393 / 476
第383話:ちょろ王とあざとメイド。
しおりを挟む「ライルさま、はい、あ~ん♪」
「う、うむ……なんだか恥ずかしいな」
「大丈夫ですよぉ、誰も見てませんから♪」
……どうしよう。
いろいろ面倒を省く為に直接ダリル王、ライルの部屋へ空間を繋げ、移動してきたのだが……。
仕事用の机に向かうライルにメイドが寄り添い、ケーキをあ~んしていた。
めちゃくちゃイチャイチャしてる。
「ほ~ら~っ、はい、あ~ん♪」
「あ、あ~ん」
「……あの」
「ぶっほ!!」
「きゃあっ!!」
我慢できずに声をかけると、ライルはケーキを口に含みつつこちらに視線を向け、盛大に噴き出した。
そしてメイドはライルが噴き出したケーキをもろに顔面に浴びて、驚いて地面に崩れ落ちる。
「み、みみみみミナト殿……っ! ど、どうしてこんな所に、というかいつからっ!?」
「誰も見てませんから~のあたりかな」
「うぐっ……」
ライルの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「た、頼む……! アリアには、アリアには内密に……!」
「う、うん……」
さすがに自分の兄で、しかも国王であるライルのこのありさまは教えられない。
真面目なアリアの事だからライルをボコるか、逆に気を失うかもしれん。
『あら、むしろいい相手が出来て喜ぶかもしれないわよ?』
でも相手は城で働くメイドだぞ?
……あれ? メイドと言えば……。
「いったた……んもう、ライルさまってば酷いですよぉ~」
顔面生クリームまみれのメイドが、女の子座りでライルを見上げ、自分の顔についたクリームを指で拭ってぺろっと舐めた。
それを見て更に顔を赤くするライル。
分かりやすいなぁおい。
『同じようなものを見た事がある気がするんだけれど?』
気のせいだろ。
「す、すまないテラ……その、私が噴き出した物など舐めてはいけない」
「……? どうしてですかぁ?」
「き、汚いじゃないか」
「ライルさまのですもの、もったいないじゃないですか」
にっこり笑って再び指をぺろり。
こいつ……できる。
『あの、ミナト君、気付いてる?』
分かってるよ。こいつ前の大臣の……。
テラはこちらに微笑みながら、唇の前に人差し指をあてた。
黙ってろ、という事らしい。
この様子だとまだテラは性別を明かしてはいないようだ。
というよりテラどうした?
以前会った時は恥ずかしがりやで引っ込み思案な感じだったが……。
ちょっと見ない間に、身長もそれなりに伸びた気がする。
というかそんな事よりもこれはどう見たって女だぞ。
俺の中の価値観が壊れてしまいそうだ。
『……もしかして同姓同名の女の子って可能性は?』
こんなに可愛い子が女の子の訳ないだろうがふざけるなよ。
『……ごめん、私の聞き間違いかしら? 本気で意味が分からなかったんだけれど』
……気にしないでくれ。俺もちょっとよく分からない事を言った気がする。かなり混乱してるみたいだ。
『そ、そう? てっきりミナト君ったら可愛ければ男だろうと気にしない人になっちゃったのかと』
いや、正直これだけ可愛かったらどうでもよくなってしまう奴の気持ちは分らんでもない。
『……まぁ、君も今女の子だし、ね?』
それはちょっと話が違うってば。
「さて、と。ライルさまにお客様のようですし私はこの辺で。仕事に戻りますね?」
「あ、ああ……すまない。それと、これで顔を拭くといい」
ライルはテラにタオルのような物を手渡すが、テラはそれを受け取りつつ、「嫌ですよもったいない」と言って部屋を出ていった。
「ミナト殿……今のもったいないというのはどういう意味だろうか?」
「俺に聞くなよ……」
多分テラが言った【もったいない】は両方の意味だと思う。
まずライルが自分に吹きかけたケーキの残骸を拭ってしまうのは勿体ないというちょっとアレな意味。
そして、ライルから手渡されたタオルを使用してしまう事へのもったいない。
その両方の意味なのでは……?
『さすがミナト君、アレな子の気持ちはよく分かってるわね♪』
褒めてるのかそれ……。
テラの奴完全に開き直って女の子としてライルを落とそうとしてやがる。
きっと、リーアというメイドのせいだろうなぁ。
ネコの話じゃテラとライルをくっつけようと応援してる側だったみたいだし。
そもそもリーアというメイドは自分のメイド服をテラに盗まれるという被害にあってるはずなんだがなぁ。
しかし面白い事になってしまったものだ。
「ゴホン! ……その、お恥ずかしい所をお見せしてしまったな。ただ、その……出来ればなのだがここは自室で、プライベートな空間なわけだからして……」
「分かった分かった、俺が悪かったよ。今度からちゃんと部屋の外からノックして入る事にするわ」
「頼む、そうしてくれ」
テラは気まずそうに視線を逸らした。
「しかしテラの奴随分可愛くなったな」
「そうだろう!? しかも暇さえあればすぐああやって私をからかいに来るのだ……たまったものではないよ」
そう言いながらもライルの口元はだらしなく緩んでいた。
これはこれは……もう完全に掌で転がされてるぞこいつ。
「ライル、一つだけ言っておくぞ。人は見た目じゃねぇ。もしテラの事を本当に好きなら、中身ときちんと向き合ってやれよな。ガワなんてただの飾りなんだから」
「……む? どういう意味だ? 勿論私はテラの見た目が……その、好みだとかそういうんじゃなくてだな、純粋に私への好意が嬉しいというか、こちらも好意的に感じているというか……な、何を言わせるんだ!」
「ふふ、新たな王妃の誕生を楽しみにしてるよ」
「なっ、ち、ちが……いや、違くは……むぅ……!」
テラに悪いと思ったのか、馬鹿真面目な所はアリアに似ている。
こういう場合の勢い任せだとしても自分の気持ちに対して【違う】と言うのに抵抗があったんだろう。
こりゃ本当にその日は近いな。
「そう言えば……いったい何をしに来たのだ?」
……あ、完全に用件忘れてたわ。
0
あなたにおすすめの小説
ゴミスキルと追放された俺の【模倣】が【完全模倣】に覚醒したので、最高の仲間たちと偽りの英雄パーティーに復讐することにした
黒崎隼人
ファンタジー
主人公・湊は、劣化コピーしかできない【模倣】スキルを持ちながらも、パーティー「紅蓮の剣」のために身を粉にして働いていた。しかし、リーダーの海斗に全てのスキルを奪われ、凶悪な魔物が巣食うダンジョンの最深部に置き去りにされてしまう。
死を覚悟した湊だったが、その瞬間、唯一残ったスキルが【完全模倣】へと覚醒。それは、一度見たスキルを劣化なく完全コピーし、半永久的にストックできる規格外の能力だった。
絶望の淵から這い上がり、圧倒的な力を手に入れた湊は「クロ」と名を変え、過去を捨てる。孤独な精霊使いの少女・楓、騎士団を追われた不器用な重戦士・龍司――虐げられてきた者たちとの出会いを経て、新パーティー「アヴァロン」を結成する。
これは、全てを失った一人の青年が、かけがえのない仲間と共に偽りの英雄たちへ壮絶な復讐を遂げ、やがて本物の伝説へと成り上がる物語。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる