電波少年と幽霊マネージャーの迷宮探索裏街道

春池 カイト

文字の大きさ
36 / 57
4 少年は電波となり、少女は翼を手に入れる

荒船山ダンジョン(1)

しおりを挟む
『やったね』
「うん、これなら何とかなりそうだ」

 裏山ダンジョンを借りて行っているスキルの練習。
 何とか8割以上の確率で氷玉を飛ばすことができるようになった。
 残りの2割も、ちょっと勢いが足りないなどで、発動の失敗というのはなくなっている。

「じゃあ出発しよう」
『今日は晴れていて良かったね』

 実は昨日までは2日連続で雨だった。
 晴れたら晴れて暑くなるのがこの時期の困りごとだが、予定が崩れなくて良かった。
 僕は、いつもの探索セットを持ち……いやいや、今日は昼間だからあのこん棒は無理だな……しょうがないのでナタをリュックに突っ込んで行こう。
 まさか途中で警察に出会うこともないだろうし、今のご時世、抜き身じゃなければ武器になる農具ぐらいでは問題にはならない。

「よし、準備完了」

 そして、僕はいつも通り浮いて付いてくるエリスを伴い、出発した。


*****


「こっち?」
『そう……あああ、移動した。引き返して』
「意外としょっちゅう動くんだなあ」
『でも3時間はっているから、次は絶対に間に合うわよ』
「じゃあ、あと一頑張りするか」

 僕は方向転換して、ダンジョンの入口に向かう。
 しばらくして……

「意外と変な場所だね」
『今までのとは違って、移動するからね。常にこの場所だったらCランクで公開されてるわよ』
「なるほど」

 場所は、車道のガードレールのすぐ内側だ。
 自動車はたまに通るが、タイミングを合わせれば見つからずに入ることができるだろう。
 これまでのダンジョンと違い、見通しは良い場所で、確かにずっとここにあれば野良ダンジョンであっても問題ないだろう。まあ、誰も攻略しようとは思わないだろうが……
 僕はかつて見た河川敷の野良ダンジョンの入口を思い出しながらそう思う。

『いい、今回は今までより敵が強いわ。それこそCランクの中位から上位といってもいいぐらい』
「うん、聞いた通りだね」

 かつては前回のダムダンジョンと同じぐらいとエリスは言っていたのだが、過去の記憶と食い違いがあったらしくて、実際にダンジョンマネージャーの権限でサーチしたところ、より強力だということが分かったのだ。
 もし、入口が移動するという難点が無ければ問題なくCランク上位のダンジョンとなっていたらしい。
 さすがに、Bには程遠いそうなので、まさしく一般の野良ダンジョンのレベルが、今の能力で、一人でクリアできるかどうか、ということになる。

「じゃあ行こう」

 僕はダンジョンの入口に突入する。

「え? まさか、木造?」

 なんと、目の前に広がるのは床も壁も天井も、全部木の板を張り合わせたような木造の入口広間だった。

『ああ、なんとなく思い出してきた……ここって確か船なのよ』
「船?」

 船だとしても、過去の経験でいっても船体は鉄だし床もソフトなゴムのような素材だった覚えがある。
 だとすると、これはかなり時代がかったものということになる。

『えっとね、確かこのダンジョンの起点が、なんか船みたいな山らしいのよね』
荒船山あらふねやまかあ……」

 なるほど、近くにあるのは知っていたが、それによってダンジョンの特殊環境が生まれるのは意外だった。
 荒船山は群馬県と今僕が住んでいる長野県の境にあり、山の形が船に見えることで有名だ。
 だけど、荒船山はに見えるはずで、間違ってもこんな木造の、おそらく帆船とは時代が違う。
 その辺をエリスに聞いてみたものの、結構ダンジョンの環境はいい加減だという返答だった。
 それはそうだ。裏山には卒塔婆も墓石もないし、提灯なんてそもそも墓のものではない。
 それに比べれば船と呼ばれる山がどんな船かなんて大したことではないというのだ。

「そんなものなんだね……」
『だからといって、敵が特別強いとかはないから、安心して』
「でも、いや、まあ行ってみるか」

 僕は通路に向かって足を踏み出した。


*****


 通路は、相変わらず同じぐらいの広さ、幅が4m程度で先が見えないぐらいの暗さだった。変わった点があるとすれば、床が木の板であり、天井も木製で低く、ジャンプすれば大人だったら手が届くぐらいの高さだった。
 そして左右は壁ではなく、一定間隔ごとに黒光りするものが置かれている。

「これは、大砲?」
『そうみたいね。昔の木造帆船ってとこかしら』

 見たことはないが、こういう構造なのか……
 あの有名海賊漫画のとかしか見たことないけど、本物はこんなにたくさん大砲が並んでいるんだなあ……
 そう言葉にすると、エリスは「しょせんダンジョンよ」との答えを返してきた。
 たしかに、こんなに何百メートルも直線が続くことはないよね。
 空母が200mちょっとって聞いたことあるし、そんなサイズの木造船なんてあるはずない。

『休めるところはたくさんありそうね』

 大砲と大砲の間を覗き込んでエリスが言う。
 そこにはハンモックがたくさん吊られていて、確かに休めそうだ。

「ねえ、それはいいんだけど、これってきっとアレだよね?」
『え? ああ、うん、そうよね』

 はたして、しばらく歩みを進めると、アレが出てきた。

「はあ……」

 思わずため息が出る。
 でも、今の僕の武器はあの時と同じようで違う。
「アイス・ワン!」

 僕は空いている左手を突き出して狙いを込め、そしてスキルを発動した。
 十分な速度で発射された氷玉はソレの頭がい骨を砕き、そしてソレは仰向けに吹っ飛んで倒れる。
 なお、純粋な氷玉というわけではないので、それを込みとして「アイス・ワン」と名付けて練習していた。今ではこの方が安定してスキルを使えるようになっており、驚くべきことにATSMATS端末でもチップスキルの欄に『アイス・ワン(氷玉・電波)』という表記が増えていた。

「また骨か……」
『でも、あの頃と違うでしょ?』
「当然……って、今回は武器を持ってるんだね」
『近接戦は避けたいわね』

 ということで、アレとかソレとか言っていたが、今回もスケルトンが敵だ。カトラス? カットラス? とかいう刀だろう。僕のナタを大型にして先細りのデザインにしたようなものを持っていた。
 相変わらず武器はあまり切れ味が鋭そうには見えず、錆が浮いていたが、それでもこれで切られたら怪我をするかもしれない。
 エリスの言う通り、近接戦は避けた方が無難だろう。
 僕は慎重に先を進むのだった。

 しばらく戦ってみて、なんとなくわかった。

「やっぱり左右のハンモックから出てくるんだね」
『そうみたいね。こっちが慎重に進んでいるから直接は見えないけど』
「だからといって走り抜けるのは避けたいなあ……」

 それに、通り過ぎたハンモックから出てきて背後を襲われるのは勘弁してもらいたい。やはり、慎重にハンモックも含めて探索が必要だろう。

『先も長いだろうし、ゆっくり行こうよ』
「そうだね」

 今のところ順調、だけどCランク上位とすると、最後まで行けるかどうか……
 まあ、だめなら出直そう。
 本来ダンジョン探索ってそういうものだし……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...