電波少年と幽霊マネージャーの迷宮探索裏街道

春池 カイト

文字の大きさ
14 / 57
2 幽霊少女は権限を求める

うなれ、僕のスキル

しおりを挟む
「とりゃ……っと、危ない、ていっ!」

 それから僕の快進撃(≒弱い者いじめ)が続いた。
 さすがに1体だけで出てくる時ばかりではなく、2体、時には3体が出てくることがあったが、一振りで吹き飛ばされる軽い骨なんて敵ではなかった。
 ひと段落したときエリスが話しかけてきた。

『ねえ……』
「なに?」
『スキル使わないの?』
「あ、忘れてた……でも、今更必要?」

 あまりにも簡単に敵が倒せるので、必要性を感じない。

『こんなショボいダンジョンの最弱の敵相手に通用したからといって、それがこの亜s気も通用するわけないじゃない。いいから、次はスキルで倒すこと、いいね?』
「……わかったよ」

 なるほど……確かにそうかもしれない。
 思い当たることがある。
接近戦で敵を倒す人は、最前線でもそんなにいないということを、前に父さんが言っていたのを覚えている。
もちろん、素手でモンスターに対するわけではないが、それを防御やけん制に使って、決め手はスキルだというタイプが多いらしい。
 これは、そもそも現代日本人が接近戦で敵を倒すことに不慣れなこともあるだろう。もしかすると未来には接近戦が流行するかもしれないが、今のところはそうではない。

『来たよ!』

 考えながら歩いていたので、エリスに敵の接近を教えてもらうことになった。
 今回は例のゴブリンスケルトン3体。
 僕は……とりあえずナタの刀身を斜めに構えて攻撃に備える。
 えっと……スキルは……
 考えてみればスキルを能動的に使うのは初めてだ。
 こんなことなら壁に向かって空撃ちしておけばよかった。
 でも知識としては知っている。
 慣れれば自在らしいが、初心者向きなのはスキルの名前を発音すること。

「……電波!」

 気合を入れて声を出すのには向いているとはいいがたいスキル名だ。
 これが電撃、とか火炎、とかだったらかっこよかったのに……
 体の中から何かの力が抜けていくのを感じる。
 一瞬ふらつきそうになりながらスキルの行く先を見る。
 とはいえ、現象としては見えない。火炎や電撃とは違うのだ。
 スキルの力を受けた真ん中のゴブリンスケルトンは……そのままだった。

「あれ?」
『失敗? ともかく反撃来るよ、注意して!』

 そして結局いつものようにナタで3体のスケルトンの相手をし、危なげなく勝利する。
 造園が来ないことを確認して、エリスの方に向き直る。

「全然効果ないんだけど?」
『おかしいわね……』
「なんか強いって言ってたよね?」
『確かそのはずなんだけど……やだ、他のと間違えたのかしら?』
「バーンとやればいいとか言ってなかった?」
『そのはずなのよ……ファーストスキルの仕様は……』

 うーん……女神にもわからないのか……
 スキルの発動に失敗?
 いや、確かに発動した感じはある。
 魔力的な何かを消費した感触はあったのだ。
 なお、この魔力的な何かの残量を測定する機器はあるらしいが、リアルタイムで表示するステータス表示みたいなものは実現していない。
 前に母さんがその開発研究に一時関わっていたという話を実家にいたころの雑談で聞いたことがあるが、まだ製品化できるめどが立っていないらしい。

『前に見せてもらったときはちゃんとスライムがバーンって爆発してたと思ったんだけど……』
「スライム?」

 モンスターのスライムは、創作ではモチモチしたのとドロドロしたのと2通りあるが、ダンジョン内ではモチモチの方だ。
 わらび餅とか水まんじゅうみたいなものがずりずり這っていて、跳び上がって攻撃してくるらしい。
 そんなスライムがバーン……あ、もしかして?

「電子レンジみたいなものかな?」
『ああ、そうそう、それをイメージしたって言っていたよ。スキル担当が』
「そうだとすると……なるほど、相性が最悪だったみたいだね」
『どういうこと?』

 女神が電子レンジで物が温まる仕組みを知らなくてもしょうがないと思うが、下手をすると普通の高校一年生でも理解していないかもしれない。
 だけど、僕は学者のお母さんの息子で、科学にもそれなりに興味があるので知っている。
 バーン、で連想したのは電子レンジでゆで卵を温めすぎて破裂する動画を見たからだ。

「電子レンジが温まるのって水分が必要なんだよ。だから乾いたものは温まらない」
『へえー、そうなんだ……』

 乾燥した骨であり、筋肉も脂肪も無いスケルトンに対しては、有効ではなかったということだろう。
 逆に考えれば肉のあるゴブリンであれば有効だろうし、乾燥している敵なんてそんなにいないはずだ。
 であれば、このスキルも出番は……きっとあるんだろう……


*****


「あ、ちょっと違う」

 通路を少し進むと、またちょっと洞窟の幅が広がり、そして今度は墓石の代わりに……

『なにこれ?』
「卒塔婆と提灯かあ……」

 今度は天井からではなく、左右の壁から卒塔婆が無数に生えていて、ところどころの卒塔婆に提灯がぶら下がって淡い光を広げている。
 幅が広がったが、その広がった幅を利用しようとすると卒塔婆が刺さるので、結局使えるスペースは前と変わらないように見える。

『上級のダンジョンだったら、これが槍だったかもね』
「それは怖いな……」
『あ、あと様子が変わったということはモンスターも切り替わるはずよ。注意してね』
「うん、わかった」

 さっきまでのように天井に気を付ける必要はないが、その分左右が気になるので、できるだけ真ん中を進む。『この端わたるべからず』な気分。
 そして、その敵が唐突に現れる。

 ボウッ、ボウゥ

 左右の提灯の中から火の玉のようなものが音を立てて飛び出してくる。

『ウィスプ、幽霊系。カナメ、スキルを……』
「電波!」

 先に出てきた方にめがけて、僕はスキルを発動する。
 すると、ゴウッっと一瞬火の玉が膨れ上がって、そのまま跡形もなく消滅した。

『右からくるよ!』

 もちろん視界の端にはとらえている。
 だけど思ったより動きが速い。
 僕はこっちの方が速いとナタで残りのウィスプを迎撃する。
 だけど……

「ええっ⁉」

 ウィスプはすり抜けて僕の腹に飛び込んでくる。
 熱い。
 僕はとっさに後ろに倒れこむ。
 頭上に僕を見失ったかのように漂うウィスプ。

「電波ぁ!」

 僕はその隙を逃さずスキルで敵を倒す。
 はあ……危なかった。
 ぶつかった、と思った腹のあたりを探ると、服は燃えていない。
 実際にはぶつかるまではいかなかったようだ。

『幽霊系って言ったじゃない……』
「そうだった。油断したよ……」

 残念ながら覗き込んでくれるエリスにも実体がないので、起き上がるのに手を借りるわけにもいかない。
 僕は気を引き締めながら立ち上がるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...