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拘束おしがまプレイ
「ん……」
脚を僅かに擦り合わせ、衣擦れの音だけが部屋の中に断続的に響く。俺は現実から目を逸らしたくて、思わず俯いてしまう。その間あの人はずっと、俺が身体を揺らす様をただ見下ろすだけだった。
『小便を我慢しろ』———俺の勤めるホスクラの店主であるその人にそう言われてから、まもなく小一時間が経過しようとしている。
事の発端は閉店後すぐのことだった。背後から店主に呼び止められた俺は、今日もいつものように身体を求められている合図だと理解し、何の気もなしにその声に応じた。
ところが耳元で囁かれた言葉は想像とは遥かに異なった。『着替えずにそのまま待っていろ』『控え室から外に出るな』。てっきり誘われると思っていた俺は、意図が読めないまま言葉通りの指示を受け入れるしかなかった。
そして全員が帰宅し、二人きりになった時。店主が、白服に包まれた俺の腹をそっと撫で上げる。そして口角を僅かに吊り上げた。小便を我慢しろ、そう命令しながら。
その後は否応なしに白服のまま車に乗せられ、店主の家へ直行した。
家に着くやいなや、フローリングの床に座らされ、後ろで手首をきつく縛られた。ここで俺は完全に意図を理解した。トイレへは行かせない。限界まで我慢して、失禁しろ。これが今日の奉仕らしい。
閉店後トイレに立つことを許されなかった俺は、営業中に摂取したアルコールをそのまま抱えて今に至るわけで。最後に排泄したのがいつだったか思い出せない。帰り際に既に感じていた尿意はあっという間に膨れ上がり、下腹をちくちくと断続的に刺激している。
「頑張ってるな。もう一時間経つのに」
「貴方が、っ、言うから、……」
「はは、そーだったな」
そう言うと店主は、自分が座っているソファを指でトントンと叩いた。俺は膝を使って床を這うように進む。進む度に膀胱が揺れて尿意が刺激される。やっとの思いで店主の足元に辿り着くと、おもむろに彼がペットボトルを取り出した。500mlの新品の水。ぴりりと音を立てて蓋を捻り、喉に流す彼の姿を、格好良いなあと思いながらぼんやりと見つめてしまう。
視線が交わる。そう思った瞬間、唇がぐっと押し付けられた。
「ん……っ!」
閉じ切らなかった唇の隙間から冷たい水が流れ込む。胃の中に水が落ちていく感覚。膀胱が誘われる。一通り全てが胃に流れると、店主は再び水を自らの口に含んだ。そうしてまた同じように、口付けられる。
「……零すな、全部飲め」
「はい、……っ、んぅ、……ッはぁ、ん、うぅ……ッ♡」
(クッソ……、小便したいのに、いつまで……)
されるがまま、ごくごくと水分を取り込んでしまう。最終的に500mlのペットボトルが空になるまで口移しは続いた。
(な、なんか、めっちゃ小便したい……っ!最悪だ、なんで急に……)
飲んだ分だけまた尿が生成されるのかと思うと、とてもしたくなってきたような気がする。尻を左右に揺らしていないと堪らない。呼吸が浅くなる。ちらりと見上げて窺ったあの人の表情は、まるで感情が読めないほど無に思えた。
*
猛烈に小便がしたい。身体をまっすぐに保てず、前のめりになっていく。そんな俺を見て、店主は苦虫を噛み潰したような顔をしている。何を考えているのか読めない。最初は貴方を満たすことだけを考えていたはずなのに、脳内が全部尿意に支配される。どんなに激しく犯されても、今までそんなこと一度もなかったはずだ。貴方の意図を汲み取るほどの余裕がない。とにかくトイレに行きたい。でもそれは永遠に許されないことだ。
「っ……、ん……」
「まだ出すなよ」
出すなと言われる度、身体は逆をいくように反応する。激しく疼く下腹。ペニスがむずむずと震える感覚に身震いが起きる。我慢、という行為がそろそろ苦痛になってきた。トイレには確実に行けない。だからといって諦めることも許されない。きっとこの先も『出して良い』なんて許可は出ない。じゃあ、俺は一体どうすれば良い?その時が来るのを待って、我慢し続けるしかないのか?
