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男子高校生、帰り道にて敗北おもらし
青年の背中越し、さらりとした布団に覆われた先輩の身体が寝返りを打つ。触れ合った背中からは幾分か高まった熱が伝わり、それは数分前の深い重なりを思い起こさせるようであった。
青年はわずかに内腿を擦り合わせる。今日は普段以上に我慢をしてしまったせいか、あれからどこかずっと、下腹がしくしくと疼き続けているように感じていた。情欲とはまた違う疼きではあるが、だからと言って膀胱に“それ”が溜まっているわけでもない。下腹に蓄積するもやもやを発散する方法が見当たらないまま、今夜はもう寝付けないだろうと諦めの念が浮かんだ。
数年前、玄関で見せてしまった失禁。そして今日、尿意を堪える様を晒した挙句、前をびしゃびしゃに濡らし、懇願の末に見せてしまった豪快な放尿。彼の前で───好きな人の前であられもない姿を2回も見せてしまい、この上なく恥ずかしくて恥ずかしくて堪らなかったのは確かだ。
けれど、必死に我慢に我慢を重ねた欲求を、この心地良い体温に包まれながら放出する快感が凄まじかったのも確かだった。クセになったら終わる。こんなこと二度としてはならない、いや、二度とするものか。改めて青年は決意を固めた。
「……」
でも。小さく腰をもじつかせながら、青年は枕に顔を埋める。
あの時感じた言い知れぬ気持ち。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らないあの気持ちが、胸の奥で燻っている感覚がする。
もう少しだけ、あの気持ちになりたい。この人に恥ずかしいところを知られたい。この人なら恥ずかしいことも受け止めてくれるだろうか。青年の中で邪な欲求が膨らんでいく。そんな自分を愚かに感じながらも、青年はおもむろに口を開いた。
「先輩、あのね」
青年の背後で衣擦れの音がする。身を翻した男は、青年の身体を背中から抱き締めた。汗ばんだ生肌が密着して、青年は思わず肩を跳ねさせる。
「ん?」
「俺、昔からこうなんです」
「なぁに」
耳元を擽る彼の掠れた声。ぞくり、と背筋が震える。これだけで身体に熱が籠るくらいには、青年は耳を嬲られるのが弱かった。
「……忙しいと我慢しちゃう癖あって」
だから。その続きの言葉が、上手く出てこない。
青年の内股が擦り合わせられる。何かを察した男は、人知れずわずかに口角を上げた。
「なーに、言ってみな?」
無邪気にも思えるその声に、ぞくぞくとした戦慄が止まらない。耳朶を真っ赤に染めた青年は、ついにもう一度、おそるおそる口を開いた。
「高校生の時、なんですけど」
*
すでに太陽が落ちかけた、仄暗い夕暮れの帰り道だった。
大抵の生徒は電車通学だから一同に駅へ向かうけれど、俺の家はここから徒歩圏内の住宅街に位置するため、校門を出た先で友人と別れて一人反対方向に帰宅する。友人と和気あいあいしながら帰宅する高校生活も憧れではあったが、───ある意味一人で助かった、とも言えているのが正直なところである。
高校2年の秋。部活の引退もまだまだ先だというのに来年の受験も意識しなければならず、高校生活で案外最も忙しい時期であるように思えた。事実、ここ最近は部活に勉強に生徒会の仕事にと多忙を極めていて、それはそれは目まぐるしい日々を過ごしていた。
だから毎日、校門を出て数分して必ず後悔する。
どうして学校を出る前にトイレに寄らなかったのだろう、と。
(あー……まただ、おしっこしたい……)
友人と話していた時には感じていなかった尿意が、一人になった途端に爆発的に襲い掛かってくる感覚。反射的に腰が少し後ろに引けて、尻がきゅっと窄まる。
誰しも一度は経験したことがあるだろう。気が紛れている時には気が付けず、ふとした瞬間に思い出したように湧き上がる欲求。その時には既に我慢できるラインは越えていて、漏れそうなくらいの尿意に襲われる現象。ここ最近の1ヶ月、俺は帰宅途中、毎日その現象に悩まされていた。
たぷん、と下腹が揺れる。同時に悪寒が全身を走り、俺はズボンの太腿を引き上げる。
(ううう、おしっこ……っ!何でいっつも……!)
