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第2章:冒険の始まりと新たな仲間。

第18話:エイムというおじさま。

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 きっとリィルも僕が見ていたのは知られたくないだろうからこのまま行こう。

 クラマはもう準備できてるかな?

 中庭まで到着すると、そこには一人剣を振るエイムさんの姿があった。
 ずっとクラマに剣技を教えてくれてたナイスミドルで、渋くて清潔感もあって礼儀正しくてとっても素敵なおじさま。

「こんにちはエイムさん」

「これは聖女様、ご機嫌麗しゅう。クラマ殿ならまだ来ておりませんよ」

 エイムさんは剣を鞘に納めると、「よろしければこちらへどうぞ」と言って僕を日陰のベンチへと連れて行ってくれた。
 その一連の流れすら紳士的である。クラマももう少しエイムさんを見習った方がいい。

「ところで聖女様」
「ユキナでいいよ?」

「……ではユキナ様。前から気になっていた事があるのですが少し質問させて頂いてもよろしいですかな?」

「なぁに? なんでも聞いてよ♪」

 エイムさんが気になってた事? なんだろ。
 彼は僕の隣に座って、中庭をにこやかに眺めながら続けた。

「当初お会いしたばかりの頃よりユキナ様は随分と……その、性格が変わったように思うのですが」

「えっ、そう?」

「はい。以前はこの世界に来たばかりで戸惑いもあったのでしょうが……そう言うのとは違うように思います」

 なんだろ? 確かにちょっと明るくはなったかもしれないけど……。

「楽天家、とでもいうのでしょうか……いえ、言葉が悪いかもしれませんね。何と言えばいいものか」

「それって前よりアホになったって言ってる?」

「め、滅相も無い。どちらかと言えば魅力的になったと思います。聖女様、という雰囲気でないのは確かですが、私の個人的な意見としては女性としての魅力に磨きがかかったように思えるのですよ」

 ……あんまり考えた事なかったけど、確かに最近は、なるようになるさ! って感じだよね。
 自分の力に自信がついたっていうのもあるかもしれないけど、以前はもっと内向的だったしこんなふうに毎日をあっけらかんとは生きてなかった。

 今なんてたまに自分が元々男だった事すら忘れそうになっちゃう事あるし。
 昔から女の子だったみたいな感覚で、男だったのが嘘みたいに感じる。

「クラマ殿の話ではユキナ様は前の世界で男性だったとか」

「うん、そうだよ? クラマってばそんな事まで話してるの? なんだか恥ずかしいなぁ」

 今話している女の子が本当は男ですってなったら男性はどんな気分になるんだろう?

「こっちの世界に来る時になんやかんやあってこうなっちゃったんだよね」

「なんやかんや、ですか」

「そう、なんやかんやだよ♪」

 そこでエイムさんは顎を撫でながらこちらを見た。

「よもやとは思うのですが、その身体になった事によって精神的な変化が起きているというのは考えられませんかな?」

 どういう意味で言ってるんだろ?

「女の子としての自分を受け入れ始めたとかそういう事?」

「少し違います。どちらかと言えば女性の姿になった事によりなんらかの矯正力が働いて貴女の心が女性に近付いてしまっている……などと邪推してしまったのですよ」

「えぇ……?」

 何言ってるんだこの人、って思ったけど……あまり否定はできないかもしれない。
 最近は【僕】っていう一人称も少し違和感があるくらいだし。

「でも僕の身体はもう女の子だし、中身が女になっちゃってもあまり問題無いかなー? クラマは元に戻そうと必死だけどね。いい加減諦めてくれないかなぁ?」

「ふふふ……」

 僕の返事を聞いてエイムさんは目を細めて笑った。

「なにかおかしかった?」

「いえ、申し訳ありません。やはりユキナ様はとても魅力的な女性だと思いましてね。以前と比べてとかは関係なく、そう思いますよ」

「やだー、もしかして口説いてる?」

 褒められて照れ臭くなっちゃって冗談を言ったつもりだったんだけど、反応は思ってたのとちょっと違った。

「そうですね、私があと二十歳若ければ間違い無く口説いていたでしょうな」

「えー、今でも十分若いしかっこいいじゃん」

「お褒めに与り光栄ですが、あまりからかわないで下さいね。こんな歳でもうっかり浮かれてしまいそうになります」

 こういう謙遜出来る所も人間ができてるなーって思う。

「いいと思うけどなぁ? エイムさんって強いしかっこいいし紳士的だし。実際モテるでしょ?」

「いえいえ、誰もこんなおじさんは相手にしませんよ」

「そうなの? 勿体ないねー?」

「これはこれは……クラマ様が心配するわけですね」

「どういう意味?」

 なんでそこでクラマが出てくるんだろ。

「なんでもありませんよ。私くらい人生経験豊富でもときめいてしまうくらいですから貴方の魅力にやられてしまう男性は多いでしょう。本当に、少しは自重する事を覚えて下さいね?」

「うん? よく分からないけど分かった!」

 僕の事を心配してくれてるって事だけはなんとなく分かったので元気に返事しておくことにした。

「ふふ、私がもっと若いか、貴女がもう少し歳を重ねていたのなら放ってはおかなかったでしょう。クラマ殿に宣戦布告していたかもしれませんよ」

 そう言ってエイムさんは笑った。

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