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2 幽霊少女は権限を求める
近所を回ろう
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「準備できたよ」
『やった!』
エリスと会話しているが、ここは彼女が支配したダンジョン内ではない。僕の家だ。
あれから3日が経っており、もう7月も終わりだ。
気温はより高くなっており、じっとしていると汗がにじみ出てくるようになった。
昼はさすがにエアコンが必要になっているが夕方になると涼しくなるのは、さすがに山奥というところだ。
エリスはエリスで、僕は僕で、それぞれ次のダンジョン探索の準備をするということであの日は帰って来たのだが、彼女の方はすぐに準備が終わったのか、幽霊の姿で飛び出してきて今では家に居候している。
僕の方は、まず体を回復させることが必要で、さらにナタよりも安全にモンスターを倒す武器や防具について準備が必要だった。
本格的に納屋を捜索して、ヘルメットを見つけた。
それと山での作業用か、丈夫な作業服も見つけた。おじいさんの物か、下手するとひいおじいさんのものかもしれないが、よく残っていたものだ。
だが、武器になるものはクワやのこぎり、スコップぐらいで、それぞれ強度や長さなど一長一短で、振って確かめてみたもののしっくりこなかった。
そんなわけで、結局通販に頼ることになった。
『これ?』
「そう、バットよりいいでしょ?」
通販で送られてきたのはバットの持ち手以外の部分をちょっと太くしたような形状のこん棒だ。
野球に使ったら振り遅れ間違いなしの代物。
だけど、モンスターに対しては間違いない威力を発揮してくれるだろう。
『疲れない?』
「そこらへんはうまくやる。メインはスキルだし……」
こんな世の中になったので、実は武器の通販も一部認められている。
とはいえ剣や刀、銃がバンバン売られているということはなくて、ちょっと武器にも使えそうな日用品が中心だ。
そんな中で、僕が小遣いで買えるようなものだとこれぐらいのものになる。
そして、僕は作業服、ヘルメットを装備して、片手にこん棒を持ち、準備万端だ。
『なんか……』
「なに?」
『すごく怪しい見た目じゃない?』
「え?」
洗面所に移動。
鏡を見る。
なるほど。
「確かにすごく怪しいね。電車には乗りたくない」
『気づいてなかったの?』
「いや、最近人にあんまり会わないから……」
近くに野良ダンジョンでもあればいいんだけど、一番近くの野良ダンジョンは同じ村の中だけどもっと家の集まった集落の中にある。
それに、野良ダンジョンを進んで探索するというそのこと自体が変わり者だと思われてしまう。
「えっと……近くのダンジョンっていくつあったっけ?」
『地図ちょうだい』
紙の地図を引っ張り出してきて、エリスの指示に従って近くのダンジョンに点を打っていく。
裏山の次に近いのは、共同墓地の近くのちょっと山に入ったところ、その次がふもとに続く道のわきの森の中だ。
それ以外だと直線距離は近いが山越えだったり、他の民家が近くにあったりして難しいことがわかった。
「とりあえずこの2か所だね」
『そうね、お墓の近くはモンスターもまた骨と幽霊だろうから次に行くのにはいいかもしれない』
「あ、でも今は墓参りの人がいるかもしれないよ?」
『じゃあ夜にしましょうか』
そんなわけで、僕たちは次のダンジョン攻略に進むのだった。
*****
「インダクション!」
前と同じく骨の剣士であったダンジョンボスを、同じスキルで倒す。
いつまでも「電波!」とか「IH!」とか、あるいは「電子レンジ!」とか叫ぶのは今後のことを考えると格好悪いので、IHの省略前の言葉、Induction Heatingからとって技名にした。
ちなみに遠距離攻撃の電子レンジはMicrowave Ovenだから「マイクロウェーブ」に変更済みだ。
スキルは別に正しい名前を唱える必要などない。
単に気分の問題と、複数で探索しているときに仲間に知らせる役目もある。
今の自分には関係ないけど……
『そうそう、こういう安全なのが普通の探索なのよ』