「……ッ!」
その時。下腹部の疼きが急激に威力を増す。直後、尿意がぐんと酷く高まった。
(や、ばい、……ッ、小便が……!)
正座になって内腿を忙しなく擦り合わせる。尿道口がツキンと痛くなる。まずい、我慢のコントロールができない。無意識に尻を左右にくねらせてしまう。理性が羞恥を訴えるが、そうでもしないと堪らなくて。
「ぅ、くう……ッ、ふぅ……、ッ!」
「まだ駄目だ」
「っ、はい、……ッ」
(だめだ、このままじゃ漏れる……っ!)
(どうしよう、小便したいっ、だめだ我慢しろ!!)
無情にも尿意の波は更に膨れ上がる。膀胱を庇いたくて上半身を折りたたんだのに、腹が圧迫されてもっとしたくなる。性器のむずむずが堪らない。こんなの気がおかしくなる。後ろに縛られた手首。意味もなく指と指を絡ませ、気を逸らそうとする。どくん、どくん、と小便が蓄積される感覚。俺は咄嗟に、性器の根元を踵でぐりぐりと刺激した。
(我慢……っ、頼むから、波収まれ……っ!落ち着けよ……ッ!)
(冗談じゃねえ漏らしたくない……!我慢しろっ、あああもう、我慢っっっ)
終わりが見えない。終わりを作るのは自分なのに、許可が無いから許されない。しばらくして尿意の波は落ち着きを見せたものの、腹の中に溜まった小便がなくなった訳ではない。依然として腰をじっとしていられない俺は、深く呼吸をしてなんとか我慢だけに意識を向ける。
「偉いな、我慢できて」
「っ、~~~~~♡」
店主はそう言うと、俺の頭をふわりと撫でた。肌を通じて熱が伝わる。全身が紅潮し、ふっと緩みそうになる下半身を慌てて締め付けた。危ない、撫でられるのが嬉しくて漏らすなんて、まるで本当の犬みたいじゃないか。
緩んだ一瞬を突いて、また尿意が駆け上がる。ぶるりと身震いをする俺を見た店主は、おもむろに立ち上がり、目の前にしゃがみこんだ。
(見るな、……っ、こんな姿……!)
(ほんとに、やばいって、もう小便出るっっ)
(あっ、あ、あ、ッ、まって、マジで、~~~~~トイレ行きたい!!早く!!)
「ううう、ぅ、ううぅっ、やば、ぁ、……っ!!」
「辛いなあ?でもまだ駄目だ」
「ん、ふぅぅ、うぅぅ……っ!」
「忍耐強いとこ、ホントに感心するよ」
さすが俺の見込んだホストだ、とでも言わんばかりに満足そうに貴方が語る。忍耐強い?当たり前だ。ホストの膀胱舐めんな。営業中どんだけ酒を飲んで耐えてると思ってるんだ。貴方だってわかるでしょ、何年もこの世界でやってりゃ膀胱くらい強くなる。その上でもう限界なのだから、ほんとにほんとにギリギリだ。こんなの、常人なら絶対に漏らしてる。
(あ、あっ、漏れる……っ、も、もれるっ!こんな、我慢できない……っ)
(せめて前……っ、前抑えたいのにっ、あーーークソっ、漏れる!!!)
あの人が目の前にいるのに、もじもじと身体を揺するのがやめられない。水風船のように膨らんだ腹がはち切れそうだ。勝手にひくひくと収縮し始めて、排泄を促す。
何を考えているかわからない茶色の瞳が怖い。いつもみたいに獣のような目で抱いて欲しい。乱暴でも良いから、気持ちを伝えて欲しい。貴方を欲を読み取れないことが、何よりもいちばん怖かった。
(まってガチで、ほんとにやばいってこれ!!)
(あっあっあっ、うそ、まって無理、漏れる、もれるからっ、あああ……ッ!!!)
