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第3章 アデレードの挑戦
第25話 祝宴
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山に入ったカール達は3方に分かれて狩りを始める。見通しの効く冬に大人数でぞろぞろ歩いていては目立って、獲物に逃げられてしまうからだ。冬場はもっぱら兎が獲物だが、今日はもっと大物、鹿や猪を狙う。猟師達は油断なく目を光らせて獲物を探す。
カールは気持ちが高揚するのを感じた。山で死にかけた経験があるにも関わらず、彼の山に対する愛は少しも減じることは無かった。むしろ一層畏敬の念を強くしたと言っても良いのかもしれない。
冷え切った山の空気を、彼は思い切り吸い込む。気を引き締めて斜面を登っていく。先行する猟師から合図があった。獲物を見つけたのだ。
カールの指示に従い、それぞれが配置につき、勢子が獲物を追い立てる。獲物は鹿だ。彼は音もなく弓を構え、弦を引き絞る。仕留める瞬間はいつも緊張が走る。
狩りはいつも挑戦だ。失敗すれば即座に鹿は逃げてしまう。そうなれば糧は得られない。
彼は近づいてきた鹿に向けて、矢を放った。
夕方、男達が獲物を担いで意気揚々と帰ってくる。リーフェンシュタール家の邸宅では祝宴の準備が大詰めを迎えていた。
伯爵邸は村の住宅と同じく切妻屋根の、石の土と木の建物だったが、その大きさと広さは段違いだった。一階部分は大広間となっており、今はそこに長い食卓用のテーブルが何列も並んでいる。料理が次々と運ばれてきて、テーブルを彩る。
そこへ狩りに出ていた一団が戻ってくる。待っていた住民が彼らを温かく迎え入れた。祝宴が始まった。
陽気で即興的な音楽が鳴らされ、酒の回った酔っ払い達が調子っぱずれに歌い上げる。あちこちで楽しいおしゃべりの花が咲き、食事に手を伸ばす。
アデレードは自分の知る夜会とは全然違う世界に気後れしながらも、部屋の片隅で食事を取る。人々の活気あふれる様子は見ているだけで楽しくなる。
「なんだかすごいわ」
ちなみにディマは猟犬達にちょっかいを出しては吠えられたり、あしらわれたりしながら、楽しそうにじゃれ合っている。
アデレードは遠くにいるカールをこっそり見た。奥の壁に掛けられた巨大なタペストリーの前に座り、領民達に代わる代わる話し掛けれたり、酒を勧められたりしている。
いつもと違い、口を開け快活に笑っている。それはまるで先程見た幻の続きのようであった。気の知れた仲間達や民と陽気に騒ぐ山の王。その格好の所為か、野性的な魅力と色気が増している。
アデレードがぼーっと見惚れていると、メグの母親のアルマに声を掛けられた。
「お嬢さん、これ伯爵様のところまで持って行ってくれないかい?」
「はい?」
アデレードの目の前に串刺しにされた肉が載った皿が置かれる。
「それは……?」
「今日獲ってきた鹿の肉だよ、捌いて焼いたのさ」
「まぁ。私が届けに行ってよろしいのですか?」
「酔っ払いの世話が忙しくてねぇ」
アルマが苦笑いしながら後ろを指差す。アデレードが視線をやると床で大の字になっている者やテーブルに突っ伏している者が見える。
「分かりましたわ」
彼女が立ち上がり、皿を持って伯爵のもとへ向かった。いつもとは雰囲気の違う伯爵に少し緊張してしまう。
「あの、伯爵……」
「ん?」
アデレードは躊躇(ためら)いがちに声を掛ける。
カールは気持ちが高揚するのを感じた。山で死にかけた経験があるにも関わらず、彼の山に対する愛は少しも減じることは無かった。むしろ一層畏敬の念を強くしたと言っても良いのかもしれない。
冷え切った山の空気を、彼は思い切り吸い込む。気を引き締めて斜面を登っていく。先行する猟師から合図があった。獲物を見つけたのだ。
カールの指示に従い、それぞれが配置につき、勢子が獲物を追い立てる。獲物は鹿だ。彼は音もなく弓を構え、弦を引き絞る。仕留める瞬間はいつも緊張が走る。
狩りはいつも挑戦だ。失敗すれば即座に鹿は逃げてしまう。そうなれば糧は得られない。
彼は近づいてきた鹿に向けて、矢を放った。
夕方、男達が獲物を担いで意気揚々と帰ってくる。リーフェンシュタール家の邸宅では祝宴の準備が大詰めを迎えていた。
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そこへ狩りに出ていた一団が戻ってくる。待っていた住民が彼らを温かく迎え入れた。祝宴が始まった。
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アデレードは自分の知る夜会とは全然違う世界に気後れしながらも、部屋の片隅で食事を取る。人々の活気あふれる様子は見ているだけで楽しくなる。
「なんだかすごいわ」
ちなみにディマは猟犬達にちょっかいを出しては吠えられたり、あしらわれたりしながら、楽しそうにじゃれ合っている。
アデレードは遠くにいるカールをこっそり見た。奥の壁に掛けられた巨大なタペストリーの前に座り、領民達に代わる代わる話し掛けれたり、酒を勧められたりしている。
いつもと違い、口を開け快活に笑っている。それはまるで先程見た幻の続きのようであった。気の知れた仲間達や民と陽気に騒ぐ山の王。その格好の所為か、野性的な魅力と色気が増している。
アデレードがぼーっと見惚れていると、メグの母親のアルマに声を掛けられた。
「お嬢さん、これ伯爵様のところまで持って行ってくれないかい?」
「はい?」
アデレードの目の前に串刺しにされた肉が載った皿が置かれる。
「それは……?」
「今日獲ってきた鹿の肉だよ、捌いて焼いたのさ」
「まぁ。私が届けに行ってよろしいのですか?」
「酔っ払いの世話が忙しくてねぇ」
アルマが苦笑いしながら後ろを指差す。アデレードが視線をやると床で大の字になっている者やテーブルに突っ伏している者が見える。
「分かりましたわ」
彼女が立ち上がり、皿を持って伯爵のもとへ向かった。いつもとは雰囲気の違う伯爵に少し緊張してしまう。
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「ん?」
アデレードは躊躇(ためら)いがちに声を掛ける。
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