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2章
雪祭りの準備①
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それから、シフとは会うことのない日々を過ごした、ある日の朝。
「シーナ様!シーナ様!起きてください、雪です!雪が積もってますよ!」
バンッと扉の開く大きな音ではっと目をあける。
そして、弾んだリタの声を聞いたシーナは体を起こすと窓辺に駆け寄った。
「雪?」
「はい!」
リタがカーテンを開けたその横から私も外を覗くと、リタのいった通り、真っ白な雪が降り積もっていた。
未だにしんしんと降り続ける雪は、粉雪、と言うのが正しいだろう。軽く細かいその粒はふわふわと落ちてきている。
シーナの目はそんな雪に釘付けだった。
「ここでもまだ、雪が降るには早い時期なんだそうですよ。」
「えぇ、王都で雪が降る時期と比べてもまだ、2ヶ月前だもの……」
シーナは、窓を開ける。
「あ、シーナ様!」
びゅうっと凍るように冷たい風と共に雪も、部屋の中に吹き込んで来た。
一瞬首を竦めたが、シーナは窓の下を覗き込む。
「寒っ、寒いです、シーナ様!!」
リタは両腕で頭を覆い、すぐさま顔を背けた。
シーナはリタの言葉がまるで耳に入っていないように、下を向いたままだ。
シーナの格好と言えば、寝着一枚きりだと言うのに、寒くないのだろうか。そんなのも気にならないといった風だ。
でも、シーナが見ていた景色は確かに何も気にならなくなるようなものだった。
こんなに寒くとも代わり映えなく花開く眼下の花壇にも雪がつもっているのだが、まだ、シーナで言う足首くらいまでなので、花が埋まりきってしまうこともない。
まず、足首の高さまで積もると言うのも、王都では無かったことだ。ほんの少し、指の第2間接分くらいも積もれば、積もったと言うような場所でこれを見れば、王都のは積もったとは言えない。
ただ、それよりも、花に雪が降る様がとても綺麗だった。
そして、その場を飛び回る精霊も、雪が降ったことを祝福しているように楽し気な光を放っていた。
これらを、上から見ると、白い地面から直接花が咲いているようで、とても綺麗だ。もう、増えに増えた精霊も、その雪や花に輝きを足していた。
「すごい……」
「シーナ様!一回、一回だけ窓閉めてください!」
「あ、ごめんなさい。リタ」
ぼーっと見とれている間に、部屋の中へ降っていた雪が足元を濡らしていた。それに、部屋の温度も大分下がっていたようでリタは震えている。
そう考えると、シーナもだんだん寒さを感じて来た。
慌てて、窓を閉めるが、既に時遅し。
シーナも窓の周りもびしょびしょだった。
「くしゅんっ!!」
「あぁ……っ!シーナ様!……シーナ様は浴場に向かっていてください!」
体の芯からくる寒気に思わず大きなくしゃみを1つ。
リタが、私に濡れてもいい大きめのシーツを一枚かけてから、慌ててタオルを取りに走っていく。
「寒い……」
ガチガチと、歯が鳴り、指先も軽く震える。
何で濡れてることに気付かなかったのか不思議なくらいだ。
そうして、一度暖をとろうと、しばらくその場でしゃがんで、丸まっていると……コツン、と音がした。
音が鳴ったのは、窓のところだ。
シーナは気のせいだろう、と思ってそこへ目を向けたが、そのまま固まって窓を凝視する。
コツン……コツン……コツ、コツコツコツ……。
雪でも、小石でもない。
この小さな姿は……高位の精霊?1人(一匹?)だけだ。
寒そうな袖無しの白いワンピースに、金髪を頭の上で1つに丸めている。
それに、紫の瞳だ。
ノックをするように、窓を叩いている。
シーナは呆けたまま、それをじーっと見ていた。
そして、シーナが精霊に気付いたことを精霊自身が分かったのか、その口が動いた。
『いーれーてっ!』
シーナは、おそるおそる窓に精霊が入れるくらいの隙間を開けた。
精霊は、にっこりと笑い、ぴょんっと入ってきた。
