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☆おまけ☆
閑話最終話:中毒患者と世界平和。
しおりを挟む真っ白になっちゃったラスカルになんて声をかけていいか分からずに、迷いに迷った挙句僕は一番言っちゃダメな選択肢を選んでしまったらしい。
「た、タケーノコ美味しかった、よ……?」
ゆっくりと放心状態のラスカルがこちらに振り向く。
「そう、か……それは……よかった。うん、よかった……」
ラスカルが燃え尽きてる……!
ほんとごめんだよ……。
「ね、ねぇ……来年もまたさ、みんなでタケーノコ鍋食べようね?」
「……それだけは、それだけは絶対にダメだ……お前らにはもう二度とタケーノコは食わさん」
ラスカルがうっすら涙目になりながらそんな事を言いだしてしまい、僕は彼を慰める事よりも二度と食べられないって方に反応してしまった。
「また食べたいよ! 美味しかったし。ねぇクラマ!?」
「そうだな。今からもう一回戦行って取ってきたいくらいだ……」
少し離れた場所から、リィルの魂の呟きが聞こえた。
「お願いです……貴方達はもう二度と……タケーノコを食べないで下さい」
リィルまで……!
その後ラスカルを慰めたり、二人を説得したりいろいろしたけれど結局僕らにはタケーノコ禁止令が発せられた。
この世界に来てからこれほどショックなのは、この世界に来た日にクラマが泡吹いて気絶した時以来だ。
こうなったらいつかクラマと二人でこっそりとタケーノコ採りに行ってやる。
僕らは無言で視線をかわし、小さく頷き合った。
その晩……僕らはタケーノコの味、メイジ鍋の味が忘れられず興奮状態が続き、二人で布団にもぐりながらハァハァと朝まで耐え続ける事になったのだ。
数日間の間、その禁断症状が消える事は無く、そして僕とクラマは今自力でキノーコ山の麓にいる。
「ユキナ、早く行くぞ。二人が追って来る前になんとかしなくては」
「分かってるよ……もっごが居ないから、しんどくって……」
「ほらやっぱりここでしたよ! ラスカル! 早く二人を取り押さえて!」
「分かっている! お前は勇者を、私がユキナを取り押さえる!」
「何を言ってるんですかユキナを捕まえるのは私です!」
「いいや私だ!」
まずい、二人が追ってきた!
「ユキナ、掴まれ!」
なぜかクラマはこの状況を僕の危機的状態と判断したらしい。
クラマは、というかクラマの能力が、だけど。
僕を軽く抱きかかえて物凄い跳躍力で山を一気に駆け上がっていく。
「ふふ、こういうのも久しぶりだな」
「へへ……そうだね♪ もう少しこうしていたいけど……それより今は……」
「「はやくタケーノコを収穫しなければ!」」
「待つのだーっ!」
「待って下さーい!」
背後からは僕達を止めようとするラスカルとリィルの声。
その声を振り切るように山を駆け上がるクラマ。
風を切る感覚が頬を突く。
クラマの体温が僕に伝わって、なんだか笑えてきてしまった。
「僕らいったい何やってるんだろうね」
「……まったくだ」
そう言って二人、笑いあった。
今日もこの世界は平和です♪
余談だけれど、この後転移で先回りした二人に協力合体拘束魔法とか謎の新技術魔法を使われて僕らは簀巻きにされ、半日ほど説教をくらいました。
いまにみておれ……かならずやりべんじしてみせようぞ。
――――――――――――――――――――
お読み頂きありがとうございます!
こんなニッチな作品を再終話までだけでなくおまけまで読破してくださった貴重な読者様に感謝!
今回は全然クラマが活躍しませんでしたが、出来るだけリィルにスポットを当ててやりたいと思って追加した閑話になります。少しでもにこやかドSヘタレ黒エルフのリィル君の印象がプラスになってるといいな。
この話でプラスになる事なんてあるのかという疑問はありますが、とにかく無事にきのたけ戦争も解決(?)した事ですしここで再び閉幕とさせて頂きます。
いつかまた続きを書く事があるかも……しれないし無いかもしれませんが、再開再会の際はよろしくお願いします♪
最後に、ファンタジー小説大賞に参加させてもらっておりますのでどうかポチっと投票なんぞして頂けると嬉しいです☆彡
ありがとうございました! また他の作品でもお会いできる事を祈っております♪
monaka.
応援ありがとうございます!
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