恐怖が焦りを生み、焦りが欲求を加速させる。ペニスの先端がはくはくと開閉を繰り返し始める。俺は堪らず踵を思い切りめり込ませた。小刻みに股間を揺らし、刺激する。けれど本当に刺激したい場所はそこではない。もっと先端、今にも尿を吐き出しそうな出口だ。本当に欲しい刺激が届かない感覚がもどかしくて、四方八方に腰がくねってしまう。
(むり、我慢できないっ、あ、あっ、あ、まって、また、また波が、あああ……っ!!)
(耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ……ッ!!!波落ち着け、我慢しろっ!!!)
腰が揺れるのを止められない。踵が股間にめり込むくらい激しく力を入れて、無様になろうとも必死で下半身を揺さぶった。そうでもしないと、もう漏れてしまう。こんな悪足掻きで尿意が晴れることなんてないと分かっていながら、それでも下半身をめちゃくちゃに揺らし続けた。
(いやだ漏れる、もう無理だって、あっ、あっ、あッ、駄目だ我慢っ!!!)
(限界だから、もう小便もれるからぁっ!!)
(あああもう、どうしよう、トイレ、トイレ間に合わないッ、小便したいっっ!!)
……そんなんだから、俺はその時まで気が付くことができなかった。
膨れた腹に触れる、あの人の冷たい指先。はっと顔を上げると、その人が僅かに口角を吊り上げるのが目に入った。
直後。ぐ、と腹に感じる強い圧迫感。途端、全身の肌が総毛立った。あろうことか、店主の手のひらが俺の腹を強く押し始めたのである。
「あああぁぁぁ、……ッ!!!!」
ぐんと跳ね上がる尿意。表面張力ぎりぎりで保っている水面が、じゃばじゃばと腹の中で暴れる。一定のリズムで腹に手のひらが食い込み、外側から無理矢理潰された膀胱は中身を排出しようと震える。誘われるように尿意の波が訪れる。下腹を殴るような暴力的な欲求。目を瞑り、波をやり過ごそうと身をきつく固めた。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……っ、ああぁッッ!!!!)
もう無理、出る。もう漏らす。俺は思い切り腰を突き出し、狂いそうなほどの欲求に全力で耐える。こんなの狂う。漏らす。俺は自然と首を横に振った。するとあの人の指が、俺の顎をくいとつまみ上げた。視線が交わる。何を考えているのかわからない瞳が、少しだけ翳る。
「……嫌か?」
「あ……っ、ああ、ッ、ああぁ……っ」
「言葉になってねえ……」
違う。嫌なわけじゃない。俺は否定の意味で、今度は意思を持って首を横に振った。ただキャバオーバーなだけ。心も身体もぐちゃぐちゃでどうすれば良いのかわからないだけだ。背中がぞくぞくと戦慄する。着実に何かがせり上がってきている。ぶるぶると強めに腹を揺らされ、俺は上半身をきつく捩った。きゅううん、と股間が強烈に疼いてしまう。
腹の圧迫が増す。力を強められている。まずい、何か来る。そう思った瞬間、ペニスの先がかっと熱を帯びた。激しい疼きとともに、じわりと水分が滲む。
(~~~~~~~~~~漏れる漏れる漏れる漏れる漏れるッ!!!!)
「あっ、ああぁ、っ、はあ、はあぁ……っ!!!」
床に伏せそうなほど折り畳まれた上半身。下半身をくねくねと揺らし、踵でペニスを潰し、全身で尿意を我慢する。これまでにない強い欲求だった。もう漏らす。無理。は、は、と浅い呼吸を繰り返して尿意を逃がそうとしても、駄目だった。じわり、また股間が緩む。思わず嬌声を上げる。あの人の重厚な声が「我慢しろよ」と耳元で響き、脳みそがぐちゃぐちゃになる。全身にぞくぞくとしたものが駆け巡る。その拍子に、しょおお、と水流が飛び出てしまった。
(~~~~~~~~~ッッ!!!!)
