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第2章:冒険の始まりと新たな仲間。

第17話:苦悩のエルフ。

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「……ふぅ、私が教えられる事は一通り教えました。今の貴女なら落ち着いて対処すればどんな魔物も怖くないでしょう」

「リィルさんありがとう♪」

 彼の鬼教官っぷりは凄まじく毎日へとへとだったけれどその分実力はしっかりついたと思う。後は実戦にしっかり対応できるようになるだけだ。

「本音を言えば旅になど出てほしくないのですが……これも止む無き事。ならば私は貴女の無事を祈ります。必ず、帰って来て下さいね」

「うん分かった♪ ねぇ、ずーっと気になってたんだけど、出発前にさ、もう一回触っちゃだめ?」

 エルフ耳にとーっても興味があるお年頃なのですよ僕は。

「だ、ダメに決まってるでしょう!? 何を言っているんだ貴女は!」

「けちーっ!」

 リィルさんが慌てるのは珍しい。よほど触られたくないのかもしれないけど、あの尖ったところとか軟骨どうなってるのとか気になるじゃん。

「けちって……貴女という人は……私が貴女に好意を寄せていると知りながらそのような……私には貴女が聖女などではなく悪魔に見えますよ」

「ひどーっ! てか敏感って言ってたけど、くすぐったいとかだよね? だったらちょっとくらい我慢してくれても……」

「……んたいなのです」

 ……ん? 声が小さすぎてよく聞こえなかった。リィルさん下向いちゃったし。

「今なんて?」

「だから! エルフの耳は性感帯なんです! 何度も言わせないで下さい!」

 性感帯か……そりゃ簡単に触らせたくないのは分かる気がする。

「へぇー、じゃあ耳に髪の毛がわさわさーってなったらそれだけで結構大変だよね?」

「貴女という人は……だから私は髪留めをして耳にかからないようにしてるんでしょうが!」

「うわ、怒んないでよ……」

 リィルさんが物凄い形相になった。綺麗な顔が台無しである。

「怒ります! さすがにいくら温厚な私でも怒ります! 性感帯が何なのかちゃんと分ってますか? 貴女が自分の身体をあちこち触られたらいやでしょう!? それと同じですからね!?」

「じゃあエルフの人はそんな物を堂々と見えるようにしてるって事? なんだか羞恥プレイみたいだね」

 リィルさんが一瞬固まって、スゥっと冷静な顔つきに戻っていった。

「……最初から貴女はそういう所ありましたけれどここ最近は特に悪化している気がします。怒るよりまず心配の方が勝ってきました……」

「えへへ、クラマにもよく言われる」

「勇者様も大変ですね……」

「ていっ!」

 隙をついて触ろうとしたけどさっとかわされてしまった。
 ちぇーっ。どうあがいても触らせてくれないらしい。

「じゃあ帰ってきたら触らせてよ。それくらいはいいでしょ?」

「……分かりました。その代わりどうなってもしりませんからね?」

「耳触られるとそんなにおかしくなっちゃうの? 蕁麻疹出るとか」

「いや、どうなってもというのは私ではなく貴女がですね……いや、いいです。分かりました。無事に帰ってきたら好きにして下さい。もう知りません」

 リィルさんはとうとう観念したのか遠い目をしている。

「やったー♪ エルフを調べ放題っ!」

 耳だけと言わずいろいろ調べさせてもらおう。僕の知的好奇心が騒いでいるのだ!

「私はもう疲れました。出発するなら早く言って下さい。いろいろ耐えるのも辛いんですよ?」

「えっ、僕と話すのそんなに辛かった? ……えっと、なんか、ごめん」

 ずっと我慢してくれてたのかな? 申し訳ない事をした……だからといって触るのはもう約束したからやめないけどね。

「その能天気さが貴女の取り柄であり、長所であり、短所であり、悪所です。その事をよく覚えておいて下さいね」

 うわ、褒められてるかと思ったら気が付いたらディスられてる……!

「気を付けるね。でもリィルさんが居たから僕も成長できたんだよ♪ 必ず恩返しするから、帰ってきたら何してほしいか考えておいてね♪」

 そこでリィルさんは僕の顔をまっすぐ見つめて、大きなため息をついた。なんでよ?

「きっと、私の望みは貴女には叶えられませんよ」

 そう言って力なく笑った。

「そっか、残念だけど……でも僕に出来る事ならなんでもいいからさ、考えておいて♪ 頑張ってくるからさ」

「はい、聖女様……貴女の旅、そして人生に幸多からん事を願っております」

「ユキナでいいよ♪」

 ずっと聖女様聖女様言われるのも照れ臭いし。

「そうですか……ではユキナ。私の事もリィルと、そうお呼びください」

「うん♪ じゃあリィル、行ってくるね!」

 リィルの優しい笑顔に見送られその場を後にした。

 裏庭から離れ、リィルの姿が見えなくなった頃……。

「おぁぁぁぁぁぁっ!!」
 とか
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 とかいう叫び声と共に、いくつも爆発音が響いてきたので何事かとちょっと戻って遠目にリィルの様子を見てみた。

 すると、リィルが叫び散らしながら練習場の的を片っ端から破壊している。

「な、なにしてんのあの人……」

 一通り的を破壊し尽くすと、今度は地面に倒れ込んで手足をジタバタさせしばらく暴れていた。

 リィル……ストレス溜まってたのかなぁ?

 ずっと僕につきっきりで魔法教えてたもんね。これからはゆっくりできると思うからのんびりしててね。

 僕も頑張って魔王倒してこなきゃ!

 そして思う存分エルフを調べるぞーっ!

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