何でもクソもない。学校にいる間に1回もトイレに行かないからだ。自称進学校特有の、文武両道勉強も部活も行事も手を抜かず頑張りましょう精神に洗脳されていて、休み時間もトイレに行く暇もなくやることに追われていたんだ。
……いや、本当はそうやって言い訳しているだけだってことなど、わかっている。あんな汚いトイレなんてなるべく使いたくなくて、意識的か無意識か避けていたことなんて、心のどこかでは理解していた。
わかりきった原因と、加えて秋口のこの肌寒さ。わかってる。全部自分が悪い。毎日漏れる寸前で帰宅して、玄関をくぐった瞬間トイレに直行するけれど。でも何だかんだいつも家まで間に合ってるし。そんな甘い考えが根底にあるせいで、こうして毎日この時間は後悔する羽目になるのである。
(な、なんか今日ヤバい……っ、すごいおしっこしたい……)
いつもに比べて、下腹部のむずつきが尋常ではない。普段この道を通る時の尿意が80%くらいだとしたら、初手でもう90%くらいの強さにまで到達している。身を屈めながら、そろりそろりと前へ進む。無駄な振動が膀胱に響くと余計に尿意が刺激されるからだ。
大通りなので、人通りが少ないわけではない。ほんの少しだけ腰を後ろに突き出すと楽になった感じがするが、これ以上は上半身を前に倒せない。大通りから外れるまでは、直立に見えるギリギリのラインを保たないと。脇道に入って周囲から視界が断たれる瞬間まではあからさまな我慢仕草はしない。これは毎日、俺が自分に課したルールだ。けれどその脇道までは、まだまだ長い道のりがある。
(おしっこしたい、おしっこ、我慢……ッ!)
頭の中がトイレのことでいっぱいで、それを打ち消すように早歩きで前に進む。息が弾んでいるのは早歩きのせいじゃない。少しでも下腹の圧迫感を逃そうと、自然にそうなってしまっていた。
何十回と通った帰り道。ドデカいマンションの入口と、整然とそびえ立つ街路樹と、この時間になったらぽつぽつと点灯し始める街灯。朝に通る時は何てことのない、ただの風景のひとつにすぎないのに。
「……っ!」
条件反射というやつなのだろう。大体いつも目に入ると尿意が一段階強くなる地点がいくつかあって、このマンションの入口付近もそのうちのひとつだった。家が近付いている合図だと身体が勝手に思ってしまうらしい。安心からなのか何なのか、その地点を通過する度に尿意が膨れ上がるせいで、俺は毎日漏れる寸前で帰宅しているというわけだ。
きゅん、と激しく疼く膀胱。駄目だ、お、おしっこ……!何倍にも膨れ上がった欲求が全身を震え上がらせ、背中を丸めてしまう。あまりの強烈な欲求に、前に出していた脚が内側に入ってしまう。
(どうしよう、ほんとにヤバいかも)
そもそも今日は桁違いの尿意から始まったのだ、ここから更に強まってしまったら。水位がぐんと上がった膀胱は一層激しく中身を波立たせ、早く出せと熱水が肉壁を荒々しく撫でていく。
(ヤバいヤバいヤバい……っ、おしっこ出そう、ほんとにヤバい!)
(駄目だちゃんと真っ直ぐ立たないと……!)
反射的に腰が後ろに引けてしまって、身体がくの字を描いてしまう。駄目だ、まだこんなに人通りが多いところで。絶賛尿意と奮闘中の身体に喝を入れて無理やり上体を起こせば、膀胱がピンと伸ばされてたちまちおしっこが暴れ出す。内転筋が張るほど力が入り、まっすぐに歩いているつもりがギクシャクとした足取りになってしまう。
そうしてなんとか必死に家路を辿ること、数分。荒ぶる尿意は依然落ち着くことなく、時折地面を見つめて堪えながらも前に進む。ついにはちんこの先端が震え出して、人目を盗んで揉まないとヤバい状態になってしまった。最初のうちは数メートル進むごとに何回か摘まんで気を散らせば済んだものの、その間隔はあっという間に短くなって、手を離したら緩みそうなくらいになるまで時間はそう掛からなかった。
ポケットの中に突っ込んだ右手は、もう外に出すことはできない。ズボンの中で不自然にもぞもぞと蠢く膨らみ。傍から見たら“それ”を掴んでいるのは明らかだろう。体操着の入ったトートバッグで前を隠しながら、その裏でちんこをコソコソと握り続けた。
(まだ我慢……っ、あとちょっとで曲がるから……!)
脇道に入るまではあと5分くらいの道のりだ。大丈夫、それくらい我慢できる。大丈夫。大丈夫だから。あの信号を越えればすぐ……。
けれど運命は非情だ。
十数歩先に見える歩行者信号。あと十数歩で届くそれは、青色に光るランプをチカチカと点滅させ始めて。
(ま、まって、間に合って!)
俺は思わず大股で飛び出してしまった。上下に揺さぶられる膀胱の中で、大量の熱水がじゃぶじゃぶと荒波を立てる。ちんこのひくひくが止まらない。本気でヤバイ。でもここに引っかかってしまったら……!奥歯を食いしばりながら、俺は地面を思い切り蹴飛ばした。けれど。
「あ、……っ!」
(う、嘘だ……)
惜しくもあと3歩のところで信号は赤に切り替わってしまった。足を止めると、走った衝撃で刺激されたおしっこがここぞとばかりに降下してくる。
「う゛う……っ」
(どうしよう、止まるの無理だ!)
(おしっこ、おしっこ、おしっこ、あああヤバいほんとにおしっこ出る!!!)
