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最終章:女神への願い。
第42話:生配信と放送事故。
しおりを挟むその日は解散し、それぞれみんな最後の準備をする事になった。
そして翌日、僕らにはシャドウの素体を退治しに行く前にやらなきゃならない事があった。
「ラスカル、準備は出来てる?」
「ああ、いつでも大丈夫だ」
ラスカルにやってもらうのは、大陸中に僕らの声を届ける事。
彼の魔法で、音声だけだけど大陸中の街全てに声を届ける事が出来るらしい。
全ての村や街の場所が頭に入っていないとこんな芸当はできないのだとリィルが教えてくれた。
やっぱりラスカルは凄いのだ。
「では行くぞ、リーナ姫、出番だ」
まずはリーナ姫に挨拶してもらってみんなの注意を引く。
ある程度の事情を説明してもらい、僕とクラマについての情報を共有して、聖女と勇者がこの世界を救うという話をしてもらう訳だ。
それだけでも多少人々の希望にはなるのかもしれないけど、それだけだと意味が無い。
「……という訳なのです。しかし心配はいりません。必ずや聖女様と勇者様がこの世界をお守り下さいます。……ここからは少し聖女様の声を皆にお届け致しますね」
まるで生放送のラジオみたいだ。
「こんにちは。聖女ユキナです。僕は勇者クラマと二人でこの世界に召喚され、世界を救うための旅を始めました……それからいろいろあって、世界を守る方法がはっきり分かったんです。それで皆さんに大事なお話があって……驚くと思いますが、どうか冷静に、そして出来れば……僕の言葉を信じてほしい」
こんなので全ての人々の心が変わるとは思えない。だけど、ほんの少しでも僕の言葉に耳を傾けてくれる人がいたら……きっと魔物との関係は変わっていくはずだ。
「まず初めに、この大陸中の街を隔離したのは魔王ラス……ラシュカルです。ですが敵は魔王ラシュカルではありません。この世界を滅ぼそうとしているのは通称シャドウと呼ばれる破壊神の手先です」
シャドウという存在を人々に分かりやすく説明するには破壊神の手先って事にするのが分かりやすくていいと思ったんだけどうまく行ってると良いな。
「僕とクラマは魔王の元にたどり着き、対話をしました。結論から言うと魔王、そして魔物は……人間の敵ではありません。にわかに信じられない方も多いでしょう。ですが、シャドウから人間を守るための隔離障壁だったのです」
ここからが一番大事……。大きく深呼吸して続ける。
「魔王が敵ではないという証拠に、魔王は僕と契約を結びました。魂を結ぶ契約はけして破る事は出来ません。その上で、魔王ラシュカルは僕の眷属になりました。この意味をよく理解してほしい。魔王が聖女の眷属ならば、魔王が統率する魔物達もまた僕の眷属という事です。繰り返します……魔物は、もはや敵ではなくこの世界を救う僕の同志です」
分かってくれない人もいるかなぁやっぱり。
でも、こればかりは気長に溝を埋めていくしかないよね。
「僕達は神との交信により破壊神の居場所を突き止めました。これから僕と勇者クラマ、そして魔王ラシュカル……人間と魔物は手を取り、力を合わせてこの世界の脅威と戦いに行ってきます。どうか応援していて下さい。そして……無事に帰ってこれたら隔離障壁も解除しましょう。人間と魔物が良き隣人となれるよう願っています。この気持ちが、想いが……少しでも多くの人々に届きますように」
はぁ……緊張した。
「これにて緊急通信を終了致します。聖女様達は必ずや世界を救って下さいます。我々は信じてその時を待ちましょう」
リーナ姫がラスカルに視線で合図をし、通信を終了……という流れだった筈なのだが、そこでラスカルが勝手な事を始めてしまった。
「皆の者、よく聞け。私は魔王ラシュカル……ふふ、怯えずともよい。私は自ら望んで聖女の眷属となった。人間に仇成す存在ではないと約束しよう。いろいろ気になってる人間も居ると思うので私が聖女に下った理由を教えておいてやる。この女はいい女だぞ! 私はこの命、残りの人生全てを聖女ユキナに捧げると決めた。私にとって彼女は絶対なのだ。……心配するな。聖女は上手くやる。この世界も救ってみせるだろう。待っていろ」
そう言って今度こそ通信を切った。
その顔は何かをやり切ったように満面の笑みを浮かべていた。
「もう、ラスカルってば勝手な事して~っ! あんな事を大陸中に広められたら恥ずかしいじゃんか!」
「ふふ、こうやって宣言しておく事によって勇者よりも私の方が聖女の相手に相応しいと思う人間が増えるかもしれんなぁ?」
ラスカルがクラマを挑発するように言った。
「馬鹿を言うな。人々がどう思おうと、お前がいくらその口で何を言おうとも、ユキナは俺のだし誰にも渡さん」
「あらあらどうしましょう♪」
その様子を見てリーナ姫はなんだか一人でぴょんぴょん飛び跳ねながらご満悦である。
「ユキナは私がもらう!」
「俺のだって言ってるだろうが!」
二人が取っ組み合いを始めそうだったので二人の間に入り、
「待って、僕の為に争わ……」
「あ、うん」
「おう」
まだ言い終わって無いでしょうが!
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