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最終章:女神への願い。

第37話:かわいそうなエルフ。

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『……なんですって? もう一度言って下さい』

「もうこのくだりやったよぉ……」

『何を訳の分からない事を……それよりも先ほどの話本当なんですか?』

「ちゃんと聞こえてるんじゃん」

 とりあえずリィルには報告しておかなきゃなーと思って通信で魔王を仲間にしたって言ったらこんな感じ。

『貴女という人は……魔王までたらしこんだんですか?』

「ちょっと待って、人聞き悪すぎじゃない?」

『ユキナの事だからどうせそういう事でしょう?』

「あっ、やっとユキナって呼んだ♪」

『もう、私だって怒りますよ!?』

 頭に直接怒気が伝わってくる。
 そんなに怒んなくたっていいじゃん。

『まぁやってしまった事は仕方ありません。それより本当に魔王は信用してもいいんですか?』

「あ、それは大丈夫。今は僕と契約してるからね♪ 僕の言う事は絶対なのだ! がはは!」

『……魔王と、契約?』

「すごいっしょ? 魔王だけじゃなくてね、もっごっていう切り株の魔物も……」

『そういう事ではありません』

 なんか急に声が静かになって、より一層の怒気が伝わってくる。

「……え、ダメだった? 一応扱い的には僕のしもべって事になってるから絶対悪さしないよ?」

『頭が痛い……』

「どうしたの? 頭痛? 具合悪いのかな?」

『もう何を言われても私は驚きませんよ』

 そのくだりもめっちゃデジャヴなんだけど……。

「でさ、魔王の主って事になっちゃったから僕今聖女で大魔王なんだよねー♪ すごいでしょ褒めて褒めてっ♪」

『……うっ、うっ……』

「ちょっと待ってなんで泣くの!?」

 急に通信の向こう側でリィルが泣き出してしまった。
 周りに人が居たら驚くじゃんもしかして僕のせい?

 僕また何かやっちゃった??

『なんだかどっと疲れました……ユキナは自分がいったい何をしたか分かってるんですか……?』

「えっ、でもほら、これで魔物と争う必要がなくなった訳だし結果オーライじゃない?」

『それはそうですが……私にはもうユキナが分かりません。それではまた……』

「えっ、ちょっと待ってよ!」

 ぶつん。

 ……一方的に通信を切られちゃった。
 こっちからしか通信できないのに切るのはあっちからでも出来るんだね。

「もう終わったか?」

「あ、うんお待たせー。なんかめっちゃ怒ったり泣き出したり大変だった」

「リィルもかわいそうにな……」

 クラマはどこか遠くを見つめながらそんな事を言った。僕が諸悪の根源みたいな言い方しないでほしい。
 なんだかんだといい方向に進んでるんだからいいじゃんか。


「もう過ぎた事はいいから次考えようよ。とりあえず……どうしよ? なんも考えてなかった」

 だって黒い影の魔物をどうにかするって言ってもどこで出るか分からないし。

「ラスカルは影の魔物がどこに出るとか知ってるの?」

「シャドウ。私達は奴等の事をシャドウと呼んでいる」

「へー、でそのシャドウがどこに出るか分かる?」

「ユキナ、話を逸らしたんだから察してやれ」

 ラスカルは気まずそうに僕から目を逸らしていた。

「ねぇ、じゃあどうやってシャドウを倒したらいいの? 毎回遭遇するのを待って世界中うろうろしたらいいの?」

「くっ……」

 いや、くっ、じゃなくてさ。
 それだとどうしようもないじゃんか。いつまでもこの戦いは終わらない気がする。

 僕としてはこの世界にずっといたいと思ってるからそれ自体は構わないんだけど、さすがにいつまでも街を隔離しっぱなしって訳にはいかないし……今の状態で隔離を解いちゃうと人間達がシャドウに襲われるかもしれないし……。

 それになにより、今後魔物と人間が上手くやっていくためには成功例が必要だと思う。

 さすがにラスカルの祖父、祖母のように魔物と子作り……って訳にはいかないから、その代わりに分かりやすい例を人々に見せてやらないといけない。

 それが聖女、勇者と魔王が協力して共通の脅威を倒す事。

 勿論魔物の協力もあるとなお良し♪

 その為に僕らの事をもっと広くいろんな人達に知ってもらわなきゃならないんだけど……。

「ねぇラスカル。ちょっと相談したい事があるんだけど」

 僕は自分の中の考えをラスカルに伝え、都合のよさそうな魔法がないか聞いてみた。

「おっ、いいのあるねー♪ じゃあそれ使っていっちょぶちかまそっか♪」

「おいおい一体何を考えてる? お前がそういう顔をする時は大抵ろくでもない事を企んでる時だからな……」

「さすがクラマよく分かってるね♪」

 これで僕の作戦の方は大丈夫だけど……問題はどうやってシャドウを殲滅するか、なんだよねぇ。

「とりあえずいろいろ打ち合わせとかもしたいしさ、一度ジャバルに戻らない?」

「今からあそこまで戻るのか? さすがに効率悪すぎるだろ」

 クラマが冷静に否定してくるけどそう言えばクラマは知らないんだっけ。

「それは大丈夫だと思うよ。ラスカル、出来る?」

「ジャバルか……無論問題無い。このくらいの人数なら多少疲れるが数秒で転移可能だ」

 さすがにクラマがラスカルを見て驚いていた。

「どうだ? 魔王の偉大さが分かったか?」

「あぁ、その魔王様よりも偉い大魔王様は俺のだけどな」

「だから貴様のではないと……!」



「僕の為に争わないでっ!!」

「あ、うん」
「おう」

 ……やっぱりこれなんか違う気がする。
 こんな反応が見たい訳じゃないのになぁ。


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