そう。ここもいわゆる、尿意が膨れ上がる地点のひとつだった。
スクランブル形式の交差点。引っかかったら最後、通常の信号とは異なり2方向分の通行を待たなければならないのだ。つまり待ち時間が長い。だから絶対に引っかかりたくなかったのに。
靴の中で爪先をバタバタと上下させて欲求を誤魔化そうとするが、歩いている時の比にならないくらい強烈な尿意が押し寄せる。もっと身体を揺すりたい、足踏みしたい。思い切りちんこ揉みたい。でも、そんなことできるわけがない。
(早く早く早くっ、信号変われよ……っ!全然車通ってねえじゃん!!!)
(だめ、ちんこむずむずするっ、おしっこ漏れる……っ!!)
(出る、出る、……嘘だろ待って、人来た……ッ!!)
よりにもよって俺がポケットに手を突っ込んでいる方、右側に綺麗なお姉さんが信号待ちで立ち止まる。俺は慌ててポケットから手を引き抜いた。
(まって押さえないのやばい、漏れるって、あ、あ、っ、おしっこ!!!)
お姉さんはスマホを弄っていてこちらの様子など見向きもしない。でも、もしこちらの動きを不審に思って振り向かれたら。そうこうしている間にも後ろから人が来て、俺の左側に立つ。
(だめ、揺れるの止めないと、なんでこの人こっち来たんだよ……っ)
(ほんとにやばい、押さえたいっ、……~~~~~~~ッッ!!)
まだ車道は1方向が青になったばかり。爪先の上下が早まっていく。ぴったりと閉じた両脚がぷるぷる震える。ちんこがひくひくって震えて、やばい、勝手に緩む、ほんとにこれ以上は……!
(だめ、も、漏れるっっっ!!!)
先端が強烈にわなないた瞬間だった。
目の前に備わっているちょうど腰くらいの高さのポール。
俺は咄嗟に、そのポールに股間を押し付けた。
(だ、大丈夫、バレない……っ)
たまたま触れている風を装って、ぐりぐり、ぐりぐりと先端を押し付ける。僅かに前へ突き出した腰。左右に小さく腰を揺らし、上下に擦りつける。本当はもっと激しく押しつけてドタバタと足踏みしたいけどこれが限度だ。
くい、くい、と先端を押し付けること数回。それでも気が紛れるのなんて一瞬にすぎない。
(もれる、出ちゃうぅ……っ、お願い早く変わって……!)
(動きたい、もじもじしたいっ、あああもうマジで漏れる、おしっこ漏れるっっっ!!!)
ようやくもう一方の車道が青になる。相変わらずぽつぽつとしか車は通らないけれど、信号無視するにはタイミングが掴めない程度の交通量。押しつけるだけじゃ足りない。揉みたい、足踏みしたい、あ、あ、だめだ、波が……!
「~~~~~~~~~~ッッ!!!」
もう駄目だ、揺れるのを抑えられない。ついに膝が内側に入って、ゆっくり沈んでしまう。ぱた、ぱた、と地面を踏んでしまう。ぐりぐりぐりぐり、腰を目一杯押しつけてしまう。足が疲れた風を装って、ゆっくりと交互に足を上下させてしまう。もっと、もっと、あああ駄目だ、ケツ突き出してちんこ揉みたいぃ……っ!
(お、おしっこおしっこおしっこおしっこ!!!!!)
(もう我慢できない!!!!はやく!!!!!!)
足踏みが徐々に早くなってしまう。ぐりぐり、ぐにぐに、ゆさゆさ、ぐりぐり、ポールにちんこを押しつける力が強くなってしまう。ケツが左右に揺れてしまう。も、もう、おしっこが先端まで、あ、あ、あ、……っ!
ちんこの先がツキンと痛んだのと、信号が青に切り替わったのは同時だった。俺は弾かれたように飛び出し、周囲を撒く勢いで早歩きした。向かいから来る人が誰もいないのを良いことに、ズボンの上からちんこをぎっちり握り込む。とにかく足を動かしていないともう駄目だった。
そして数分後、やっと脇道に逸れる曲がり角に辿り着く。
(あそこ曲がればケツ突き出せるから、まだ、我慢、我慢……ッ!!!)
その角を曲がり、住宅街の中に入った途端。またしても尿意がぐんと急上昇した。ここまで来れば我慢仕草をしても良い、と身体が覚えているのだ。とてつもない悪寒が全身を包み込み、その直後、ちんこの先が猛烈な尿意に戦慄する。
「あ゛、ぁぁ……ッ!!」
喉から絞り出されるような喘ぎが零れる。同時に、ぎゅうぎゅうに握ったちんこの先から、ジョーッ!とおしっこが噴き出してしまった。
(ち、ちびった、出ちゃった)
(でもまだ漏らしてない、我慢できてる、我慢するっ!!!)
下着に染みを作ってしまう程度は過去これまでにも何回かあった。けれどそれは、家に着く直前や、家のトイレの前の話だ。家まであと10分は掛かるこんなところでちびったのは、これが初めて。
でもまだ1回だ。ちょっと出ただけ。漏らしてない。大丈夫。いつもは間に合ってるんだ、漏らすわけがない、高校生にもなっておもらしするはずなんかない。ちんこを高速で揉みしだきながら、俺は息を切らして住宅街を小走りしていた。大丈夫。漏らさない。そうだおしっこなんてしたくない。全部嘘。おしっこしたくない、トイレ行きたいなんて思ってない。嘘だ、こんなの全部嘘だ、おしっこしたくない!!!
ちょろろろ、ちぃぃぃ……
「や、だめ……ッ!!」
下着の中がムワっと熱くなる。違う、漏らしてない、これは汗だ、おしっこじゃない!!!
じょ、じょろろ、じょーーっ!!
「は、ぁぁぁ……ッ!!!」
バタバタと懸命に動かされていた俺の脚は、ついにぱたりと止まってしまった。
……もう動けない。動いた瞬間、漏れる。内腿の筋肉が緩んだら、もう漏れる。両膝をこれでもかというほど内側に倒したまま、俺は動けなくなってしまった。
心臓の音がやけに煩わしい。自身の呼吸の音が際立って聞こえる。どうしよう、もう動けない。一歩、脚を前に出そうとも、じりじりと数ミリ滑らせることしかできない。手のひらに熱い何かが当たる感触。心なしか湿っている気さえする。
(漏らす、わけ……)
しかし現実として、もう一歩も進むことも戻ることもできないのだ。一体これをどうしろと言うのか。
(……立ちションしちゃおうかな)
そう思った瞬間、そうしろと言わんばかりに尿意がどくんと込み上げる。尋常じゃない排泄欲求の暴力。下腹の不規則な疼きの直後、猛烈な尿意が股間を渦巻いて、またしても少量ちびってしまう。身をじっと固くして縮こまった姿勢のまま動けないのだから、立ちションなんて最早できるはずがない。
「はー、っ、はあぁ、っ、うそ、……ッ、いやだ、……!」
ふいに全身がぶるりと大きく震えあがる。腰がどんどん沈んでいって、膝が重なり合ったまま解けない。股に挟んだ両手が痛い。膝と膝の間に、熱水が溜まっていく。
(おしっこ、おしっこ、おしっこおしっこおしっこおしっこ!!!!)
(いやだ漏らしたくない、おもらしは嫌だ!!!!!)
(我慢しろ耐えろ我慢我慢我慢、がまん、がまんっっっ!!!!!)
じょろろろ、じゅーーッッ!!!
まだ我慢、だめ、おもらしはだめ、我慢しなきゃ。この俺がおもらしなんて……。
(でる、出ちゃう、おしっこ出ちゃうぅ……)
「も、だめ……」
じょろろろろろろろ、じょおおおおぉぉぉぉぉぉ、じょわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………
……細切れだった水流は、とうとう水門を突き破ってしまったようだった。
股間が温泉に浸かったように熱くなる。太腿が熱くなる。靴の中がぐっしょりと濡れていく。手のひらを、指を伝って熱水があちこちに流れていく。
足元を中心にアスファルトが色濃くなっていく様を見て、ああ、俺おもらししたんだな、と呆然と理解した。雨が降ったのかと錯覚するほどのドデカい水溜まり。くっせぇ臭いがぷんと鼻をついて、これが自分の出したものから放たれているのかと思うと、情けなくて仕方がなかった。
じょおおおおぉぉぉぉぉぉ、ばしゃばしゃばしゃばしゃ…………
しょろろろろろろろろろろ………
道のド真ん中で、おしっこで下半身をびしょ濡れにさせている男子高校生。最悪だ、俺、高校生なのに、おしっこ我慢できなかった……。
「どーしよぉ……」
びゅう、と北風がひとつ吹き、俺は肩を震わせる。半日以上溜め込んだおしっこはそう簡単に止まってはくれない。今はただ、この体内で熟成された真っ黄色なおしっこを、情けなくじょろじょろと垂れ流し続けるしかないのであった。
*
「知らんかった」
「初めて言いました」
一連の話を聞いた先輩は、目をぱちくりとさせた。単純に驚きを隠せなかったのである。
結末まで話し終えた青年の頬に、みるみるうちに熱が上気していく。途端に羞恥心が込み上げてきたらしい。ずり落ちていた布団を掴むと、すっぽりと顔を覆い隠してしまった。先ほどまでは淡々と話していたくせに、急にしおらしい態度になった後輩の姿を見た男は、何だかおかしく思えて少し吹き出した。
「お前そういうとこ繊細だよなあ、ほら就活の時も」
「ちょっと」
「はいはい」
余計な過去を掘り出されそうになり、思わず先輩の言葉を制す。そういうところが神経質で可愛いんだよなあ、と男は心の中で思った。
「こっち向いて」
先輩はそう言うと、抱いていた青年の身体を無理やりひっくり返した。事後、久方ぶりの対面。青年の伏し目がちに潤んだ瞳は、彼を直視することはできない。
「顔真っ赤~」
「……うるさい」
「な、その時気持ちよかった?」
あまりにもストレートな質問に、青年の心臓がどくんと跳ねる。数回、小さく横に首を振った。
「なんで?」
「止めなきゃと思って、最後まで抗ってたから」
「じゃあ俺に抱き締められながらした時は?」
