深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第二部 第五章 初めてのデート

初めてのデート8 R18

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 悟空の舌は相変わらず気持ち良くて、いつの間にか耳の中も指でいじられている。

 再び玄奘のものは勃ちあがり始めてきた。このままでは先程のように玄奘だけ抜かれてしまうのも時間の問題である。玄奘は悟空にも気持ちよくなってもらいたいと考えるようになっている。

「んぁ……」

 玄奘はキスを中断した。唾液が二人の唇をつなげるように垂れた。 

「あの……」

「どうしました?」

「私も……触っていいだろうか?」

 悟空はぱちぱちと何度かまばたきをした。

「どこを?」

「悟空の……その……それ、を。じんじんするだろう?そんなに勃っているのだから」

「……ああ、まあ、そうですね」 

「じんじんしたときにどうすればいいか。今の私は悟空に教えてもらったから知っている。気持ちが良いから、悟空にもしてあげたい」

 玄奘の声音は誠実である。悟空はいろんなものを堪えて出来た眉間のしわを自分でこすった。

「あ~、えっと……おれはだいじょうぶです。後で自分で抜きますから」

「なぜ?私は悟空に助けてもらうのに」

「玄奘はおれの推しだからです。あなたが望むことであれば、おれはなんでもします。でもその逆は……だめです。推しにふれてもらうわけにはいきません」

「私が悟空にしてあげたいのに……」

 悟空は黙った。キスで興奮していた身体が少しずつ冷えてくる。玄奘の言葉をどう解釈して良いものか迷っている様子だった。 

「おれたちは恋人じゃなくて、ただの恋人ごっこでしょう?」 

 八戒や悟浄からも提案された通り、もう恋人ごっこをやめた方がいいのでは、とは玄奘もこのところ考えていた。

 しかし、本当の恋人になるためには、好きだと自分の気持ちを告白しなければならない。玄奘は先程もそれを言いかけたのだが、悟空がカッコよすぎて緊張のあまり何も言えなくなったことを思い出した。

「悟空は恋人ごっこをもうやめたいのか?」 

「……」

 悟空はしばらく黙ったのちにしぼりだすような声で言った。

「やめたくないです」

「それなら、恋人ごっこをすればいい。恋人ごっこなのだから恋人のつもりになろう。私は悟空の推しではなく、ただの恋人だ。恋人同士であれば、互いにさわりあって愛情を確かめるのが普通だろう?どちらかだけが尽くすのではなく、恋人として一緒に気持ち良くなりたい」

 玄奘の真摯な希望は悟空の胸を打った。

「……ちっ」

 しかめ面で舌打ちをした悟空に玄奘は首を傾げる。

「今まで散々我慢してきたものを……嫌だったらすぐに言ってくださいよ」

 悟空は玄奘の顎を上げ、いきなりかみつくような激しいキスをしてくる。悟空の歯で唇を甘噛みされる間に、悟空の舌が口の奥まで侵入してくる。 

「んっんふぅ……」

 開きっぱなしの唇から唾液が垂れる。息もできないようなキスだ。玄奘も無我夢中で悟空に合わせて舌を絡める。

「ん……」

 かすかに洩れる悟空の声が玄奘の胸を熱くする。悟空が自分とのキスで気持ち良くなっているのが嬉しい。 

「んっ、んあぁ……んふっ……」

 悟空がキスをしながら腰を密着させてくる。玄奘の太腿から股関節の辺りに熱いものが当たる。

 悟空が腰をかすかに揺らしてくる。その振動が身体の中の熱を高めていくような気がする。

「ぁあっ、んあんふぅ……、んっ……これ……」

「玄奘も揺らしてください……。気持ち良いですから」

「んっ……んぁん……」

 玄奘も悟空の背中に腕をまわして力強く抱きしめてから、下半身を少しずつ動かしてみる。悟空の下腹の辺りにそれがこすれていく感覚がする。そのたびに突き抜けるような快感を感じる。

