ほっと一息 血の味ミルク

小説家目指しの初心者 #雑民 ゆるた

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第1話 全ての始まり

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 とある富豪に雇われている使用人からの依頼。
 それは雇い人である富豪を殺して欲しいという依頼だった。
 ターゲットである富豪は日常的に依頼人に暴力を振るっていた。
 警察に相談しようとしても、富豪が裏で手を回し、全く動いてくれない。
 この世界・・では似たような話が沢山ある。
 結局、警察も権力や金には勝てなかったのだろう。
 まさに、闇に葬られるとはこのことだ。
 「富豪が法外のモノを使うならば、コチラも使ってやる。そう思ったことがキッカケで依頼を出した。」
 依頼人はそう言っていた。きっと藁にもすがる思いでここに依頼したのだろう。シランケド

 ところで、この依頼の報酬は相場に比べて安い。今のコンビニバイトの給料は知らないが、およそコンビニバイト1ヶ月分といったところだろう。
 富豪がターゲットの依頼ならこの100倍は軽く付く。
 俺は電卓を叩く。
 手数料として25%を俺が取るとして、このくらい報酬になるのか…………
「この依頼を受ける奴、流石に居ねぇよなぁ。」
俺はため息をこう零すことになるのだろう。
 アイツが居なければの話だが。
 そろそろ帰ってくる時期だろう。

~略~

 俺は両手をポケットに突っ込み、砂埃が舞う中、早歩きである国を目指していた。
 長い道のりだった。ようやく帰れたようだ。
 何故あんな遠くから依頼が来たのか不思議である。
 まぁ、ルカがあの約束を先延ばしにしようとしてるとしか考えられないんだけどな。
 ともかく、俺は依頼を果たし、この国に帰ってきた。
 周りが壁で囲われているものの、壁はボロボロ、押せば崩れる。
 大きい門があるものの、門には誰もいない。素通りができる。今にも崩れそうだ。
 沢山の家が並んでいる。窓は割れ、モノが散らかっている。
 建物と建物の間のか細い道に、子供達が座っている。大方親を待っているのだろう。捨てられたとも知らずに。
 ここはいわゆるスラム街、いや、スラム国と言うべきだろうか。
 この国は国であって国では無い。法律がないどころか、国家すら存在しない無法地帯である。
 この国の特徴と言えば、近くに賑わう国々があり、そこから捨てられた者がやってくることぐらいだ。
 だいたいは子供で、育てるお金が無いだの、産まれなかったことにしたいだの、そんな理由だろう。無責任にも程がある。
 しかし、俺はどうすることもできない。ただただ仕事をし、金を稼ぐ。自分のことで精一杯だ。
 できることと言えば、稼いで余った金を子供達にわけるくらいだろうか。そうするように頼んでいる。

 大通りの横にあるBAR。
「チリーンチリン」
 俺はその店の扉を開けた。
すると俺を迎える懐かしい声が聞こえた。
「いらっしゃい。」
「久しぶり、ルカ。」
「なんだ、ゆるたか。突然で悪いが緊急依頼がある。色々と説明(報酬が低いこと)は省く。この依頼を受けてくれ。緊急なんだ。急いでくれ。」
 俺は表向きではBARの暗殺ギルドに入るなり、そんなことを言われた。
「緊急依頼…わかった。」
 俺は了承し、ルカから場所と内容が書いてある紙。いわゆる依頼書を手渡された。
 依頼書を渡された俺はすぐ店を出た。
「やっぱりアイツ、チョロいなw」と聞こえたが、俺はズンズン進んだ。
 後でルカは半殺しかな。
俺は笑みを浮かべながらその場を去った。

