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[-00:11:56]創作
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しおりを挟むITSUKA@ituka_official
【ご報告】
平素より、『ITSUKA』を応援いただきありがとうございます。
この度、『ITSUKA』の楽曲MVにつきまして、盗作ではないかといったご意見が挙がっております。現在、MV製作者や当事者の方へ事実確認を行っております。状況が分かり次第、ご報告させていただきます。またこの件につきまして、憶測や事実と異なる───
その日、『ITSUKA』がSNSに上げたツイートは、一時間で3万以上のリツイートされた。トレンドに並ぶ『盗作』『ITSUKA』『MV』『トレパク』『mel』の羅列。
タイミングとしては、見計らったように最悪なものだった。
『mel』とのコラボがきっかけで、『劣等犯』はネット界隈で知れ渡りはじめ、『ITSUKA』の人気が上がり始めた最盛期に、盗作騒動が起こったのだ。
纏は、透花の個人情報が洩れないようSNSも動画サイトのコメント欄もすべて閉鎖した。
りんな@ zjtmvxu
事実確認とかいう時間稼ぎ乙
nuia@0KsZK___
謝罪まだ?
スタキウ@Lz1X1NFp
どうせ飛ぶでしょ
@こいん@y72sHX
公式で証明しろしろ言ってた奴らに火に油注いでるやんww
茶織@M5J0yL
言い逃れ出来るわけねえだろカス笑笑
カレンちゃん@Q2CFW000D
事実確認も何もネットに検証動画上がりまくってるよ??
見てないの??都合の悪いことは知らんふりですか??
shinori@j5a4ZO79M
信者によしよししてもらってぼくちん悪くないもんとか現実逃避してんだろうどうせ
不安定ロメオ@Ob0kE8w3n
さっさと謝罪しろトレパク野郎
夢落ち@k3i5eqHhi
帰ってきて!!とか言ってる信者マジなんなん?
盗作しといて戻ってこられるわけないじゃん笑
ミヤ@miya_125
これ、今トレパク疑惑上がってるワンシーン?
件のアカウントより更新日前だけど……
【透 さんのツイートを引用しました。】
愛一薯@nAoQWM1
『青以上、春未満』もトレパク疑惑上がってるってマ?
シトシト狂@w5yhwH5
一回かと思いきや、トレパク常習者?
花桜里@55947j9
ITSUKAのこと悪く言うやつらほんと死ねばいいのに
まだ事実確認中って言ってんじゃん
熔@c09x4989l0_
『劣等犯』に引き続き『青以上、春未満』もトレパク確定
言い逃れしようがないだろ
明かり@akari_1523
これどういうこと?
【ミヤ さんのツイートを引用しました。】
名無しのU@qtm89
確かに更新日が1週間前だ。もしかして、パクとラレ同一人物説?
【ミヤ さんのツイートを引用しました。】
古臭いウッドドアには『close』のプレートがぶら下がっていた。
いつも通り、ノブを捻ってドアを開けるとからん、からん、とベルが鳴る。底冷えするような寒さが、店内の暖房でほんの少し和らぐ。
適当に巻き付けたマフラーを外しながら、視線を上げると、バーカウンターを挟んで見知った二人が談笑しているのが見えた。
ベルの音に気付いたらしいバーテン服の男が、お、と声を上げた。
「お帰り律。寒かったろ? コーヒーいるか?」
「いる」
「はいよ」
カウンターの奥に消えていく叔父の姿を見送りながら、律は無言で彼女の隣に腰を下した。律たちの頭上で回るファンの音がやけに店内に響く。
「……どうだった?」
重い前髪の奥から伺うように、にちかは、恐る恐る律に尋ねた。律は、軽く息を吐いて首を横に振る。
「そっか」
あっさりとした返事を返すと、にちかは冷めきったコーヒーに口を付けた。
「……お前の方こそ大丈夫なのかよ? 盗作騒動で、『mel』も結構叩かれてんだろ。しかもライブの動画も出回ってるし。身バレとか」
「大丈夫大丈夫。さすがにクラスメイトもこんなもっさい見た目の女が『mel』だなんて思わないでしょ」
「あーそれもそうか」
「あ? 喧嘩なら買うけど?」
「当店には喧嘩は販売しておりませーん」