「ぁあっ、……良い……んっ、あぁっ、ごく、悟空も?」

「んっ、……気持ち良いです……」

 玄奘は悟空の頬に手を当てる。悟空の頬も火照っている。額には汗をかいている。こんなに切羽詰まったような悟空の顔を見るのは初めてだ。

「んっ、……悟空……もっと……」

 玄奘は悟空の頬に当てていた手をゆっくりと下げ、ついに悟空のそれにふれた。

「あっ……げ、玄奘……」

「こうやって……こするんだろう?」

 手を筒状にして悟空のそれに巻き付け、上下に動かした。

「んっ、……」

 思わず出てしまったような悟空の慌てた声で、玄奘の胸が鳴った。

「気持ちいいか?」

「あっ、……玄奘、おれ、もう……」

 悟空はそう言ったかと思うと、玄奘と自分のそれを玄奘の手ごと上から掴んで一緒に擦り始めた。

 自分のそれと悟空のそれがキスをするみたいにぶつかっている。しびれるような快感と視覚的な興奮で、玄奘と悟空の息はどんどん荒くなっていく。玄奘はもう訳も分からず、何度も何度も悟空とキスを交わした。

「あぁんっ……ご、ごく……ン……、ぁあっ、気持ち良い……」

「おれも……んっ」

 二人は勢いよく白濁を噴出した。悟空の噴出はやたら長かった。








 身体を洗った後、軽いキスをしながら二人で風呂に浸かっていると、悟空のものは再び勃った。玄奘は今度こそ口で抜いてやろうと思ったのだが、
「イくなら二人で、がいいです。恋人同士なんだとしたら」と悟空が言い張った。

 二人は広い浴槽の中でもう一度それを合わせて一緒に抜いた。こすったときのちゃぼちゃぼと揺れる水音が卑猥だと玄奘は思った。

 身体が熱くて茹であがりそうな玄奘は浴槽の縁に腰かけた。

 悟空の髪は濡れている。少し気怠そうなその濡れた髪がやっぱり好きだと玄奘は改めて思う。悟空の濡れた髪先を指で弄びながら玄奘は尋ねた。

「……人の身体は何度でもイけるのか?」

「いや……限界はあると思いますよ。疲れますし、精液も作らないと出ませんし。ただ、中でイくんならまた話は別でしょうけど」

「中とは?」

「あ……の、えっと……また、おいおい説明しますよ」

「悟空はまたすぐに線を引こうとする」

 頬を膨らませた玄奘だったが、からからと笑う悟空がその頬をつついたところ、すぐその頬はすぐにほぐれた。

「線なんか引いてませんよ。玄奘が恋人だったとしても、また今度説明します。今日はもう疲れたでしょうから」

 ルームサービスで夕食をとった二人は、また一緒のベッドに入った。おやすみのキスを交わしている間にお決まりのようにまた興奮してしまい、今度はベッドの中で互いのものを擦り合わせたのだった。 








 翌日悟空と玄奘の自宅ではなく、東京駅に迎えに来させられた磁路はあきれ返った。八戒と悟浄は既に昨夜のうちに帰京しており、すでに磁路の車に乗り込んでいる。

 駅で待ち合わせた玄奘の顔ははっきりとわかるほどに昨夜の余韻を残し、目はとろんと潤み、頬は火照り、肌は艶めいている。

「この顔で早朝の電車に乗って帰ってきたのか?昨夜、濃厚な情事をしましたと筆文字で書いてあるかのようなこの顔で。週刊誌騒動もあったばかりというに、おぬしらは……」

「悪かったって」

「申し訳ございません」 

 悟空と玄奘は平謝りするが、磁路は聞く耳を持たなかった。

「玄奘は家に送っていく。こんな顔で仕事に行かせるわけにはいかぬ。今日のインタビューは玄奘抜きじゃ」

 そのまま無言で玄奘を家に送り届けた後(悟空はさすがに玄奘と一緒にいてやりたいとは言えなかった)、磁路は車を止めてふり返った。 

「ええい、もう黙っておれん」

  磁路は握り拳を振り上げ、どしんとハンドルを叩いた。ハンドルががたんと取れて壊れる。磁路は神通力を使ってハンドルを嵌めなおしたあと、再び神通力を使って座席を後ろ向きに回転させた。後部座席の悟空と向かい合う。

「大聖殿、すでに仕事にも影響をきたしておる。なぜ自分をセーブできんか考えたことがあるか。大聖殿がいつまでも自分の気持ちをごまかしつづけているせいじゃ。はっきりと玄奘と互いに気持ちを確かめ合い、恋人になれば安心できるというに。言葉で確かめられない分、身体を近づけたくなるのじゃ」 