「…………」
またしてもド直球すぎる質問だ。既に真っ赤だった青年の顔が、ますます熱を帯びていく。心臓がはち切れそうなほど鼓動を叩いて、耐え切れず布団の中に潜ってしまった。そんな青年が可愛らしくて仕方なくて、先輩は手探りで布団の中の彼の身体を抱き締めた。
「またしようね」
まるで少年のような無邪気さを孕んだ声。あんな失態、二度とするものか。そう思っていた青年であったが、気持ち良かったことを見透かされているのが悔しくて、でも嬉しくて。この人が望むのであれば、その時は付き合ってやろうと思ってしまうのであった。
おわり
青年はわずかに内腿を擦り合わせる。今日は普段以上に我慢をしてしまったせいか、あれからどこかずっと、下腹がしくしくと疼き続けているように感じていた。情欲とはまた違う疼きではあるが、だからと言って膀胱に“それ”が溜まっているわけでもない。下腹に蓄積するもやもやを発散する方法が見当たらないまま、今夜はもう寝付けないだろうと諦めの念が浮かんだ。
数年前、玄関で見せてしまった失禁。そして今日、尿意を堪える様を晒した挙句、前をびしゃびしゃに濡らし、懇願の末に見せてしまった豪快な放尿。彼の前で───好きな人の前であられもない姿を2回も見せてしまい、この上なく恥ずかしくて恥ずかしくて堪らなかったのは確かだ。
けれど、必死に我慢に我慢を重ねた欲求を、この心地良い体温に包まれながら放出する快感が凄まじかったのも確かだった。クセになったら終わる。こんなこと二度としてはならない、いや、二度とするものか。改めて青年は決意を固めた。
「……」
でも。小さく腰をもじつかせながら、青年は枕に顔を埋める。
あの時感じた言い知れぬ気持ち。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らないあの気持ちが、胸の奥で燻っている感覚がする。
もう少しだけ、あの気持ちになりたい。この人に恥ずかしいところを知られたい。この人なら恥ずかしいことも受け止めてくれるだろうか。青年の中で邪な欲求が膨らんでいく。そんな自分を愚かに感じながらも、青年はおもむろに口を開いた。
「先輩、あのね」
青年の背後で衣擦れの音がする。身を翻した男は、青年の身体を背中から抱き締めた。汗ばんだ生肌が密着して、青年は思わず肩を跳ねさせる。
「ん?」
「俺、昔からこうなんです」
「なぁに」
耳元を擽る彼の掠れた声。ぞくり、と背筋が震える。これだけで身体に熱が籠るくらいには、青年は耳を嬲られるのが弱かった。
「……忙しいと我慢しちゃう癖あって」
だから。その続きの言葉が、上手く出てこない。
青年の内股が擦り合わせられる。何かを察した男は、人知れずわずかに口角を上げた。
「なーに、言ってみな?」
無邪気にも思えるその声に、ぞくぞくとした戦慄が止まらない。耳朶を真っ赤に染めた青年は、ついにもう一度、おそるおそる口を開いた。
「高校生の時、なんですけど」
*
すでに太陽が落ちかけた、仄暗い夕暮れの帰り道だった。
大抵の生徒は電車通学だから一同に駅へ向かうけれど、俺の家はここから徒歩圏内の住宅街に位置するため、校門を出た先で友人と別れて一人反対方向に帰宅する。友人と和気あいあいしながら帰宅する高校生活も憧れではあったが、───ある意味一人で助かった、とも言えているのが正直なところである。
高校2年の秋。部活の引退もまだまだ先だというのに来年の受験も意識しなければならず、高校生活で案外最も忙しい時期であるように思えた。事実、ここ最近は部活に勉強に生徒会の仕事にと多忙を極めていて、それはそれは目まぐるしい日々を過ごしていた。
だから毎日、校門を出て数分して必ず後悔する。
どうして学校を出る前にトイレに寄らなかったのだろう、と。
(あー……まただ、おしっこしたい……)
友人と話していた時には感じていなかった尿意が、一人になった途端に爆発的に襲い掛かってくる感覚。反射的に腰が少し後ろに引けて、尻がきゅっと窄まる。
誰しも一度は経験したことがあるだろう。気が紛れている時には気が付けず、ふとした瞬間に思い出したように湧き上がる欲求。その時には既に我慢できるラインは越えていて、漏れそうなくらいの尿意に襲われる現象。ここ最近の1ヶ月、俺は帰宅途中、毎日その現象に悩まされていた。
たぷん、と下腹が揺れる。同時に悪寒が全身を走り、俺はズボンの太腿を引き上げる。
(ううう、おしっこ……っ!何でいっつも……!)