数滴零れたとかいうレベルではない。白服の中心がほんのり黄色に染まる。駄目だ、まだ我慢しないと。我慢しろって言われたのだから。駄目だ、駄目だ、そう思うほど尿道がきゅんきゅんと疼く。疼く度、しょおお、と溢れる。彼は濡れたそこに触れると、小さく溜息をついた。
(あっあっあっ、まって、また、ちびる、やばいやばいやばい……ッ、はあああっ)
(もうむり、ちんこ震えて、~~~~~~っ、あ、あ、あ、で、でる、ちびる、~~~~~~~~ッッッ!!!!)
(小便したい、もう漏れる、限界だってクソが!!!!)
「……出てる」
「ご、ごめ、なさ、……っ、あ、ああっ、はあっ、ああぁっ」
「まだ良いって言ってねえよ。止めろ」
「ん、ぐうぅぅ……っ!!」
(だめだ、出すな、止めろっ!!!)
(あああ間に合わないっ、トイレ、トイレ行きたい!!!)
(が、我慢、~~~~~~~~ッッッッ!!!!)
反射的に下半身に力を込める。だって、そう命令されたから。尻をきつく締め付け、内腿を高速で擦り合わせることで、小便は数秒のうちにぴたりと止まった。
全力で堰き止めた小便が、ペニスの先端でぐるぐると渦巻いている感じがする。無理矢理止めた分、とてつもない尿意が下腹部を殴ってくる。呼吸がままならない。押し付けすぎた股間が痛い。
(~~~~~~~ッッもう漏らす、小便出る、漏れる!!!!)
小便を出したくて仕方ない。尿道口が熱い。食いしばった歯の隙間から言葉にならない声が漏れる。もう、本当に限界だった。
「なんで、お前はそう……」
あの人が何か言った気がするが最早構っていられなかった。もう限界なのに、さらに尿意の波が迫り来る。限界をほんの少し超えた瞬間、猛烈な尿意とともに小便がまた滲んだ。
「あ、あああっ、ごめん、なさ、……っ、ごめんなさい……っ!」
「……」
(もう無理、げんかい……)
排泄される快感と、命令に背いた罪の意識と、次々に湧き上がる欲求と、まだ我慢しなければならない苦痛と。ぐちゃぐちゃになった頭ではもう処理しきれなかった。もう限界を超えたと思ったのに、尿意が最大級に激しく膨れ上がる。我慢の糸がぷつりと切れたのは、それと同時だった。
「漏れる……」
つい零れた言葉。ペニスの先端が大きく、むずむずと収縮した、直後。
「ぁ、…………ッ」
生暖かい感覚が股座に広がる。それは極めて静かな決壊だった。
太腿を伝い、踵から爪先に流れ、フローリングにみるみるうちに水溜まりが広がる。プライドである白服が、黄色く汚れていく。そして目の前に座るその人の服にも小便が染みていく。
ああ、やってしまった。絶望。呼吸が喉で詰まる。なのに、全身を貫くような快感。下半身がぞくぞくする。ぶわぁぁ、と下半身を包み込む甘く切ない快感の波に、生理的な涙が自然と溢れた。
「は、ぁ……、っ、……」
「……」
鍛えられた膀胱はかなりの量を溜め込んでいたらしく、まるでバケツをひっくり返したかのような有様だった。それでもまだ、小便は垂れ続ける。いつまでも終わらない快感に、俺はただ、全身を震わせることしかできない。頬が熱い。いや、全身が火照っている。けれど、吐き出される熱水の方がもっと温度が高かった。
ぴちゃ、と水の跳ねる音。水溜まりに浸かってしまったあの人が、一歩、こちらへ近づく。はっと顔を上げると、俺は息を飲んだ。
目の前、中心がテントを張っている。あの人の視線と交わる。欲に飢えた、獣のような瞳。ぎらぎらと燃えるその瞳を捉えた途端、俺は心の底から喜びを覚えた。
「は、ぁ……」
最後の一捻りといったように、小便が音を立てて落ちる。俺は縋るように、そのまま目の前の愛おしい唇へとむしゃぶりついた。
おわり
脚を僅かに擦り合わせ、衣擦れの音だけが部屋の中に断続的に響く。俺は現実から目を逸らしたくて、思わず俯いてしまう。その間あの人はずっと、俺が身体を揺らす様をただ見下ろすだけだった。