「屁理屈うっざ」
いつもの軽口のやり取りをしているだけで、律の心持は少しだけ軽くなった。
透花が倒れ、病院に運ばれた日から4日ほどが経った。
幸い異常なしと診断結果が出たため、透花は母親に連れられ、すぐに帰宅することが出来た。
その日からである。透花からの連絡は途絶えたのは。
律だけではない。纏や、佐都子、にちかもまた、返信が返ってくることは無かった。
各々が透花に会うため、彼女の家に通っているが、今だ誰も会えず仕舞いである。
纏と約束した期限まで、あと3日。
律は腹の底にずんと沈んだまま拭えない焦りと不安で、連日眠れない日々が続いていた。
悪魔の証明、などと、よく言ったものだ。
やっていないことを証明するための、確たる証拠が何一つ見つからない。
そして、律の焦りをさらに助長させるように、炎上の火花は様々な界隈へと飛び火していた。『ITSUKA』という名を知らないような人間にも知れ渡るほどには。
纏の言うように、事実確認中などと言い訳が通じるのは、1週間が限界だろう。
それに加えて、透花の音信不通状態。証拠が見つかったところで、透花にこれ以上描く気力がなくなれば、今やっていることは全て無駄な徒労になるだろう。
この最悪な状況を打破するために、律は、透花の母親にUSBを託した。
初めて、透花が律に書いてほしいと願った曲だ。透花が、透花自身と向き合うために、あるいは過去と決別するために描くと決めた曲。
後は、もう、ひたすら透花を信じるしかない。
「しゃんとしろ!」
唐突に、律の背中に衝撃が走る。ばしん、と小気味のいい音とともに叩かれた背中の真ん中あたりが猛烈に熱くなった。一拍遅れて、叩かれた部分を押さえ、律は抗議の声を上げる。
「ってーな!」
「あの夜、ステージから逃げたあたしに説教垂れた人間とは思えないわ。なにを弱気になってんのよ」
「……俺の黒歴史いじんな」
「あっはっは奇遇だこと、あたしも黒歴史だわ! 何なら今度はあたしが説教垂れてやりたいくらいにはね」
痛いところをついてきやがる、と律は心の中だけで文句を垂れる。
「つーか、アンタも纏も舐めすぎ」
「何が」
「透花ちゃんは、お前らが思ってるほど弱くないっての」
律は瞬きをすることすら忘れ、にちかの方へと視線を向けた。重い前髪から見え隠れする、強い意志のこもった真っ黒な瞳に、情けない顔をした自分が反射する。
「女だからって、勝手にヤワだって決めつけんな。言っとくけど、ネットに自分の創作物曝け出せるような女の子のメンタル弱いわけないから」
あたしも含めね、とにちかは口角を上げて笑う。
「けどさ、もし、もしも、だよ? 透花ちゃんが竦んで一歩も動けなくなってるんだったら、後ろから思いっきり蹴っ飛ばして、一発喝入れてやれ。そんで、あとは全部まるごと受け止めてやるって、でっかい懐見せつけてやればいいの。それが惚れた男の義務ってやつじゃん」
「……にちか」
律の呼びかけに、にちかは不愛想に答える。
「何よ」
「お前って意外と、いい奴だったんだな」
一瞬呆けたように目を丸くしたにちかは、ふっと笑うと、軽めのパンチを律の脇腹にお見舞いした。
「意外と、は余計だっつの」
いてて、と小突かれた箇所を押さえて大袈裟に痛がりながら、律は神妙な顔で言う。
「……てか、俺ってそんな分かりやすい?」
纏だけでなく、にちかにまで看破されるほど、分かりやすく態度で示したことなど一度もなかったはずなのに。おそらく、当の本人には全くと言っていいほど伝わっていないだろうけれど。
対しておかしな質問をしたわけでもないのに、にちかは言葉の意味を理解してから数秒後、ぷっと吹き出したかと思えば、店内に響きわたるほどの大声で笑う。
そうして、口を開いた、その時である。
「───きっ、緊急事態!」
けたたましくドアベルを鳴らし、外から飛び込んできた纏の鬼気迫る声が、それを切り裂いた。恐らくここまで全速力で走ってきたのだろう、風と雪で髪もマフラーも乱れた纏が肩を上下させながら、真っ赤に染まった右手で握りしめたスマホを律たちに向ける。
そこに表示された画面を、律とにちかは身を乗り出して覗き込んだ。
「っ、証拠、見つかったかも、しれない」
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