何でもクソもない。学校にいる間に1回もトイレに行かないからだ。自称進学校特有の、文武両道勉強も部活も行事も手を抜かず頑張りましょう精神に洗脳されていて、休み時間もトイレに行く暇もなくやることに追われていたんだ。
……いや、本当はそうやって言い訳しているだけだってことなど、わかっている。あんな汚いトイレなんてなるべく使いたくなくて、意識的か無意識か避けていたことなんて、心のどこかでは理解していた。
わかりきった原因と、加えて秋口のこの肌寒さ。わかってる。全部自分が悪い。毎日漏れる寸前で帰宅して、玄関をくぐった瞬間トイレに直行するけれど。でも何だかんだいつも家まで間に合ってるし。そんな甘い考えが根底にあるせいで、こうして毎日この時間は後悔する羽目になるのである。
(な、なんか今日ヤバい……っ、すごいおしっこしたい……)
いつもに比べて、下腹部のむずつきが尋常ではない。普段この道を通る時の尿意が80%くらいだとしたら、初手でもう90%くらいの強さにまで到達している。身を屈めながら、そろりそろりと前へ進む。無駄な振動が膀胱に響くと余計に尿意が刺激されるからだ。
大通りなので、人通りが少ないわけではない。ほんの少しだけ腰を後ろに突き出すと楽になった感じがするが、これ以上は上半身を前に倒せない。大通りから外れるまでは、直立に見えるギリギリのラインを保たないと。脇道に入って周囲から視界が断たれる瞬間まではあからさまな我慢仕草はしない。これは毎日、俺が自分に課したルールだ。けれどその脇道までは、まだまだ長い道のりがある。
(おしっこしたい、おしっこ、我慢……ッ!)
頭の中がトイレのことでいっぱいで、それを打ち消すように早歩きで前に進む。息が弾んでいるのは早歩きのせいじゃない。少しでも下腹の圧迫感を逃そうと、自然にそうなってしまっていた。
何十回と通った帰り道。ドデカいマンションの入口と、整然とそびえ立つ街路樹と、この時間になったらぽつぽつと点灯し始める街灯。朝に通る時は何てことのない、ただの風景のひとつにすぎないのに。
「……っ!」
条件反射というやつなのだろう。大体いつも目に入ると尿意が一段階強くなる地点がいくつかあって、このマンションの入口付近もそのうちのひとつだった。家が近付いている合図だと身体が勝手に思ってしまうらしい。安心からなのか何なのか、その地点を通過する度に尿意が膨れ上がるせいで、俺は毎日漏れる寸前で帰宅しているというわけだ。
きゅん、と激しく疼く膀胱。駄目だ、お、おしっこ……!何倍にも膨れ上がった欲求が全身を震え上がらせ、背中を丸めてしまう。あまりの強烈な欲求に、前に出していた脚が内側に入ってしまう。
(どうしよう、ほんとにヤバいかも)
そもそも今日は桁違いの尿意から始まったのだ、ここから更に強まってしまったら。水位がぐんと上がった膀胱は一層激しく中身を波立たせ、早く出せと熱水が肉壁を荒々しく撫でていく。
(ヤバいヤバいヤバい……っ、おしっこ出そう、ほんとにヤバい!)
(駄目だちゃんと真っ直ぐ立たないと……!)
反射的に腰が後ろに引けてしまって、身体がくの字を描いてしまう。駄目だ、まだこんなに人通りが多いところで。絶賛尿意と奮闘中の身体に喝を入れて無理やり上体を起こせば、膀胱がピンと伸ばされてたちまちおしっこが暴れ出す。内転筋が張るほど力が入り、まっすぐに歩いているつもりがギクシャクとした足取りになってしまう。
そうしてなんとか必死に家路を辿ること、数分。荒ぶる尿意は依然落ち着くことなく、時折地面を見つめて堪えながらも前に進む。ついにはちんこの先端が震え出して、人目を盗んで揉まないとヤバい状態になってしまった。最初のうちは数メートル進むごとに何回か摘まんで気を散らせば済んだものの、その間隔はあっという間に短くなって、手を離したら緩みそうなくらいになるまで時間はそう掛からなかった。
ポケットの中に突っ込んだ右手は、もう外に出すことはできない。ズボンの中で不自然にもぞもぞと蠢く膨らみ。傍から見たら“それ”を掴んでいるのは明らかだろう。体操着の入ったトートバッグで前を隠しながら、その裏でちんこをコソコソと握り続けた。
(まだ我慢……っ、あとちょっとで曲がるから……!)
脇道に入るまではあと5分くらいの道のりだ。大丈夫、それくらい我慢できる。大丈夫。大丈夫だから。あの信号を越えればすぐ……。
けれど運命は非情だ。
十数歩先に見える歩行者信号。あと十数歩で届くそれは、青色に光るランプをチカチカと点滅させ始めて。
(ま、まって、間に合って!)
俺は思わず大股で飛び出してしまった。上下に揺さぶられる膀胱の中で、大量の熱水がじゃぶじゃぶと荒波を立てる。ちんこのひくひくが止まらない。本気でヤバイ。でもここに引っかかってしまったら……!奥歯を食いしばりながら、俺は地面を思い切り蹴飛ばした。けれど。
「あ、……っ!」
(う、嘘だ……)
惜しくもあと3歩のところで信号は赤に切り替わってしまった。足を止めると、走った衝撃で刺激されたおしっこがここぞとばかりに降下してくる。
「う゛う……っ」
(どうしよう、止まるの無理だ!)
(おしっこ、おしっこ、おしっこ、あああヤバいほんとにおしっこ出る!!!)
そう。ここもいわゆる、尿意が膨れ上がる地点のひとつだった。
スクランブル形式の交差点。引っかかったら最後、通常の信号とは異なり2方向分の通行を待たなければならないのだ。つまり待ち時間が長い。だから絶対に引っかかりたくなかったのに。
靴の中で爪先をバタバタと上下させて欲求を誤魔化そうとするが、歩いている時の比にならないくらい強烈な尿意が押し寄せる。もっと身体を揺すりたい、足踏みしたい。思い切りちんこ揉みたい。でも、そんなことできるわけがない。
(早く早く早くっ、信号変われよ……っ!全然車通ってねえじゃん!!!)
(だめ、ちんこむずむずするっ、おしっこ漏れる……っ!!)
(出る、出る、……嘘だろ待って、人来た……ッ!!)
よりにもよって俺がポケットに手を突っ込んでいる方、右側に綺麗なお姉さんが信号待ちで立ち止まる。俺は慌ててポケットから手を引き抜いた。
(まって押さえないのやばい、漏れるって、あ、あ、っ、おしっこ!!!)
お姉さんはスマホを弄っていてこちらの様子など見向きもしない。でも、もしこちらの動きを不審に思って振り向かれたら。そうこうしている間にも後ろから人が来て、俺の左側に立つ。
(だめ、揺れるの止めないと、なんでこの人こっち来たんだよ……っ)
(ほんとにやばい、押さえたいっ、……~~~~~~~ッッ!!)
まだ車道は1方向が青になったばかり。爪先の上下が早まっていく。ぴったりと閉じた両脚がぷるぷる震える。ちんこがひくひくって震えて、やばい、勝手に緩む、ほんとにこれ以上は……!
(だめ、も、漏れるっっっ!!!)
先端が強烈にわなないた瞬間だった。
目の前に備わっているちょうど腰くらいの高さのポール。
俺は咄嗟に、そのポールに股間を押し付けた。
(だ、大丈夫、バレない……っ)
たまたま触れている風を装って、ぐりぐり、ぐりぐりと先端を押し付ける。僅かに前へ突き出した腰。左右に小さく腰を揺らし、上下に擦りつける。本当はもっと激しく押しつけてドタバタと足踏みしたいけどこれが限度だ。
くい、くい、と先端を押し付けること数回。それでも気が紛れるのなんて一瞬にすぎない。
(もれる、出ちゃうぅ……っ、お願い早く変わって……!)
(動きたい、もじもじしたいっ、あああもうマジで漏れる、おしっこ漏れるっっっ!!!)
ようやくもう一方の車道が青になる。相変わらずぽつぽつとしか車は通らないけれど、信号無視するにはタイミングが掴めない程度の交通量。押しつけるだけじゃ足りない。揉みたい、足踏みしたい、あ、あ、だめだ、波が……!
「~~~~~~~~~~ッッ!!!」
もう駄目だ、揺れるのを抑えられない。ついに膝が内側に入って、ゆっくり沈んでしまう。ぱた、ぱた、と地面を踏んでしまう。ぐりぐりぐりぐり、腰を目一杯押しつけてしまう。足が疲れた風を装って、ゆっくりと交互に足を上下させてしまう。もっと、もっと、あああ駄目だ、ケツ突き出してちんこ揉みたいぃ……っ!
(お、おしっこおしっこおしっこおしっこ!!!!!)
(もう我慢できない!!!!はやく!!!!!!)
足踏みが徐々に早くなってしまう。ぐりぐり、ぐにぐに、ゆさゆさ、ぐりぐり、ポールにちんこを押しつける力が強くなってしまう。ケツが左右に揺れてしまう。も、もう、おしっこが先端まで、あ、あ、あ、……っ!
ちんこの先がツキンと痛んだのと、信号が青に切り替わったのは同時だった。俺は弾かれたように飛び出し、周囲を撒く勢いで早歩きした。向かいから来る人が誰もいないのを良いことに、ズボンの上からちんこをぎっちり握り込む。とにかく足を動かしていないともう駄目だった。
そして数分後、やっと脇道に逸れる曲がり角に辿り着く。
(あそこ曲がればケツ突き出せるから、まだ、我慢、我慢……ッ!!!)
その角を曲がり、住宅街の中に入った途端。またしても尿意がぐんと急上昇した。ここまで来れば我慢仕草をしても良い、と身体が覚えているのだ。とてつもない悪寒が全身を包み込み、その直後、ちんこの先が猛烈な尿意に戦慄する。
「あ゛、ぁぁ……ッ!!」
喉から絞り出されるような喘ぎが零れる。同時に、ぎゅうぎゅうに握ったちんこの先から、ジョーッ!とおしっこが噴き出してしまった。
(ち、ちびった、出ちゃった)
(でもまだ漏らしてない、我慢できてる、我慢するっ!!!)