『小便を我慢しろ』———俺の勤めるホスクラの店主であるその人にそう言われてから、まもなく小一時間が経過しようとしている。
事の発端は閉店後すぐのことだった。背後から店主に呼び止められた俺は、今日もいつものように身体を求められている合図だと理解し、何の気もなしにその声に応じた。
ところが耳元で囁かれた言葉は想像とは遥かに異なった。『着替えずにそのまま待っていろ』『控え室から外に出るな』。てっきり誘われると思っていた俺は、意図が読めないまま言葉通りの指示を受け入れるしかなかった。
そして全員が帰宅し、二人きりになった時。店主が、白服に包まれた俺の腹をそっと撫で上げる。そして口角を僅かに吊り上げた。小便を我慢しろ、そう命令しながら。
その後は否応なしに白服のまま車に乗せられ、店主の家へ直行した。
家に着くやいなや、フローリングの床に座らされ、後ろで手首をきつく縛られた。ここで俺は完全に意図を理解した。トイレへは行かせない。限界まで我慢して、失禁しろ。これが今日の奉仕らしい。
閉店後トイレに立つことを許されなかった俺は、営業中に摂取したアルコールをそのまま抱えて今に至るわけで。最後に排泄したのがいつだったか思い出せない。帰り際に既に感じていた尿意はあっという間に膨れ上がり、下腹をちくちくと断続的に刺激している。
「頑張ってるな。もう一時間経つのに」
「貴方が、っ、言うから、……」
「はは、そーだったな」
そう言うと店主は、自分が座っているソファを指でトントンと叩いた。俺は膝を使って床を這うように進む。進む度に膀胱が揺れて尿意が刺激される。やっとの思いで店主の足元に辿り着くと、おもむろに彼がペットボトルを取り出した。500mlの新品の水。ぴりりと音を立てて蓋を捻り、喉に流す彼の姿を、格好良いなあと思いながらぼんやりと見つめてしまう。
視線が交わる。そう思った瞬間、唇がぐっと押し付けられた。
「ん……っ!」
閉じ切らなかった唇の隙間から冷たい水が流れ込む。胃の中に水が落ちていく感覚。膀胱が誘われる。一通り全てが胃に流れると、店主は再び水を自らの口に含んだ。そうしてまた同じように、口付けられる。
「……零すな、全部飲め」
「はい、……っ、んぅ、……ッはぁ、ん、うぅ……ッ♡」
(クッソ……、小便したいのに、いつまで……)
されるがまま、ごくごくと水分を取り込んでしまう。最終的に500mlのペットボトルが空になるまで口移しは続いた。
(な、なんか、めっちゃ小便したい……っ!最悪だ、なんで急に……)
飲んだ分だけまた尿が生成されるのかと思うと、とてもしたくなってきたような気がする。尻を左右に揺らしていないと堪らない。呼吸が浅くなる。ちらりと見上げて窺ったあの人の表情は、まるで感情が読めないほど無に思えた。
*
猛烈に小便がしたい。身体をまっすぐに保てず、前のめりになっていく。そんな俺を見て、店主は苦虫を噛み潰したような顔をしている。何を考えているのか読めない。最初は貴方を満たすことだけを考えていたはずなのに、脳内が全部尿意に支配される。どんなに激しく犯されても、今までそんなこと一度もなかったはずだ。貴方の意図を汲み取るほどの余裕がない。とにかくトイレに行きたい。でもそれは永遠に許されないことだ。
「っ……、ん……」
「まだ出すなよ」
出すなと言われる度、身体は逆をいくように反応する。激しく疼く下腹。ペニスがむずむずと震える感覚に身震いが起きる。我慢、という行為がそろそろ苦痛になってきた。トイレには確実に行けない。だからといって諦めることも許されない。きっとこの先も『出して良い』なんて許可は出ない。じゃあ、俺は一体どうすれば良い?その時が来るのを待って、我慢し続けるしかないのか?
