酒場の二軍冒険者達が魔王軍に秒殺されに行くってよ

プロローグ 選ばれなかった者達

十年前、世界を滅ぼそうとしていた魔王は勇者一行に打ち倒された。
以降、魔王の側近の一人が穏健派の代表となり、人間達と不可侵条約を結び、互いの生活圏に大きな干渉はしなかった。

しかし、一年前に穏健派の代表が過激派の魔物に殺され、新たな魔王として祭りあげられた。
再び人間達の生活圏への侵略を全魔物に命じる新・魔王。

英雄となった勇者一行のメンバーは、新生・魔王軍の奇襲により命を落とした。

魔王軍の侵攻に悩む各国の国王達は、二つの対策を打ち出した。

①英雄の血を引く者を勇者とし、魔王討伐への旅を任命する。
②勇者が旅の中で経験を積み、魔王とわたりあえるだけの実力を身につけるまでの間、戦力となり得る者を戦場に投入し、魔王軍の侵攻を防ぐ。

多くの実力者が戦場へ駆り出されるが、ほとんどの者が名誉の戦死を遂げ、無事に帰ってきた者はひと握り。
英雄の血を引く勇者を無駄死にさせないため、苦肉の策を取る事しかできないほど、各国の軍事力はひっ迫していた。
全ては勇者が強くなるための時間稼ぎ…。

一人旅では危険なため、勇者は町の酒場で仲間を連れていく事が慣習となっている。

～町の酒場～

「ここは旅人達が仲間を求めて集まる出会いと別れの酒場です。どなたをお望みですか？」

勇者は酒場に登録された冒険者から選りすぐりの三人を連れて出発した。

・豪傑で男勝りな女戦士。
・電光石火でお転婆な女武闘家。
・お嬢様でセクシーギャルな女僧侶。

「最近の勇者って女の子しか選ばないのねぇ…。はーい残念ながら売れ残った皆さんは二軍同然なので自由に解散してくださーい。おそらくもう勇者様からのお呼びはかかりませーん。いくらでも替えが効く対魔王軍戦線志願兵を希望される方は同意書と交換で戦場片道切符をお渡ししまーす！はい、はい、それじゃ外の馬車に乗り込んでくださーい。え？装備の資金？ありませーん！コチラで用意するのは布の服だけでーす」

打倒魔王軍を志すも、勇者に選ばれなかった冒険者が取れる選択肢は二つ。

『志願兵』か『現役引退(ロートル)』

魔王軍の侵攻に苦戦を強いられ、彼我の差は歴然。戦場では低レベルの志願兵が次々に命を散らしている。
低レベルの兵を投入しなければいけないほど、戦局はひっ迫している事を意味している。