「ありがとー」
「いえ、どう、いたしまして……」
「ミーはね、ミーって言うの!おねーちゃんは?」
「私は、シーナ……」
「ふぅ~ん、まぁ、おねーちゃんでいいや!」
会話が成り立つほどに流暢に喋れるミーは、少し舌ったらずに話す。
キョロキョロと部屋を見回しながら、真っ白ーっと笑っている。
「あ、あのね、ミーねおねーちゃんにでんごんしに来たの!おにーちゃんから!」
「おにーちゃん?……シフ?」
「そう!シフちゃん!……あれシフ……おにーちゃん!あのね、明後日の雪祭り一緒に行こうって!おにーちゃんは今行けないから、ミーがでんごんしに来たんだー!」
「雪、祭りって……?」
「んー、ミー分かんない。でも、おにーちゃんが迎えにくるからねって!ちゃーんと伝えたよ!」
また、外に出ていこうとするミーをシーナは引き留める。
「待って!!」
「んー?」
「……あの、シフは何者なの?」
「おにーちゃん?おにーちゃんはねー……んーとね……いつもお仕事してるよ。皆と一緒に!それ以外はミー分かんないや!じゃーね!」
ばーっと喋ってミーはまた、笑顔で飛び出して行った。
シーナは、唖然としながら、今度はその場に突っ立っていた。
「シーナ様!何してるんですか!!また、窓を開けて……こんなに冷えきってるじゃないですか!」
「……リタ?」
「風邪引きますよ!早くお風呂に行って下さい!ほら!」
リタに背中を押されて、シーナは浴場へ向かう。
そして、浴槽に肩まで入れられたところで、シーナははっとする。
明後日の雪祭りって何?
一緒にお仕事って?皆って誰?
ミーの話はさらに混乱するようなことばかりだ。
でも、明後日。
明後日シフと会えるのは分かった。
とりあえず、お風呂から出たら、クラストさん辺りに雪祭りの話を聞いてみよう。
行くのにリタの許可が必要だろうから、聞いてみなくては……。
そして、シーナは行くことを前提に考えてる自分に気づく。
行きたいと思っていることに……。
シーナはぶくぶくと頭まで浴槽に沈めた。
顔が赤くなって来たのは、温まってきたから……な、はず。
「シーナ様!シーナ様!起きてください、雪です!雪が積もってますよ!」
バンッと扉の開く大きな音ではっと目をあける。
そして、弾んだリタの声を聞いたシーナは体を起こすと窓辺に駆け寄った。
「雪?」
「はい!」
リタがカーテンを開けたその横から私も外を覗くと、リタのいった通り、真っ白な雪が降り積もっていた。
未だにしんしんと降り続ける雪は、粉雪、と言うのが正しいだろう。軽く細かいその粒はふわふわと落ちてきている。
シーナの目はそんな雪に釘付けだった。
「ここでもまだ、雪が降るには早い時期なんだそうですよ。」
「えぇ、王都で雪が降る時期と比べてもまだ、2ヶ月前だもの……」
シーナは、窓を開ける。
「あ、シーナ様!」
びゅうっと凍るように冷たい風と共に雪も、部屋の中に吹き込んで来た。
一瞬首を竦めたが、シーナは窓の下を覗き込む。
「寒っ、寒いです、シーナ様!!」
リタは両腕で頭を覆い、すぐさま顔を背けた。
シーナはリタの言葉がまるで耳に入っていないように、下を向いたままだ。
シーナの格好と言えば、寝着一枚きりだと言うのに、寒くないのだろうか。そんなのも気にならないといった風だ。
でも、シーナが見ていた景色は確かに何も気にならなくなるようなものだった。
こんなに寒くとも代わり映えなく花開く眼下の花壇にも雪がつもっているのだが、まだ、シーナで言う足首くらいまでなので、花が埋まりきってしまうこともない。
まず、足首の高さまで積もると言うのも、王都では無かったことだ。ほんの少し、指の第2間接分くらいも積もれば、積もったと言うような場所でこれを見れば、王都のは積もったとは言えない。
ただ、それよりも、花に雪が降る様がとても綺麗だった。
そして、その場を飛び回る精霊も、雪が降ったことを祝福しているように楽し気な光を放っていた。
これらを、上から見ると、白い地面から直接花が咲いているようで、とても綺麗だ。もう、増えに増えた精霊も、その雪や花に輝きを足していた。
「すごい……」
「シーナ様!一回、一回だけ窓閉めてください!」
「あ、ごめんなさい。リタ」
ぼーっと見とれている間に、部屋の中へ降っていた雪が足元を濡らしていた。それに、部屋の温度も大分下がっていたようでリタは震えている。
そう考えると、シーナもだんだん寒さを感じて来た。
慌てて、窓を閉めるが、既に時遅し。
シーナも窓の周りもびしょびしょだった。
「くしゅんっ!!」
「あぁ……っ!シーナ様!……シーナ様は浴場に向かっていてください!」
体の芯からくる寒気に思わず大きなくしゃみを1つ。
リタが、私に濡れてもいい大きめのシーツを一枚かけてから、慌ててタオルを取りに走っていく。
「寒い……」
ガチガチと、歯が鳴り、指先も軽く震える。
何で濡れてることに気付かなかったのか不思議なくらいだ。
そうして、一度暖をとろうと、しばらくその場でしゃがんで、丸まっていると……コツン、と音がした。
音が鳴ったのは、窓のところだ。
シーナは気のせいだろう、と思ってそこへ目を向けたが、そのまま固まって窓を凝視する。
コツン……コツン……コツ、コツコツコツ……。
雪でも、小石でもない。
この小さな姿は……高位の精霊?1人(一匹?)だけだ。
寒そうな袖無しの白いワンピースに、金髪を頭の上で1つに丸めている。
それに、紫の瞳だ。
ノックをするように、窓を叩いている。
シーナは呆けたまま、それをじーっと見ていた。
そして、シーナが精霊に気付いたことを精霊自身が分かったのか、その口が動いた。
『いーれーてっ!』
シーナは、おそるおそる窓に精霊が入れるくらいの隙間を開けた。
精霊は、にっこりと笑い、ぴょんっと入ってきた。
「ありがとー」
「いえ、どう、いたしまして……」
「ミーはね、ミーって言うの!おねーちゃんは?」
「私は、シーナ……」
「ふぅ~ん、まぁ、おねーちゃんでいいや!」
会話が成り立つほどに流暢に喋れるミーは、少し舌ったらずに話す。
キョロキョロと部屋を見回しながら、真っ白ーっと笑っている。
「あ、あのね、ミーねおねーちゃんにでんごんしに来たの!おにーちゃんから!」
「おにーちゃん?……シフ?」
「そう!シフちゃん!……あれシフ……おにーちゃん!あのね、明後日の雪祭り一緒に行こうって!おにーちゃんは今行けないから、ミーがでんごんしに来たんだー!」
「雪、祭りって……?」
「んー、ミー分かんない。でも、おにーちゃんが迎えにくるからねって!ちゃーんと伝えたよ!」
また、外に出ていこうとするミーをシーナは引き留める。
「待って!!」
「んー?」
「……あの、シフは何者なの?」
「おにーちゃん?おにーちゃんはねー……んーとね……いつもお仕事してるよ。皆と一緒に!それ以外はミー分かんないや!じゃーね!」
ばーっと喋ってミーはまた、笑顔で飛び出して行った。
シーナは、唖然としながら、今度はその場に突っ立っていた。
「シーナ様!何してるんですか!!また、窓を開けて……こんなに冷えきってるじゃないですか!」
「……リタ?」
「風邪引きますよ!早くお風呂に行って下さい!ほら!」
リタに背中を押されて、シーナは浴場へ向かう。
そして、浴槽に肩まで入れられたところで、シーナははっとする。
明後日の雪祭りって何?
一緒にお仕事って?皆って誰?
ミーの話はさらに混乱するようなことばかりだ。
でも、明後日。
明後日シフと会えるのは分かった。
とりあえず、お風呂から出たら、クラストさん辺りに雪祭りの話を聞いてみよう。
行くのにリタの許可が必要だろうから、聞いてみなくては……。
そして、シーナは行くことを前提に考えてる自分に気づく。
行きたいと思っていることに……。
シーナはぶくぶくと頭まで浴槽に沈めた。
顔が赤くなって来たのは、温まってきたから……な、はず。
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