「……ッ!」
その時。下腹部の疼きが急激に威力を増す。直後、尿意がぐんと酷く高まった。
(や、ばい、……ッ、小便が……!)
正座になって内腿を忙しなく擦り合わせる。尿道口がツキンと痛くなる。まずい、我慢のコントロールができない。無意識に尻を左右にくねらせてしまう。理性が羞恥を訴えるが、そうでもしないと堪らなくて。
「ぅ、くう……ッ、ふぅ……、ッ!」
「まだ駄目だ」
「っ、はい、……ッ」
(だめだ、このままじゃ漏れる……っ!)
(どうしよう、小便したいっ、だめだ我慢しろ!!)
無情にも尿意の波は更に膨れ上がる。膀胱を庇いたくて上半身を折りたたんだのに、腹が圧迫されてもっとしたくなる。性器のむずむずが堪らない。こんなの気がおかしくなる。後ろに縛られた手首。意味もなく指と指を絡ませ、気を逸らそうとする。どくん、どくん、と小便が蓄積される感覚。俺は咄嗟に、性器の根元を踵でぐりぐりと刺激した。
(我慢……っ、頼むから、波収まれ……っ!落ち着けよ……ッ!)
(冗談じゃねえ漏らしたくない……!我慢しろっ、あああもう、我慢っっっ)
終わりが見えない。終わりを作るのは自分なのに、許可が無いから許されない。しばらくして尿意の波は落ち着きを見せたものの、腹の中に溜まった小便がなくなった訳ではない。依然として腰をじっとしていられない俺は、深く呼吸をしてなんとか我慢だけに意識を向ける。
「偉いな、我慢できて」
「っ、~~~~~♡」
店主はそう言うと、俺の頭をふわりと撫でた。肌を通じて熱が伝わる。全身が紅潮し、ふっと緩みそうになる下半身を慌てて締め付けた。危ない、撫でられるのが嬉しくて漏らすなんて、まるで本当の犬みたいじゃないか。
緩んだ一瞬を突いて、また尿意が駆け上がる。ぶるりと身震いをする俺を見た店主は、おもむろに立ち上がり、目の前にしゃがみこんだ。
(見るな、……っ、こんな姿……!)
(ほんとに、やばいって、もう小便出るっっ)
(あっ、あ、あ、ッ、まって、マジで、~~~~~トイレ行きたい!!早く!!)
「ううう、ぅ、ううぅっ、やば、ぁ、……っ!!」
「辛いなあ?でもまだ駄目だ」
「ん、ふぅぅ、うぅぅ……っ!」
「忍耐強いとこ、ホントに感心するよ」
さすが俺の見込んだホストだ、とでも言わんばかりに満足そうに貴方が語る。忍耐強い?当たり前だ。ホストの膀胱舐めんな。営業中どんだけ酒を飲んで耐えてると思ってるんだ。貴方だってわかるでしょ、何年もこの世界でやってりゃ膀胱くらい強くなる。その上でもう限界なのだから、ほんとにほんとにギリギリだ。こんなの、常人なら絶対に漏らしてる。
(あ、あっ、漏れる……っ、も、もれるっ!こんな、我慢できない……っ)
(せめて前……っ、前抑えたいのにっ、あーーークソっ、漏れる!!!)
あの人が目の前にいるのに、もじもじと身体を揺するのがやめられない。水風船のように膨らんだ腹がはち切れそうだ。勝手にひくひくと収縮し始めて、排泄を促す。
何を考えているかわからない茶色の瞳が怖い。いつもみたいに獣のような目で抱いて欲しい。乱暴でも良いから、気持ちを伝えて欲しい。貴方を欲を読み取れないことが、何よりもいちばん怖かった。
(まってガチで、ほんとにやばいってこれ!!)
(あっあっあっ、うそ、まって無理、漏れる、もれるからっ、あああ……ッ!!!)
