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第304話:隻眼の鷹リーダー・サイガ。
しおりを挟む「あらもう帰っちゃうの? もっとゆっくりしていっていいのよ?」
「ありがとう。でも俺達もやらなきゃならない事があるから。紅茶美味しかったよ」
それ以上特に得られる情報が無いだろうと判断してグレアの家を出ると、外で遊んでいた子供達が一斉に集まってくる。
「うおっ、なんだなんだ?」
急に子供に取り囲まれて身動きが取れなくなってしまった。
「こら、お客さんを困らせたらだめよ?」
「ねーお姉ちゃんたちもここに住むの?」
どうしてそうなった?
「お姉ちゃん達もみんなトンプソンになればいいのになー」
「私綺麗なお姉さんがほしい!」
「僕も!」
わらわらと子供たちが俺の周りを取り囲み服を引っ張る。
普段よりもフリフリしてリボンとかが沢山ついてる服だから掴む所が沢山あるんだよなぁ。
「こら、お客さんが困ってるでしょ? そういうのは無理強いしちゃダメなのよ?」
「今この子達、みんなトンプソンにって言っておったのじゃ」
「ええ、私の名前はグレア・サイガ・トンプソンですもの。この子達は私の家族……みんなトンプソン家の一員ですわ」
「なるほどなー素晴らしい家族愛なのじゃ♪ ……あれっ?」
ラムが車椅子の背もたれ越しに俺の方へ振り向く。
俺もラムと同じところが引っかかった。
ティアはあまり気にして無さそうなので多分覚えてないんだろう。
「シスター、今サイガって……」
「え? ええ、私の名前ですけどどうかしましたか?」
やっぱりこのシスターがサイガ?
隻眼の鷹の……?
「なぁ、追加でちょっと聞きたい事が出来たんだけど。隻眼の鷹って聞いた事あるか?」
俺の聞き方や声が少し怖かったのかもしれない。子供達は何かを察知して家の中へと走っていった。
「こら、走るんじゃありません危ないわよ……まったくあの子達ったら元気なのはいいんだけれど家の方がもたないわね。……それで、隻眼の鷹、でしたら勿論知ってます」
「確か隻眼の鷹のリーダーの名前がサイガだったと思うんだが……」
「あらあら、よくご存じなのね? 私は隻眼の鷹のリーダー、ゲイリー・サイガ・トンプソンの子孫なんです」
「……は?」
ゲイリー? どうしてそこでゲイリーが出てくる。
「驚かれましたか? 隻眼の鷹と言えば有名ですものね。私のご先祖様はとても偉大な事を……」
「いやそこじゃねぇんだわ。今ゲイリーって言わなかったか?」
「ああ、そういう事でしたのね。ミナトちゃん達が会ったっていうゲイリーは私が名付けたんです。赤ちゃんの頃に教会に捨てられていたのを見つけて……強く生きてほしいなと思ってご先祖様の名前を頂きましたのよ」
あ、あぁ……そうだよな。
普通に考えて当時の隻眼の鷹リーダーが生きてる訳ないもんな。
「そういう事ならいいんだ。今度こそ俺達は……」
「……って事はあのゲイリーって奴もサイガって事になるんだゾ?」
ティアが一瞬何を言ってるのか分からなかった。
隻眼の鷹のリーダーがゲイリー・サイガ・トンプソンで、その子孫がグレア・サイガ・トンプソンで、彼女に名付けられた男がゲイリー・トンプソンだからって別に奴がサイガって事にはならないだろうよ……ん? なんかおかしいな。
「ティアちゃんの言う通りよ。あの子の名前はゲイリー・サイガ・トンプソン。英雄と同姓同名なんて随分な荷物を背負わせちゃったけれど、あの子ならきっとその名に恥じぬ人生を送ってくれるわ」
ゲイリー・サイガ・トンプソン。
当時の隻眼の鷹のリーダーの名前はゲイリーで、サイガ。今の隻眼の鷹のリーダーの名前もサイガ。そしてサイガの名前は……。
「な、なぁシスター。ここに居る子供達ってもしかしてみんなサイガなのか?」
「ええ、そうよ。皆サイガでトンプソンなの。一体感があっていいでしょう? 家族なんだって事を強く感じられるようにそうしているの」
「ラムちゃん! すぐに防衛隊まで帰るぞ!」
「う、うむ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ置いてっちゃやなんだゾ!」
ティアが慌てて俺の手を掴んだ。
「シスター、いろいろ有難う! またな!」
「あらあら慌ただしいわねぇ? 気をつけて、また元気な顔を見せてちょうだ……」
シスターの言葉は最後まで聞き取れなかったが、意味はきちんと理解できた。
全部終わったらまた紅茶でも飲みに行かせてもらうさ。
そんな事より……。
「ゲイリーの奴め、まさかあいつが隻眼の鷹のリーダーじゃったのか!?」
「そうだろうな……畜生一杯食わされたぜ。これだから人間相手は嫌なんだ……」
ジンバの時もそうだったが、やり方が回りくどく悪質だ。
まるで毎回どこかの能面野郎を相手にしている気分になる。
防衛隊の訓練所前に到着するが、隊員達は普段と変わらずに訓練に励んでいた。
「間に合えよ……!」
俺達はすぐに宿舎の方へ移動し、使わせてもらっていた休憩所に乗り込む。
「……誰もいないのじゃ」
「嫌な予感がする……!」
俺は二人の様子を確認する前に休憩所を飛び出した。
「ちょっ、ミナト? どこに行くのじゃ!?」
ラムの言葉に返事をしている余裕は無い。
……いや、待てよ?
俺が慌てて動きを止めると、すぐ後ろについてきていたらしいティアが俺の背中に突っ込んできた。
「うわーっ、急に止まんないでーっ!」
「ぐえっ!!」
二人で廊下をゴロンゴロンと転がりながらも俺はラムに頼んだ。
「ラムちゃん! あいつらの魔力反応をサーチしてくれ!」
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