下着に染みを作ってしまう程度は過去これまでにも何回かあった。けれどそれは、家に着く直前や、家のトイレの前の話だ。家まであと10分は掛かるこんなところでちびったのは、これが初めて。
でもまだ1回だ。ちょっと出ただけ。漏らしてない。大丈夫。いつもは間に合ってるんだ、漏らすわけがない、高校生にもなっておもらしするはずなんかない。ちんこを高速で揉みしだきながら、俺は息を切らして住宅街を小走りしていた。大丈夫。漏らさない。そうだおしっこなんてしたくない。全部嘘。おしっこしたくない、トイレ行きたいなんて思ってない。嘘だ、こんなの全部嘘だ、おしっこしたくない!!!
ちょろろろ、ちぃぃぃ……
「や、だめ……ッ!!」
下着の中がムワっと熱くなる。違う、漏らしてない、これは汗だ、おしっこじゃない!!!
じょ、じょろろ、じょーーっ!!
「は、ぁぁぁ……ッ!!!」
バタバタと懸命に動かされていた俺の脚は、ついにぱたりと止まってしまった。
……もう動けない。動いた瞬間、漏れる。内腿の筋肉が緩んだら、もう漏れる。両膝をこれでもかというほど内側に倒したまま、俺は動けなくなってしまった。
心臓の音がやけに煩わしい。自身の呼吸の音が際立って聞こえる。どうしよう、もう動けない。一歩、脚を前に出そうとも、じりじりと数ミリ滑らせることしかできない。手のひらに熱い何かが当たる感触。心なしか湿っている気さえする。
(漏らす、わけ……)
しかし現実として、もう一歩も進むことも戻ることもできないのだ。一体これをどうしろと言うのか。
(……立ちションしちゃおうかな)
そう思った瞬間、そうしろと言わんばかりに尿意がどくんと込み上げる。尋常じゃない排泄欲求の暴力。下腹の不規則な疼きの直後、猛烈な尿意が股間を渦巻いて、またしても少量ちびってしまう。身をじっと固くして縮こまった姿勢のまま動けないのだから、立ちションなんて最早できるはずがない。
「はー、っ、はあぁ、っ、うそ、……ッ、いやだ、……!」
ふいに全身がぶるりと大きく震えあがる。腰がどんどん沈んでいって、膝が重なり合ったまま解けない。股に挟んだ両手が痛い。膝と膝の間に、熱水が溜まっていく。
(おしっこ、おしっこ、おしっこおしっこおしっこおしっこ!!!!)
(いやだ漏らしたくない、おもらしは嫌だ!!!!!)
(我慢しろ耐えろ我慢我慢我慢、がまん、がまんっっっ!!!!!)
じょろろろ、じゅーーッッ!!!
まだ我慢、だめ、おもらしはだめ、我慢しなきゃ。この俺がおもらしなんて……。
(でる、出ちゃう、おしっこ出ちゃうぅ……)
「も、だめ……」
じょろろろろろろろ、じょおおおおぉぉぉぉぉぉ、じょわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………
……細切れだった水流は、とうとう水門を突き破ってしまったようだった。
股間が温泉に浸かったように熱くなる。太腿が熱くなる。靴の中がぐっしょりと濡れていく。手のひらを、指を伝って熱水があちこちに流れていく。
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じょおおおおぉぉぉぉぉぉ、ばしゃばしゃばしゃばしゃ…………
しょろろろろろろろろろろ………
道のド真ん中で、おしっこで下半身をびしょ濡れにさせている男子高校生。最悪だ、俺、高校生なのに、おしっこ我慢できなかった……。
「どーしよぉ……」
びゅう、と北風がひとつ吹き、俺は肩を震わせる。半日以上溜め込んだおしっこはそう簡単に止まってはくれない。今はただ、この体内で熟成された真っ黄色なおしっこを、情けなくじょろじょろと垂れ流し続けるしかないのであった。
*
「知らんかった」
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一連の話を聞いた先輩は、目をぱちくりとさせた。単純に驚きを隠せなかったのである。
結末まで話し終えた青年の頬に、みるみるうちに熱が上気していく。途端に羞恥心が込み上げてきたらしい。ずり落ちていた布団を掴むと、すっぽりと顔を覆い隠してしまった。先ほどまでは淡々と話していたくせに、急にしおらしい態度になった後輩の姿を見た男は、何だかおかしく思えて少し吹き出した。
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あまりにもストレートな質問に、青年の心臓がどくんと跳ねる。数回、小さく横に首を振った。
「なんで?」
「止めなきゃと思って、最後まで抗ってたから」
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「…………」
またしてもド直球すぎる質問だ。既に真っ赤だった青年の顔が、ますます熱を帯びていく。心臓がはち切れそうなほど鼓動を叩いて、耐え切れず布団の中に潜ってしまった。そんな青年が可愛らしくて仕方なくて、先輩は手探りで布団の中の彼の身体を抱き締めた。
「またしようね」
まるで少年のような無邪気さを孕んだ声。あんな失態、二度とするものか。そう思っていた青年であったが、気持ち良かったことを見透かされているのが悔しくて、でも嬉しくて。この人が望むのであれば、その時は付き合ってやろうと思ってしまうのであった。
おわり
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