恐怖が焦りを生み、焦りが欲求を加速させる。ペニスの先端がはくはくと開閉を繰り返し始める。俺は堪らず踵を思い切りめり込ませた。小刻みに股間を揺らし、刺激する。けれど本当に刺激したい場所はそこではない。もっと先端、今にも尿を吐き出しそうな出口だ。本当に欲しい刺激が届かない感覚がもどかしくて、四方八方に腰がくねってしまう。
(むり、我慢できないっ、あ、あっ、あ、まって、また、また波が、あああ……っ!!)
(耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ……ッ!!!波落ち着け、我慢しろっ!!!)
腰が揺れるのを止められない。踵が股間にめり込むくらい激しく力を入れて、無様になろうとも必死で下半身を揺さぶった。そうでもしないと、もう漏れてしまう。こんな悪足掻きで尿意が晴れることなんてないと分かっていながら、それでも下半身をめちゃくちゃに揺らし続けた。
(いやだ漏れる、もう無理だって、あっ、あっ、あッ、駄目だ我慢っ!!!)
(限界だから、もう小便もれるからぁっ!!)
(あああもう、どうしよう、トイレ、トイレ間に合わないッ、小便したいっっ!!)
……そんなんだから、俺はその時まで気が付くことができなかった。
膨れた腹に触れる、あの人の冷たい指先。はっと顔を上げると、その人が僅かに口角を吊り上げるのが目に入った。
直後。ぐ、と腹に感じる強い圧迫感。途端、全身の肌が総毛立った。あろうことか、店主の手のひらが俺の腹を強く押し始めたのである。
「あああぁぁぁ、……ッ!!!!」
ぐんと跳ね上がる尿意。表面張力ぎりぎりで保っている水面が、じゃばじゃばと腹の中で暴れる。一定のリズムで腹に手のひらが食い込み、外側から無理矢理潰された膀胱は中身を排出しようと震える。誘われるように尿意の波が訪れる。下腹を殴るような暴力的な欲求。目を瞑り、波をやり過ごそうと身をきつく固めた。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……っ、ああぁッッ!!!!)
もう無理、出る。もう漏らす。俺は思い切り腰を突き出し、狂いそうなほどの欲求に全力で耐える。こんなの狂う。漏らす。俺は自然と首を横に振った。するとあの人の指が、俺の顎をくいとつまみ上げた。視線が交わる。何を考えているのかわからない瞳が、少しだけ翳る。
「……嫌か?」
「あ……っ、ああ、ッ、ああぁ……っ」
「言葉になってねえ……」
違う。嫌なわけじゃない。俺は否定の意味で、今度は意思を持って首を横に振った。ただキャバオーバーなだけ。心も身体もぐちゃぐちゃでどうすれば良いのかわからないだけだ。背中がぞくぞくと戦慄する。着実に何かがせり上がってきている。ぶるぶると強めに腹を揺らされ、俺は上半身をきつく捩った。きゅううん、と股間が強烈に疼いてしまう。
腹の圧迫が増す。力を強められている。まずい、何か来る。そう思った瞬間、ペニスの先がかっと熱を帯びた。激しい疼きとともに、じわりと水分が滲む。
(~~~~~~~~~~漏れる漏れる漏れる漏れる漏れるッ!!!!)
「あっ、ああぁ、っ、はあ、はあぁ……っ!!!」
床に伏せそうなほど折り畳まれた上半身。下半身をくねくねと揺らし、踵でペニスを潰し、全身で尿意を我慢する。これまでにない強い欲求だった。もう漏らす。無理。は、は、と浅い呼吸を繰り返して尿意を逃がそうとしても、駄目だった。じわり、また股間が緩む。思わず嬌声を上げる。あの人の重厚な声が「我慢しろよ」と耳元で響き、脳みそがぐちゃぐちゃになる。全身にぞくぞくとしたものが駆け巡る。その拍子に、しょおお、と水流が飛び出てしまった。
(~~~~~~~~~ッッ!!!!)