 磁路から本気の説教をされる悟空を、八戒と悟浄はにやにやしながら見守っている。悟空は両手を膝に押し付けながらも言い返す。

「玄奘は推しだから……好きとかそういうのは畏れ多い存在なんだよ」

「大聖殿。自分の胸に手を当てて考えてみぃ。そこにあるのは本当に推しへの尊敬の念だけか?個人的な恋情は存在せぬのか」

「だからオタクは、推しの恋人になりたいなんて望めるわけねえんだって」

「言い訳ばかりの、この軟弱者めがっ」

 磁路が大声で怒鳴った。ワゴン車のガラスもびりりと震える勢いである。八戒も悟浄も目を丸くした。

「大聖殿はオタクであることを言い訳にしておる。そなたたちに足りないものは話し合いじゃ。腹の内を話すのだ。いつも快楽に負けて、なしくずしに関係を持ってしまうのだろう?ああ、前世の大聖殿が聞いたら泣くぞ。あの高潔な過去の大聖殿は唐僧の玄奘三蔵に恋情を持っていることを認めつつも、それをぐっとこらえて弟子としての領分を守り、不用意に唐僧にはふれなかったのだぞ。ああ、斉天大聖孫悟空殿は本当に心根からして気高い御仁であった。今の下半身ゆるゆるのそなたとは違ってな」

「お、おれだって……別に無理に関係を持ってるわけじゃねえし」

「そうだろう?玄奘も望むのであろうなあ。そこなのだ、問題は。私は最初から危惧はしておったのだ。玄奘の前世唐三蔵は死ぬまで精を吐したことのなかった清浄な僧であった。今世でも大聖殿と出会って初めて精通を迎えたのであろう?これまで抑圧されてきた分、今世の性的な衝動は強かろう。だから性的な衝動を覚えたばかりでは、その行為に夢中になるのも仕方なかろうと大目に見ておったのだ。そのうちに二人は本当に交際するだろうからとほほえましく思いながら待っておった。しかし、いつまで経っても煮えきらんまま、曖昧な関係を続けいやらしい行為だけが重ねられていく。私はもう黙ってはおられん。いいか、大聖殿。腹を決めろ。紅害嗣ももう手出しはしてこない今、本当の恋人になるのか、もう玄奘とは恋人のふりをやめるのか、はっきり決めてもらわねば」

 磁路は悟空の両肩をがしっと掴み、大きく揺らす。悟空は目を逸らした。 

「わかったって。ちょっと落ち着けよ」

「これが落ち着いていられるか。お主たちもどう思う?同じグループ内の醜聞を黙って見ていられるのか」

 磁路は、肉まんを食っている八戒と、しらじらしく外を向いている悟浄に矛先を向けた。二人が昨日悟空と玄奘のために陰ながら散々骨折りしてやったことを、磁路は知らない。 

 悟浄は重々しい声で口を開いた。

「醜聞とまでは拙者は思ってござらんがな。玄奘も悟空も互いを思う気持ちがあって行為に至っているものと解釈しておる。建前や覚悟の不足からまだ本当の恋人になるふんぎりがついておらぬだけだろう」

 思いがけず悟浄が庇ってくれ、悟空はそうだそうだと頷く。

「そうだろうか。気持ちはとうに確かめ合っても良い段階だろうと、私は思うが。八戒はどうだ?玄奘だって大聖殿のことを好いておるのだろう?違うか?」 

「えーっとね、玄奘はねぇ、まだ好きかどうかの確信は持てないって言ってたけどなあ」

 玄奘はつい先日、悟空への恋情を認めたところなのだが、八戒はそらとぼけて嘘をつく。無論、そちらの方が面白いからである。 

「玄奘の方もまだそんなぬるいことを言っておるのか……」

 頭を抱える磁路はあまりにショックだったのか、頭を抱えてうつむいている。

「ほら見ろ!下手に交際でも申し込んでみろ。気持ち悪がられて距離置かれるかもしれねーだろ?」

 悟空は鬼の首をとったように言いたてる。

 八戒は、するめいかをくちゃくちゃと噛みながら言った。

「でも告白なんてさ、大抵の場合、相手がどう受け取るかわからずにするもんじゃねえの?相手の気持ちを確信しないと告白できないってのは臆病者の言い訳だと思うけどな、俺は」

 珍しく八戒の言葉がぐさりと悟空の胸につき刺さる。

「玄奘の火照った顔から察するに昨夜は行為にかなり時間をかけたようであるし、とうとう玄奘もお主を受け入れてくれたとすれば告白を断る可能性は低いと思うが」 

 悟浄も追い打ちをかける。 

 肩を縮こめて、悟空は真実を打ちあける。 

「でも、まだヤッてはねえし……」  

「まだ!ヤッてないのか!」

 三人の声が揃った。  

「あ~爛れた関係。あ~、見ていられぬ」

 磁路は座席をくるくる回しながら天を仰いだ。
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