「敵の能力的には変わりないけどね……」
同じような敵に対して、準備が良かった今回は自分でも楽だったと思う。
探索に使った時間もここまで2時間とほぼ半減だ。
『じゃあ、憑依するね』
前回は見逃したが、今回は僕も起きている。
相変わらずふよふよと浮きながら、彼女はボスの骨剣士に近づき、右手をかざす。
幽霊の半透明の体が光り、形を崩して骨の中に吸い込まれていき、そして光が強くなったと思ったら装備を全部外した状態のただの全身骨格が現れる。
「なんか、簡単だね」
『そりゃ、前回と違うもの。あの時はただの幽霊だったけど、今はダンジョンマネージャーとしての力も使えるからね』
どうもそうらしい。
ただ、いくら権限が強くなったからといって、倒してもいないダンジョンマスターを支配下に入れることはできないらしい。
『だからこれからもお願いね』
「……わかったよ」
今回のダンジョン探索で得られたものは多くない。
もともとわかっていたけれど、同じ骨の剣士だったからエリスは相変わらず骨の姿しか取れないし、それもダンジョン内だけだ。
僕の方も電波スキルが1.012から1.017に上がったぐらい。
「あんまり成長しなかったね」
『そんなものじゃない?』
「やっぱり苦労しなかったからかなあ……」
『多分それは関係ないわよ。同じ敵を倒して得られるリソースは同じで、苦労したかどうかは問題じゃないわ。むしろ、元からいくらかスキルの訓練してたとかじゃあないの?』
「ああ、そういう……」
半年以上苦痛に耐えながら電波に対する耐性を上げようと苦労していたのが影響しているのか……
半年で1%に満たないのだから、効率は悪いよね。
『でも、安心して、次のダンジョンを支配下に置けば私のできることが結構増えるから』
「そう? それじゃ期待しちゃうな……」
『さあ、今日のところは帰りましょう』
「そうだね」
ほとんど怪我もしていないし、探索時間も短かったとはいえ、さすがに一晩で2か所のダンジョンに入るのはやりすぎだと思う。
僕たちは、またエリスに構造を変更してもらったダンジョンから出て、舗装路に出る。
あたりに人の気配は当然ない。
自分の歩く音だけが響く中、僕は懐中電灯を持って夜道を家に進む。
『やった!』
エリスと会話しているが、ここは彼女が支配したダンジョン内ではない。僕の家だ。
あれから3日が経っており、もう7月も終わりだ。
気温はより高くなっており、じっとしていると汗がにじみ出てくるようになった。
昼はさすがにエアコンが必要になっているが夕方になると涼しくなるのは、さすがに山奥というところだ。
エリスはエリスで、僕は僕で、それぞれ次のダンジョン探索の準備をするということであの日は帰って来たのだが、彼女の方はすぐに準備が終わったのか、幽霊の姿で飛び出してきて今では家に居候している。
僕の方は、まず体を回復させることが必要で、さらにナタよりも安全にモンスターを倒す武器や防具について準備が必要だった。
本格的に納屋を捜索して、ヘルメットを見つけた。
それと山での作業用か、丈夫な作業服も見つけた。おじいさんの物か、下手するとひいおじいさんのものかもしれないが、よく残っていたものだ。
だが、武器になるものはクワやのこぎり、スコップぐらいで、それぞれ強度や長さなど一長一短で、振って確かめてみたもののしっくりこなかった。
そんなわけで、結局通販に頼ることになった。
『これ?』
「そう、バットよりいいでしょ?」
通販で送られてきたのはバットの持ち手以外の部分をちょっと太くしたような形状のこん棒だ。
野球に使ったら振り遅れ間違いなしの代物。
だけど、モンスターに対しては間違いない威力を発揮してくれるだろう。
『疲れない?』
「そこらへんはうまくやる。メインはスキルだし……」
こんな世の中になったので、実は武器の通販も一部認められている。
とはいえ剣や刀、銃がバンバン売られているということはなくて、ちょっと武器にも使えそうな日用品が中心だ。
そんな中で、僕が小遣いで買えるようなものだとこれぐらいのものになる。
そして、僕は作業服、ヘルメットを装備して、片手にこん棒を持ち、準備万端だ。
『なんか……』
「なに?」
『すごく怪しい見た目じゃない?』
「え?」
