎて使いづらかった。ならどうするか……。粘着草を絞ったもの、その量を相当多めにすれば水っぽく性質を変更させることが出来た。その分魔力耐性自体も落ちて言ってしまったが、それでも効果があることがわかったのでこれを直接壁にかけていった。
水っぽいものなので城壁の上から流すだけでその効果を発揮する液体になったので人でもそれほど必要ではなかった。
ただ、一度では魔力耐性が弱すぎるのでそれが乾ききった――一日おいた次の日にもう一度かけていく。それを三度繰り返した結果、アンドリューさんの時に使ったものと遜色のないくらいの魔力耐性を得ることが出来た。それはミリスにも確認してもらったので間違いないだろう。
これで壁の修繕はおおよそ終わった。
どうしても古くなったこの壁を修繕することはすぐにはできなかったが、それは追々していくしかないだろう。
そして、この壁の効力を発揮する日がやってきた。
壁の修繕が完全に終わった二ヶ月後、研吾がこの世界に来てから最も多い数の魔物が攻めてきた。
かなり強い地震かと思う地響き、舞い上がる土埃、草原の緑を覆い隠すほどの黒い姿。大丈夫なはずだが、どうしても心配になる。
しかし、魔物たちは研吾の思惑通りに堀にはまり込み、それでも必死に前に進もうとしてきた。その結果身動きが取れず、遠距離の魔法にて駆逐されていった。
兵士たちの被害は全くなく、一方的な勝利で終わった。そして、魔物たちの地鳴りに負けないほどの歓声に包まれていた。
その後、研吾は国王に呼ばれ謁見の間へとやってきた。
そこにはたくさんの人が立ち並んでいたのは召喚された時と同じだが、あの時は好奇心の目で見つめられていたが、今回はまた違う視線のようだった。
「ケンゴ殿、よく来てくださった。今回はケンゴ殿のおかけで魔物討伐がすごく楽に終わった。礼を言うぞ」
国王からいたく感謝される。それほどまでに頻繁に襲ってくる魔物の被害は甚大であったのだろう。
「いえ、俺は出来ることをしただけですから。ただ、今回のことをするのに予算が相当かかっていますが、それは大丈夫でしたか?」
使った材料等は国王に請求してもらうように伝えてあった。それが少し心配だったのだが――。
「あぁ、何人か来ておったな。大臣、予算のほうはどうじゃ?」
「はい。大体城壁補修代の半分ほどですね。毎回どこかしらの壁が壊されてそのつど凝石薬を使っていたことを考えますと結果的には大幅削減が出来そうです」
そっか……。そうだよね。元がボロボロの壁だったわけだし、それを毎回直していることを考えたら、今後は軽い補修だけで済む。それだけで大幅な予算削減につながるのか……。
「うむうむ、ということだ。ケンゴ殿、よくやってくれた。これでお主には本格的にこの国の建築事業を任せていくことが出来るな」
国王がにっこりと微笑む。
そっか……元々そのつもりで呼んだんだもんね。
「まぁ、今すぐにどうと言うことはないからな。今まで通り依頼をこなしてくれたら良い。たまに儂から頼み事をするくらいだ」
それくらいなら今までと何も変わらないから大丈夫だろうか。
「では、これが今回の謝礼だ。受け取ってくれ」
国王から袋が渡される。それを受け取ると意外とずっしりと重みがあった。もしかすると相当量のお金が入っているのかもしれない。
「ありがとうございます」
そのことについてお礼を言うと俺は謁見の間を後にした。
そして、自分の部屋に帰ってくると袋の中身を確認する。
大量に入っていたのはお金ではなく宝石の類だった。でもこれってただのお金より価値があるのではないだろうか?
宝石の入った袋を片手に俺はしばらく立ち止まり動けなかった。
まずはモロゾフが魔法を唱える。すると簡単に一立米ほどの穴が出来上がる。それをそこそこの幅、深さの堀になるように繰り返し魔法を使ってもらう。しかし、魔法を使っているとはいえ、進みはあまり早くない上に魔力がなくなったら休憩を挟まないといけないので、あまり進行速度は早くない。
まぁこれ以上早くする方法もないので出来上がるのをゆっくりと待つ。
それから十日ほど経った。
堀作りは問題なく進んでいった。そして、半分ほど進んだのだがついに問題が発生する。
「おい、あの土ボコリは!?」
作業をしてくれていたドワーフ族の人が大声を上げる。
研吾はその土ボコリのした方をよく見る。すると、以前見た真っ黒な狼が集団で襲ってくるのが見える。
「ま、魔物だー!!」
その言葉を皮切りにドワーフ族の人たちが町中に逃げていく。
「お、俺たちも……」
驚きのあまり逃げ遅れた研吾たち。慌てて動き出そうとするがすでに目の前に迫った魔物たちからは逃げられそうになかった。
「ケンゴさんは私の後ろに」
ミルファーが前に出てグッと堅く口を噛み締める。
一筋の汗がミルファーの顔から流れ落ちる。
「大丈夫?」
不安げに研吾が聞く。しかし、ミルファーからは研吾の望んだ返事は返ってこなかった。
「とにかく私が時間を稼ぎますからその隙に逃げてください」
「だ、ダメだよ!? ミルファーも一緒に逃げないと!」
「そうは言ってもこの状況ですから……」
確かにすでに逃げることすらできない状況。どうすることもできない。そんな状況では確かにミルファーの言う通りにするしかないかもしれない。
「それでも……誰かを犠牲になんて……」
「いいから早く!」
ミルファーに急かされて嫌々ながらも逃げる準備をする。そんな時にちょうど視線を送った城門付近から急いで駆けつけてくれる人の姿が見える。
「せんせー、無事ですかー?」