~略~

 ここの豪邸か。
前の依頼と比べれば距離が近かったな……。
 俺は壁に身を隠し、顔だけを出しながら豪邸を見る。
 槍のような細い棒が並び、地面に突きささっている囲いと、中に入るための門。その中に3階建ての豪邸が建てられている。
 門の前には黒服黒ズボンサングラスという強そうな黒い奴が2人。
 豪邸の中には体格の良い人影が沢山と、椅子に座るターゲット……あれ?あのターゲット写真よりデブって無いか?……まぁ良いか。が窓越しに見える。
 あのターゲットをこの警備の中で殺るのは至難の業だろう……しかし俺なら……
「おいっ!そこのお前何やってるんだ?!」
 急に後ろから大柄の男に声をかけられた。
 格好が黒服黒ズボンサングラスであるから富豪の仲間で間違いないだろう。
 今後はこの男達のことをハ〇ターと呼ぼう。あの逃走中のハン〇ーに似てるから。
 あのデブターゲットは外周りにもハンターを配置しているようだ。
 怪しまれないように、一旦通りすがりの一般人のフリをするか…
 俺は落ち着いた様子で冷静に話し始めた。
「えっ、いやっ、ちょっと、この豪邸すっ、スッゴイなァーなんて、お、思って、じっと、な、眺めていたんです、ほ、ほんとです。」
「……お前怪しいなぁ…」
 ハンターは眉間にシワを寄せてじっと見る。
「あはは……」
 ほんと俺のコミュ力の無さには目から涙を流したくなる……
 「……お前泣いてんのか?なんか可哀想な奴だな。ほら、これで涙拭けよ。」
 ハンターはズボンのポケットからハンカチを取り出し、差し出してくれた。
 実際に涙を流していたようだ……敵にすら同情されるとか悲しすぎる……
 俺は、右腕で涙を擦った。
「いいや、大丈夫だから・・・」
そう言って、俺は豪邸へと走り出した。
「あっ、おいっ!」
 ハンターはハンカチを収めながら走り出す。
 俺は、走りながらポケットから右手で銃を取り出し、右腕を豪邸の方向へと伸ばした。
 ハンターは俺が暗殺者だと勘づいた様子で、機器を取り出し言葉を発していた。
 おおよそ仲間を読んでいるのだろう。
 しかし、もう遅い。
「バン!」
 俺の銃から放たれた弾丸は囲いの隙間を通し、窓に穴を開け、ターゲットの頭を突き指した。まるで、1本の決められた直線を流れるように…
「パリィン!ドサッ。大丈夫ですかー!キャー!」
 遅れて色々な音が流れ出した。
 割れるガラス。飛び散る赤。轟く悲鳴と…
 これで依頼は完了。
 俺は銃を収め、全力で走る。
「待て!お前待て!打つぞ!」
 ハンターは銃を構え、こちらに向けてきた。
 ハンターなら銃使わず追って来いよ。ソレって番組としてどうなんだよ・・・・まぁ、撃たれて当たっても困るからなぁ・・・・。ん?でもよく見るとコイツ・・・
 俺はそれを見て、走るのを辞め、立ち止まった。
 ハンターは銃を構えたままゆっくりと近づいて来る。
 至近距離まで近づいて来たハンターは言った。
「ちょっと待ってろ!」
 仲間が来るまで待って俺を捕まえる気なんだろう。
 しかし、俺はそうなる訳には行かない。
俺はハンターに囁いた。
「手が震えてるぞ。覚悟無しに持つと思わぬ事故が起こる。虚勢は張ってもいいが、打つ気が無いなら銃を持つな。」
 そう言って俺は走り去った。
 ハンターはその場でうずくまり、そいつの仲間は集まって来たが、上手くすり抜け、逃げきった。
 昔の俺みたいな奴だったな・・・・
 あの言葉は俺が、昔の俺自身に言いたかった言葉なのかもしれないな・・・

 ~略~

「チリンチリーン」バン
俺はギルドの扉を勢いよく開けた。
「おいルカ、終わったぞ!」
「ゆらた、お疲れ様~。」ニッコリ
「お疲れ様~じゃねーだろ。どうせ今の依頼は押し付けだろ。」
俺はルカの胸ぐらを掴む。
「もう今度からはしないよォ。」
と真顔棒読みで言うルカ。
「まぁ、久しぶりに会えたんだし、何か飲んでくか?」
「ホットミルクで」
「子供っぽいなw」
俺はポケットにある拳銃を持つ。
「いや、冗談だって。ジョークジョーク。ハイハイ、ホットミルクねー。」

……………………………………………………

「へい、お待ち。」
ルカはホットミルクを差し出す。
俺は淡い水蒸気を見た後、いっきに飲み干した。
ゴクッゴクップハッ
「ご馳走様。」
「そういえば・・・コレ。」
ルカは依頼用紙を俺に差し出す。
「……また押し付けじゃないだろうな。」
「そんなわけないじゃんw まさか、この僕が信じられないの?」
「全く信用できないな。」
「酷っ!ともかく、この依頼は確実に受けて!ゆるたにうってつけ…ていうかゆるたにしかできない依頼だから」
ルカはニヤリと笑った。
……なんか、嫌な予感がする。
「とりあえず、行くだけ行って無理そうだったら帰ってくるわ」パシッ
そう言って俺は依頼用紙をルカの手から抜き取った。

~略~

 俺は胸まである草むらをようやく突破し、ツタが何本もこべりついてる洋館を発見した。
「ここが依頼人の家か。こんなとこに住むなんて正直どうかしてるな・・・」
 依頼書通りに進んだ俺は思わずこう呟いた。
 そもそも依頼書がおかしい。
 依頼内容も報酬も「私の家に来てから話します」って・・・。
 イタズラの可能性もあるかもしれないな・・・。でも、ルカに限ってそんなことは流石に無いか。
 俺は家の扉をノックした。コンコン
「・・・はい!」ガチャ
 白のワンピースを来た、いかにも殺しとは無関係そうな少女が出てきた。
 あれ?もしかして、ここじゃないのか?
俺は首を傾けた。それと同時に少女も首を傾けた。
「何しにここまで来たんですか?もしかして、遭難でもしたんですか?」
と心配そうな顔をする彼女。
「ええっと、俺、い依頼を受けて来たんですけど・・・」
「あっ、ゆるたさんですか?私が依頼者です!」
「それと、依頼内容は私を殺すことです!!」
「・・・・へ?」
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