数滴零れたとかいうレベルではない。白服の中心がほんのり黄色に染まる。駄目だ、まだ我慢しないと。我慢しろって言われたのだから。駄目だ、駄目だ、そう思うほど尿道がきゅんきゅんと疼く。疼く度、しょおお、と溢れる。彼は濡れたそこに触れると、小さく溜息をついた。
(あっあっあっ、まって、また、ちびる、やばいやばいやばい……ッ、はあああっ)
(もうむり、ちんこ震えて、~~~~~~っ、あ、あ、あ、で、でる、ちびる、~~~~~~~~ッッッ!!!!)
(小便したい、もう漏れる、限界だってクソが!!!!)
「……出てる」
「ご、ごめ、なさ、……っ、あ、ああっ、はあっ、ああぁっ」
「まだ良いって言ってねえよ。止めろ」
「ん、ぐうぅぅ……っ!!」
(だめだ、出すな、止めろっ!!!)
(あああ間に合わないっ、トイレ、トイレ行きたい!!!)
(が、我慢、~~~~~~~~ッッッッ!!!!)
反射的に下半身に力を込める。だって、そう命令されたから。尻をきつく締め付け、内腿を高速で擦り合わせることで、小便は数秒のうちにぴたりと止まった。
全力で堰き止めた小便が、ペニスの先端でぐるぐると渦巻いている感じがする。無理矢理止めた分、とてつもない尿意が下腹部を殴ってくる。呼吸がままならない。押し付けすぎた股間が痛い。
(~~~~~~~ッッもう漏らす、小便出る、漏れる!!!!)
小便を出したくて仕方ない。尿道口が熱い。食いしばった歯の隙間から言葉にならない声が漏れる。もう、本当に限界だった。
「なんで、お前はそう……」
あの人が何か言った気がするが最早構っていられなかった。もう限界なのに、さらに尿意の波が迫り来る。限界をほんの少し超えた瞬間、猛烈な尿意とともに小便がまた滲んだ。
「あ、あああっ、ごめん、なさ、……っ、ごめんなさい……っ!」
「……」
(もう無理、げんかい……)
排泄される快感と、命令に背いた罪の意識と、次々に湧き上がる欲求と、まだ我慢しなければならない苦痛と。ぐちゃぐちゃになった頭ではもう処理しきれなかった。もう限界を超えたと思ったのに、尿意が最大級に激しく膨れ上がる。我慢の糸がぷつりと切れたのは、それと同時だった。
「漏れる……」
つい零れた言葉。ペニスの先端が大きく、むずむずと収縮した、直後。
「ぁ、…………ッ」
生暖かい感覚が股座に広がる。それは極めて静かな決壊だった。
太腿を伝い、踵から爪先に流れ、フローリングにみるみるうちに水溜まりが広がる。プライドである白服が、黄色く汚れていく。そして目の前に座るその人の服にも小便が染みていく。
ああ、やってしまった。絶望。呼吸が喉で詰まる。なのに、全身を貫くような快感。下半身がぞくぞくする。ぶわぁぁ、と下半身を包み込む甘く切ない快感の波に、生理的な涙が自然と溢れた。
「は、ぁ……、っ、……」
「……」
鍛えられた膀胱はかなりの量を溜め込んでいたらしく、まるでバケツをひっくり返したかのような有様だった。それでもまだ、小便は垂れ続ける。いつまでも終わらない快感に、俺はただ、全身を震わせることしかできない。頬が熱い。いや、全身が火照っている。けれど、吐き出される熱水の方がもっと温度が高かった。
ぴちゃ、と水の跳ねる音。水溜まりに浸かってしまったあの人が、一歩、こちらへ近づく。はっと顔を上げると、俺は息を飲んだ。
目の前、中心がテントを張っている。あの人の視線と交わる。欲に飢えた、獣のような瞳。ぎらぎらと燃えるその瞳を捉えた途端、俺は心の底から喜びを覚えた。
「は、ぁ……」
最後の一捻りといったように、小便が音を立てて落ちる。俺は縋るように、そのまま目の前の愛おしい唇へとむしゃぶりついた。
おわり
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「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
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【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。