302 / 476
第294話:イカれた執念。
しおりを挟む俺が潜んでいる事など気付かずに侵入者は足音を殺し家の奥へと侵入していく。
足音を殺すだけならともかくドアを開ける音すらしない。
完全にプロだなこれは……。
これでただの一般人の犯行という線は消えたと思っていいだろう。
俺が集中してやっと気配を感じる事が出来る程度だ。
ゆっくりと暗殺者はリザインのベッドに近付き……ダガーを勢いよく突き立てた。
ガギン!
「なっ……!?」
「残念だったな。リザインはここには居ねぇよ」
暗殺者がダガーを突き立てたのは俺だ。
リザインのベッドで俺は寝泊まりしている。
リザインとルークは今頃俺のストレージ内に作った簡易家屋の中でぐっすりお休み中って訳だ。
「貴様、何者だ!?」
「それはこっちの……台詞だろうがよっ!」
ベッドから飛び起き、暗殺者の腕を掴んで一気に捻り上げる。
ベキベキッ! という音を立てて暗殺者の腕が変な方向にねじ曲がった。
「やべっ、そこまで力込めたつもりなかったんだが……」
「ぐっ、ぎゃぁぁぁぁっ!!」
暗殺者はぐにゃぐにゃに曲がった腕を押さえて床を転げ回った。
「おい、大丈夫か? 頼むからショック死とかするなよ? お前には聞きたい事が山ほどあるんだからな」
「ふざけるな……! 腕一本くらいで勝った気になるなよ……リザインはどこだ? 匿うとろくな事にならないぞ」
「ろくな事にならないって? どんな事か教えてほしいね。腕が折れたりするのか?」
俺はできるだけ無警戒を装って暗殺者の方へ歩み寄る。
「ちっ、教える気が無いなら直接その身体に聞いてやる!」
暗殺者は高速移動のスキルを所持しているらしく、瞬時に目の前から消え、俺の背後に現れた。
つもりになっている。
「なっ、えっ!?」
「ざんねーんでしたー」
暗殺者としてのスキルなら俺の記憶の中にある物の方が優秀だったようだ。
その場に残像を残しつつ逆に暗殺者の背後に回っていた。
そのまま首に腕を回し、ヘッドロック。
「お前はなんの為にリザインを狙う? 言わないと首がぽっきりいっちまうぞ?」
「ぐっ……教える、必要は……無いッ!」
突然暗殺者の身体が燃え上がった。
「うおっ、なんだなんだ?」
ちょっとビックリして一度暗殺者から手を離し、距離を取る。
暗殺者自体はそのまま床をゴロゴロと転がって火を消した。
「はぁ……はぁ……」
「おいおい、俺から逃れる為に自分に火をつけたのか? 何がお前をそこまでさせるんだよ」
「うるさい! お前に我等の崇高な理想を語った所で理解などできまい!」
うわ……ある意味宗教じみてやがるな。
暗殺者は既に服があちこち燃えてボロボロになりながら、こちらに掌を突き出した。
魔法……か。
「いいぜ、撃ちなよ。お前じゃ俺に勝てないって事を思い知らせてやるから」
「……その言葉、後悔してもしらんぞ!」
暗殺者が使うにしてはかなり強力な魔法。
巨大な火球が俺の目の前に現れ、身体を包み込もうとした。
「馬鹿野郎。家が燃えたらどうするんだよ」
俺は火球を結界で包み、その中に水魔法を流し込んで相殺。
一気に水蒸気が吹き上がり、結界が内側から破裂してしまった。
「うわっ、強度が足りなかったか……? あちちっ」
高温の水蒸気が部屋中にまき散らされ、まるでサウナのようになってしまう。
「くっ、化け物め……!」
「俺に勝てないのは分かっただろ? 死にたくなかったら目的とお前らの親玉が誰なのか吐いてもらうぞ」
「……ここまで、か」
暗殺者は戦うのを諦めたようで、ダガーをぼとりと床に落とす。
俺の視線がそちらに行った一瞬の間に、高速移動スキルで部屋から飛び出していった。
「あっ、この野郎逃げるんじゃねぇ!」
俺の方が早いってまだ分からないのか?
屋根の上で追いつき、相手の足を払う。
暗殺者は派手に屋根の上を転がり、そのまま地面に落下していった。
俺もその後を追い、逃げられないように拘束しようとしたその時……。
「貴様の好きには……させん。私が死んでも我々の意思は死なない!」
鬼気迫るとはこの事だ。
俺はその時の暗殺者の顔を忘れる事はないだろう。
目深にかぶっていたフードはボロボロになり、既に素顔も見えていたが、暗殺者の男は……。
「ざまぁみろ! ははははははははは!!」
俺に向かって狂気に満ちた瞳を向け、笑いながら……自らの顔面に魔法を放った。
頭部が吹き飛び、残された首の断面から血を噴き出した遺体が地面に倒れ込む。
こいつらは……俺が思っていたよりも本気で、狂っている。
さすがに夜中と言えど往来にこんな物を放置する訳にも行かないのでそいつの遺体自体を結界に包み込み、室内へ持ち帰る。
「さて……どうしたものかな」
『これって完全に君がぶっ殺したと思われるわよね?』
そうなんだよ。
ちゃんと説明したら分かってもらえるだろうか?
まぁ、どっちだっていいんだけどさ。殺しに来たんだから殺される覚悟もあったみたいだし。
まさか自ら死ぬ覚悟すら持ってるとは思わなかったけどな。
『君ってほんと詰めが甘いのよね……最初から本気出してれば……』
いやいや、人間相手の加減は難しいんだってば。
下手に力出せば死んじまうしさ……相手に諦めさせてゆっくりふんじばるのが理想だったんだって。
もうどうにでもなーれっ。
翌朝、ストレージ内から部屋にリザインとルークを戻したら、それはもう想像通りの大騒ぎになった。
0
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる