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1話 勇者と従者
1.荒野の戦闘
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草がまばらに生えた荒れた土地で、二人の男性が多数の獣を相手どっていた。
ただ周囲を取り囲む獣の姿は禍々しく歪み、狼と猿を掛け合わせたような姿形をしている。
一般的に「魔獣」と総称される、魔力により凶暴に変質した生き物だ。
人を積極的に襲い肉を食らおうとする存在は、目の前の二人を食い殺さんと血走った目をギラつかせている。
「セノン様、そちらに二匹行きますよ!」
「分かってる!大丈夫!」
仲間の青年から声を掛けられ、十代前半ほどの少年――セノンは返事を返す。
勢いよく地を掛け向かってくる、血に飢えた魔獣二匹に向き直る。
少年の体つきに比べ少々大振りな剣を構え直すと、まばたきする間もなく飛び掛かってくる。
大口を開けた口に並ぶ獰猛な牙も、伸ばした前足に備わった鋭い爪も、人の体に触れれば容易く引き裂き死に至らしめる。
さらに丈夫な毛皮と硬い骨は、切れ味の良い剣を持っていたとしても、大の大人でも断ち切るのは容易ではない。
「ふっ!」
しかしセノンは呼気とともに剣を振るい、一匹目の頭を容易く一撃で叩き割る。
次いで、回り込んで死角から飛び掛かってきた魔獣に対して身を翻し、その勢いのまま剣を薙ぐ。
魔獣は胴体の半ばから一刀の元に断ち切られ、一瞬で絶命した。
既にセノンの近くには、同種の魔獣の死体が五匹分転がっている。
見た目の幼さに似合わない、苛烈な剣戟と鮮やかな手並みだった。
「ふぅ…よし、あとは…」
魔獣の迎撃を終え、息を整える。
仲間の青年の方を見ると、火炎魔法で離れた魔獣を焼き殺し、直後に飛びかかってきた最後の一匹の首を、ついでといった調子で跳ね飛ばしたところだった。
青年はたった今魔獣の首を刎ねた洋剣の血振りを片手で行い、セノンと同じ様に一息つく。
「ひとまず終わりですね。周囲に他の魔獣の気配は?」
「ん、ちょっと待って」
視界内の魔獣は殲滅したものの、油断なく青年が問いかける。
それを受けセノンは目を閉じ、意識を集中する。
常人以上に優れた聴覚を持つセノンが耳を澄ませると、音で周囲の様子が判別できる。
すぐ近くにはいないが、少し離れたところに魔獣の群れがいるのを知覚した。
「ここからだと見えないけど、あっちの方。たぶん今と同じくらいの数かな」
方向を指し示しながら告げる。
同時に、セノンは自らに肉体強化魔法をかけ直した。
セノンの戦闘力の源は、自己強化魔法の優秀さだ。
これを切らすと、筋力、反射神経、肉体の頑丈さなどが著しく低下してしまう。
見た目にそぐわぬ身体能力の高さは、魔法の才能のおかげであった。
「カイオは回復か強化魔法、いる?」
「いえ、この程度であれば大丈夫です。次に向かいましょう」
「…了解」
強化なしで一方的に魔獣を屠れるため、カイオと呼ばれた青年は申し出を断る。
いつのまにか、青年は討伐の証となる魔獣の耳を切り落とし、集め終えていた。
その様子にセノンは頼もしさと、わずかな対抗心を覚える。
そして、次の魔獣を屠るべく歩き出した。
青年は何も言わず、主に使える熟練の従者のように、その後ろに従った。
ただ周囲を取り囲む獣の姿は禍々しく歪み、狼と猿を掛け合わせたような姿形をしている。
一般的に「魔獣」と総称される、魔力により凶暴に変質した生き物だ。
人を積極的に襲い肉を食らおうとする存在は、目の前の二人を食い殺さんと血走った目をギラつかせている。
「セノン様、そちらに二匹行きますよ!」
「分かってる!大丈夫!」
仲間の青年から声を掛けられ、十代前半ほどの少年――セノンは返事を返す。
勢いよく地を掛け向かってくる、血に飢えた魔獣二匹に向き直る。
少年の体つきに比べ少々大振りな剣を構え直すと、まばたきする間もなく飛び掛かってくる。
大口を開けた口に並ぶ獰猛な牙も、伸ばした前足に備わった鋭い爪も、人の体に触れれば容易く引き裂き死に至らしめる。
さらに丈夫な毛皮と硬い骨は、切れ味の良い剣を持っていたとしても、大の大人でも断ち切るのは容易ではない。
「ふっ!」
しかしセノンは呼気とともに剣を振るい、一匹目の頭を容易く一撃で叩き割る。
次いで、回り込んで死角から飛び掛かってきた魔獣に対して身を翻し、その勢いのまま剣を薙ぐ。
魔獣は胴体の半ばから一刀の元に断ち切られ、一瞬で絶命した。
既にセノンの近くには、同種の魔獣の死体が五匹分転がっている。
見た目の幼さに似合わない、苛烈な剣戟と鮮やかな手並みだった。
「ふぅ…よし、あとは…」
魔獣の迎撃を終え、息を整える。
仲間の青年の方を見ると、火炎魔法で離れた魔獣を焼き殺し、直後に飛びかかってきた最後の一匹の首を、ついでといった調子で跳ね飛ばしたところだった。
青年はたった今魔獣の首を刎ねた洋剣の血振りを片手で行い、セノンと同じ様に一息つく。
「ひとまず終わりですね。周囲に他の魔獣の気配は?」
「ん、ちょっと待って」
視界内の魔獣は殲滅したものの、油断なく青年が問いかける。
それを受けセノンは目を閉じ、意識を集中する。
常人以上に優れた聴覚を持つセノンが耳を澄ませると、音で周囲の様子が判別できる。
すぐ近くにはいないが、少し離れたところに魔獣の群れがいるのを知覚した。
「ここからだと見えないけど、あっちの方。たぶん今と同じくらいの数かな」
方向を指し示しながら告げる。
同時に、セノンは自らに肉体強化魔法をかけ直した。
セノンの戦闘力の源は、自己強化魔法の優秀さだ。
これを切らすと、筋力、反射神経、肉体の頑丈さなどが著しく低下してしまう。
見た目にそぐわぬ身体能力の高さは、魔法の才能のおかげであった。
「カイオは回復か強化魔法、いる?」
「いえ、この程度であれば大丈夫です。次に向かいましょう」
「…了解」
強化なしで一方的に魔獣を屠れるため、カイオと呼ばれた青年は申し出を断る。
いつのまにか、青年は討伐の証となる魔獣の耳を切り落とし、集め終えていた。
その様子にセノンは頼もしさと、わずかな対抗心を覚える。
そして、次の魔獣を屠るべく歩き出した。
青年は何も言わず、主に使える熟練の従者のように、その後ろに従った。
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