それは兵士のアンドリューだった。彼を先頭に幾人もの人が来てくれていた。
そして研吾たちの前に立つと魔物たちの相手をしてくれる。
「ケンゴさん……、助かりましたね」
ミルファーがホッと笑顔を見せてくる。研吾もそれにつられて笑みを浮かべた。
そして、安心のあまりかミルファーに抱きつく研吾。
顔を真っ赤にしてアタフタとするミルファー。しかし、そのことに気付いていない研吾はそのまましばらく抱きついたままだった。
そして、しばらくしたら魔物達は撃退されていった。
それほど数がいなかったのか以前襲われたときほど時間がかからず、また、負傷している人もほとんどいなかった。
「先生、負傷されたところはありませんか?」
アンドリューが心配そうに聞いてくる。
「いえ、襲われる前でしたから大丈夫です。ありがとうございます」
「それならよかったです。お世話になった先生に傷でも負わせてしまったら悔やんでも悔やみきれませんから」
それだけ言って敬礼をするとアンドリューは再び王城へと戻っていった。
それを確認したドワーフの方々は再び戻ってきて作業を開始する。
それからは問題なく、二十日も経過するときには堀が掘り終わっていた。
「モロゾフさん、ありがとうございました。おかげで何とかなりました」
「気にするな。これで少しでも恩が返せただろう」
それだけ言うとモロゾフは手をあげて去って行った。
さて、これで大半の作業は終わった。あとは魔力耐性をあげていくだけだ。
これが一番の難点だったが、モロゾフが大量に持ってきてくれた魔吸石をある使い方をしたらそのまま使うほどの効果は得られないがそこそこの効果が出ることがわかった。
以前使ったのは粘着草を絞ったものに魔吸石のかけらを砕いたものだったが、これでは粘りけが強すぎて使いづらかった。ならどうするか……。粘着草を絞ったもの、その量を相当多めにすれば水っぽく性質を変更させることが出来た。その分魔力耐性自体も落ちて言ってしまったが、それでも効果があることがわかったのでこれを直接壁にかけていった。
水っぽいものなので城壁の上から流すだけでその効果を発揮する液体になったので人でもそれほど必要ではなかった。
ただ、一度では魔力耐性が弱すぎるのでそれが乾ききった――一日おいた次の日にもう一度かけていく。それを三度繰り返した結果、アンドリューさんの時に使ったものと遜色のないくらいの魔力耐性を得ることが出来た。それはミリスにも確認してもらったので間違いないだろう。
これで壁の修繕はおおよそ終わった。
どうしても古くなったこの壁を修繕することはすぐにはできなかったが、それは追々していくしかないだろう。
そして、この壁の効力を発揮する日がやってきた。
壁の修繕が完全に終わった二ヶ月後、研吾がこの世界に来てから最も多い数の魔物が攻めてきた。
かなり強い地震かと思う地響き、舞い上がる土埃、草原の緑を覆い隠すほどの黒い姿。大丈夫なはずだが、どうしても心配になる。
しかし、魔物たちは研吾の思惑通りに堀にはまり込み、それでも必死に前に進もうとしてきた。その結果身動きが取れず、遠距離の魔法にて駆逐されていった。
兵士たちの被害は全くなく、一方的な勝利で終わった。そして、魔物たちの地鳴りに負けないほどの歓声に包まれていた。
その後、研吾は国王に呼ばれ謁見の間へとやってきた。
そこにはたくさんの人が立ち並んでいたのは召喚された時と同じだが、あの時は好奇心の目で見つめられていたが、今回はまた違う視線のようだった。
「ケンゴ殿、よく来てくださった。今回はケンゴ殿のおかけで魔物討伐がすごく楽に終わった。礼を言うぞ」
国王からいたく感謝される。それほどまでに頻繁に襲ってくる魔物の被害は甚大であったのだろう。
「いえ、俺は出来ることをしただけですから。ただ、今回のことをするのに予算が相当かかっていますが、それは大丈夫でしたか?」
使った材料等は国王に請求してもらうように伝えてあった。それが少し心配だったのだが――。
「あぁ、何人か来ておったな。大臣、予算のほうはどうじゃ?」
「はい。大体城壁補修代の半分ほどですね。毎回どこかしらの壁が壊されてそのつど凝石薬を使っていたことを考えますと結果的には大幅削減が出来そうです」
そっか……。そうだよね。元がボロボロの壁だったわけだし、それを毎回直していることを考えたら、今後は軽い補修だけで済む。それだけで大幅な予算削減につながるのか……。
「うむうむ、ということだ。ケンゴ殿、よくやってくれた。これでお主には本格的にこの国の建築事業を任せていくことが出来るな」
国王がにっこりと微笑む。
そっか……元々そのつもりで呼んだんだもんね。
「まぁ、今すぐにどうと言うことはないからな。今まで通り依頼をこなしてくれたら良い。たまに儂から頼み事をするくらいだ」
それくらいなら今までと何も変わらないから大丈夫だろうか。
「では、これが今回の謝礼だ。受け取ってくれ」
国王から袋が渡される。それを受け取ると意外とずっしりと重みがあった。もしかすると相当量のお金が入っているのかもしれない。
「ありがとうございます」
そのことについてお礼を言うと俺は謁見の間を後にした。
そして、自分の部屋に帰ってくると袋の中身を確認する。
大量に入っていたのはお金ではなく宝石の類だった。でもこれってただのお金より価値があるのではないだろうか?
宝石の入った袋を片手に俺はしばらく立ち止まり動けなかった。
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