洗面所に移動。
鏡を見る。
なるほど。
「確かにすごく怪しいね。電車には乗りたくない」
『気づいてなかったの?』
「いや、最近人にあんまり会わないから……」
近くに野良ダンジョンでもあればいいんだけど、一番近くの野良ダンジョンは同じ村の中だけどもっと家の集まった集落の中にある。
それに、野良ダンジョンを進んで探索するというそのこと自体が変わり者だと思われてしまう。
「えっと……近くのダンジョンっていくつあったっけ?」
『地図ちょうだい』
紙の地図を引っ張り出してきて、エリスの指示に従って近くのダンジョンに点を打っていく。
裏山の次に近いのは、共同墓地の近くのちょっと山に入ったところ、その次がふもとに続く道のわきの森の中だ。
それ以外だと直線距離は近いが山越えだったり、他の民家が近くにあったりして難しいことがわかった。
「とりあえずこの2か所だね」
『そうね、お墓の近くはモンスターもまた骨と幽霊だろうから次に行くのにはいいかもしれない』
「あ、でも今は墓参りの人がいるかもしれないよ?」
『じゃあ夜にしましょうか』
そんなわけで、僕たちは次のダンジョン攻略に進むのだった。
*****
「インダクション!」
前と同じく骨の剣士であったダンジョンボスを、同じスキルで倒す。
いつまでも「電波!」とか「IH!」とか、あるいは「電子レンジ!」とか叫ぶのは今後のことを考えると格好悪いので、IHの省略前の言葉、Induction Heatingからとって技名にした。
ちなみに遠距離攻撃の電子レンジはMicrowave Ovenだから「マイクロウェーブ」に変更済みだ。
スキルは別に正しい名前を唱える必要などない。
単に気分の問題と、複数で探索しているときに仲間に知らせる役目もある。
今の自分には関係ないけど……
『そうそう、こういう安全なのが普通の探索なのよ』
「敵の能力的には変わりないけどね……」
同じような敵に対して、準備が良かった今回は自分でも楽だったと思う。
探索に使った時間もここまで2時間とほぼ半減だ。
『じゃあ、憑依するね』
前回は見逃したが、今回は僕も起きている。
相変わらずふよふよと浮きながら、彼女はボスの骨剣士に近づき、右手をかざす。
幽霊の半透明の体が光り、形を崩して骨の中に吸い込まれていき、そして光が強くなったと思ったら装備を全部外した状態のただの全身骨格が現れる。
「なんか、簡単だね」
『そりゃ、前回と違うもの。あの時はただの幽霊だったけど、今はダンジョンマネージャーとしての力も使えるからね』
どうもそうらしい。
ただ、いくら権限が強くなったからといって、倒してもいないダンジョンマスターを支配下に入れることはできないらしい。
『だからこれからもお願いね』
「……わかったよ」
今回のダンジョン探索で得られたものは多くない。
もともとわかっていたけれど、同じ骨の剣士だったからエリスは相変わらず骨の姿しか取れないし、それもダンジョン内だけだ。
僕の方も電波スキルが1.012から1.017に上がったぐらい。
「あんまり成長しなかったね」
『そんなものじゃない?』
「やっぱり苦労しなかったからかなあ……」
『多分それは関係ないわよ。同じ敵を倒して得られるリソースは同じで、苦労したかどうかは問題じゃないわ。むしろ、元からいくらかスキルの訓練してたとかじゃあないの?』
「ああ、そういう……」
半年以上苦痛に耐えながら電波に対する耐性を上げようと苦労していたのが影響しているのか……
半年で1%に満たないのだから、効率は悪いよね。
『でも、安心して、次のダンジョンを支配下に置けば私のできることが結構増えるから』
「そう? それじゃ期待しちゃうな……」
『さあ、今日のところは帰りましょう』
「そうだね」
ほとんど怪我もしていないし、探索時間も短かったとはいえ、さすがに一晩で2か所のダンジョンに入るのはやりすぎだと思う。
僕たちは、またエリスに構造を変更してもらったダンジョンから出て、舗装路に出る。
あたりに人の気配は当然ない。
自分の歩く音だけが響く中、僕は懐中電灯を持って夜道を家に進む。
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